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ハワイ カネオヘエアショーに展示されたハワイアン航空初の旅客機“ベランカ”

現在も実動し、社員向けのフライトを実施

2015年10月17日~18日 展示

カネオヘエアショーに展示されたハワイアン航空最初の旅客機“ベランカ”

 ハワイ オアフ島の北部に位置するカネオヘ。湾内には観光名所として知られる“天国の島”があり、オアフ島北部の主要な街でもある。そのカネオヘにはアメリカ海兵隊のカネオヘ基地があり、そこでは3年に1度大規模な航空祭「カネオヘエアショー」が開催されている。

 カネオヘエアショーでは、様々な航空機の飛行展示や地上展示が行なわれているが、必ずと言ってよいほど実施されているのがアメリカ海軍のアクロバット飛行チーム「ブルーエンジェルス」による飛行展示。アメリカ空軍の「サンダーバーズ」と並ぶ世界的に有名なアクロバットチームで、最も長い歴史を持つアクロバットチームになる。

 このブルーエンジェルスによるアクロバット飛行が行なわれることから、カネオヘエアショーは地元でも大きなお祭りとなっており、基地がハイウェイと直結していることもあって、オアフ島中から多くの人が訪れる。

基地内には様々な販売店が建ち並ぶ
ハワイアン航空のグッズショップ
イベントスポンサーでもあるためか、ジュースの配布も別途行なっていた
多くの人がショーに訪れることから地元ディーラーも車両展示を実施。2016年型のトヨタ自動車「タコマ」
ハワイでも人気のEV(電気自動車)、テスラモーターズの「モデルS」。明細バージョンも展示されていた
航空ショーなので各種航空機の展示も行なわれている。写真は米空軍のF-22 ラプター。ホノルル空港近くにあるヒッカム基地から飛来したものと思われる
最新鋭戦闘機だけに見せてもよいところと、よくないところがあるようだ
旧型軍用機や軍用自動車から、無人偵察機まで、実にオープンに展示されていた

 10月17日~18日開催のカネオヘエアショーに展示されたのがハワイアン航空初の旅客機となる「Bellanca Pacemaker CH-300」。Bellanca Aircraft製造の航空機で、愛称も“Bellanca”となっていることから、本記事ではこの機体を“ベランカ”と表記していく。

高翼形式のベランカ
機首まわりに“BELLANCA”と愛称が書かれていた
ベランカと一緒に記念写真を撮ることできるほか、小さな子供であれば客室に体験搭乗
記者はちょっとだけのぞかせてもらった
お尻まわり

 ハワイはハワイ諸島と呼ばれるようにいくつかの島から構成されている。その最大のものは“ビッグアイランド”と呼ばれるハワイ島、空の玄関口となるホノルル空港やワイキキのあるオアフ島などなど。ハワイアン航空はそれらの島を結ぶ「Inter-Island Airways」として設立され、このベランカは1929年9月に購入されたとのことだ。

 ハワイアン航空スタッフの説明によると、ハワイアン航空で初の旅客搭乗飛行を行なったのはベランカになるが、予定では島嶼間を結ぶシコルスキー S-38が初となるはずだった。ところがこのベランカによって10分間の遊覧飛行を1929年10月6日に行なったことから、ベランカが“初”の栄誉を担うことになった。

 ベランカの仕様は、乗員1名、乗客最大5名。全長27フィート9インチ、全幅46フィート4インチ、全高8フィート4インチで、写真を見て分かるように高翼式の翼を持つ。搭載エンジンは、プラット&ホイットニー製の空冷式星型9気筒OHVの「R-985」で最高出力 450HPで、最高速は165マイル/時、航続距離は675マイルの性能を持つ。プラット&ホイットニーの傑作空冷エンジンとして「R-1340」のワスプ系列があるが、R-985はその縮小版となるものでワスプジュニアと呼ばれている。

ワスプジュニアも多くの機体に積まれたエンジン
プロペラはハミルトンスタンダード。定番プロペラとして知られている
OHVの星型エンジンのため、プッシュロッドカバーが美しく並ぶ
プッシュロッドカバーに挟まれた場所にはプラット&ホイットニーのマーク

 ハワイアン航空はこのベランカのほか、現在の島嶼間接続に利用しているボーイング 717も展示。こちらの機内公開にも多くの人が並んでいた。

 カネオヘエアショーのメイン展示となるブルーエンジェルスのショーは15時に開始。ショーは、ブルーエンジェルスのサポート機であるC-130H(愛称:ファットアルバート)のデモから始まり、6機のF/A-18Aによるタイトでスピード感あふれるショーが観客を魅了した。

ショーのメインとなるのが、米海軍のアクロバットチーム「ブルーエンジェルス」の飛行展示
ブルーエンジェルスの飛行展示は、支援機である「ファットアルバート」の演技から始まる
F/A-18A 6機で構成されるブルーエンジェルス
演技のために滑走路へ向かうブルーエンジェルスの4機編隊
5番機と6番機は、先ほどの4機とは逆サイドの滑走路へ。左から、右からと離陸していくことで、演技の密度を高めている
4機の編隊飛行からF/A-18Aでの演技が始まった
ブルーエンジェルスならではの密集隊形。ただのダイヤモンド体形ではなく、ブルーエンジェルスダイヤモンドと呼ばれる(とナレーションされていた)
あり得ない角度で飛んでいくブルーエンジェルス
4機編隊の最後の演技。観客の後方から現われ、目の前でブレイク(散開)
ハワイアン航空のスポンサーエリア最前列は子供連れの家族が多かった、特別招待に家族で訪れたのだろう
通信機材やサポートスタッフまで、しっかりショーアップされている

 アメリカのエアショーでは、有料の観覧席が用意されることが多い。カネオヘエアショーでも毎回有料観覧席が用意され、チケットの価格によって食事や飲み物が異なる(一番高価なTop Brass Chaletはハワイ産ビールやワインといったアルコール飲料も飲み放題)。ハワイアン航空はこのカネオヘエアショーをサポートしており、ハワイアン航空のマイレージプログラム上級会員向けの招待観覧席を用意していた(ほかにボーイングなどの招待観覧席もあった)。

 日本の航空祭は自衛隊主催によるものがほとんどのため、基本は無料で(税金で)運用され、有料の観覧席などはない(アメリカ海兵隊による岩国基地航空祭などは有料観覧席を用意するときもある)。スポンサーを募って、より豪華なショーを観客に提供するという考え方は、ショーについての文化の違いを強烈に感じる部分だ。

ショー会場の中では、このSCRIPというチケットで食事や飲み物が購入できる。SCRIPチケットはチケット販売ブースで、1枚1ドルで購入。つまりこれで10ドル
オアフ島で人気のラニカイジュースも出展していた
定番メニューのアサイーボウルを購入。7 SCRIP、つまり7ドルだった

 このベランカは、現在も実動し、実際にハワイの空を飛んでいる。ハワイアン航空の社員であれば、週末に社員向けの遊覧飛行を申し込むことができるとのことだが、人気が高くスケジュールが空いていることが少ないそうだ。この時代の飛行機が実際に飛ぶようにメンテナンスされ続けているのも、人類初フライトを成し遂げて以来、航空先進国であり続けるアメリカの意気込みだろう。

(編集部:谷川 潔)