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ソラシドエア、言葉のバリアフリー目指すパナソニックの「聞き間違えない話し方講座」を受講

“佐藤さんを呼んだら加藤さんが来た”を防ぐには?

2017年3月9日 実施

ソラシドエアのスタッフが、パナソニックの「Talking Aid Project」の一環として聞き間違えない話し方の講義を受けた

 ソラシドエアは3月9日、パナソニックが3月3日(耳の日)にスタートした、高齢者にも聞き取りやすい言葉や話し方を広める啓発活動「Talking Aid Project」の一環として、“聞き間違えない話し方講座”を受講。CA(客室乗務員)や地上旅客スタッフ、アナウンスのマニュアル制作などが業務に含まれる運送企画部の従業員らが参加した。

 パナソニックの「Talking Aid Project」とは、高齢者や難聴の人が聞き取りやすい言葉に満ちた「言葉のバリアフリー社会」を目指し、“言葉を話す側”に着目して聞き取りやすい言葉や話し方を広める啓発活動で、難聴に対して聞き取りやすい補聴器の開発などのノウハウを持つパナソニック補聴器と協力して進める。ちなみに、「Talking Aid Project」は現時点では“啓発活動”として行なっているもので、ビジネスとして収益を上げることを目的とはしていない。

 一方のソラシドエアは、スタッフに介助士資格取得を推進するなど、さまざまな顧客ニーズに対応できる親しみやすいサービスに取り組んでおり、この「Talking Aid Project」のコンセプトにも共感。顧客との会話やアナウンスに活かせるのではないかと、パナソニックならびにパナソニック補聴器による講座を受講することにしたという。

パナソニック補聴器株式会社 営業本部 営業グループ 広報担当 光野之雄氏

 講座では、パナソニック補聴器 営業本部 営業グループ 広報担当の光野氏が講師を務め、言葉を聞き取りにくくなるメカニズムから対処法、パナソニックが無料公開した「聞き間違えない国語辞典」を用いた実習が行なわれた。ここでは、その内容も簡単に紹介しておく。

 まず、聞き取りにくくなるメカニズムだが、人間の可聴範囲は低音は20Hzから、高音は20000Hz程度までとのことだが、加齢に伴い高音が聞き取りにくくなる。若い人しか聞き取れない「モスキートノイズ」「モスキート音」なども同様に、高齢者が聞き取りにくい高音を用いたものとなる。

 日本語では子音、母音があるが、このうち母音は比較的低音だが、子音は高音要素が多く、「かとうさん」が「あおうあん」と聞こえるようになっていく。これは極端な例ではあるが、子音を明瞭に聞き取れなくなることで、「かとうさん」なのか「さとうさん」なのかの区別がつきにくくなる。

 こうした、年齢に伴う聞こえ方の変化は誰にでも起こりえるもので、一般的には20歳頃がもっとも聞こえやすく、40歳ぐらいから徐々に聞こえにくくなるという。講座では実際に周波数別の音を聞いてみたり、子音が不明瞭でこもったように聞こえてしまう“高齢者の聞こえ方”のサンプルを流したりして、そうした変化を実感できるようにしていた。

 光野氏は「聞く側からは聞こえにくいことを言い出しにくい。話す側が配慮すればコミュニケーションがよりよくなる」と、今回の「Talking Aid Project」の意義を話した。

講師の話に耳を傾けるソラシドエアのスタッフ
40歳前後から徐々に高音を聞き取りにくくなり、特に子音が不明瞭になるため聞き間違えが起こりやすくなる

 その対策として示されたのが、「言葉の言い換え」だ。例えば「あくしゅ」「はくしゅ」という言葉は聞き間違えやすいが、それぞれ「手を握る」「手を叩く」と置き換えることで聞き間違いが発生するリスクを軽減できる。「かとう」「さとう」のように間違いやすい人の名前はフルネームで呼ぶことを提案している。

 こうした聞き間違いは、難聴者や高齢者でない人との会話でも起こりえることで、光野氏は福岡から来た人に「福岡はイカが美味しいですね」と話したら怪訝な顔をされて、実は「福岡はいかがわしいですね」と聞き間違えられていた経験もあるそうだ。

 この例はすなわち補聴器を付けている人であっても、よく似た言葉は聞き間違えるリスクを含んでいることを示しており、日常的に使う言葉の約42%が聞き間違えのリスクを含んでいるという。

 パナソニック補聴器ではコミュニケーションを円滑にするために、こうした「聞き間違えやすい言葉」と「言葉を置き換える」ということに対しての取り組みを進め、今回の「Talking Aid Project」発表に伴い、パナソニック補聴器と三省堂が共同開発した「聞き間違えない国語辞典」の提供を開始している。iOS 9.0以上またはAndroid 4.4以上で動作するスマートフォンアプリで、無料でダウンロードして利用できる。

 これは、三省堂の「スーパー大辞林3.0」に収録された約312億通りの言葉の組み合わせから、聞き間違えやすい言葉のペアを探すために人工知能を使って、高齢者が聞き取りにくくなる音や、音と音の響きの近さなどをプログラム化し、聞き間違えやすい言葉を抽出。約150万組の言葉を収録した。さらに、聞き間違えやすい言葉を、どちらにも読める独自のフォントで表現することで可視化。この独自フォントは428文字を用意している。

 加えて、聞き間違えを防ぐためにどのような言葉に置き換えればよいか、どのように話せばよいかも紹介している。

「聞き間違えない国語辞典」の機能紹介(出典:パナソニック)
聞き間違えない国語辞典を実際に使用して、聞き間違えやすい言葉の置き換え方などを調べる

 講座では、航空会社の実務で発生しそうな例を題材にアプリの使い方の説明を実施。発着案内で発せられる「定刻」という言葉は「警告」と聞き間違えられる可能性があるが、「予定の時刻に」と置き換えれば防げること。また、「機体整備」は「機体警備」と聞き間違えやすいため「メンテナンス」という言葉を使うことなどを紹介した。

 また、最後は実践として、航空会社の業務で使う5つの文章を提示。この文章から聞き間違えやすい言葉を探し、どう置き換えていくべきかを自分たちで考える時間が設けられ、聞き間違えない国語辞典を活用したり、近くの人と相談しながら検討を重ねていた。

 ソラシドエアでは試験的に受講したもので、今回の講座を受けてアナウンスのマニュアルを改訂するなどの具体的な計画はないとするものの、こうした講座がまずは現場の意識の変化につながることに期待を寄せている。

最後はこの例文から、聞き間違えやすい言葉を見つけ、どう置き換えるかを実践
周囲と相談したり、聞き間違えない国語辞典を活用したりして、聞き間違えにくい言葉を検討するソラシドエアのスタッフ