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ジャルパックの「旅アカデミー」で地方副業デビューするための講座を見てきた。香川県三豊市では共助が成功の秘訣と知る
2024年11月17日 12:00
JALグループのジャルパックは、「国内外の豊かな生き方から 人生のヒントがみつかる 旅と学びの地域体験プログラム」として「旅アカデミー」を開催している。
旅アカデミーでは地域に根差した活動を続けている人を講師に呼び、移住や起業を考えている人に対して現状や今後の展望を交えてさまざまな角度からレクチャーしてくれる。さらに現地の視察と交流も用意されており、事前に座学で得た知識と五感で感じる肌感覚から、より深く地域を学べるツアーとして人気を博している。
今回紹介するのは、香川県三豊市で地域活性化とビジネス創生に取り組んでいる3人の講師が教えてくれる「地域で自分を生かす“ローカル副業”入門~もうひとつの居場所と役割をつくる~」だ。
2回目の講師として、umari 代表取締役の古田秘馬氏が登壇した。古田氏は「丸の内朝大学」など、数多くの地域プロデュースや企業ブランディングを手がけており、讃岐うどん文化を伝える宿「UDON HOUSE」に関わるなど、日本と海外をつなぐ仕組み作りも行なっている。
グローバルではないローカル目線が重要
地方創生や地域貢献など、都市以外でビジネスを行なうには独自の視点が重要になってくると古田氏は言う。グローバルの論理でビジネスを起こそうとしても、その規模は10万人単位で考える必要があり、華々しくスタートしても結局は撤退という憂き目にあってしまう。そこで必要なのがコミュニティを重要視する考え方だ。
コミュニティ=小さなビジネスと思われて敬遠されがちだが、グローバルな考え方では低価値の山でも、見方を変えればある人にとっては宝の山になる可能性もある。多方面に対してアピールする、用意するのではなく、そこにあるおもしろいもの、魅力的なものを掘り起こし、それを必要とする人に発信していくことが重要であり、「レストランでもそうですが、何でも美味しいというより『ここは牛タンが美味しいんだよね』という方が魅力的でありませんか? そういったことを僕らは地域でやっていくべきだと思うのです」と説明した。
高いだけでは続かないのでほかとは違う価値を見つける
価値を見つけることが重要であると説明した古田氏だが、その価値も“高”ではなく、“他”が重要であるとのこと。それは、ほかとは違う価値がそこにあることを意味する。
参考例として挙げたのは自身が手掛けた「さぬきうどん英才教育キット」。10人前の讃岐うどんを作れるパッケージだが、絵本のようなワークブックが付属しており、子供でも楽しくうどん作りが楽しめるようになっている。香川県民のうどんへの情熱や愛情は半端なく、これを東京や大阪などに出てしまった息子や娘の子供たちにも伝えていきたいという想いと合致し、孫を持つ祖父母からの注文が次々に入るという。
そこには、親は体験から通じた食育を、祖父母はキットを通じてコミュニケーションを取りたいという、それぞれのニーズにズバリ当てはまった例だと紹介した。
共助の仕組みで人が集まり始めた三豊市は注目の的に
現在は年間の3分の2ほどを香川県三豊市で過ごす古田氏だが、7~8年前に講演を依頼されて訪れたのが最初で、ちょくちょく遊びに行くようになってからは、讃岐うどん文化を伝える宿「UDON HOUSE」の立ち上げに関わったりするなど、地域との関係を深めていったそうだ。
そのなかで今回の参加者に伝えたいことは“共助”という関係性を構築することが重要であると説明した。高度成長期時代には自助と公助で人々の暮らしも成り立っていたが、人口が減り、大企業が撤退し、行政も統廃合となると、住む人たちは生活を続けるのが大変になる。
それを政治の責任、企業の怠慢と文句を言ったところで解決はしないので、それぞれができる範囲で協力していこうと共助を念頭に問題を解決に取り組んだところ、あれよあれよと人が集まって町が活気づき、今では地方創生の成功例として全国から視察団が訪れるまでになった。
共助の例の一つとして紹介したのが、観光地として人気の高い父母ヶ浜だ。今では瀬戸内のウユニ塩湖と呼ばれる父母ヶ浜は30年前はゴミだらけの砂浜で、工場誘致を視野に入れた埋め立て計画が立ち上がっていた。反対していた7名の有志によって清掃が始まり細々と続けられていたが、今では町ぐるみで毎週清掃活動が行なわれている。
そうなってくるといろいろな変化が起こり、皆で商売ができるように取り組むようになり、周辺にはさまざまな店舗がオープンしている。まさに共助という仕組みが作り上げた結果だと説明した。
情熱があれば兼業でも未来を切り開ける
本業を続けながらと三豊市に店をオープンした例として、今年「みんなでブルワリー」をオープンさせた第3回の事前セミナーの講師を務める三浦功喜氏を紹介した。
もともとは視察ツアーの参加者だった三浦氏だが、コロナによってフルリモートとなったこともあり、企業の財務を担当しながらチャレンジすることになった。大好きだったビールが飲める店としてブルワリーを周囲に提案したところ大好評で、出資者も集まり話は進んだそうだ。もちろん、古田氏の紹介でほかのブルワリーに修行に行き、知識を身に付けてもらうことも含まれている。
古田氏いわく「お店を開く前は修行に行ってもらうのがデフォですから」とのこと。三浦氏のように9時からは本業、17時からはお店という新しいライフスタイルが今後は増えてくるのではないかと話した。その一方で、決算月なのでこの日は来れない、今週はムリといった場合でも成立できる土壌はあるとのことで、その理由の一つに家賃の低さを挙げていた。
このほかにも地域のインフラ整備事業の紹介やこれからの地域活性化に必要なもの、社会的評価の高いプロジェクトや商品の特徴など、地域のこれからについても説明した。
古田氏は旅アカデミーについて「従来のパッケージ旅行として全部お客さまとして扱ってもらうというよりは“一緒に冒険しましょうよ”というのが根底にあります。すべての答えやすべての何かがあるわけではありませんが、それを一緒に探しましょうというのがポイントですね」と話してくれた。
ジャルパックの統括マネジャーである丹羽由紀子氏は親族が三豊市出身で「温かく受け入れてくれる雰囲気が昔からありますね。ローカル色が強過ぎないというか。移住までいかなくても、視察するなかで何か携われることを参加者の方にも感じてもらえればうれしいですね」と三豊市と旅アカの魅力について教えてくれた。