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タイ国政府観光庁、2020年はスポーツツーリズムにフォーカス

マラソン、自転車、ゴルフ、ダイビングなどを1年中楽しめる

2020年2月10日 開催

2020年のタイはスポーツツーリズムが軸となる

 タイ国政府観光庁は2月10日、都内で旅行業界関係者向けのセミナーを開催した。「Thailand Sports Tourism 365 Days Amazing You」と題し、同国の2020年の観光テーマについて「スポーツ」を軸に展開していくと発表した。

 タイでは温暖な気候が1年中続く地理的なメリットを活かし、マラソン、自転車レース、ゴルフ、ダイビング、モータースポーツなど、一般の人が参加して、あるいは観て楽しめるスポーツイベントを各地で開催している。

 近年の健康志向の高まりも追い風に、2020年はスポーツツーリズムにフォーカスして、日本人の年間訪タイ観光客数200万人達成を目指すとした。

MotoGP開催最終年。契約は5年延長か

 セミナーで登壇したタイ国観光スポーツ省ナッピントーン・シーサンパーン副大臣は、タイと日本との経済的な連携や、食と歴史を含む文化的な面での理解がすでに深いものになっていることを紹介。そのうえで、2019年はタイを訪れた日本人が180万人を超え、訪タイ外国人のなかでも上位にランクインしたこと、さらには訪日タイ人も130万人超と、急速に拡大していることを明らかにした。

タイ国観光スポーツ省 ナッピントーン・シーサンパーン副大臣
タイを訪れた日本人旅行者数は、2019年1~8月だけで180万人を超えた

 在京タイ王国大使館 特命全権大使シントン・ラーピセートパン氏は、「タイでは、日本だと体験・観戦機会の少ないスポーツをしたり、観たりするチャンスがある。タイの新たな魅力を発見し、タイ国政府観光庁の『こんなタイ、知らなかった』のスローガンを実感できるのではないか」とアピール。

 毎年東京・代々木公園で開催している「タイフェスティバル」にも触れ、2020年5月9日~10日に行なわれる同イベントでは、東京オリンピック・パラリンピックの開催年であることも考慮して、ヘルス・ウェルネスを重視した内容にするとした。

在京タイ王国大使館 特命全権大使 シントン・ラーピセートパン氏

 また、タイ国政府スポーツ庁 エリートスポーツ・スポーツ科学担当副総裁のナッタウット・ルアンウェート氏は、「タイではスポーツ振興に力を入れており、多くのスポーツイベントを誘致しています」と述べ、2020年に開催予定のスポーツイベントを解説。タイ国政府観光庁 広報宣伝局長のグリッサナ・ゲーオタムロン氏も、タイならではの多彩なスポーツとその魅力を紹介した。

タイ国政府スポーツ庁 エリートスポーツ・スポーツ科学担当副総裁 ナッタウット・ルアンウェート氏
タイ国政府観光庁 広報宣伝局長のグリッサナ・ゲーオタムロン氏

 すでに2月にはバンコクやブリーラムでマラソン大会が開かれたほか、パタヤにも近いバンセーンでは6月14日にマラソン大会が行なわれる。近年注目度が高まっている、最大170kmを走破するトレイルランニングなどのイベントも2月、10月に予定され、ツール・ド・フランスのタイ大会も10月に開催される計画となっている。

タイ国内では2000ものマラソンイベントが開催されているという
起伏の激しい悪路を走破するトレイルランニングの大会も予定
自転車レースも豊富

 さらに、整備の行き届いたゴルフ場がタイの各地にあり、プロ選手も世界大会前の調整などに使用していること、タイの国技でもあるムエタイにチャレンジできるジムも多く気軽に体験できることを紹介。マリンスポーツであるダイビングに最適なポイントも豊富で、日本語が通じるインストラクターが在籍しているダイビングポイントも多いとした。

プロ選手も頻繁に利用しているゴルフ場が各地に
ムエタイを体験できるジムも多く、タイ国政府観光庁では積極的に情報提供している

 開催が近い大きなイベントとしては、3月22日にブリーラムで行なわれる最高峰のオートバイレース「MotoGP世界選手権」がある。2019年10月に開催したMotoGPには22万6655人のファンが観戦に訪れ、2020年はさらに多くの観戦を見込んでいる。2020年は当初3年で結んだタイでの開催契約の最終年となるが、これを5年延長する協議を進めていることも明かした。

2020年のMotoGP世界選手権は3月22日に開催
https://www.allticket.com/ などで観戦チケットを入手できる
2019年は22万人を超える人出があった

 コロナウイルスによる新型肺炎の影響は日本だけでなくタイにも及んでいるが、特にタイ国内の空港においては厳格な検疫、防疫体制を敷いているとし、ゲーオタムロン氏は安心してタイ旅行を楽しんでほしい、と述べた。

主に空港などの世界との玄関口で、厳しい検疫・防疫体制を敷いているとした

訪タイ日本人旅行者200万人達成を目指すJATA

 JATA(日本旅行業協会)海外旅行推進部長の稲田正彦氏も挨拶に立ち、日本の海外旅行者数や、タイ旅行を推進するためJATAが取り組んでいる施策などを披露した。

JATA(日本旅行業協会)海外旅行推進部長 稲田正彦氏

 同氏によると、2019年の訪日外国人数は約3100万人、対して日本人の海外旅行者数は約2008万人で、合わせると5000万人を超えた。タイへの日本人旅行者も2014年以降は右肩上がりで、2018年は約165万人、2019年は約180万人と順調に拡大している。

 JATAは、2020年までにこれを200万人に拡大するとしてタイ国政府観光庁とMOU(覚書)を締結しており、その目標達成が期待されている。が、ここへ来て新型肺炎の問題があり、出鼻をくじかれたような格好だ。

 しかしながら、同氏はSARSの発生やイラク戦争のあった2003年を引き合いに、当時は前年から海外渡航者数が2割減少したものの、それが落ち着いた2004年には大きく回復したと説明。「当時とは環境も違い、今の事態がどう回復していくかは何とも申し上げられないが、潮目が変わるときが必ず来るので、そのときに備え旅行業界全体で盛り上げていきたい」と語った。

近年はインバウンドもそうだが、アウトバウンドの伸びも日本では大きくなってきている
2019年の日本人のタイ旅行者数は180万人超。タイ人の訪日旅行者数も拡大している

 そんななかJATAが取り組んでいる施策として、海外に出たことのない若者に向けた「ハタチの一歩~20歳 初めての海外体験プロジェクト~」を実施していることを報告した。各国政府観光局・庁、航空会社、経済産業省、文部科学省などが関わる官民連携事業としてスタートさせており、年間200名を海外に送り出している。この取り組みのなかでタイには2019年11月から19名の若者が訪問。文化、スポーツ、社会貢献といったテーマで現地の若者たちと交流した。

JATAが取り組んでいる「ハタチの一歩~20歳 初めての海外体験プロジェクト~」
日本とタイの若者同士が交流。新鮮な体験を元に、今後タイの魅力を発信していくアンバサダーとしての役割も期待される

 旅行費用は関係省庁・企業からの支援でまかなわれているため無料、定員に対する応募倍率は約10倍に達しているという。こうして海外を経験した若者が、その後自ら再び海外旅行に出かける率は高く、またアンバサダーとなって現地の魅力を発信していく可能性もあるとJATAは見ており、今後のタイ旅行者の拡大にも寄与するものと考えているようだ。

2020年のタイ国政府観光庁創設60周年を記念して、サステナブルをキーワードに、廃プラスチックを削減した「お弁当ジャーニーツアー」を旅行会社と企画している。会場にはカラフルな「Bento」が展示されていた