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気球に乗って宇宙の旅実現へ。岩谷技研、2人乗りの気密キャビン実機を公開。第1期搭乗者を募集開始

2023年2月21日 実施

岩谷技研が気球を使った宇宙遊覧「OPEN UNIVERSE PROJECT」を発表

 宇宙開発ベンチャーの岩谷技研は2月21日、気球を使った宇宙遊覧を実現するための「OPEN UNIVERSE PROJECT」を発表し、第1期の搭乗者とパイロットの募集を開始した。

 岩谷技研は、高高度ガス気球と旅行用気密キャビンの設計・開発・製造を行なう北海道に本社を置くベンチャー。代表取締役社長の岩谷圭介氏は、学生時代に風船を使った宇宙撮影に取り組み、その後高高度気球の設計開発でキャリアを積んだ人物。

 岩谷氏は、ロケットは規模が大きく高速で打ち出すため訓練が必要などハードルが高いが、小規模でゆっくり上昇する気球なら費用的にも「民主的な価格にできる」と説明する。

 同日公開した2人乗り(パイロット+乗客)の気密キャビン「T-10 EARTHER(アーサー)」の実機は、成人男性よりやや小さいくらいの全高の球体で、材質はほぼプラスチック。全周の多くを透明の外装にすることで、なかから前後左右を見渡しやすい、遊覧向けのデザインになっている。

 座席には自動車や飛行機のシートで知られるレカロを2脚搭載しており、4点シートベルトを装備。正面向かって左のパイロット席にはディスプレイと計器を備え、そのほかキャビンの照明などの電力には、ポータブル電源が使われていた。内部の広さについては、「座って自撮りができる程度」にしたという。

株式会社岩谷技研 代表取締役社長 岩谷圭介氏
10号機となるキャビンを岩谷氏が紹介した
2人乗りの気密キャビン「T-10 EARTHER(アーサー)」
2脚のレカロを搭載する
パイロット側にディスプレイと計器
足元ギリギリまで透明になっていることが分かる
ハッチは内側上部に跳ね上げる構造
機体を後ろから見た様子
機体後部にはポータブル電源が

 T-10 EARTHERと接続した気球は1時間かけて高度2万5000mまで上昇し、上空で2時間遊覧、その後ゆっくり下降していく。ただし、打ち上げは天候に大きく影響を受けるため、1週間程度の猶予を持って体験に望む必要があるとしており、同社は打ち上げ前、遊覧、着水、上陸までの一連のフェーズを商品化するべく進めているという。

 同社のこれまでの打ち上げ実績は300回以上、高度4万mまで到達した実績があり、有人では2022年以降に20回以上のフライトを実施。安全性を確認するためにこれから1年くらいの時間をかけてテストを行なっていく。

 また、共創パートナーとしてJTBが本プロジェクトへの参画を表明しており、打ち上げに関わる一連の体験をパッケージ化・旅行商品化するために同社がサポートを行なう。

 実際の体験価格について岩谷氏は、これまで民間の宇宙旅行が1人あたり60億円~150億円かかっていたところ、「ゼロが3つから4つ取れる」と述べ、将来的には100万円~200万円の価格帯を目指しているという。

岩谷技研のマイルストーン。目下、41m級気球とキャビンの組み合わせで打ち上げ成功後に有人計画を実行するとのこと
プロジェクトへの参画を表明した株式会社JTB 代表取締役専務執行役員 花坂隆之氏
トークセッションには岩谷氏と以前から交流があるという和歌山大学 教授 秋山演亮氏とタレントの黒田有彩さんが参加
和歌山大学 教授 秋山演亮氏
黒田有彩さん
黒田さんが実際にキャビンへ乗り込んだ感想などを話し合った。黒田さんは、「宇宙はロケットで行く場所、というのはこれまでの定義。岩谷技研の2万5000mという高度が概念を広げてくれる。価格が下がれば、世界一周か宇宙遊覧かという現実的な選択肢になる」と話す。秋山教授は、「気球が宇宙へ上がっているのを見て育った子供はこれが当たり前になる」と期待を示した