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かんぽの宿、「亀の井ホテル」にリブランド。マイステイズ山本会長「誰でも泊まれる気軽な温泉宿に」
家族やインバウンドの取り込み目指す
2022年6月6日 06:00
- 2022年7月1日 実施
マイステイズ・ホテル・マネジメントは6月2日、4月5日から運営を開始した「かんぽの宿」について、「亀の井ホテル」へのリブランドを発表した。
7月1日から、かんぽの宿30施設と、2015年から運営していた「別府亀の井ホテル」、4月28日に開業した「亀の井ホテル奥日光湯元」を合わせた全32施設にリブランドし、新規顧客の取り込みを図る。かんぽの宿の会員など自社での直販に加え、OTA経由での販売により稼働率を高めたい考えだ。
もともと「かんぽの宿」は日本郵政グループの宿泊事業だったが、新型コロナウイルスの影響などによる赤字で全33施設のうち32施設の売却を決定。このうちフォートレス・インベストメント・グループ傘下で全国に105施設(2021年時点)を運営するマイステイズ・ホテル・マネジメントが29施設を継承し、「かんぽの宿熱海」の「本館」と「別館」を分けて全30施設を運営していた。
6月2日に開催した記者会見で、マイステイズ・ホテル・マネジメント 代表取締役会長でフォートレス・インベストメント・グループ・ジャパン マネージングディレクターの山本俊祐氏は、かんぽの宿が簡易保険加入者向けの保養施設であり、稼働率も約61%程度で平均的なリゾートホテルの稼働率を下回っていたことを説明。
リブランドでイメージを刷新することで、「消費者にとって誰でも泊まれる気軽な温泉宿ということを紹介したい」と意欲を示した。「マイステイズ」ブランドにしなかった理由としては、宿泊特化型イメージが強かったことから「温泉旅館につけると消費者的に違和感を覚えると思った」からだという。
マイステイズ・ホテル・マネジメント 代表取締役社長の代田量一氏も「かんぽの宿のブランド力は想像以上だが、公共施設のイメージが強い」と話し、ブランド変更により消費者の認知向上と販路の拡大を目指す考えを述べた。
亀の井ホテルの名称は、「別府観光の父」「日本観光の祖」として知られる油屋熊八が1924年に開業した「別府亀の井ホテル」に由来したもの。マイステイズ・ホテル・マネジメントでは2015年から同ホテルを運営している。
マイステイズ・ホテル・マネジメントMRM事業部執行役員の小川淳氏は、油屋熊八が女性のバスガイドを考案して、別府地獄めぐりを案内するなどイノベーションを起こしたことを説明し、「そのDNAを引き継ぎ、イノベーティブな温泉ホテルとして運営していきたい」と意気込みを語った。ブランドはまずは32施設で展開するが、今後は東北や草津などのホテルもブランドに加え、将来的には50施設程度を展開したい考えだ。
新ブランドのターゲットはこれまでメインだったシニア層に加え、マイステイズ・ホテル・マネジメントとして統合リゾートホテルなどを運営してきたノウハウを活かし、子育て世代やアクティブシニア、団体を設定。全施設温泉付きという点をアピールしつつ、インバウンドの取り込みも目指す。
リブランドにより各施設のパブリックスペースや客室、レストランなどを順次改装する。客室については、現在ほとんどが和室だが、顧客のニーズに合わせて洋室の客室比率を増やす計画。
さらに、子育て世代向けにファミリールームやキッズパークを増設し、レストランではファミリー層に人気の高いビュッフェを取り入れる。シニア向けには温泉の源泉率を高めるほか、カラオケルームや囲碁将棋が楽しめるアクティブルームなどを設置する。このほか、「蓼科グランドホテル滝の湯」で展開中の無人ワインサーバー、日本酒サーバーも多くの施設に導入する予定。グランピング施設やペットルームなども充実させる。先行して2023年2月をめどに10施設を改装し、最終的には全施設リニューアルする予定だ。
料金は1泊2食付きで1人平均1万1000円~2万円となる見込み。施設により露天風呂付き客室など、4万円~5万円程度の客室もあるという。販売は直販に加えOTAを活用。小川氏はOTAの活用により、稼働率を8割まで高めるとともに「宿泊施設により比率は変わるが、3割程度はOTAで(宿泊者を)獲得していきたい」と話した。
かんぽの宿は現在も営業中だが、7月1日以降は新ブランドで運営。それに伴い同日から、宿泊券プレゼントのキャンペーンや、亀の井ホテル全施設を定額で利用できるサブスクリプションサービス「泊まり放題プラン」の販売もスタートする。詳細は後日公開予定だが、もともとかんぽの宿は連泊が多かったことなどを考慮したもので、まずは試験的に年内分の販売を見込んでいるという。このほか、「地獄めぐり夜鳴き担々麺」を無料で提供するサービスも開始する。
新しいロイヤルティプログラムも検討
山本氏はフォートレス・インベストメント・グループ傘下の「アコーディア・ゴルフ」や「レオパレス」などと合わせたロイヤルティプログラムを構築する考えを示した。かんぽの宿の約30万人に加え、同社の持つ約400万名の会員を活用する予定。共通のポイントプログラムなどを検討しており、宿泊やゴルフなど幅広い特典を提供する。詳細は後日発表予定で、秋をめどに開始する予定だ。
# | 所在地 | 現施設名 | 新施設名 | 客室 | 温泉 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 岩手県 | かんぽの宿 一関 | 亀の井ホテル 一関 | 55室 | 宝竜温泉 |
2 | 茨城県 | かんぽの宿 大洗 | 亀の井ホテル 大洗 | 52室 | 大洗温泉 |
3 | 〃 | かんぽの宿 潮来 | 亀の井ホテル 潮来 | 58室 | 潮来水原温泉 |
4 | 栃木県 | かんぽの宿 塩原 | 亀の井ホテル 塩原 | 39室 | 塩の湯温泉 |
5 | 〃 | かんぽの宿 栃木喜連川温泉 | 亀の井ホテル 喜連川 | 53室 | 喜連川温泉 |
6 | 〃 | 亀の井ホテル 奥日光湯元 | 亀の井ホテル 奥日光湯元 | 78室 | 共同源泉・南間源泉 |
7 | 埼玉県 | かんぽの宿 寄居 | 亀の井ホテル 長瀞寄居 | 51室 | 金山温泉 |
8 | 千葉県 | かんぽの宿 旭 | 亀の井ホテル 九十九里 | 61室 | 旭九十九里温泉 |
9 | 〃 | かんぽの宿 鴨川 | 亀の井ホテル 鴨川 | 103室 | 鴨川温泉「なぎさの湯」 |
10 | 東京都 | かんぽの宿 青梅 | 亀の井ホテル 青梅 | 56室 | 青梅鮎美の湯 |
11 | 福井県 | かんぽの宿 福井 | 亀の井ホテル 福井 | 33室 | 光明石温泉(準天然人工温泉) |
12 | 静岡県 | かんぽの宿 熱海(本館) | 亀の井ホテル 熱海 | 159室 | 熱海温泉 |
13 | 〃 | かんぽの宿 熱海(別館) | 亀の井ホテル 熱海 別館 | 45室 | 熱海温泉 |
14 | 〃 | かんぽの宿 焼津 | 亀の井ホテル 焼津 | 40室 | 焼津温泉 |
15 | 〃 | JPリゾート 伊豆高原 | 亀の井ホテル 伊豆高原 | 55室 | 伊豆高原温泉 |
16 | 愛知県 | かんぽの宿 知多美浜 | 亀の井ホテル 知多美浜 | 45室 | みはま温泉 |
17 | 三重県 | かんぽの宿 鳥羽 | 亀の井ホテル 鳥羽 | 62室 | かんぽ温泉鳥羽 潮香の湯 |
18 | 滋賀県 | かんぽの宿 彦根 | 亀の井ホテル 彦根 | 41室 | 彦根千乃松原温泉 |
19 | 大阪府 | かんぽの宿 富田林 | 亀の井ホテル 富田林 | 43室 | 明光神々温泉(人口温泉)※ |
20 | 奈良県 | かんぽの宿 大和平群 | 亀の井ホテル 大和平群 | 42室 | 大和平群温泉 |
21 | 〃 | かんぽの宿 奈良 | 亀の井ホテル 奈良 | 42室 | 平城宮温泉 |
22 | 和歌山県 | かんぽの宿 紀伊田辺 | 亀の井ホテル 紀伊田辺 | 52室 | 天神温泉 田辺元湯 |
23 | 兵庫県 | かんぽの宿 有馬 | 亀の井ホテル 有馬 | 53室 | 愛宕山泉源 |
24 | 〃 | かんぽの宿 赤穂 | 亀の井ホテル 赤穂 | 49室 | 赤穂御崎温泉 |
25 | 〃 | かんぽの宿 淡路島 | 亀の井ホテル 淡路島 | 40室 | 小倉山温泉 |
26 | 山口県 | かんぽの宿 光 | 亀の井ホテル せとうち光 | 40室 | 光室積温泉 |
27 | 香川県 | かんぽの宿 観音寺 | 亀の井ホテル 観音寺 | 55室 | 母神温泉 |
28 | 高知県 | かんぽの宿 伊野 | 亀の井ホテル 高知 | 52室 | 仁淀川伊野温泉 |
29 | 福岡県 | かんぽの宿 北九州 | 亀の井ホテル 玄界灘 | 50室 | 若松ひびき温泉 |
30 | 〃 | かんぽの宿 柳川 | 亀の井ホテル 柳川 | 40室 | 柳川温泉 |
31 | 熊本県 | かんぽの宿 阿蘇 | 亀の井ホテル 阿蘇 | 66室 | 仙酔郷温泉 |
32 | 大分県 | 別府亀の井ホテル | 亀の井ホテル 別府 | 322室 | 別府温泉 |
※2022年6月中旬以降「富田林嶽山温泉(天然温泉)」復旧予定