【イベントレポート】

【パリ航空ショー2017】エアバス、ビッグデータを活用して航空機の運航や整備を効率化する「Skywise」

“アーリーアダプタ(早期導入)プログラム”にピーチが参加

2017年6月19日~25日(現地時間) 開催

エアバスがビッグデータを活用するオープンプラットフォーム「Skywise」を発表

 仏エアバスは、パリ航空ショー2017期間の6月20日(現地時間)、米Palantir Technologiesと協業して、航空機のためのオープンデータプラットフォーム「Skywise」の提供を発表した。

 Skywiseは、さまざまな航空会社や航空機を運航する企業からの情報を集約するオープンプラットフォーム。記者会見でエアバスグループ(EADS) 社長兼CEOのトム・エンダース(Thomas Enders)氏は、2年前からPalantir Technologiesと協力してきたことを明かし、「この発表は、数年後に、これはコネクテッド・フルデジタル・アヴィエーションのローンチの場であったと振り返ることになると思う」と革新的な取り組みであることを紹介した。

エアバスグループ(EADS) 社長兼CEO トム・エンダース(Thomas Enders)氏
Palantir Technologies CEO アレックス・カープ(Alex Karp)氏
エアバス CEO ファブリス・ブレジエ(Fabrice Brégier)氏
エアバス Digital Transformation Officer マルク・フォンテーヌ(Marc Fontaine)氏
Peach Aviation株式会社 代表取締役CEO 井上慎一氏
エアアジアグループ CEO トニー・フェルナンデス(Tony Fernandes)氏

 Skywiseの説明にあたったエアバス Digital Transformation Officerのマルク・フォンテーヌ(Marc Fontaine)氏は、「エアバスはソフトウェアによる製品開発や、コンピュータを使ったフライ・バイ・ワイヤのパイオニアであることを忘れないでほしい」とし、例えばエアバス A350には25万個のセンサーが積まれており、運航にはそのデータが活用されていることなどを説明。

 Skywiseでは、こうしたセンサーからのデータや運航の状態などのあらゆるデータを、Skywiseプラットフォームへ集約。Palantir Technologiesの技術にエアバスの知見を組み合わせたデータ分析を行なうことで、ユーザー(ここでは航空会社をはじめとする航空機を運用する企業)は、さまざまな視点から分析、整理されたデータを入手できる。

 これにより、航空機保守において故障の予防ができたり、運航データの分析によってより効率的に活用したり、必要な報告書の作成を簡易化できたりする。メンテナンスにおいては、エアバスのエンジニア2万人の知見が詰まっているといい、マルク氏は「このデータ分析によ(る予防保守によ)り、Zero AOG(航空機が地上にいる時間をゼロにすることで、整備のために時間を取られないことを意味する)を実現できると考えている」と、この取り組みの意義を語る。

現在の航空機は多数のセンサーが積み込まれ、その情報を参照、記録する機能を有している
航空機間でそれらのデータを活用できるようするコネクテッド・デジタル・アビエーションの実現を目指す
ビッグデータの活用によりデータを中心としたエコシステムを構築する
航空機の性能や稼働率、メンテナンスなど多方面に利益をもたらすとする
セキュアなクラウド上にデータを置き、オープンデータとして提供する
Skywiseの今後の拡張予定

 このSkywiseを実際に使ってフィードバックを得るべく、2017年1月からエアバスが実施した「アーリーアダプタプログラム(ERP)」に航空会社数社が参加。日本からはピーチ(Peach Aviation)が参加し、1~3月の3カ月間導入したという。

 会見に同席したピーチ 代表取締役CEOの井上慎一氏は、同社が機内でピンクのビートルを販売するなど、常にイノベーティブなチャレンジをしてきた会社であることを紹介したうえで、「このプログラムは航空機のオペレーションとメンテナンスにさらなるイノベーションをもたらすもの」とコメント。「航空機の稼働を高め、生産性が向上する、これはLCCビジネスを成功させる鍵になる」と、LCCにとっての意義が高いものであるとしている。

 会見後の囲み取材では、「これはすごくポテンシャルがある。なにがもたらされるかというと、まず航空機の安全が間違いなく増す。故障が少なくなり、機材稼働が上がる。(エアバスが)AOGをゼロにすると言っているが、本当に期待する。参加してよかった」と感想を述べ、「言い過ぎかも知れないが手作業でやっていたことがほとんどいらなくなるんじゃないか」として、例として、いままで1週間かかっていたようなデータ作成やグラフ作成が1~2クリックでできることを紹介。これにより「(Skywiseからの)アウトプットを見て考えることに集中できる」ことをメリットとして挙げた。

 また、乗客にとっても、「運航の安全性が高まることで、天候事情を除けば欠航がなくなる。就航率が高まることで利便性が上がる」とした。

 ピーチでは、主にメンテナンスの品質管理などで活用したが、運航であったり、飛行計画への活用など、アーリーアダプタプログラムに参加した各社がさまざまな視点で活用し、フィードバックを行なったそうだ。記者会見ではエアアジアグループCEOのトニー・フェルナンデス氏も同席しており、LCCから2社の代表が顔を揃えたが、デルタ航空やエミレーツ航空といった大手のフルサービスキャリアも参加している。

 エアバスでは今回の発表で、プラットフォームの立ち上げと、航空機の接続性、ユーザーがデータを入手するためのダッシュボードを提供。今後は民間航空機だけでなく軍用機や宇宙分野、ヘリコプターなどに適用するほか、ユーザーごとに適したアプリケーションが開発できるAPIの提供などへ進化させていく予定としている。

会見に出席した、左からPeach Aviation株式会社 代表取締役CEOの井上慎一氏、エアバス CEOのファブリス・ブレジエ(Fabrice Brégier)氏、Palantir Technologies CEOのアレックス・カープ(Alex Karp)氏、エアバス Digital Transformation Officerのマルク・フォンテーヌ(Marc Fontaine)氏、エアバスグループ(EADS) 社長兼CEOのトム・エンダース(Thomas Enders)氏、エアアジアグループ CEOのトニー・フェルナンデス(Tony Fernandes)氏