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デルタ航空、新型コロナ対策「デルタ・ケア・スタンダード」を説明。「“安全・安心”をブランド価値に」と大隅支社長
羽田~アトランタ線と羽田~ロサンゼルス線は8月から
2020年7月21日 19:21
- 2020年7月21日 実施
デルタ航空は7月21日、報道関係者を対象とした新型コロナウイルス感染拡大防止の取り組み「デルタ・ケア・スタンダード」に関する説明会を実施した。
デルタ航空は3月29日の夏スケジュール開始時点からすべての日本発着路線を羽田空港へ移管、集約して7路線を運航する計画だったが、新型コロナウイルスの影響でスケジュールを変更。7月21日時点で羽田~シアトル線を週4便、羽田~デトロイト線を週3便運航。8月からは、羽田~デトロイト線を週4便に増便するとともに、羽田~アトランタ線を週3便、羽田~ロサンゼルス線を週3便、それぞれ運航開始する。
このように路線・便数の回復基調にある同社だが、日本支社長の大隅ヴィクター氏は「旅行業界全体が困難な状況にあるなか、航空会社としてはお客さまと従業員の健康と安全を守ることが重要」とし、新型コロナウイルス感染症対策についてはいち早く取り組みを実践していることをアピール。「基準を一新し『デルタ・ケア・スタンダード(Delta CareStandard』と名付けている」と紹介した。6月から契約法人や旅行代理店などにオンライン説明会を順次実施。周知を図っているという。
大隅氏はこの施策について、「本社でグローバル・クリーンリネスという部署を立ち上げ、2つの医療機関を提携し、お客さまのフィードバックを聞きながら、順次、新しい施策を導入している。需要回復にはまだ時間がかかりそうだが、航空会社としていまできることは、お客さまにフライトが安全であることを確信していただくことだと思っている」と背景を説明。「安全・安心を一つのブランド価値として考えている」とし、旅客が安全・安心をどう考えるかを最重要視して取り組みを進めていることを強調した。
自動手荷物預け機やCT手荷物検査機、顔認証ゲート導入など“タッチレス”な空港に
デルタ・ケア・スタンダードで実際にどのような取り組みを実施しているかについては、日本地区 空港本部 本部長の田中勇三氏が説明にあたった。
デルタ・ケア・スタンダードのキーワードとして「Cleanliness(最高水準の清潔さ)」「More Space(十分なスペースの確保)」「Safer Service(より安全なサービスの提供)」の3点を挙げた。
医療関係者の助言を得ているほか、デルタ航空の本拠地であるアトランタには、アメリカ疾病管理予防センター(CDC:Centers for Disease Control and Prevention)の本部があることから、アトランタ空港を視察してもらうなどして助言をもらっているという。また、全世界の従業員を対象に、抗体検査と陽性検査(PCR検査)を繰り返し実施している。
そして、デルタ・ケア・スタンダードについては、「すべてのシーンにおいてデルタ・ケア・スタンダードをお約束する。(3つのキーワードを)お客さまがチェックインをされて、セキュリティを通って、デルタ スカイクラブ(ラウンジ)を通って、ご搭乗、そして機内、ご到着、すべてのシーンでご安心いただくことがデルタ・ケア・スタンダード」と説明した。
空港においては、消毒液の設置や、カウンターへのアクリル板の設置、スタッフのマスク着用、旅客同士のソーシャルディスタンスを確保するために足下へのマーク貼付などを実施。
さらに、羽田空港第3ターミナル(旧国際線ターミナル)を運営するTIAT(東京国際空港ターミナル)とも連携し、旅客とスタッフとの接触機会を減少する“タッチレス”環境の実現に向けた取り組みも実践。
4月に導入した自動チェックイン機はデルタ航空独自の取り組みとして預け入れ荷物のタグを出せるようにしたという。また、TIATが導入を進めている自動手荷物預け機についても、運用試験が先週終了。8月には本運用を開始できる見込みであるとした。
また、保安検査場にはCT型検査機を導入。中央保安検査場は全レーン導入済みで、新型コロナ禍下で閉鎖していた北保安検査場については運用再開後は一部レーンで導入。順次、全レーンがCT型に置き換わるという。これにより、ノートPCをバッグから取り出すことなく検査場を通過できるようになる。
羽田空港のラウンジ「デルタ スカイクラブ」は、現在工事を実施中。海外のデルタ スカイクラブにおいてもビュッフェ形式の食事やシャワーサービスなどを取りやめ、個別包装したテイクアウト形式の食事提供に切り替えている。
搭乗に際しては、機内後方から前方にかけて順に案内。1度に案内する人数を10名程度に留め、時間も間隔を空けて徐々に案内するスタイルにしている。
加えて、顔認証を活用した「セルフボーディングゲート」も、今夏には導入する予定であるという。
機内は中央席ブロックなど座席制限を継続。駐機時には静電スプレーで消毒も
機内では、機内食を一部制限。ビジネスクラスのデルタ・ワンでは、メニューの選択肢を減らしているほか、CA(客室乗務員)と旅客との接触を最小限にするため、一品ずつ料理を出すのではなく、トレイに複数の料理を乗せることで、旅客と接する回数を削減している。ただし、アルコール類を含むドリンクや、ミッドナイトミール(2食目)は通常どおり提供している。エコノミークラスでは、米国内線では飲み物とスナック、消毒用お手拭きの入ったバッグを提供。国際線では前菜1種、メイン3種から選ぶスタイルになっている。
このほか、マスクや消毒用お手拭きは無償で提供している。ちなみにデルタ航空では、搭乗時のマスク着用は「要件」であるとし、小さな子供や健康上の理由で着用が難しい旅客をのぞき、すべての旅客にマスクの着用を求めている。
【お詫びと訂正】初出時、タイトルの大隅氏の肩書きと、エコノミークラス機内食の説明に誤りがあったため記事を修正しました。お詫びして訂正いたします。
さらに田中氏が強調したのが機内の清掃に関する点である。機内の空気はHEPAフィルターによって99.99%以上のウイルス除去能力を持つことは、これまで他の航空会社の事例でも紹介しているが、デルタ航空は交換頻度をメーカー推奨期間の半分で交換する運用に変更することで、常に最新で清潔なフィルターを利用するようにしているという。また、上空のトイレ掃除も強化し、旅客の手が触れる部分を特に念入りに、頻度を上げて清掃、消毒を実施している。
駐機中の清掃についても、羽田空港のように米国から来た飛行機が折り返すまでの駐機時間であっても、一晩駐機する際と同じ清掃チェックリストを網羅。リストは20項目以上増えているそうで、おおむね15~20分程度、従来よりも清掃に要する時間が増えたという。
この増えた所要時間のなかに、「静電スプレー」による消毒作業も含まれている。病院などでも使われているもので、エタノールを含んだ塩素系の液体を帯電させて噴霧することで効果を高めるもの。拭き掃除による消毒作業では手が届かないような場所の消毒を行なうため、米国内線、国際線問わずに導入しているという。
このほか、エコノミークラスの中央席を利用しないなど、客席ごとに座席使用率を制限しているのも特徴。国内航空会社ではこの取り組みをとりやめるケースもあるが、デルタ航空では「お客さまからの“安心できる”という声がある」と評判がよいから、この運用を9月30日まで継続。10月以降についても継続を検討しているという。
ちなみに、現在の利用者は「日本人が40%、米国員が60%ぐらいの割合で、駐在員や留学生、米軍関係者が多い」とし、仮に旅客が増えて座席使用率の制限によって需要を満たせない状況が発生した場合、「もちろん収益は大切だが、今はお客さま、従業員の安全・安心を第一に置いているので、必要であれば便数を増やすという対応をしたい」とし、座席間隔を空ける運用を継続する意向を示した。