ニュース
ANAグループ定例会見、夏休みは運航便数・感染対策とも万全。芝田社長「入国規制はG7と同水準まで緩和を」
2022年7月7日 22:55
- 2022年7月7日 実施
ANAグループは7月7日、定例社長会見を実施した。登壇したのは、ANAホールディングス 代表取締役社長 芝田浩二氏をはじめ、ANA 代表取締役社長の井上慎一氏、ピーチ(Peach Aviation)代表取締役 CEOの森健明氏の3名。
はじめに芝田氏は「日々の感染状況を注視しつつ、今後もしっかりと感染対策を取り、お客さまを迎えたい。夏休みには安心してご利用いただきたい」と述べ、同グループの近況について報告した。コロナ禍にありつつもグループの業績は順調であり、年度利益計画の前提を上回る見通し。7月度には黒字を達成し、今年度についても確実に黒字化を達成していくという。
これを航空の需要動向と併せて事業別にみてみると、国内線の旅客事業では第1四半期はほぼ計画並みに推移しており、7月~8月はANA、ピーチと合わせて、コロナ前との比較で旅客数は9割まで回復。海の日にあたる7月16日~18日の3連休では、コロナ前の同水準まで回復しているという。また、しばらく運航休止していた大型機のボーイング 777型機についてもエンジン改修を終えて順次運航を再開。加えて現在、政府により検討されている「観光需要喚起策」が実施された場合には、さらなる上振れが期待できるという。
国際線の旅客事業も同様に、第1四半期は計画を上回っており、7月~8月も上振れるとの予想。しかし海外からの旅行客からは「日本に行きたいがビザの取得が煩雑」「団体ツアーではなく、個人でも旅行したい」といった声が多く集まっていることから、政府に対し「ぜひ入国規制をG7と同じレベルまでに緩和していただきたい」と、引き続き要望していく考えを示した。
一方、貨物事業についてはコロナ禍で業績が振るわない旅客事業とは対照的に好調に推移しており、特に国際線を中心に引き続き需要は堅調だという。ANAグループは強みでもある貨物専用機を11機保有しているが、現在この11機がフル稼働している状況。これには大型のボーイング 777F型機が2機含まれており、通常の旅客機では運べない自動車などの大型貨物の輸送に利用されていることからも、貨物事業の好調は今年度中は続くものと見立てているとのこと。
そして、次年度はANAとピーチに加えて「AirJapan(エアージャパン)」が新たなブランドとして誕生を控えている。2023年度下半期の就航に向け現在準備を進めており、2022年度末までにはサービス等の具体的な内容について明らかにしたいという。
さらに非航空事業では、マイルで生活できる世界の実現に向けた「ANAスーパーアプリ」のリリースを2022年度中に予定している。コロナ禍の苦境にありながらも、「種をまき、育ててきたものが、いよいよ芽を出そうかという時期」と芝田氏は満を持し、そのほか今後展開していくサービスについても「期待してほしい」とアピールした。
そして、「このような前向きなお話ができるようになったのも、これまで多くの方々にご支援いただいたおかげだと考えている。金融機関、株主、空港ビルなど関係施設、航空機、エンジンメーカーをはじめとするサプライヤー、そして日本政府からも、有形無形のご支援をいただいた」と改めて感謝の意を述べた。
また、ANAグループ約4万2000人の社員も厳しい環境下でそれぞれの業務に取り組んでおり、現時点で輩出している約700名のグループ外出向者についても今後、運航規模の回復・拡大に合わせて順次職場に復帰していく予定としている。これを受け、「今後の成長に向けてグループ社員が一丸となって邁進していきたい。2022年で創立70周年を迎えるが、この先も感謝の気持ちを忘れず、80年、90年、100年を目指し、お客さまに寄り添うサービスを提供していきたい」と語った。
ANA 代表取締役社長の井上慎一氏は、「ANAブランドの航空事業はおかげさまで順調に推移しており、お客さまの需要は戻ってきている」とし、引き続き感染状況には十分な注意を払う必要はありつつも「モードが変わったな」と感じる空港でのエピソードを話した。最近は「お客さまから『待ってました』『やっと旅行ができる』『ふるさとに帰れる』といった声が多く聞かれ、目を輝かせておっしゃることが際立って増えてきた」という。
ワクチンを必要回数接種し、事前の検査を終えたうえで旅行するなど、利用者側で感染対策やエチケットが定着してきたことについても、「感染者数が増減を繰り返してきたなかで、利用者自身が学習し、対策したうえで移動していることが1つのムーブメントのように感じられる」とのこと。
さらに、「まもなく夏休みに突入するが、お客さまにはぜひ感染に十分注意しながらも、3年ぶりの“いつもの夏”を楽しんでいただきたい」とし、それに応えるようにANAの国内線では7月16日~18日の3連休に5機、8月のお盆時期には8機、10月末までには全15機が整備を終えて再就航可能になる。この7月には臨時便も200便以上運航を予定している。
また同社では現在、「お子様1000キャンペーン」などのお得なキャンペーンを実施しており、応募を受け付けている。これは、コロナ禍で旅行を控えてきた家族に向けたもので、特に「子供たちにとっての2年は、大人とは比べものにならないほど貴重で、必要な時間だったように思う。たとえば卒業アルバムに修学旅行の写真がない、あるいは部活の大会が制限されたことで青春の熱狂が感じられなかった。そんな子供も多々いるなかで、私どもはこれを軽視してはならないと考え、思い出作りのお手伝いをすべくこのようなキャンペーンを企画した」と、ANAを利用する子供たちへの思いを語った。
また井上氏は、「観光は国の成長戦略の柱であり、地方創生の切り札であることはコロナ禍前から変わらず、そのとおりであるという信念を持っている。今後も地方経済や観光業界の活性化のために力を尽くしていきたい」と意気込んだ。国際線においても徐々に路線が回復しており、7月には41路線を運航予定(2020年事業計画の運行便数の3割強の回復に相当)。利用客の傾向としては、日本の入国規制は段階的に緩和されており、外国人旅行客の受け入れも始まっていることからも、東南アジアから日本を経由してアメリカに向かう“3国間”の流動が増えてきているという。
7月1日には、超大型機のエアバス A380型機「FLYING HONU」が2年3か月ぶりにホノルル路線に復帰したことに触れ「お客さまが心からハワイ旅行を楽しみにしていたように、我々グループも同じ思いでこの機会を待ち望んでいた。日常を取り戻すことのありがたさを実感した」と喜びを表した。
さらに、新サービスモデル「ANAスマートトラベル」について紹介。これはコロナ禍で利用客のニーズが変わり、非対面や非接触の設備を求める多くの声に応えるかたちで導入したもので、「スマホが旅をおもてなし」というコンセプトのもと、旅の始まりから終わりまでスマホ1つで予約、購入、チェックイン手続きが可能になるというもの。急な搭乗口の変更や遅延などが発生した場合も、即座に利用者のスマホに通知が届く仕組みになっている。6月22日に新しく追加された「空席待ち」の機能では、これまでのように空港まで行く必要なく、スマホやタブレットから申し込みができる。国内線に導入されたオンラインチェックインもあわせて、より便利にANAの航空機を利用できるようになっている。
最後に、2012年3月の就航から10周年を迎えたピーチ 代表取締役 CEOの森健明氏は、「これまで約4000万人以上のお客さまを迎え、このコロナ禍の2年間においても非常に厳しい時期ではあったが多くのお客さまにご利用いただいた」と、改めて感謝を述べた。
そして同社は「日本初の本格的LCCとして圧倒的な低運賃で、新たな旅のかたちを提供してきた。ANAグループにおけるピーチのミッションは、ピーチらしさを研ぎ澄まし、新しいお客さまにご利用いただくこと、年に数回しか飛行機に乗らない方にも、何度でも利用していただくこと。我々は日本にLCCを根付かせ、航空のマーケット自体を拡大させていくことを使命としてきた。コロナ禍においても『旅くじ』『乗り放題パス』のように次々と新しい企画を展開してきた。苦しい時期ではあるが、ピーチの認知度を向上させるための取り組みで、今後の成長に向けた“種まき”と考えている。この夏にはきれいな花が咲くことを期待している」と語った。
また春先より新規の予約が急速に伸びており、今夏の予約もコロナ禍前を上回る勢いで伸びているという。8月はピーチ過去最大の1日178便の運航を計画しており、加えて先日、10月末からの冬季のチケット販売を開始したが、予想以上に多くの予約を受けているとのこと。これについて、「蓄積された旅行需要が一気に顕在化してきた。底力を感じている」と話した。
現在ピーチでは、3人以上で予約すると割引率が上がっていく「みんなの夏割」や、特別価格で日帰りの国内旅行ができる「0泊弾丸運賃」も提供し、好評を得ている。国際線では、コロナ禍で運休していた関西~仁川(ソウル)線の運航も8月28日より再開予定。約1年4か月ぶりとなるピーチの国際線の再開であり、「これは2015年に就航したピーチ初の国際線ということもあり非常に思い入れもある。改めて初心に返り、気持ちを込めて運航していきたい」とコメントした。そのほか、「現在運休している香港、台湾、中国、地方発着などの各路線についても環境が整い次第、年内には順次再開していきたい」としている。
【お詫びと訂正】初出時、ボーイング 777F型機の数に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。