ニュース
HondaJet Elite日本初号機が引き渡し。藤野社長は「試験飛行の検査員も感心した安定性能」に自信
千葉功太郎氏、堀江貴文氏らが共同購入「日本の空をもっとオープンに」
2018年12月26日 21:42
- 2018年12月20日 発表
本田技研工業の航空事業子会社であるHACI(ホンダ エアクラフト カンパニー)は12月20日、小型ビジネスジェット機「HondaJet Elite」の日本における初号機の引き渡し式典を羽田空港敷地内の格納庫で行なった。
HondaJet Eliteは、12月7日に国土交通省 航空局から型式証明を取得。従来機HondaJetに比べて航続距離が約17%アップの2661kmとなっており、東京からなら北京や台北までノンストップで飛行することができる。HACIによれば、6月の受注開始から半年ほど経過した現在、10機を超える発注を受けているという。
初号機引き渡しに先駆けて、国土交通省 航空局長の蝦名邦晴氏からHACI 取締役社長の藤野道格氏へ同機の型式証明書が手渡され、蝦名氏は「5月17日に申請が出されて以来、約半年という短い期間で証明が取得できたのはホンダ関係者の尽力あってのもの。主翼の上にエンジンという技術的なチャレンジのある機体ゆえに、藤野社長自ら作成した書類をもって(型式証明の)説明したこともあったと聞いている。私も機内を拝見したが、さまざまな工夫が凝らされた快適な機体だと感じた。
また、これまではエアライン機のみに認めていた英文での書類を有効として、HondaJetを皮切りにほかのビジネスジェット機の申請でも認めていく。今後は和文化作業がなくなり、コスト低減になるのでは。2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて、さらなるビジネスジェットの受け入れに取り組んでいきたい」と述べ、型式証明の取得と初号機の引き渡しを祝福した。
これを受けて藤野氏は、「ホンダという会社が航空機に新規参入し、1社単独で型式証明を取得したことは、世界の航空機産業において大変大きな意義がある。航空機を販売するには、その機体の安全性や信頼性が非常に高いレベルで満たされていることを証明する必要があるが、これまでHACIは世界各国でHondaJetの型式証明を取得してきた。そして日本でも半年ほどで申請がとおっている。試験では機体の限界性能を試す項目があり、失速試験や片発停止(片方のエンジンを止める)飛行試験では、ベテランの検査官から『限界の飛行状況でもHondaJetはとても安定している』『上昇性能がすごい』というポジティブなコメントをもらった」と述べ、HondaJet Eliteの完成度の高さに自信を覗かせた。
そしてHondaJetのこれまでを振り返り、HACIが直接販売するのではなくディーラーモデルを採用することで、世界のビジネスジェット機市場で86%までカバーする販売網・サポート体制を構築できたと説明。すでに100機以上のHondaJetが世界中で運用され、「ビジネスやライフスタイルを変えつつある」という。
日本では、丸紅エアロスペースが「HondaJet Japan」として販売を担当。日本市場に投入するHondaJet Eliteは、従来のHondaJetをさらに進化させており、「このクラスでもっとも速く、もっとも高く飛ぶことができ、もっとも長い航続距離を誇る。独創的なエンジン配置や複合素材の採用など、独自に開発した技術を採用したビジネスジェットであり、日本の顧客にも今までにない快適な移動手段を提供できる」として、日本国内では84空港でHondaJetを運用可能というスライドを示し、国内市場でのポテンシャルにも期待を示した。
そして藤野氏が初号機の顧客(ファーストカスタマー)として招き入れたのは、投資家でドローン関連スタートアップに特化したファンドの代表を務める千葉功太郎氏。ONE OK ROCKの曲に乗せて交通誘導するHondaJetのテレビCMを見て買うのを決めたという千葉氏は、エアラインによる定期便ではなく自家用などで飛行機を飛ばす「ゼネラルアビエーション(General Aviation)」について言及。「日本の空はもっとオープンにならなければ」と説き、その第一歩としてHondaJetのようなビジネスジェットの普及の必要性があり、購入を決断した理由の1つでもあることを説明した。
また、初号機は千葉氏が単独で購入することも検討したそうだが、最終的にはビジネスジェットの必要性で共通の見解をもつ堀江貴文氏と山岸広太郎氏も共同購入者として名を連ねた。
最後に登壇したのは、HondaJet Eliteの販売代理店「HondaJet Japan」のチーフエグゼクティブを務める丸紅エアロスペース 代表取締役社長の遠矢源太郎氏。「今日があるのはHondaJetが飛ぶ日本の空へ関心を持ってくれる皆さんがいてこそ」と謝辞を述べ、「先ほど千葉さんが話したように、今日を日本におけるビジネスジェットの新たな夜明けとしたい。丸紅グループの総力を挙げてアフターサポートなどを提供していく。すでにHondaJetの操縦資格を持つパイロットや整備士もおり、整備に必要な部品もある。今後のスポーツイベントなどにも向けて、準備は整った。
しかし、ビジネスジェットやプライベートジェットという存在は自分とは別世界のものと認識している人が大半。HondaJetが皆さんの生活の一部として経済に貢献し、利便性を発揮し、より身近な存在として普及するように全力で取り組んでいく」として、HondaJetに対する継続的な関心と支援を願ってあいさつを終えた。