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駐車料金のETCカード決済に向けた実証実験レポート

NEXCO中日本とETC2.0普及促進研究会の取り組み

2017年9月12日 実施

NEXCO中日本は9月12日、駐車料金のETCカード決済に向けた実証実験を実施した

 NEXCO中日本(中日本高速道路)は、ETC2.0普及促進研究会と共同で「ETC多目的利用サービスの拡大」に取り組んでおり、7月10日から駐車場におけるネットワーク型ETC技術の試験運用を開始した。今回は、その試験運用のために構築した各システムの一連の動作を確認する実証実験を、東京都江東区有明にあるビル内駐車場にて行ない、その模様を報道向けに公開した。

 実験の公開前に、ETC2.0普及促進研究会の会員であり、ETC対応駐車場の機器開発を担当する三菱プレシジョンにて、ネットワーク型ETC技術や実験についての解説を行なった。

中日本高速道路株式会社 関連事業本部 国際・技術事業部 技術事業室 室長代理の尾高寬信氏。尾高氏は建設部門の技術士でもある

 マイクを取ったNEXCO中日本の尾高寬信氏は「平成25年(2013年)6月に『世界最先端IT国家創造宣言』というものが閣議決定されました。そしてそのなかに『駐車場等高速道路以外の施設でもETCなどのIT技術が利用可能となる環境を整備し、利便性の向上を図る』といったことも盛り込まれました。この閣議決定を受けて、ETC2.0普及促進研究会に関わる各社の技術を集約することで『ETC多目的利用サービスの拡大』の実現に向けて検証を実施することになりました。そしてこのたび、セキュリティが確保された安全なシステム運用の目途がついたということで、ネットワーク型ETC技術を活用した試験を開始しました」という内容を説明。

 続いてネットワーク型ETC技術のイメージの解説を行なった。引き合いに出したのは高速道路料金所。ここでは、ETCアンテナから飛んだ情報をノンストップで処理する関係上、料金所に情報処理機器を置いて暗号を復号し、料金計算をしてゲートを開けるということを行なっているという。

 これに対して駐車場のETC利用では、ゲートに設置した路側機で取得した情報を、既存の通信ネットワークを利用して駐車場から離れた場所に設置した情報処理機器で処理をする。こうすることで、1つの装置で複数の駐車場の処理が可能になり、さらに重要な装置である情報処理機器を事業者の会社内などのセキュリティが完備された場所に置くことができるため、管理コストが余計にかからないというメリットがある。これによって民間事業者が参入する際の負担軽減につながるということだった。

 なお、このネットワーク型ETC技術の試験運用は10月2日から静岡の「新静岡セノバ駐車場」で開始するが、その1月後の11月1日から愛知の「名鉄協商パーキング藤が丘effe」でも同様に試験運用を開始する。この2件の駐車場の情報処理は、ネットワーク型の特徴を活かし、1台の情報処理機器で行なうということだった。

今回の取り組みについての経緯。そしてETC2.0普及促進研究会の会員と役割分担。役割については記載されている内容を見ていただきたい。なお、参加する各社の立場は対等であるという条件になっている
遠隔地への通信となると高速道路のETCゲート並みの速い処理はできず、処理に多少の時間はかかるが、一旦停止を前提とした利用法ならば、今のネットワーク技術で十分対応できるという

 今回公開される実証実験は8月から行なわれているもので、使用している駐車場はASK(料金収受用無線)とQPSK(サービスエリアにあるITSスポットなどで受けられるETC2.0の情報提供)の2つの情報を1つの無線装置で扱うことが可能な設備を持っている。

 さらに料金決済もETC2.0普及促進研究会会員であるクレジットカード決済代行会社を通じて実施している。そして駐車料金のETC決済は従来のETCとETC2.0に対応しているが、ETC2.0を使うとETC2.0車載器にあるTTS(発話機能)という機能が使用できる。

 このTTSとは任意のテキスト文章を音声合成により読み上げることができる技術で、例えば、駐車場が設置している混雑状況を表示するシステムと連携することで空いている車室の場所を音声で案内することもできる。また、ETC車載器は登録時に車検証のデータを入力するので、駐車場の規定よりクルマの全高が高いときなど、駐車できない旨をアナウンスすることも可能だ。

 実験に使用しているクルマは4タイプを用意。内訳は通常のETC車載器を付けたワゴン車が1台、ETC2.0車載器を付けた乗用車が2台、そして通常のETCを付けたアルミトラックが1台というもの。ETCカードも「正常なもの」「正常なカードだがモニターに登録していないもの」「有効期限切れカード」「車載器へカード未挿入」という4パターンを用意。さらに駐車場装置のシステム側も「正常な状態」「路側無線装置異常」「情報処理機器異常」という3パターンを用意していた。

 ちなみにテスト車にアルミトラックが入っている理由だが、アルミボディは通信用アンテナからの電波を反射しやすい特性があるので、その影響を確認することが目的。

 では、具体的に何が問題かというと、例えば、入り口ゲートに「ETC決済ができない状態のアルミトラック」と「ETC決済が可能な乗用車」が順番に並んだ場合、まずはトラックに向けて電波が発信されるが、その電波がアルミボディによって反射してしまい、本来電波が届かないはずの後ろの乗用車の車載器と通信してしまい、ゲートが開くというエラー例がある。

 そうなれば、トラックは目の前のゲートが開けば理由は分からずとも入場してしまうこともありうる。そして一度ゲートを通過したクルマがあれば、システムは1つの行程を終了したとみるので、実際にシステムと通信した乗用車の番ではゲートが閉まってしまうという混乱が起こることもあるのだ。

 また、トラックはボンネットがないので車載器がつくキャビンが車両の一番前に来るため、すぐ後ろにほかのクルマが着いた場合はETCアンテナの通信エリアに2つの車載器が入ることも想定される。そういった状態が起きたときの対応も、今回の実験で見ていくということだった。

 なお、似たような問題は高速道路の料金所にETCゲートを採用した初期の段階で起きていたようだが、高速道路のETCゲートは専用に作ることができるのでアンテナ位置を理想的なところに設置し直すことで対応はできる。しかし、民間の駐車場ではアンテナを理想的な位置に付けることが必ずしも可能ではない。そこで実証実験の駐車場では、あえてアンテナ取り付け位置をずらしてセットしているとのことだ。

実験の概要について
ETC2.0車載器が設置されている場合、発話機能のTTSと駐車場のシステムを連携させて音声で空いてる車室の場所など案内することもできる
実験の駐車場。料金徴収システムは三菱プレシジョン製。アンテナ位置は入庫するクルマに対して真正面の上部が理想とのことだが、駐車場によってはそれが不可能なこともあるので、この実験ではアンテナを入庫車に対して意図的に斜めになる位置に付けている
駐車場の料金徴収システムにはクルマのナンバーを読み取って事前精算が可能なものもある。この駐車場はまさにそのシステム。ナンバーが見える状態と隠した状態も作り、システムの反応をチェックしていた
入庫の様子。試験のことを知らない一般の利用者もいるのでディスプレイを増設して案内している。また、ここには試験の結果も表示する

 今回は通常のETC車載器を付けたクルマとETC2.0車載器を付けたクルマの2台で実験が公開され、試験車に同乗することもできた。映像はETC2.0車載器を付けたクルマの入場と退場だが、今回の条件でTTSが機能するのは入場時のみで「いらっしゃいませ」のイントネーションも調整不足の段階ということ。ただ、TTSの発話は声の部分を車載器で作るので車載器の性能によっては設定された発話どおりにならないこともあるとのことだ。

入庫時
出庫時

 最後に、11月1日~12月25日の期間で行なわれる「名鉄協商パーキング藤が丘effe」でのモニター募集について紹介する。

 モニター募集要件は、名鉄ミューズカード(Mastercard/Visa)のETCカードを保有している人。ETC車載器またはETC2.0車載器を設置した自身のクルマを所有していること。そのクルマで名鉄協商パーキング藤が丘effeを利用する人。20歳以上でインターネット接続ができ、メールアドレスを持っている人となっている。

 募集人数は150名。モニター特典として試行運用期間中は駐車料金が1割引となる。ただし、ETC決済のシステムが買い物サービスなどの駐車料金割引に未対応のため、このような割引サービスとの併用は不可となるのでここは注意していただきたい。またアンケートに回答するとMKPギフトカード(5000円分)が贈呈される。応募は「駐車場におけるETCカード決済のモニター募集」から行なう。モニター募集の受付期間は9月12日から10月15日までとなっていて、選考結果は10月31日までにメールでお知らせするとのこと。