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キングジム、キーボードが折りたためて飛行機や新幹線の机でも使いやすいWindows 10ノートPC

2016年2月12日 発売

価格:オープンプライス

キングジムの「ポータブック」(XMC10)

 キングジムは、折りたたみ可能なキーボードを搭載することで、コンパクトでありながら、よりサイズの大きなノートPCに近い使い勝手を実現したノートPC「ポータブック」(XMC10)を2016年2月12日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は9万円前後の見込み。

 同製品の開発に携わった、商品開発部 冨田正浩氏が、「移動中に資料を修正する必要が生じた時などに飛行機の机はスペースが狭く、前の座席の背もたれも倒れてきて狭い。コーヒーも置けない。行った先ではプロジェクタが青色のVGA(D-Sub15ピン)端子で、ノートPCにはHDMIとDisplayPortしかなく、同行者のPCを借りてプレゼンをこなした。高性能なPCを持ち歩いているのにプレゼンすら満足にできないことに歯がゆい思いをした」という、出張時に感じた不便に対応するために生み出したノートPC。

 開発にあたっては、「タブレットは携帯性がよいが、本体が薄いためMicro端子しかなくプロジェクタにも直接接続できないし、USBメモリから直接のファイルコピーなどが難しい。使いやすさに難がある。一方、ノートPCは端子類の充実しているしキーボードも付いていて使いやすいが、サイズが大きく荷物が重くなる」という課題に対し、「携帯性」と「使いやすさ」を両立したものとして設計された。

株式会社キングジム 商品開発部 冨田正浩氏
ノートPCを使うには飛行機や新幹線の机がスペースが狭い、出張先のプロジェクタがVGA(D-Sub15ピン)端子しかなくノートPCのHDMI出力やDisplayPort端子が使えなかったという不満から製品へ

 その最大の特徴が、この部分だけで開発に1年を費やしたという「スライドアークキーボード」と呼ばれるキーボード。[7]/[8]、[Y]/[U]、[H]/[J]、[B]/[N]の付近で分離し、弧を描くように90度回転しながらスライドさせることで、8型の液晶を搭載した本体のフットプリントと同じ形状にキーボードが収まる仕組みになっている。

 この機構により、収納時は本体サイズ約204×153×34mm(幅×奥行き×高さ)とA5サイズの手帳ほどの大きさというコンパクトさで持ち運びでき、一方で12型液晶を搭載するノートPCに近い使い勝手を実現したという。重量は約830gで、「片手で持てる重さ」とした。

 キーボードは日本語85キーで、キーピッチは18×15.5mm(横×縦)。キーストロークは1.5mm。キーボードを広げた場合、幅が約266mmとなる。

キングジム「ポータブック」に搭載された「スライドアークキーボード」の開閉動作

 こうした使い勝手と携行性を両立させる製品としては、いわゆる「2-in-1」と呼ばれる液晶部分が分離してタブレットとしても、ノートPCとしても使えるデバイスがあるが、冨田氏は「2-in-1は新幹線や飛行機の小さな机の上や膝の上といった不安定な場所で使いにくい」と話し、ポータブックはキーボード周辺に1.2mmのアルミフレームを使うことで剛性を確保し、入力時の安定感を高めているという。

 この開閉機構の耐久性については、2万回の開閉を保証。1日10回開閉して、約5年間持つという計算だという。キーボード表面は「おしゃれ」の観点からカナ表記のないデザインとした。

 8型液晶の採用、約204×153×34mmという収納時サイズについては、「文具メーカーとして調査した結果、ビジネスマンがもっとも多く利用しているA5サイズの手帳を意識したもの」としている。

スライドアークキーボード
飛行機や新幹線の机でも省スペースに利用できる
キーボードを広げた場合の使い勝手は12型ノートPCと同等と紹介
キーピッチは横18.5mm
キートップは手にフィットするラウンド形状
キーボードを広げた状態
キーボードを収納した状態
ポインティングデバイスとして光学式のフィンガーマウスを搭載
開発段階のキーボードも紹介。開いた時の隙間に物が落ちても大丈夫なよう穴をふさぐなどの経緯を経て、キーボードの底面側にある板の裏側にメカを組み込んでいる
収納時のサイズはビジネスマンに利用者が多いA5サイズの手帳を想定

 インターフェイスについてもフルサイズ端子のUSB 2.0、VGA(D-Sub15ピン)、HDMI出力、SDカードスロットを備えるほか、約200万画素のWebカメラやマイク、ステレオスピーカー、ヘッドフォン端子を備える。多くのインターフェイスは背面に搭載しており、端子保護用のカバーも装備。このカバーは開いた際にキーボードスタンドとしても機能するようになっている。

 バッテリ駆動時間は約5時間。充電に要する時間は約3時間。充電をMicro USBで行なうのも特徴で、ACアダプタもタブレットなどで使われる5V/2AのUSB ACアダプタを採用。モバイルバッテリの利用も可能となっている。冨田氏は「ノートPCの不満の1つに付属のACアダプタが大きくて出張時に邪魔という声もあったので、小型のACアダプタにした。(バッテリ駆動時間について)5時間では短いという意見もあったが、スマホやタブレットのためにモバイルバッテリを持ち歩いている人も多いと思うので、電池切れの心配がない」と利便性を強調した。

出張先のプロジェクタにVGA(D-Sub15ピン)しかなくても利用できるのが本製品のこだわりの1つ
インターフェイスのレイアウト
本体背面のインターフェイス。左からヘッドフォン/ヘッドセット、USB 2.0、HDMI出力、VGA(D-Sub15ピン)、充電用のMicro USB
本体側面のインターフェイス。SDカードスロットを装備
収納時の本体はくさび型
くさび型の太い部分を持つ人が多いと想定して背面のインターフェイスの保護カバーを装備
保護カバーはスタンドとしても機能する
バッテリ駆動時間は5時間だが、スマホやタブレットと同じ5V/2AのUSB ACアダプタによる充電なので、モバイルバッテリも利用可能。ACアダプタも共用でき荷物を減らせる

 CPUにはSurface 3と同じIntelのAtom x7-Z8700(動作クロックは1.6~2.4G
Hz)を採用。OSはWindows 10 Home(64bit)で、Office Mobile プラス Office 365サービスが付属する。CPUにAtomを採用したことで先述のUSB充電を実現し、冷却ファンを搭載しない設計も可能になったという。

 そのほかの仕様は、8型液晶の解像度が1280×768ドット、メモリが2GB、ストレージがeMMC 32GB、ネットワーク機能がIEEE 802.11b/g/n対応無線LAN、Bluetooth 4.0+EDRを搭載する。

CPU、メモリ、ストレージの仕様
Windows 10 Home、Office Mobile プラス Office 365サービスを採用
液晶は8型で、解像度は1280×768ドット
液晶上部に約200万画素のWebカメラとマイクを内蔵する
ポータブック専用のケース(型番XMCC10)。価格は5800円(税別)

 発表会では、キングジム代表取締役社長の宮本彰氏が挨拶。「開発にかかるコストや技術的な難易度が高く、商品化の決断にも勇気が必要な製品だった」とし、1988年に同社が初めて電子機器に取り組んだ「テプラ」以来のチャレンジであるとした。

 実際、反対意見もあったというが、「キングジムは他社と同じような商品は出さない。メジャーなものではないが、やるならキングジムらしい隙間産業を狙っていこうと思っている。商品の内容を見ると十分に差別化できて、世の中にない新しい市場を作っていけると確信したので、思い切ってやろうと決断した。本来の“隙間”からすると、そうとは言えない、そこそこ大きな市場があるのではないか」との期待を示した。

 また、キングジム取締役 開発本部長の亀田登信氏は「ビジネスにITツールは欠かせないものとなっているが、端末やアプリのような開発競争が激しい市場への参入は当社の体力では難しい。一方でPC市場は成熟してコモディティ化が進んでおり、製品の違いも小さくなっている」と背景を説明。この市場にターゲットを絞って差別化した製品を投入することで「後発にもチャンスがある」とし、「スペック至上主義ではないし、ビジネスの未来を変える商品でもないが、明日の出張は変えられるかも知れない商品。1つの見方として考えられる極限まで来た」と製品に自信を見せた。

株式会社キングジム 代表取締役社長 宮本彰氏
株式会社キングジム 取締役 開発本部長 亀田登信氏

(編集部:多和田新也)