ニュース
目黒線だけ特別扱いのワケは? 渋沢栄一の掲げた理想から100年。目黒蒲田電鉄から始まった東急の歩みが企画列車になって運行中!
2022年4月13日 00:00
- 2022年4月10日 実施
東急グループは、9月2日に創立100周年を迎える。そこで東急電鉄では、企画列車「東急グループ100周年トレイン」を運行する運びとなった。4月10日に田園調布駅で、第1陣となる目黒線での運行が始まったところだ。なお、東急グループではWebサイトでも100周年記念企画「東急グループのあゆみ」を公開している。
出発式の模様
本稿ではまず、田園調布駅の駅前広場で行なわれた出発式の模様からお届けする。
最初に登壇した東急グループ代表の野本弘文氏は、「100周年に合わせて、さまざまなイベントを企画しているところです。今日の出発式が第1弾となります。これからも、東急グループは皆さまと一緒になって頑張ってまいりたい。皆さまに愛顧される企業として、この先の100年も続けてまいりたいと思います」と述べた。
地元を代表して田園調布会の佐々木氏によるスピーチが予定されていたが、事情により代読となった。「渋沢栄一翁が手掛けたさまざまな事業のうち、自然環境の保全を意識した事業が、この田園調布の街作りです。渋沢栄一翁が1869年にフランスのパリの凱旋門を訪れました。そこには、美しい放射状の道と、緑豊かな街路樹がありました。そのすべてが、田園調布によみがえり、100年後の今も息づいています」
渋沢栄一氏が、1916年に理想的な住宅地を構想、それを実現するために1918年に設立したのが「田園都市株式会社」だ。これが後の東急グループにつながる。
一連のセレモニーに続いて、「東急グループ100周年トレイン」が目黒線上りホームに横浜方から入線した。当該列車は臨時運行で、田園調布の地元を代表する約30名が乗車したうえで、田園調布駅長の合図で出発、目黒駅に向かった。
東急100周年トレインの概要
「東急グループ100周年トレイン」は、以下の各線で運行する。カッコ内の運行開始日の順に並べている。
目黒線: 3020系(4月10日)
池上線: 7000系(4月13日)
田園都市線: 2020系(4月17日)
世田谷線: 300系(4月20日)
東横線: 5050系(4月25日)
東急多摩川線: 7000系(4月27日)
大井町線: 9000系(4月29日)
このうち、目黒線、田園都市線、東横線、大井町線では、車体外装のラッピングも実施する。車内については、窓上に東急グループの歴史に関するポスター掲示を実施するが、これには以下の3種類がある。
・TOKYU百年絵巻(事業の歴史を紹介するポスター)[全路線]
・TOKYU TRAIN HISTORY(車両の歴史を紹介するポスター)[全路線]
・田園調布の100年(事業の歴史を紹介するポスター)[目黒線のみ]
つまり、外装ラッピングと3種類のポスター、すべての企画をフルセットで実施するのは目黒線だけだ。東横線、田園都市線、大井町線は、外装ラッピングと車内の「TOKYU百年絵巻」「TOKYU TRAIN HISTORY」、そのほかの各線は車内の「TOKYU百年絵巻」「TOKYU TRAIN HISTORY」のみとなる。
さて、東急電鉄の主力路線というと、東横線と田園都市線がツートップ、というのが一般的な認識であろう。ではどうして、記念企画のフルセットを施す対象となったのが、東横線でも田園都市線でもなく、目黒線の車両なのか。
東急グループの始祖は目黒線にあり
東急グループのWebサイトにある「東急グループのあゆみ」をご覧いただくとお分かりのように、東急グループの源流は、先にも名前が出てきた「田園都市株式会社」である。そこから、鉄道事業を営む子会社として1922年に分離・設立されたのが、「目黒蒲田電鉄株式会社」だ。
今は大改良工事と路線網の再編成によって「目黒線」と「東急多摩川線」に分断されているが、その前は「目蒲線」として目黒~田園調布~蒲田を結んでいた。その「目蒲線」が、名前でお分かりのように、もとの目黒蒲田電鉄である。まず1923年3月11日に目黒~沼部間、続いて同11月1日に沼部~蒲田間が開業した。
「田園都市株式会社」の事業において興味深いのは、まず理想的な住宅地の開発があり、そこで鉄道事業を「都心と住宅地を結ぶ足」と位置付けたところではないだろうか。鉄道が先にあって、あとから利用増のために宅地開発を始めたのではない。そして、当初に開発の対象としたエリアが、多摩川台(現在の田園調布)と大岡山、そして洗足であったのだ。
こうした歴史的経緯から、目黒線こそが東急電鉄の始祖となった路線といえる。そこで、目黒線の100周年記念トレインに限り、ポスター展示「田園調布の100年」が加わることになった。
詳しい歴史について解説するのは本稿の目的ではないので、これ以上の詳細は割愛する。しかし、東急グループが手掛けた主な事業に関する流れは、100周年記念トレインの「TOKYU百年絵巻」で見ることができる。もちろん、鉄道好きにとっては「TOKYU TRAIN HISTORY」の方も見逃せないはずだ。筆者ぐらいの年齢層にとって懐かしい車両が、いろいろ登場している。