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キングジム、キーボードが折りたためて飛行機や新幹線の机でも使いやすいWindows 10ノートPC
(2015/12/8 18:25)
- 2016年2月12日 発売
- 価格:オープンプライス
キングジムは、折りたたみ可能なキーボードを搭載することで、コンパクトでありながら、よりサイズの大きなノートPCに近い使い勝手を実現したノートPC「ポータブック」(XMC10)を2016年2月12日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は9万円前後の見込み。
同製品の開発に携わった、商品開発部 冨田正浩氏が、「移動中に資料を修正する必要が生じた時などに飛行機の机はスペースが狭く、前の座席の背もたれも倒れてきて狭い。コーヒーも置けない。行った先ではプロジェクタが青色のVGA(D-Sub15ピン)端子で、ノートPCにはHDMIとDisplayPortしかなく、同行者のPCを借りてプレゼンをこなした。高性能なPCを持ち歩いているのにプレゼンすら満足にできないことに歯がゆい思いをした」という、出張時に感じた不便に対応するために生み出したノートPC。
開発にあたっては、「タブレットは携帯性がよいが、本体が薄いためMicro端子しかなくプロジェクタにも直接接続できないし、USBメモリから直接のファイルコピーなどが難しい。使いやすさに難がある。一方、ノートPCは端子類の充実しているしキーボードも付いていて使いやすいが、サイズが大きく荷物が重くなる」という課題に対し、「携帯性」と「使いやすさ」を両立したものとして設計された。
その最大の特徴が、この部分だけで開発に1年を費やしたという「スライドアークキーボード」と呼ばれるキーボード。[7]/[8]、[Y]/[U]、[H]/[J]、[B]/[N]の付近で分離し、弧を描くように90度回転しながらスライドさせることで、8型の液晶を搭載した本体のフットプリントと同じ形状にキーボードが収まる仕組みになっている。
この機構により、収納時は本体サイズ約204×153×34mm(幅×奥行き×高さ)とA5サイズの手帳ほどの大きさというコンパクトさで持ち運びでき、一方で12型液晶を搭載するノートPCに近い使い勝手を実現したという。重量は約830gで、「片手で持てる重さ」とした。
キーボードは日本語85キーで、キーピッチは18×15.5mm(横×縦)。キーストロークは1.5mm。キーボードを広げた場合、幅が約266mmとなる。
こうした使い勝手と携行性を両立させる製品としては、いわゆる「2-in-1」と呼ばれる液晶部分が分離してタブレットとしても、ノートPCとしても使えるデバイスがあるが、冨田氏は「2-in-1は新幹線や飛行機の小さな机の上や膝の上といった不安定な場所で使いにくい」と話し、ポータブックはキーボード周辺に1.2mmのアルミフレームを使うことで剛性を確保し、入力時の安定感を高めているという。
この開閉機構の耐久性については、2万回の開閉を保証。1日10回開閉して、約5年間持つという計算だという。キーボード表面は「おしゃれ」の観点からカナ表記のないデザインとした。
8型液晶の採用、約204×153×34mmという収納時サイズについては、「文具メーカーとして調査した結果、ビジネスマンがもっとも多く利用しているA5サイズの手帳を意識したもの」としている。
インターフェイスについてもフルサイズ端子のUSB 2.0、VGA(D-Sub15ピン)、HDMI出力、SDカードスロットを備えるほか、約200万画素のWebカメラやマイク、ステレオスピーカー、ヘッドフォン端子を備える。多くのインターフェイスは背面に搭載しており、端子保護用のカバーも装備。このカバーは開いた際にキーボードスタンドとしても機能するようになっている。
バッテリ駆動時間は約5時間。充電に要する時間は約3時間。充電をMicro USBで行なうのも特徴で、ACアダプタもタブレットなどで使われる5V/2AのUSB ACアダプタを採用。モバイルバッテリの利用も可能となっている。冨田氏は「ノートPCの不満の1つに付属のACアダプタが大きくて出張時に邪魔という声もあったので、小型のACアダプタにした。(バッテリ駆動時間について)5時間では短いという意見もあったが、スマホやタブレットのためにモバイルバッテリを持ち歩いている人も多いと思うので、電池切れの心配がない」と利便性を強調した。
CPUにはSurface 3と同じIntelのAtom x7-Z8700(動作クロックは1.6~2.4G
Hz)を採用。OSはWindows 10 Home(64bit)で、Office Mobile プラス Office 365サービスが付属する。CPUにAtomを採用したことで先述のUSB充電を実現し、冷却ファンを搭載しない設計も可能になったという。
そのほかの仕様は、8型液晶の解像度が1280×768ドット、メモリが2GB、ストレージがeMMC 32GB、ネットワーク機能がIEEE 802.11b/g/n対応無線LAN、Bluetooth 4.0+EDRを搭載する。
発表会では、キングジム代表取締役社長の宮本彰氏が挨拶。「開発にかかるコストや技術的な難易度が高く、商品化の決断にも勇気が必要な製品だった」とし、1988年に同社が初めて電子機器に取り組んだ「テプラ」以来のチャレンジであるとした。
実際、反対意見もあったというが、「キングジムは他社と同じような商品は出さない。メジャーなものではないが、やるならキングジムらしい隙間産業を狙っていこうと思っている。商品の内容を見ると十分に差別化できて、世の中にない新しい市場を作っていけると確信したので、思い切ってやろうと決断した。本来の“隙間”からすると、そうとは言えない、そこそこ大きな市場があるのではないか」との期待を示した。
また、キングジム取締役 開発本部長の亀田登信氏は「ビジネスにITツールは欠かせないものとなっているが、端末やアプリのような開発競争が激しい市場への参入は当社の体力では難しい。一方でPC市場は成熟してコモディティ化が進んでおり、製品の違いも小さくなっている」と背景を説明。この市場にターゲットを絞って差別化した製品を投入することで「後発にもチャンスがある」とし、「スペック至上主義ではないし、ビジネスの未来を変える商品でもないが、明日の出張は変えられるかも知れない商品。1つの見方として考えられる極限まで来た」と製品に自信を見せた。