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新幹線の改札ではICカードを2枚重ねでタッチできる? 在来線との乗り継ぎをシームレスにする方法あれこれ

 近年、新幹線ではチケットレスサービスの導入が進んでいる。新幹線の駅から新幹線の駅まで利用して終わりということなら、話は簡単だ。しかし、新幹線の駅から先、JRの在来線を利用する場面も多いのではないだろうか。そういう場面における利用方法について、まとめてみたい。

チケットレスサービスいろいろ

 東海道・山陽新幹線では以前から、EX予約専用ICカードとクレジットカードを使用する「EX-IC」があり、さらに手持ちの交通系ICカードを利用できる「スマートEX」が加わった。2022年6月25日からは、九州新幹線にもエリアを拡げている。一方、東北・北海道・上越・北陸・秋田・山形の各新幹線では、「新幹線eチケットサービス」が導入されている。

 これらのサービスはいずれも、改札機を通る際にICカードをタッチする仕組みになっている。「EX-IC」では専用のICカードを使用する形が基本だが、そのほかのサービスは手持ちの交通系ICカードを利用する。交通系ICカードにはそれぞれ固有のID番号が割り当てられており、それを「スマートEX」や「えきねっと」で登録すると、利用者との紐付けが実現する。自動改札機はそのID番号を読み取ることで、改札機を通過する利用者を識別している。

EX予約専用ICカード

チケットレスサービスは新幹線のみで有効

 さて。紙の切符による乗車とチケットレスサービスの間で異なる点として、乗車できる区間がある。紙の切符では「乗車券」と「特急券」の組み合わせを用いるが、このうち「特急券」は新幹線に乗車する駅から降車する駅まで。これは簡単だ。

 一方、「乗車券」の方は話が違うことがある。「特定の都区市内駅を発着する場合の特例」があるからだ。例えば、「東京→博多」と指定して乗車券を発券しても、券面には「東京都区内→福岡市内」と記載される。これは、「東京都区内」ゾーンの各駅と、「福岡市内」ゾーンの各駅までが利用可能範囲となるためだ。

 例えば、京浜東北線の上中里駅から鹿児島本線の竹下駅まで行く場合、前者は東京都区内、後者は福岡市内に含まれる。すると、上中里駅で「東京都区内→福岡市内」の乗車券を使って入場して、東京駅まで行ったら新幹線乗換改札を通って新幹線に乗る。博多駅に着いたら、在来線乗換改札を通って鹿児島本線に乗り換えて、竹下駅で降りる。このとき、上中里~東京間と博多~竹下間の運賃を別途、支払う必要はない。

 ところが、チケットレスサービスは事情が異なる。いずれも新幹線の乗車駅~新幹線の降車駅のみを対象として、乗車券と特急券をセットにしているからだ。前述の例であれば、有効なのは「東京~博多」だけで、その前後は対象外となる。だから前後の在来線は、別途、切符を買うことになる。ただし今では、主要都市圏なら交通系ICカードを利用できる。

EX-ICのみは交通系ICとの2枚重ねが可能

 新幹線の各種チケットレスサービスのうち、「EX-IC」は専用のICカードを使用する形が基本だ。しかし、これは交通系ICカードとして使うことはできない。

 そこで、東海道・山陽・九州新幹線を「EX-IC」で、その前後で在来線を利用する場合には、新幹線と在来線の乗換改札で、在来線区間で使用する交通系ICカードと「EX-IC」のカードを2枚重ねて改札機のリーダー部にタッチする。ただし、モバイルSuica・モバイルPASMOは2枚重ねができない。その場合の解決方法については後述する。

 交通系ICカードを使用する、そのほかのチケットレスサービスでは、新幹線の乗車に使用する交通系ICカードのチャージ分を、前後の在来線の利用に充てる。

 例えば筆者はスマートフォンでモバイルSuicaを利用しており、これのID番号を「スマートEX」と「新幹線eチケットサービス」の双方に登録している。だから、最寄りの在来線駅でスマートフォンのモバイルSuicaを使って在来線に乗り、新幹線乗車駅の乗換改札でそれを再び改札機にタッチする。新幹線の降車駅に着いたら、在来線乗換改札でスマートフォンを改札機にタッチする。最後に在来線の下車駅でスマートフォンを改札機にタッチする。これで完結となり、在来線区間の運賃は自動的に引き去られる。

 話を整理すると、こうなる。

・1枚の交通系ICカード(モバイルSuica/PASMO含む)で新幹線のチケットレスサービスを利用する場合: 在来線の乗車駅~新幹線~在来線の降車駅までシームレスに利用可能。

・2枚の交通系ICカード(モバイルSuica/PASMO含む)で新幹線のチケットレスサービスを利用する場合: 何か事情があって、新幹線と在来線で異なる交通系ICカードを使用する場合には、新幹線と在来線を乗り継ぐ駅で、乗換改札を通らずにいったん出場して入場し直す。

・EX-ICと単体の交通系ICカードを併用する場合: 在来線では交通系ICカードを使い、新幹線と在来線の乗換改札を通る際に「2枚重ね」でタッチして通過する。

・EX-ICとモバイルSuica/PASMOを併用する場合: 在来線ではモバイルSuicaやモバイルPASMOを、新幹線ではEX-ICのカードを使う。しかし、新幹線と在来線の乗換改札で「2枚重ね」ができないので、乗換改札を通らずにいったん出場して、入場し直す。

モバイルSuicaをEX-ICに登録する

 このままでは、モバイルSuicaやモバイルPASMOを常用している人がEX-ICを利用しようとすると割を食うことになる。そこでEX-ICでは、専用ICカードに加えて、手持ちの交通系ICカード(のID番号)を登録して利用者と紐付ける仕組みを用意している。これを行なえば、手持ちのモバイルSuicaやモバイルPASMOで、在来線と新幹線のシームレスな利用が可能になる。

 今のEXサービスの仕組みでは、ICカードは利用者の固有識別にのみ使われている。だから、それが専用ICカードでも交通系ICカードでもよいという理屈だ。ただし、1つの交通系ICカードで登録できるサービスは「EX-IC」と「スマートEX」のうち、いずれか一方に限られる。

 EXサービスでは毎日、その日の予約情報が各駅の自動改札機に配信される。例えば筆者が「10月31日に東京から名古屋まで、のぞみ○号の普通車指定席」を購入すると、その予約情報が当日の東京駅と名古屋駅の改札機に配信される。

 そして、東京駅の新幹線改札で入場すると、自動改札機は筆者のモバイルSuicaが持つID番号の情報を読み取り、乗車を確認する。名古屋駅の新幹線改札で出場する際にも、同じ要領で降車を確認する。1つのID番号について乗車と降車の両方を確認すれば、利用が完結する。