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交通量の多い羽田空港でも完全無人運転(レベル4)できるトーイングトラクターの仕組みを聞いてきた

ANA×豊田自動織機

2024年7月1日~19日 実施

完全無人運転のトーイングトラクターを試験運用中

 ANAは、豊田自動織機と共同で完全無人運転のトーイングトラクターの試験運用を7月1日~19日に羽田空港で実施している。この試験運用について、7月16日に報道公開を行なった。

 国内線第2ターミナルの63・64・65番スポットから東貨物上屋を結ぶ片道約2kmのルートを、自動運転トーイングトラクターが実際に荷物を載せた貨物コンテナを牽引した状態で走行する。荷物を載せる台車は最大6台まで牽引可能。

羽田空港内を走る自動トーイングトラクター
運手席は完全に無人

 車両は電動トーイングトラクター「3TE25」をベースにしており、最大牽引力25.1t、最牽引重量27t、最高速度25km/hと、人が手動で運転する際のスペックはベースの車両と同じだが、自動運転では最大牽引重量13t、最高速度は無負荷の状態で羽田空港の制限速度である15km/hに設定している。

 また、自動運転を実現するため、センサーを多数搭載。障害物検知用に「3D LiDAR」をフロントに3基、「2Dレーザースキャナ」をフロントに1基、サイドに2基の計6基を備える。自己位置推定用として、地面に埋め込まれた磁気マーカーを検知する「MIセンサ」、人工衛星を使用して位置情報を得る「GNSS」、建物などを検知する「3D LiDAR」を備えており、地面の模様を撮影し、データと照合して路面パターンマッチングを行なう「RANGER」も搭載している。

試験運用の概要と運転コース
障害物検知用の「3D LiDAR」と「2Dレーザースキャナ」
自己位置推定用の「3D LiDAR」と「GSS」

 これらのセンサーを常に2つ以上組み合わせて使うことで、完全無人による運転の安全性を向上させており、停止位置も±15cm以内の差に収めることができるという。

 さらに、異常事態に対応するための遠隔監視機能も追加した。これによりコントロールルーム内で監視している人がカメラで確認し、パイロンなどの障害物が車両の前にあった場合スピーカーを通して付近の現場作業員に動かすよう指示できる。

 運用は行き先指示、現場スタッフの作業項目などの情報を一元化したシステム「Fleet Management System(FMS)」で管理しており、ドーリーの連結や切り離し、ハイリフトローダーへの寄せ付け作業をする人員はタブレットで車両の位置を確認できる。

FMSの概要

 今回の試験運用は、多くの航空機や複数種の空港支援車両が稼働しているなかで、完全に無人での自動走行が可能かを検証し、駐機場内や貨物上屋前でのオペレーション、経済性の観点での課題抽出を目的としているという。なお、国内貨物搬送を想定した自動運転レベル4(完全無人運転)の試験運用は国内初で、担当者によると、7月1日~16日時点までの120回以上の運行の間に事故はない。

対向のバスとも問題なくすれ違う

 報道公開では、ANAからオペレーションサポートセンター空港サポート室 グランドハンドリング企画部の森真希子氏と、豊田自動織機から豊田L&FカンパニーAR開発部の深津史浩氏が出席し、森氏は「労働主役型の働き方が継続しており、慢性的な人手不足が課題になっている。自動化・DX化を進めていくことでより少ない人数・労力で空港のオペレーションができる姿を目指している」と語った。

 深津氏は「自動運転において重要な自己位置推定機能を羽田空港で検証できた。2025年の実用化に向け、技術面で業務のSimple&Smart化、物流を支えていきたい」とした。

全日本空輸株式会社 オペレーションサポートセンター空港サポート室 グランドハンドリング企画部 森真希子氏(右)、株式会社豊田自動織機 豊田L&FカンパニーAR開発部 深津史浩氏(右)

 同社はこれまで、貨物無人搬送の実現に向けて自動運転レベル3の実証実験を2019年2月から佐賀空港、セントレア(中部)、羽田空港で行なってきた。2025年中に羽田空港内での無人搬送の実現を目指し、搬送距離が長い他の空港への自動運転トーイングトラクターの展開も計画していくという。

側面の「2Dレーザースキャナ」
運転席