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ソフトバンク、富士山無線基地局の設置工事を公開(後編)

須走ルートで富士山を登る

2017年7月9日~10日 実施

山頂まではとにかくキツイとしか言えないが、たどり着いた先では何物にも代え難い達成感を味わえる

 前編では、ソフトバンクの富士山における通信サービスの提供について説明したが、後編では富士山の「須走ルート」を使った登山を紹介しよう。

 筆者は40才を過ぎていながら富士山に登るのは初めてであり、10代は喘息のために入退院を繰り返していたことから、どちらかというと空気が薄い高地は苦手なイメージがある。現在は幸いなことに健康であるうえ、またとない機会をいただいたのでチャレンジした次第だ。

人気ルートは混雑するが、穴場ルートは体力が必要

 まずは須走ルートについて紹介しよう。富士山に登るには、山梨県の「吉田ルート」と、静岡県の「須走ルート」「御殿場ルート」「富士宮ルート」の4つの登山道がある。このうち圧倒的に人気があるのが吉田ルートで、人混みは避けられない。その代わり、山小屋の数が多かったり、登山道が整備されていたり、救護所もあるということから、初めての人でも安心して登れるルートだ。

 次に人気があるのが富士宮ルート。こちらも吉田ルート同様、山小屋が多く、救護所があるのが特徴だが、なんといってもスタートする登山口の標高が2380mとどこよりも高いので、歩く距離が短いというメリットがある。

 これら2つのルートと比べると難易度が高いとされているのが、須走ルートと御殿場ルート。どちらも登山ルートと下山ルートは別になっているので混雑することもなく、特に下りは「砂走り」「大砂走り」といわれる砂礫の道を豪快に降りていくことになる。人が少ないだけに山小屋の数も少ないが、特に御殿場ルートは七合目より上にしか山小屋がないだけでなく、スタート地点から頂上までの距離がもっとも長い(約10.5km)ので、初めての人はまず選ばない方がよい。

 富士登山オフィシャルサイトによると、2016年夏のそれぞれの登山者数は、吉田ルートが15万1969人、須走ルートが2万996人、御殿場ルートが1万5697人、富士宮ルートが5万9799人となっており、難易度がそのまま数字に反映されているのが興味深い。

スタート地点は樹林帯を進む

 初心者には少しハードルの高い須走ルートだが、これから富士山へ登山を考えている方のために、実際に筆者が登った1泊2日のプラン(八合目の山小屋に宿泊)を紹介しよう。

 スタート地点である須走口五合目までは、ふじあざみラインをクルマで走って来られるが、7月10日から夏期マイカー規制が始まっており、9月10日まではバス、タクシー、緊急車両、自転車しか通行できない。したがって、バスやタクシーといった公共交通機関を利用する必要がある。

 須走ルートは、富士山の東側から山頂を目指す道のりであり、標高の高い位置まで樹林帯が広がっているなど、ほかのルートにはない特徴を持つ。山頂までの距離は、登りが約6.9km、下りが約6.2kmで、登山時間の目安は、登りが約6時間、下りが約3時間となっている。五合目から六合目の間は植物に囲まれているので、日差しの影響をあまり受けずに登れるが、その分虫も多いので刺されないように気を付けたい。

須走ルートのスタート地点。標高は2000m
シラビソ、コメツガ、カラマツなどが生い茂る、古御嶽神社の脇を通り抜けていく
ところどころで開けるが、あいにくの雲で頂上は見えない

八合目の山小屋を目指してひたすら登る

 六合目から本六合目にかけてもまだ樹林帯は続くが、だんだんと周辺の植物の背丈が低くなってくるのが面白い。そのすき間から顔を出す、砂礫の山肌とのコントラストも見ものだ。本六合目を過ぎたあたりからは樹林帯も終わり、視界もかなり開けてくる。道は岩と砂礫となり、傾斜もきつくなってくるので呼吸が荒くなってきたら無理せず立ち止まり、深呼吸しながら適度に休息を入れて登ろう。七合目、本七合目にも山小屋があるので、眺望を楽しみながら休憩を入れよう。肌寒くなってきたら長袖シャツなど、上着を着ておくことも忘れずに。

 さらに進み、八合目、本八合目ともなると標高は3400mほどになり、標高が100m上がるごとに0.6℃下がることから気温も平地とは20℃ほど違ってくる。さらに日が傾き始めると温度は急激に下がるので、すぐに防寒・防風ジャケットなどを着用しよう。また八合目で山小屋に宿泊するなら、すぐに着替えることをお勧めする。筆者のように汗が乾くのが気持ちよいと思っていると、ものの数分で冷凍庫に放り込まれたような感覚を味わうはめになる。

 山小屋では19時ごろに食事をして、21時には消灯する。就寝場所は1人分のスペースに寝袋と毛布が置いてあるのでくるまって休むことになる。部屋内はそれなりに寒いのでフリースなどがあると快適だ。ご来光を見る場合は朝3時に起きて出発する必要があるので、寝る前に準備をしておきたい。また、就寝時は手元にヘッドランプを準備しておくと夜中にゴソゴソせずにトイレに行ける。

六合目にある山小屋「長田山荘」から見た景色。植生豊かな緑であふれている
本六合目にある山小屋「瀬戸館」は標高2700m
雲がかかるなか、岩肌と植物が織りなすコントラストが面白い
うっすらと目指す山頂が見える
標高3400mにある山小屋「富士山ホテル」から見た朝7時前の景色。周囲には残雪も見え、かなりの高所に来た感じがある

八合目から山頂まではかなりキツイ

 八合目から先は、本八合目で吉田ルートと登山道が一緒になる。登山客が多いときは、ここから山頂までは大混雑するそうだ。残りは300m足らずなので、山頂の鳥居も見えるようになってくるのだが焦りは禁物。傾斜がキツイうえにすぐに息が上がるので、歩幅を狭く、呼吸をゆっくりするよう意識し、ペースが速い人には道を譲って、とにかく自分のリズムで進むことが大事だ。進みが遅くても、堅実に歩を進めれば筆者のように頂上にたどり着ける。

本八合目を出発してから1時間30分。ようやくゴール直前まで到達

 どうにかこうにか山頂入口の鳥居をくぐればゴール間近。登り切った先には久須志神社が鎮座し、4店舗ほど山小屋・売店が営業している。休息するなり、3700mからの絶景を楽しむなり、達成感を味わいながら過ごしたい。

 ここから先は、「お鉢巡り」という火口をぐるりと1周できるトレッキングコースを進むことで、富士山を1周することができる。1周するのにかかる時間は1時間30分ほど。途中には日本最高峰である「剣ヶ峰」があるので、体力と相談して決めよう。筆者は剣ヶ峰に至る「馬の背」と呼ばれる急坂を目にして行くか行かないか逡巡したのち、下山のために体力を温存することにした。

 そのほか、富士宮ルートの頂上口には浅間大社奥宮や日本でもっとも高い場所にある富士山頂郵便局もあるので、お参りするなり、絵はがきを書いて投函するのもいいだろう。

吉田/須走ルートの山頂付近の様子。限られた場所に久須志神社や山小屋が軒を連ねている
同じ場所を少し引いて撮影したもの。うっすらと山頂の輪郭が分かる
「大内院」と呼ばれる火口。200mほどの落差がある
日本でもっとも高い位置にある「剣ヶ峰」(標高3775.6m)。現在は研究施設として活用されている富士山測候所がある
「馬の背」と呼ばれる急坂。日本最高峰への最後の難関
浅間大社奥宮と鳥居。こちらの鳥居はこのあとすぐ76年振りに交換されたとのこと
富士山頂郵便局。8月20日まで開いており、開設時間は6時から14時まで
お鉢巡りは山頂のフチを歩くので風や雨の影響をシビアに受ける。天候がわるいときや体力に不安がある場合は諦めよう
御殿場ルートの頂上付近からは美しい形をした宝永山が見える

下山時は登山時よりも気を引き締めて

 須走ルートを下山する際は下山用の道を進むことになる。八合目までは吉田ルートと一緒なので通行する人も多い。八合目にある山小屋「下江戸屋」で分岐するのだが、間違える人が多いことから大きな看板が出ているので必ず確認したい。筆者が通った際はスタッフが立っており、通る登山客に声がけして確認していた。その後、七合目を過ぎた先からは下山専用ルート「砂走り」を行くことになる。

 このルートは砂払い五合目まで山小屋がないので、七合目の太陽館でトイレを済ませ、下り分の水があるか確認しておこう。それと、足を伸ばしたり屈伸するなど、柔軟体操をしておくことをお勧めする。ひざや太もも、ふくらはぎにかかる負担は想像以上だ。

 また、筆者のように足場が崩れたはずみにひねることもあるので、スピードが出るからといって不用意に降りて行くと痛い目に合う。登山用ポールがあったおかけでどうにか降りてこられたが、五合目まで1時間半で行けるところを約4時間かかって、苦い思い出となってしまった。

下山ルートは火山灰の砂利道を砂煙を上げながら下って行くので、マスク着用をお勧めする。また、砂走りに入るとさらに顕著になるため、シューズの中に砂利が入らないように登山用のスパッツで足首周辺を保護するのもよい

 富士山への登山は、多くの人がチャレンジしようと考えていることだろう。富士山を登るための情報はオフィシャルWebサイトをはじめ多く掲載されているので、必要な装備や心構えなど熟読しておこう。

 3000m以上の高地は想像していた以上に寒く、空気も薄いし、体にかかる負担も大きい。それでも登り切った達成感はプライスレスであり、多くの経験ができることは間違いない。ステキな富士登山にするためにも入念に準備だけはしておきたい。