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学び・仲間探し・土地、地方で起業する“リアル”。ジャルパック「旅アカデミー」で地域活性化が成功している香川県三豊市を見てきた

「旅アカデミー」のツアーで行なわれた現地視察の様子

 ジャルパックの新しい取り組みとして始まった「旅アカデミー」は、「国内外の豊かな生き方から 人生のヒントがみつかる 旅と学びの地域体験プログラム」として企画されたものだ。

 今回は香川県三豊市の事例から学ぶ「地域で自分を生かす“ローカル副業”入門~もうひとつの居場所と役割をつくる~」の現地視察の模様をお届けする。

 前回の座学編でお伝えした香川県三豊市は、地域活性化のさまざまな施策が功を奏し、移住者が増え、観光スポットも次々に開発されている注目のエリアだ。座学で講師を務めた、umari 代表取締役の古田秘馬氏、瀬戸内ワークス 代表取締役の原田佳南子氏、KOKI BREWING MITOYO 代表取締役の三浦功喜氏が解説者として同行した。

航空券付きプランの参加者は高松空港に集合
移動中のバスから見えた景色。三豊市は海と山に囲まれた自然豊かな地域

起業につながる学びと仲間を見つけられる「瀬戸内暮らしの大学」

 最初に訪れたのは「瀬戸内暮らしの大学」。誰にでも学ぶ機会を得られるように創設されたもので、講義内容は地域で起業するための「ローカルチャレンジ」をはじめ、経営の数字に明るくなる「財務・ファイナンス」、ビジネスのスキルアップを目指す「ビジネス基礎力/スキルアップ」といった社会人向けの内容から、オリジナルブレンドを作るコーヒー探求クラス、健康に役立つエクササイズダンスクラスなどがあり、内容は多種多様だ。講義ごとに設定したワンタイム料金のほか、月額1万2000円ですべてのクラスが受け放題のサブスクリプションも用意している。

三豊市役所 仁尾支所の真向かいにある「瀬戸内暮らしの大学」
今回のツアーの講師である古田秘馬氏(左)、三浦功喜氏(中央)、原田佳南子氏(右)

 実際にこちらの講義を受けて起業した人も多く、三豊市でチャレンジを考えている人にとってだけでなく、周辺地域から学びに来る方もいる。こちらで得られた人脈もビジネスにつながることが多いと説明していた。そして歩いて数分のところには、さらなる親交を深められるカラオケパブ「ニュー新橋」があり、お互いを知ることでさらなる結びつきにつながり、ざっくばらんな意見交換によるプロジェクトの立ち上げが夜な夜な行なわれているそうだ。

ツアーのキーワードである“共助”に基づいた起業を解説

多くの出資者を募って立ち上げた「URASHIMA VILLAGE」

 多くの人を巻き込んでプロジェクトを進めるのが三豊スタイル。そのなかの一つが、荘内半島の海辺の斜面に建つ1棟貸の宿「URASHIMA VILLAGE」だ。瀬戸内海が目の前に広がる絶景の2000坪の敷地に3棟だけという贅沢な作りは瞬く間に評判を集め、現在は人気の宿として知られている。出資者は地元企業を含め10者ほどが名を連ねており、残りの半分の資金は銀行からの融資によって賄われている。

入口からは何の建物か分からないようにドアで固く閉ざされている
ドアを開けて敷地に入ったその先に広がる絶景はインパクト抜群!
1棟貸の宿なので、家族やグループ旅行のほか、卒業旅行やセミナーにも使える
宿の下には美しいプライベートビーチが広がっている

共助の力で美しい姿を取り戻した父母ヶ浜

 7名の有志によって始まった清掃により、ゴミだらけだった砂浜が美しくよみがえったのが父母ヶ浜だ。町ぐるみで清掃活動を続けた結果、今では年間50万人以上が訪れる“瀬戸内のウユニ塩湖”と呼ばれるまでの観光名所になっている。当初は写真を撮るだけのスポットだったが、現在は地域の若手経営者が店舗を周辺に出すなど、観光資源としての活用も始まっている。

企業を誘致するための埋め立て地になりそうだった父母ヶ浜。訪れた日も多くの人が撮影などを楽しんでいた
筆者の腕がヘボいからか感動の1枚にはならなかった
このように撮影するとウユニ風になるとのこと
海沿いにある人気の「宗一郎珈琲」は創業者の今川宗一郎氏の顔がロゴになっている
地元の特産品を多く扱っている「百歳書店」。店内には生産者が大切にしたい想いを記した本が置いてある

現地を知るうえで長期滞在可能な「GATE」

 三豊でチャレンジしてみたいが、住むところや仕事があるのかは誰もが悩むところ。そのような不安に対して用意されているのが、瀬戸内ワークスレジデンス「GATE」だ。

 男女別のシェアハウスとでも言うべきものであり、家具やキッチンを備えているので、身一つで訪れることができる。設立された背景には、プロジェクトがあっても人が足りないという現状があり、地元の企業のさまざまな求人情報がここには集まってくる。また、自身が考えた起業プランを形にするための人脈作りや拠点としても利用できる。

 実際にブルワリーを立ち上げた三浦氏もこの施設を利用したOBだ。ただし、会員サービスなので誰もがふらりとやってきて利用できるわけではなく、登録の際には審査や面接があるとのことだ。

礼金・敷金・手数料なし、1か月の家賃は4万5000円の「GATE」
シェアルームのほか、リビングやキッチン、コワーキングスペースもある

会社員をしながらブルワリーを開業

 企業の財務を担当しながら「みんなでブルワリー」を立ち上げたのが、東京出身の三浦功喜氏だ。会社にリモートワークが導入されたこともあり、会社員と店主の二足の草鞋を履くことを決断した。

 ブルワリーなので、ビールの醸造設備や店内の設えなどに数百万円の投資を行なっているが、それでも家賃が圧倒的に安いので、都市部で開業するよりは敷居が低いとのこと。何より惚れ込んだ三豊市で、大好きなビールが気軽に飲めるお店が欲しいという自身の願望と周囲の後押しが実現につながった。

 コミュニケーション空間としてのビアバーだけでなく、空き室になっている2階を活用して、ビール作りを手伝わないと泊まれない、体験型の宿にもしていきたいそうだ。

「みんなでブルワリー」を立ち上げた三浦功喜氏
お店のなかには本格的な醸造設備がある。飲ませていただいたペールエールやIPAなどはとても美味だった

地域のリアルな不動産事情や活用方法を解説

 お店や宿をはじめるには不動産に精通している人が必要であり、三豊市で相談に乗ってくれるのが「くらしの不動産」の代表である島田真吾氏だ。

 建材会社である喜田建材の不動産部で空き家のリノベーションを数多く手掛けており、地域の空き家を見つけてはGoogleマップにマッピングしていることから付いたニックネームは「空き家王子」。地道に探す姿勢から、URASHIMA VILLAGEの土地取得に関しても任されていた。

 現在は土地を活用するためのファンド作りにも力を入れているほか、ローカルに精通した不動産プロデューサーを育てる講師も務めている。

「くらしの不動産」代表の島田真吾氏も7年前に三豊市に移住してきた人だ
地域の不動産を多数の出資者で活用するファンドや不動産プロデューサー育成のプログラムを紹介
新しく取得した土地にて、ファンド運用の宿泊施設にする計画を説明しているところ

 今回の現地視察ツアーではこのほかにも、移住してきた若手の農業経営者や運輸経営者、教育面から地域を活性化させたい現地の責任者、地元出身の起業人など、数多くのプレイヤーが現在の三豊を詳細に説明してくれた。

 参加者も成果と熱量に触れることで、それぞれが漠然とイメージしていたことが昇華されていたような印象を受けた。鉄道会社に長年勤務している男性は「山口県で地域活性化につながる起業を計画しているが、非常に参考になった」と話してくれた。

 ジャルパックが提案する新しい試みの旅アカデミーでは、今後も地域を学べるプログラムを海外も含めていろいろと用意する予定だ。普通の旅では簡単に出会えない体験ができるので、気になる方は“旅アカ”をぜひともチェックしてもらいたい。