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JR西日本、博多総合車両所で「新幹線ふれあいデー」を開催(後編)

整備の様子の見学や、ミニ新幹線の乗車体験など充実のコンテンツがたくさん

2016年10月16日 実施

 10月16日にJR西日本(西日本旅客鉄道)が開催した「新幹線ふれあいデー」。前編では高い倍率のなかで当選した来場者のみが体験できるスペシャルコンテンツを中心にお送りした。今回は、後編として展示物や各種体験会、ミニイベントの模様を紹介する。JR西日本の車両基地として最大面積を誇る博多総合車両所だけに、地元福岡だけでなく全国から鉄道ファンが訪れる。

本部棟や台車工場など、充実の展示

本部棟

本部棟は、1階を各種見学施設、さらに屋上を開放して車両基地全体を見渡せるようになっていた
連動表示盤と信号操作卓。1975年の山陽新幹線・岡山~博多間開業時から2009年3月までの34年間使用された
博多総合車両所のジオラマ
新幹線各種のスケールモデルゾーン
0系の運転シミュレータ体験
カンセンジャーのミニシアター
Nゲージジオラマ

本部棟屋上

エレベータで6階まで上り、さらに屋上へ階段で進むと周囲を見渡せる展望デッキとなっていた。北側は着発線の全景を眺めることができる
南側は九州新幹線の高架を走る車両をみることができ、地上の右手前側には、記念撮影ゾーンとして使用されていたN700と700系が研削線に停車している姿が確認できる。
博多駅へ向かう九州新幹線のさくら552号

新幹線と綱引き、パンタグラフ動作体験などができる敷地の南東エリアへ

本部棟脇にある地下道は着発線の地下をくぐる。地下道には新幹線の各駅にちなんだイラストが掲示されている
地上に戻ると、最初に現れるのは保守用車の展示
工場内の線路をまたぐ直前には、必ずこのマークが確認できた
中庭へ移動可能な、車両の平行移動の機器、トラバーサー
トラバーサーの可動範囲は芝生となっており、例年は来場者の休憩スペースとなっていたが、今年は立入禁止となっていた。見上げると確認できる渡り廊下のカラーリングは新幹線を意識したもの

おそうじ体験

 新幹線のおそうじ体験会場。特殊なブラシを使ってシートをキレイにしていく。ちなみに専用のブラシは水分に反応する仕組みとなっており、少ない清掃時間でも効率的に飲み物をこぼした箇所を見つけられる。

新幹線のおそうじ体験会場で体験中
スタッフベストを着せてもらって記念撮影
新幹線をキレイにできた子供たち(全員)にはカンセンジャージュニアの色鉛筆がプレゼントされた

パンタグラフ動作体験

パンタグラフ動作体験会場では3種類のパンタグラフが用意されていた
係員の説明にしたがってボタンを押すと、ゆっくりとアームが持ち上がり架線にふれる状態となる
300系や700系新幹線に採用されているシングルアーム式のWPS205形

ミニ新幹線乗車体験

親子で楽しめる電動のミニ新幹線には長蛇の列ができていた。500系のほかに、923形ドクターイエローとW7系が用意されていた

充実の体験アトラクションや展示物

「100N系」グランドひかりで使用されていた食堂車の内部見学
500系側引戸検修訓練装置

新幹線各世代の速度計

0系、700系、そしてN700系をはじめ前世代の700系や500系にも採用された速度計が展示されていた
新幹線綱引き体験
カンセンジャーショー

台車検修場内は巨大な車軸などの部品群が並ぶ

車両ジャッキアップ

連結器部分が開いた700系が置いてある場所では、ジャッキアップのデモンストレーションが行なわれていた。専用ジャッキは140cmほど上昇させて台車の交換を行なうとのこと

ボルト締め付け・打音検査体験

各部の状況をハンマーで「カチカチ」と、音で判断する検査方法を体験。ボルト締め付け体験も、トルクレンチで締め具合を体感できるようになっていた

広大な台車検修場

台車の検査やオーバーホールを行なう台車検修場には、見学しやすいルートが設定されており、巨大なパーツを間近で見られるように工夫されていた
たくさん並んだ車輪と車軸
磨き上げられた車軸
点検スペース
整備を終えて組み上がった台車
取り外し、分解したモーター
台車と車体の間に使用されている空気バネ。単体で25kgもある
踏面清掃装置とよばれる機器。レールと触れる車輪踏面の清掃と摩擦係数を向上させる役割を持つ
キャリパーブレーキ。これでブレーキディスクを挟み込む。自動車のディスクブレーキと基本的には同じ構造だ
ブレーキを作動させるための油圧式の増圧シリンダー
軸箱支持装置とよばれる台車と輪軸をつなぐパーツ
走行時の振動を減らす役割があるダンパー類。左の一本リンクとよばれる部品は、台車と車体をつなぐ重要なパーツ
車輪。巨大なパーツゆえ重量は300kgにもなる
ブレーキディスクの裏側。放熱のためのフィン形状がよく分かる
ブレーキディスクを固定するためのディスクボルト。高速回転する場所にあるため、万一緩んでもナットが飛んでいかないようにバンドの通し穴が開けられている
700系に使用される車軸
こちらも700系用の車軸だが、モーターからの出力を歯車を介して動力に変換する
歯車や歯車軸受も展示されていた
車軸を支え、ボールベアリングの役割をする密封複列円錐コロ軸受
モーター出力を受け止める小歯車から、車輪へ動力を伝える大歯車
小歯車を回して大歯車に動力を伝える体験用車軸が用意されていた。窓が開けられており、歯車が回転する様子がよく分かる構造になっていた

屋外展示

0系先頭車両の展示
WIN350(500系新幹線の試作車となった高速試験電車)の展示
カンセンジャーのTVゲームコーナー。なんとJR西日本の職員が自作したゲームとのこと。ダークマインダーと戦う設定はショーなどと共通

大食堂では職員によるバンド演奏や、Nゲージジオラマも

大食堂は敷地内で働く職員が使用しているが、ふれあいデーでは開放される

 子供連れが多い「新幹線ふれあいデー」だが、ベビーカーの預かり場所や授乳室も用意されているので、ストレスなく展示を見てまわることができる。午後になると、通路を行き交う来場者のなかには疲れて寝てしまった子供を抱く親の姿も多く見受けられるようになるが、ルートの途中にも小さいテントが用意されており、子育て世代にとって配慮がなされたイベントということが感じられる。

 また、大食堂内では、ステージも用意され、JR西日本の職員によるバンド演奏が楽しめる

大食堂内

九州大学鉄道研究同好会によるNゲージジオラマ
小型ではあるが、子供たちの視線を集めていた新幹線を中心としたプラレールジオラマ
500系の運転台シミュレータ。シミュレータは複数の場所で用意されているあたりにイベント規模の大きさが分かる

本部食堂

大食堂とともに来場者の食堂として開放されていた本部食堂。運転士はこちらで食事をとってから、乗務に向かうケースが多いとのこと
今回の本部食堂のメニュー

グッズ販売も魅力! 大人の鉄道ファンも集まったショップテントゾーン

 敷地の一番南側にあるグッズ販売ゾーン。販売だけでなく、各自治体のアピールテントなども並んでおり、多くの家族連れが休憩できる。

 また、新幹線ふれあいデーでは、毎回子供向けにスタンプラリーが行なわれているが、今回は山陽新幹線を走る車両イラストのカード4種を集めて新幹線のイラスト入りマグネットがプレゼントされた。カードの裏面を組み合わせると博多総合車両所の全景写真となる。

列車行先表示板「サボ」が販売されていた
もちろん子供向けのグッズも販売。定番の列車靴下も並んだ
ICOCAなど電子マネーでの決済が可能だった各地のお土産テント。
スタンプラリーでは、走る車両イラストのカード4種をプレゼント

新幹線ふれあいデーは「新幹線に乗って、新幹線を見にいく」イベントでもある

 博多総合車両所の周辺には駐車場が用意されていないので、公共の交通機関での来場となるケースがほとんど。そこで、新幹線ファンにお勧めしたいのが、博多駅から博多南線を利用して、博多南駅へ向かう方法。

 東京方面から博多駅に到着した新幹線は、一度博多総合車両所へ回送されるが、その敷地に隣接している博多南駅までの一駅分に乗車することができるのだ。博多駅の券売機には、「博多南駅」のボタンが用意されているので、片道300円(大人)で乗車可能。ふれあいデーのようなイベントの日は混雑すること必至なので、あらかじめ往復券を購入しておくことをオススメする。

 なお、この博多南線は、博多総合車両所がある那珂川町の住民たちが博多駅方面へ通勤したいという要望から利用が可能となった経緯がある。なんといっても300円で新幹線に乗れる、というめずらしい路線でもある。

JR博多駅の新幹線コンコースは、筑紫口側にある
回送を利用する特別切符となる

 子供から大人まで、JR西日本を走る新幹線やこれまでの歴史、さらに整備光景など、充実の内容で楽しませてくれるのが、博多総合車両所の「新幹線ふれあいデー」だ。毎年変わらない展示によって、子どもたちが少しづつ知識を深めていく側面と、その年のトピックとなるコンテンツという、新旧のバランスがとれた大イベントとなっている。

 毎年「鉄道の日」がある10月、日本全国で鉄道イベントが行なわれているが、「新幹線ふれあいデー」は遠方から福岡にやってくる来場者も多い。興味を持たれた読者は、次回の開催を現地で味わってみてはいかがだろうか。