SIMフリースマホで海外SIMを使おう!

アメリカ合衆国「T-Mobile US」

タクシー代わりのライドシェアサービス利用に必須の通話とSMSを週3ドルで利用可能

奥に見えるのはラスベガスの新観光名所、大観覧車の「High Roller」

 アメリカ合衆国は、観光や仕事で訪れる人が多いわりに、プリペイドSIMカードがそれほど使いやすい国ではない。今回はそんなアメリカの通信事業者「T-Mobile US」のプリペイドSIMを紹介する。

 アメリカには、日本のNTTドコモやKDDIにあたる通信事業者(MNO)としてAT&T、Verizon、T-Mobile、そして日本のソフトバンクが買収して話題となったSprintがある。それぞれの回線を使うMVNOもあるが、個人的にはあまり存在感を感じていないので、たいていAT&TかT-MobileのプリペイドSIMを購入している。

 アメリカではキャリアによっては特殊な周波数帯が使われているため、iPhoneといえども日本版(国際版)をアメリカ国内で使おうと思っても完全に周波数帯がサポートされておらず、アメリカ版が必要になる点もハードルの高さの一例である。とはいえ、一般的な周波数帯も使われているので、対応周波数帯の広い端末を使えば、困ることは少ないはずだ。

 さらに、日本と比べて通信料金が特別安くないというのもネックになっている。T-Mobileでは、35ドルで音声とSMSが無制限のプランがあるが、これはデータ通信ができないので選ぶ理由があまりない。データ通信が必要だと「Simple Choice Plan」というプランがある。音声とSMSは無制限で、データ通信が2GBで50ドル、6GBで65ドル、10GBで80ドル、14GBで95ドルといった具合。アメリカでは国内通話、SMSが無制限が多く、このあたりは日本と違う点だ。

 ほかに、30日間有効で3ドルの「Pay As You Go」プランがあるが、これは30分の音声通話と30回のSMSが利用でき、データ通信は別料金。1日5ドルで500MB、1週間10ドルで1GBのデータ通信を追加できる。1週間以内の旅行であれば、この1GBプランが一番安いし手軽である。今回はこのプランを利用してみた。

 今回は「CES 2016」の取材のための渡米だったが、飛行機の都合で2015年12月31日にロサンゼルスに到着して同地で2泊し、2016年1月2日にクルマでラスベガスに移動する日程だったため、1月1日にロサンゼルスでSIMを購入した。

1月1日の朝、ロサンゼルスのホテルの窓から見た初日の出

 購入したのは、ロサンゼルス市内からバスで移動したCulver Cityにある家電量販店の「Best Buy」。アメリカはあまり空港でSIMを買うという環境ではなく、Best Buyのような店舗や、街中のキャリアの店舗に行く方が分かりやすい。

 T-Mobileは、アメリカのキャリアのなかではプリペイドSIMに力を入れているため、Best BuyでSIM単体の購入が可能。併せて「トップアップカード(リフィル)」と呼ばれるプリペイドカードも購入する。あとは、T-Mobileのサイトにアクセスして、ユーザー登録をしたうえでSIMを有効化(アクティベーション)し、トップアップカードの番号を登録すれば、料金がチャージされて利用可能になる。このあたりの作業はほかの国のプリペイドSIMの利用方法とだいたい一緒だ。

ショッピングモール内にあるBest Buyで購入
購入したSIM。ナノサイズだが、SIMアダプターが標準で付属するタイプだった

 実は購入時にとある問題が発生したのだが、それは後述するとして、アメリカでの通信環境については、基本的に都市部はLTEが問題なく入るようだ。日本に比べれば簡単に3Gや2Gに落ちることもあるし、建物内で厳しいキャリアもあるが、速度もなかなか速く、LTE環境が進展したことで以前よりは困ることは少なくなった。

 クルマでのラスベガス移動で郊外を走っていると圏外になることもあったが、それよりもCESの期間中、会場内での混雑時にパケ詰まりのように通信できない場面があったことに苦労した。とはいえ、これでも以前よりはずいぶんマシにはなっている。

ラスベガスに向かう車内から。とても人が住んでいるとは思えない荒野を走ったりするので、ところどころ圏外になることも
T-Mobileのアプリから利用状況を確認できる
速度も十分。この計測はラスベガスで行なった

 いずれにしても、「街中でよほど人が混雑していなくてLTEが入っていれば」快適な通信環境だ。1GBの容量があれば、1週間程度のプライベート旅行であれば十分だと思う。その意味で、T-MobileのPay As You Goはわるくない選択肢だ。もう1つのポイントは、30分の通話、30回のSMSとはいえ、3ドルで音声機能を利用できる点だ。

 ラスベガスはとにかく街が広い。何しろ、カジノホテル1軒1軒が大きすぎて、「隣のホテル」に移動するだけでも歩き疲れるぐらい。バス網も整備されていて、ホテルによってはモノレールも使えるが、手っ取り早いのはタクシーを使うことだ。カジノホテルの玄関先で待っていれば順次乗れるが、今回のラスベガスで活躍したのが「Lyft」だ。

 Lyftは、Uberと同様のライドシェアサービスで、スマホアプリから乗車位置を指定すると、最寄りのクルマがやってきて、目的地もアプリ上で指定すれば連れて行ってくれる。アプリにクレジットカードを登録するので、支払いも自動で行なわれ、極端に言えば、ドライバーと一言も話さなくても目的地に連れて行ってくれて便利だ。

“Lyftカー”にはこうした掲示が貼られている。Uberも同時に貼っているクルマが多く、1人の運転手が2つのサービスに対応しているようだ
ラスベガスのカジノホテルの多くでは、Uber/Lyftの停車スペースが用意されていた。タクシーとの競争もあるせいか、すみ分けをしているようだ
Lyftを呼ぶときは場所を指定して、「Set pickup」を選ぶだけ

 このLyftを利用する場合、登録時に携帯番号が必要で、少なくとも日本のKDDIの番号は登録に使えたが、配車時にドライバーから電話やSMSが届くことがある。また、車が到着する直前にもシステムからSMSが届く。日本の番号の場合、国際電話やSMSでやり取りすることになり、余計な料金がかかってしまう。

 その点、T-MobileのSIMであれば、国内通話として30分の通話、30回のSMSが無料なので、余計な追加料金がかからなくて済む。しかも今回、Lyftがキャンペーンで初回登録者に10ドル×5回分のクーポンを配信していたため、10ドル以内ならタダで乗車できる、ということもあって、便利に利用させてもらった次第だ(チップは別途クレジットカードから支払う)。

 ただ、T-MobileのPay As You Goにデータ通信オプションを設定した場合、1GBを使い切ったあとに更新することができないデメリットがある(以前はできたはずだが、現在はできなくなった模様)。オプション期限の1週間が経てば更新できるはずだが、旅行の場合はあまり意味がない。128kbpsの速度では無制限で使い続けられるが、速度的にはあまり現実的ではないので注意が必要だ。

 そこで筆者は、T-Mobileのチャットサポートに連絡して、さらに1GBを追加したい旨を伝えたところ、その場でデータ通信オプションを解約、新規オプションの適用を実施してくれて、すぐに利用を再開できた。サポートへの電話やキャリアショップでも対応してくれるだろう。こうした手間を考えると、1GBで足りない可能性が高い場合は、最初から「Simple Choice Plan」を選ぶとよさそうだ。決して安くはないが、コストパフォーマンスとしては65ドル6GBのプランはわるくない印象を受ける。

 このように、アメリカでの通信環境はあまり“安上がり”という感じはない。もちろん、通常の国際ローミングを使うよりは安いのだが、アメリカではソフトバンクの「アメリカ放題」を利用できるというのが悩ましい。ソフトバンクのiPhoneユーザー限定ではあるが、アメリカのSprint回線でのローミングを無料で利用でき、音声通話も日米向けの発信は無料だし、データ通信もソフトバンクで契約中のデータ容量分をそのまま利用でき、テザリングもOKと至れり尽くせり。アメリカに頻繁に行く人なら、このためだけにソフトバンクと契約してもいいぐらいだ。

 現時点ではSprintは電波状況があまりよくない(そのためにアメリカで苦戦していた)という印象はあるが、実際の利用者からはあまり困らなかったという声も聞くので、「プリペイドSIMを購入するまでの繋ぎやサブ回線」として使い勝手がよいのでお勧めだ。

 ソフトバンク以外のユーザーは同様のサービスはないので、ローミングでの通信を使うよりは、プリペイドSIMカードを利用する方が安く利用できるだろう。

ラスベガスといえば、ベラージオ・ホテルの噴水

 さて、前述したとある問題について。アメリカでSIMを購入する際には、実は新たな注意が必要になっている。それが、カリフォルニア州で2016年1月1日から施行された「AB-1717」と呼ばれる法律だ。

 この法律は、カリフォルニア州のプリペイドの通信サービスに対して、指定の料率の税金が課せられるというもの。基本的にはリフィルに課税するようだ。これまで、カリフォルニア州では非課税で、日本の消費税にあたる税金も課せられていなかったが、この法律が施行されたことで、購入時に新たに税金の支払いが必要になってしまったのだ。

 税金はMTS(Mobile Telephony Services)サーチャージと呼ばれ、さらにいくつか細かく分類されているようだが、いずれにしてもリフィルの代金にプラスして支払いが必要になる。しかも面倒なのが、カリフォルニア州内でもエリアによって税率が変わることだ。

 市町村などによって最低税率は9.260%、最高税率は18.260%で、これは毎年更新されるようだ。特にロサンゼルスは細かく違いがあり、例えばロサンゼルス国際空港(LAX)は18.260%、ロングビーチは13.760%など。そして今回購入したCulver Cityも18.260%のエリアになっていた。

 前述のとおり1月1日に購入したわけだが、まさか当日施行されたばかりとは気付かず、リフィルを35ドル、SIMを4.99ドルで購入したところ、7.3ドルの税金がかかり、47.29ドルの支払いとなってしまった。これに対して、ラスベガスで35ドルのリフィルを購入しても35ドルのみ。消費税もないため、実に7ドルの差が付いてしまった。極端に大きな額ではないが、それでもカリフォルニア州でリフィルを購入する場合、余分に支払いが発生することは覚えておいた方がいいだろう。

奥にある35ドルのリフィルと4.99ドルのSIMを購入。スマートフォンが見えるのはAndroid Payで支払っているから。画面に「Tax」として7.30ドルが追加されている
レシートを確認してみると、MTSサーチャージとして「Local」「PUC」「911」の3種類がかかっている。よく見ると、SIMカードとリフィルにはさらに内税として税金が含まれているような……
ラスベガスのBest Buyで同じリフィルを購入した。こちらはシンプルに35ドルだけ

 契約したプリペイドSIMはリフィルでチャージをすれば改めてネットワークが利用できるようになるため、次回の渡米時に改めてリフィルを買ってチャージをする、といった使い方をするなら、カリフォルニア州での購入は避けた方が安上がりになる。旅行者としてはちょっと面倒なことになったが、他州へ行く機会などを利用してうまく買うことがアメリカのSIMをより便利に使うコツになりそうだ。

キャリア名 T-Mobile US
購入価格 4.99ドル(別途リフィルが必要)
カードの種類 nanoSIM(mini/microアダプタ付属)
対応周波数帯 LTE:1900MHz(Band3)、1700/2100MHz(Band 4)、700MHz(Band12)
3G:2100MHz、1700/1900MHz
GSM:1900MHz
APN fast.t-mobile.com
滞在時期 2015年12月下旬〜2016年1月初旬
使用デバイス パナソニック「LUMIX DMC-CM1」
(小山安博)