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ハネウェル、最高50Mbpsの高速機内インターネット試験機を日本でお披露目

2017年7月12日 公開

Honeywellのテスト機。登録記号「N757HW」のボーイング 757型機が、成田空港発着でデモフライト実施

 ハネウェルジャパンは7月12日、米Honeywellが提供する航空機の電子システムをデモンストレーションするボーイング 757型機「N757HW」が成田空港に寄航したのを機に、報道関係者向けにデモフライトを実施した。

「Connected Aircraft」とマーキングされているボーイング 757型機は、「Power of Connected World Tour」の一環として日本に立ち寄ったもの。Honeywellの各種テストに使われている機体で、前方にはエンジンのテスト用に3機目のエンジンを取り付けられるユニットも装備している。日本で関係者へのデモンストレーションを行なうのは初めてのことだという(2014年に給油のために関西国際空港に立ち寄ったことはある)。

機体上部に衛星との通信アンテナを収納したドーム
垂直尾翼にはWi-Fiロゴ
機体前方にもWi-Fiロゴと、「JetWave」の文字がある
N757HWはテスト用に3機目のエンジンを取り付けられることで知られる
ワールドツアーで世界をまわっている。11日に仁川国際空港(ソウル)から成田空港に移動。12日のデモフライト後に台北へと飛んでいった

 このConnected Aircraftとは、航空機と地上とをデータ接続することで、パイロットから地上整備、乗客にいたる飛行機の運航に関するすべての人に好影響を及ぼすという、Honeywellが提供している一連のサービスの総称。具体的にはフライト前の運航計画などに関するもの、フライト中の機内インターネットサービスや気象情報、運航最適化などに関するもの、フライト後のメンテナンスに関するものなど、さまざまなソリューションが用意される。

Honeywell Aerospace アジア太平洋事業開発ディレクターのポール・ネフ氏による説明
現在のN757HW「Connected Aircraft」に搭載されてる技術を紹介するパネル
機内で運航情報や衛星通信、インターネット通信などの状況をモニターしている

 すでに、キャセイパシフィック航空と共同で、エアバス A330型機をベースに、既存のデータリンクを用いて航空機の装置から収集したさまざまなデータを解析、分析、活用することで、運航の遅延や欠航を35%減らせるという実績が出た。また、燃料消費を3~5%、装置トラブルの86%を事前に検知できたという。

 今回説明を行なった、Honeywell Aerospace アジア太平洋事業開発ディレクターのポール・ネフ氏によれば、航空会社による遅延の損害は年間250億ドルに達しているほか、燃料コストは運航コストの40%を占めることから3~5%の燃料節約は非常に効果が大きいという。

 同氏は、単通路&2エンジンの飛行機(メジャーな機種としてはボーイング 737型機やエアバス A320型機などが挙げられる)を例に、飛行中にセンサーなどから24時間あたり844TBのデータが生まれているが活かされていないとする。これまでは航空機と地上とのデータリンクの帯域が狭かった(速度が遅かった)ために、一部のデータのみ転送していたそうだが、広帯域化(高速化)することであらゆるデータを地上とリンク。地上側で解析、分析したデータをあらゆる航空機と共有して、例えば最新の気象データを共有することで最適な航路を導きだすなど運航を効率化することができるようになる。

 その広帯域な機内インターネットサービスについて、Honeywellは「JetWave」という名称でソリューションを提供している。協業先のインマルサット(INMARSAT)の第5世代衛星とKaバンド(26.5~40GHz帯)を用いて、下り50Mbpsのサービスを提供する。

 インマルサットのKaバンド用衛星は、現在3機が稼働中で、この3機で地球の大半をカバー。昨今の衛星通信では一般的な、特定位置の電波を強めて広帯域を確保するスポットビームにも対応する。

 今回のデモフライトでは、日本の領空を抜けた時点でサービスの体験が可能となった。まずHoneywellのスタッフが持つ端末でテストをしたところ、40Mbpsオーバーと、理論値にかなり近い数字が出ている。

 その後、搭乗した報道陣らの個人端末からも接続。10名強が接続を試した状況のなかで、記者のスマートフォンでスピードテストを試したみたところ、おおむね下り4~5Mbpsの速度が出ていた。また、上りが3Mbps前後出ているのもポイントと言え、インスタに写真をアップロードしたい人や、ビジネスでちょっとリッチな作りのプレゼンテーションを送る場合などに効果がありそうだ。

 もちろん、いわゆるベストエフォート型のサービスなので、利用者数や使い方によって速度は変わってくるが、ネフ氏は従来の機内インターネットではメールを見るなら十分だが、動画を見るには不十分であるとし、ピーク帯域の広い同社のソリューションをアピールしている。

 ちなみに、衛星との通信アンテナは機体上部に備わっているがこれは可動式で、衛星を捕捉して動作する。ネフ氏によれば、メカがあるため可用性ではフラットパネル型のアンテナには劣るが、フラットパネル型のアンテナはまだまだ高価であるとする。しかしながら、アンテナドームを薄くできて空力的にもメリットがあり、価格が下がれば導入することになるだろうとしている。

衛星通信と機内通信とを制御するセットトップボックス
別の場所にもアクセスポイントがあった
衛星との通信に使っているアンテナ。実際に見ることはできないのでイメージのみ
インマルサットが運用中のKaバンド用衛星のカバー範囲。カメの甲羅のようになっているのは、スポットビームのエリアを示す
Honeywellスタッフのデモンストレーションでは、単体で40Mbps以上の下り速度が出ている
こちらは記者の端末で試したところ。4~5Mbps程度あれば、スマートフォン版の当媒体はかなり快適に閲覧できる
記者のスマートフォンでSpeedtest.netを試したところ。画像上段3点がTSUKUBAサーバーへの接続、画像下段3点がTOKYOサーバーへ接続したもので、各3回試行した結果
機内インターネットサービスのステータスをモニターしている画面
飛行機の高度や速度、燃料の状況などがリアルタイムに記録されている
コックピット。タブレットに航路図を表示して運航している