SIMフリースマホで海外SIMを使おう!

台湾「中華電信」

最長30日間のLTE対応データ無制限プランを用意

LTE通信対応プリペイドSIMを装着したASUSのSIMフリースマホ「Zenfone 2」を、台北駅で使用中

 今回は、台湾の通信事業者「中華電信」が販売するプリペイドSIMカードを紹介する。中華電信は台湾最大の通信事業者で、サービスエリアが台湾の通信事業者の中で最も広い。元は国営企業だったことなども合わせ、日本のNTTドコモに近い性質の通信事業者と言える。

 中華電信のプリペイドSIMは、台北市内などの中華電信ショップや、台北松山空港(臺北松山機場)や台湾桃園国際空港(台湾桃園國際機場)の到着ロビーに用意されている中華電信のカウンターで購入できる。中華電信が販売するプリペイドSIMには、3G通信対応のものと、LTE通信対応のものとの2種類があり、2015年6月上旬から空港カウンターで双方を選択しての購入が可能となった。

 なお、中華電信が利用する周波数帯域は、3G通信が2100MHz帯域のWCDMA、LTE通信は1800MHz帯域(Band3)と900MHz帯域(Band8)を利用している。日本で販売されているSIMフリー(SIMロックフリー)スマートフォンは、2100MHz帯域の3G通信と1800MHz帯域のLTE通信に対応する製品がほとんどなので、問題なく利用可能だ。また、SIMロックを解除したNTTドコモのスマートフォンや、今後SIMロックを解除したソフトバンクモバイルのスマートフォンでも同様だ。

台北松山空港の中華電信カウンター。到着ロビー内のタクシー乗り場出口横にあるので、すぐに見つけられる
台湾桃園国際空港第1ターミナルの到着ロビーにあるカウンター。台湾の通信事業者4社が並び、旅行者向けのSIMを販売している
台湾桃園国際空港第2ターミナルの到着ロビーにあるカウンター。こちらも台湾の通信事業者4社が並んでいる

 空港のカウンターで購入できる3G対応プリペイドSIMは、日数制限型のデータ通信無制限プランが基本となる。契約日数は、最短1日から最長30日まで、全7種類が用意され、価格は最短の1日で100台湾ドル(約410円)、最長の30日で900台湾ドル(約3690円)。期間が長くなるほど割安となり、30日プランでは1日あたり123円ほどでデータ通信を無制限に利用できる計算だ。なお、3G対応プリペイドSIMは通話には対応しない。

 同様に、LTE対応プリペイドSIMも、日数制限型のデータ通信無制限プランとなる。ただ、こちらは3G対応プリペイドSIMと異なり通話も可能となっている。日本への国際電話もかけられるので、通話も使いたい場合にはこちらのプランがお勧めだ。契約日数は、最短3日から最長30日まで全8種類が用意され、それぞれに決められた無料通話料金が含まれており、その範囲内で無料通話が可能(それ以上の通話には料金のチャージが必要となる)。価格は、3日のプランが100台湾ドル分の無料通話料金を含んで300台湾ドル(約1230円)、30日のプランでは430台湾ドル分の無料通話料金を含んで1000台湾ドル(約4100円)となっている。

 今回は9日間の滞在だったため、10日間分のプランを購入した。なお、到着が5月30日だったため、到着時点ではまだ空港カウンターでLTE通信対応プリペイドSIMが販売されていなかった。その時点では、通話非対応と通話対応それぞれの3G通信対応プリペイドSIMが販売されており、筆者は通話対応の3G通信対応プリペイドSIMを選択した(通話対応の3G通信対応プリペイドSIMはLTE通信対応のものへと切り替わり、販売が終了している)。購入価格は、100台湾ドル分の無料通話料金を含んで、500台湾ドル(約2050円)だった。

 その後、LTE対応プリペイドSIMが空港カウンターで販売開始となったあとの6月6日に台北松山空港に行き、同SIMを3日間プランで追加購入した。追加購入したLTE通信対応プリペイドSIMの購入価格は、100台湾ドル分の無料通話料金を含んで300台湾(約1230円)ドルだった。

 SIMの開通作業は不要で、購入直後にスマートフォンにSIMを装着し、APNを「internet」に設定するだけですぐに通信可能となる。今回は、ASUSのSIMフリースマートフォン「ZenFone 2」を使用したが、SIMを装着するだけでAPNが自動設定され、すぐにデータ通信が行なえた。このあたりは、台湾メーカー製スマートフォンだからこその手軽さと言える。

 短期間の滞在ではほぼ利用することはないと思うが、料金のリチャージや残高の確認方法などについて、SIMカードの説明書に日本語で記載されている点も、日本の旅行者にとって安心できる。また、空港カウンターのオペレーターは日本語が通じる場合が多く、英語や中国語でのコミュニケーションがほぼ不要なうえに、スマートフォンへのSIMの取り付けから設定まで、すべてやってくれる場合が多いので、ほぼ手間なしで使えるようになるのも魅力だ。

 なお、中華電信のプリペイドSIMは、台北市内などにある中華電信ショップでも入手可能だが、日数制限型のデータ通信無制限プランは空港カウンターのみの限定プランとなっている。もし到着時に時間がなく購入できなかった場合でも、台北市内滞在なら、市内から近くアクセスも便利な台北松山空港に行って購入するといいだろう。

空港カウンターで買えるSIMは、日数制限のあるデータ通信無制限プランが基本。最短1日、最長30日まで日数を選べる
こちらは、LTE通信対応のデータ通信無制限プラン。通話も可能で国際電話もかけられる。空港カウンターでのみ契約できる限定プランで、こちらの利用がお勧め
契約時には、パスポートなどの身分証明書の提示が必要となる
購入時の手続きは、契約書にサインするだけと簡単
LTE対応プリペイドSIMは、Mini、Micro、Nanoと1パッケージで3形状に対応
カウンターの係員は日本語が話せる場合が多く、SIMの装着や設定もやってくれるので安心だ
これが中華電信のLTE対応プリペイドSIMのパッケージ。パッケージに「4G」の文字が見える
こちらは3G対応プリペイドSIMのパッケージ。見た目はLTE対応のものとほぼ同じだ
パッケージの裏には、電話番号やAPNなど設定に必要な情報が記されている
リチャージや残高の確認方法などが日本語で記載されているのもうれしい
利用開始時に届くSMSも日本語のものが届いた

 3G通信の速度は、おおむね下りが1~6Mbps前後、上りが0.5~2Mbpsで推移した。通信可能なエリアは広く、地上や建物内はもちろん、地下街、地下鉄などでも問題なく利用できた。ただ、場所や時間帯によって通信速度は大きく上下し、下り速度が10Mbpsを超える場面もあるが、多くの場合下り2~3Mbps、上りは1Mbps未満となっていた。また、夕方のラッシュ時間帯での地下鉄内などでは、データが流れてこない“パケ詰まり”と呼ばれる状況も見られた。加えて、上りの速度は常に遅く、SNSへの写真の投稿などは、やや待たされるという印象が強かった。

 それに対し、LTE通信の速度は、おおむね下りが15~25Mbps、上りが15~20Mbpsとかなり快適だった。しかも、混んでいる時間帯でも、ほぼ10Mbps以上がキープされ、速度に不満を感じる場面はほとんどなかった。地下街や地下鉄内でもLTE通信が可能だったため、通信可能エリアもかなり広がってきているという印象だった。もちろん、LTE通信が利用できない場所では3G通信が利用できるため、通信が途切れる心配はない。

 ところで、1年ほど前までは、中華電信の3G通信は非常に快適だったが、LTE通信サービス開始後は3G通信の速度低下が顕著になっているという声をよく聞くようになった。そのため、手持ちのSIMフリースマートフォンがLTEをサポートしているなら、LTE通信対応プリペイドSIMの選択が基本と言えそうだ。

 実際の使用感だが、LTE通信時では、スマートフォンを利用したWebアクセスや地図の参照などは、アクセス開始から表示終了までの時間も短く、TwitterやFacebookへの投稿もスムーズで、ストレスを感じる場面はほとんどなかった。旅行時には、その地域の地図や観光情報、お店情報などをWebで検索する機会が大幅に増えるが、そういった場合でも素早く情報をチェックできるのは大きな魅力と感じた。

 また、IP通話アプリ「050 plus」を利用して日本に何度か電話をかけたが、音声の遅延を感じることもなく、日本国内で電話をかけているのと変わらない感覚で通話が可能だった。

 それに対し、同時に入手していた3G通信のみ対応のSIMを利用してみると、やや印象が異なった。昼間の屋外では、Webアクセスや地図の参照程度であれば、LTE通信対応SIM利用時とそれほど遜色のない快適さで利用できたが、夕方から夜にかけて一気に速度が低下し、昼はほぼ瞬時に表示されていたWebページも、表示まで数秒~10数秒待たされることが多くなり、ストレスを感じる場面が増えた。加えて、ラッシュ時の地下鉄内などでは、ほとんどデータが流れない場面もあった。

 同じ場所で、LTE通信対応SIMでは十分快適なWebアクセスが行なえていたのとは大きな違いだった。これは、先述したように、中華電信の3G通信の速度低下が顕著になっているという現地の声を裏付けるようなものだ。こういった状況を考えると、やはりスマートフォンがLTE通信に対応しているなら、LTE通信対応プリペイドSIMの利用がベストと言えそうだ。

 なお、今回利用したZenfone 2は、中華電信が利用しているLTE通信の周波数帯域すべてに対応しており、建物内などでも常に安定したLTE通信が可能だった。しかし、日本のSIMフリースマートフォンでは900MHz帯域のLTE通信に非対応のものも少なくなく、そういったスマートフォンでは建物の奥まった場所などでLTEの電波が届きにくく、3Gでしか通信できないという場合もある。実際に、友人が同じ中華電信のLTE通信対応SIMを、900MHz帯域をサポートしないNTTドコモのスマートフォンに装着して利用していたが、Zenfone 2ではLTEに問題なくつながっている場所で、3Gでしかつながらないということも見られた。とはいえ、奥まった建物内を除けば、ほぼ問題なくLTE通信が行なえていたため、この点はそれほど気にしなくても良さそうだ。

 Zenfone 2のバッテリの持ちは、テザリングを利用しなければ、日中の外出時にバッテリ切れになることはなかった。ただ、頻繁にインターネットを参照したり、写真撮影、SNSへの投稿などを行なっていたりすると、4時間ほどで50~6%ほどバッテリを消費することもあった。そのため、使用頻度が高い場合には、モバイルバッテリも用意しておくべきだろう。

 最後に、参考までにOoklaが提供している「Speedtest.net」を使用して計測した通信速度も紹介しておく。

地下鉄の車内でもLTEに接続でき、夕方のラッシュ時でも通信速度は十分速かった
台北のランドマーク「台北101」をバックに撮影。当日はこの横でCOMPUTEX TAIPEI 2015が開催されており、非常に多くの人が詰めかけていたこともあり、3G通信はかなり速度が遅かったが、LTE通信は非常に快適だった
6月6日正午頃に台北駅前で、Zenfone 2にLTE対応SIMを装着して計測。土曜正午頃で、台北駅付近にはかなりの人がいたが、それでもこの速度が発揮された
こちらは、同じ場所、同じ時刻に、Zenfone 2に3G対応SIMをそう託して計測した結果。今回いろいろなタイミングで3Gの速度も計測したが、これよりも遅い場合がほとんどだった
キャリア名中華電信
初期購入価格・3G対応:500台湾ドル(約2050円)/10日間データ通信無制限、100台湾ドル分の無料通話料金含む
・LTE対応:300台湾ドル(約1230円)/3日間データ通信無制限、100台湾ドル分の無料通話料金含む
カードの種類3G:SIM/Micro SIM対応またはNano SIM対応
LTE:SIM/Micro SIM/Nano SIM対応
対応周波数帯3G:2100MHz、GSM:900/1800MHz
APNinternet
滞在時期2015年5月下旬~6月上旬
使用デバイスASUS「ZenFone 2」

平澤寿康

うどん県生まれ。僚誌PC Watchなど、IT系の執筆を中心に活動。旅&乗りもの&おいしいもの好きで、特に旅先でおいしいものを食べるのに目がない。ただし、うどんにはかなりうるさい。