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自動運転とxRで街をテーマパーク化、北九州市で実証実験スタート

2021年12月18日~24日、2022年1月3日~9日 実施

「どこでもテーマパーク」の体験イメージ

 コンフォートデジタルツーリズム協議会は12月18日、福岡県北九州市の八幡東区東田エリアを先進技術でテーマパーク化する実証事業「どこでもテーマパーク」をスタートする。実施期間は12月18日~24日と2022年1月3日~9日。

 同事業は、観光庁の「これまでにない観光コンテンツやエリアマネジメントを創出・実現するデジタル技術の開発事業」の採択事業として実施されるもの。ゼンリンデータコムが代表企業となり、久留米工業大学、コンピュータサイエンス研究所、三菱総合研究所、NTTドコモ九州支社、北九州市が参画し、xRや自動運転、5Gといった最先端の技術を活用し、JRスペースワールド駅の駅前一帯をテーマパークとして体験できるようにする。

 同地域には、世界遺産の「官営八幡製鐵所」をはじめ、「いのちのたび博物館」「環境ミュージアム」「スペースワールド」といった観光施設があり、北九州市の歴史や近未来を体験できるエリアとなっていたが、2018年1月1日にスペースワールドが閉園。さらに新型コロナウイルス感染症の影響で、同地域の来訪者が減少する傾向にあった。

官営八幡製鐵所(写真提供:日本製鉄 九州製鉄所)

「どこでもテーマパーク」は、こうした課題の解決をテーマに、地域に点在する観光コンテンツをデジタルアトラクション化。地域全体を1つのテーマパークのように機能させる手法のプロトタイプを開発して、機能の検証や効果測定を行ない、2022年度中に事業化する計画。さらに、同様の課題を抱える地域で活用できるソリューションパッケージの構築を目指す。

 今回の取り組みでは、自動運転技術とxRを融合した「先進デジタルアトラクション」と、個人の嗜好や周辺の状況などから観光・物販サービスを提案する「AI観光コンシェルジュ」を組み合わせ、これまでにない新しい観光サービスを体験できるようにする。

実証実験で使用する自動運転モビリティ
「デジタル恐竜パーク」で使用するMRデバイス「Hololens2」
「鉄の道」で使用するVRデバイス「Idealens K4」

「先進デジタルアトラクション」としては、一人乗りの自動運転モビリティに乗り、xRゴーグルを装着してコース内を移動しながら楽しめる2種類のアトラクションを用意。「いのちのたび博物館」が展示テーマとする恐竜の世界を3Dホログラムで楽しめる「デジタル恐竜パーク」(17時30分~20時30分、所要時間15分、東田大通り公園)と、地球誕生からの壮大なストーリーと官営八幡製鉄所の歴史や現代の鉄づくりをVRで楽しめる「鉄の道」(11時~15時、所要時間25分、北九州市環境ミュージアム)の2つのコンテンツを提供する。

目の前に恐竜が飛び出してくる「デジタル恐竜パーク」
自動運転モビリティに乗ってガイドと一緒に進む「鉄の道」
先頭はWHILL製の自動運転モビリティ。2台目以降はパナソニック製の自動追尾モビリティで構成されている
北九州市環境ミュージアム脇から東田第一高炉史跡広場に続く「地球の道」
自動運転モビリティは途中で引き返していく
東田第一高炉
「地球の道」の終点に辿り着いたところで官営八幡製鉄所の歴史や現代の鉄づくりについてのVRコンテンツが楽しめる
体験を終了すると「鉄の道」の特製キーホルダーがもらえる
【「鉄の道」~VR視聴動画のダイジェスト】
写真提供:日本製鉄 九州製鉄所

 各コンテンツともに、定員は200名となっており、先着150名までは無料、以降は500円の料金が必要になる。予約は「どこでもテーマパーク」のWebサイトで行なえる。

 一方、「AI観光コンシェルジュ」では、同名のスマートフォン向けのアプリ(Android版)を活用し、ユーザーの嗜好を元にオススメの観光スポットや店舗、訪問先までのルートを案内する。

 今回の実証実験全体を監修する久留米工業大学 交通機械工学科 学科長でインテリジェント・モビリティ研究所 所長の東大輔氏は、「コロナで観光産業が厳しい状態にあり、少しでも明るく元気にしていきたいというのがスタート。先進技術を活用することでコストをかけずにテーマパークのようなワクワク感を演出するような取り組みができるのではないかと考えた」とコンセプトを説明する。同氏によれば、事業として継続的に成り立つかどうかが現時点での課題の一つで、今回の実証実験を通してコスト感などを見定めたいとしている。

久留米工業大学 交通機械工学科 学科長の東大輔氏