大城和歌子の沖縄グルメ&スポット

沖縄の夜は民謡酒場で! 民謡歌手・我如古より子さんのお店

 沖縄は芸能の島だと言われる。

 神事や祭りを大切にする沖縄は、それらの行事に歌や音楽が不可欠であることも大きい要素だろう。また、さまざまな国と交易していた琉球王朝時代、平和主義の民族性を持つ琉球人は、海外の人とのコミュニケーション道具の一つとして音楽を用いていたのではないだろうか。

 さらには戦後の米国統治時代、沖縄にはリアルタイムで洋楽が入ってきた。そして、米兵相手にロックやジャズを演奏する仕事が生まれた。

 そんなバックボーンを持つ沖縄の音楽。沖縄民謡は国を越えてワールドミュージックの一つとして愛されている。

 民謡とポップスを融合したオキナワンポップスが生まれたり、1990年代から2000年代にかけて大ヒットした沖縄出身アーティストのダンスミュージック、2000年代初頭に起こった沖縄インディーズの台頭など、沖縄が芸能の島と呼ばれる理由が分かるだろう。

 ぜひとも、沖縄に来たら沖縄の音楽を間近で体感してほしい。

 沖縄には、プロのアーティストが経営するお店がたくさんある。コンサートに行けば数千円のチケットを買わないと見られないようなアーティストが、目の前で演奏してくれ、しかもカウンターやホールで普通にオーダーをとったり運んでくれたり、おしゃべりできたりする。ファンにはたまらない空間なのだ。

 そんなお店の一つ、国際通りに今年8月8日にオープンした民謡歌手、我如古より子さんのお店を紹介しよう。

「沖縄の歌姫」と呼ばれる我如古より子さん。沖縄県内外で精力的に活動している

 我如古よりこさんは民謡歌手の我如古盛栄さんの娘として生まれ、幼少のころから活躍する民謡唄者。1977年にレコードデビューし、1978年に発売された「娘ジントーヨー」が大ヒット。坂本龍一のワールドツアーへの参加や宮沢和史とのコラボなどでも活躍している。

 沖縄市で営む民謡酒場「姫」を拠点としていたが、2008年に姉妹店「歌姫」を那覇市東町にオープン。それがこの8月に国際通りに移転し、新店舗エンタテイメントレストラン「姫-Hime」とともにオープンした。

 プレオープンのパーティーには多くの常連さんや関係者が集まり、ゆかりのアーティストのステージと、美味しいディナーで盛り上がった。

8月6日のプレオープンパーティの様子

「姫-Hime-」は食事をしながらゆったりと沖縄の芸能を堪能できるエンタテイメントレストラン。民謡ほか琉球舞踊、ポップス、エイサーなど、日替わりの出演者が1日3回のステージを見せてくれる。

 この日は我如古より子さんの出演日。自身の曲やスタンダードの民謡のほか、民謡に馴染みのない方も知っているような沖縄ポップスも聴かせてくれた。

「姫-Hime-」での我如古より子さんのライブ。ギターをサポートに心地よい歌を聴かせてくれる

「沖縄の歌姫」の異名どおり、伸びやかな歌声で心地よくさせてくれる。そして曲間のおしゃべりがまた面白い。曲の解説や、自身のエピソードなどで和やかな雰囲気に。お客さんも自然と笑顔になっていく。

 リクエストにも応じてくれるとのことで、この日来てきたお客さんからのリクエスト、喜納昌吉さんの「花~すべての人の心に花を~」を聴かせてくれた。

 食事もメニュー豊富。肉料理や魚料理など素材にこだわった、ちょっぴり贅沢な気分にひたれる創作料理から、うちなー天ぷら盛り合わせや牛汁などの手軽なメニューをラインアップ。コース料理(要予約)もある。

 大事な人とのひとときや、誕生日や結婚記念日など特別な記念日などにもオススメだ。

「姫-Hime-」(※写真提供:姫-Hime-)
野菜もふんだんに使い、彩りも豊かな本格派料理が揃う。ほかの日には、アルゼンチン生まれ日系二世のシンガー・大城クラウディアさん(写真右上)や、沖縄県うるま市出身の平良こずえさん(写真左下)、エイサーチームのEisa- Crew CROWN(写真右下)などが出演。スケジュールはWebサイトでチェック!(※写真提供:姫-Hime-)

 さて、「姫-Hime-」でゆったりと食事を済ませたら次はお酒メインといこう。

「姫-Hime-」のすぐ隣が民謡酒場「歌姫」になっている。民謡酒場あるいは民謡スナックは、沖縄では昔から親しまれているある飲み屋の形態の一つ。民謡をつまみに、演者さんとお客さんが一緒に楽しめるお店だ。

「歌姫」では、我如古より子さんをはじめ、出演する民謡唄者はベテランから若手まで幅広い。お客さんも、国際通りという場所がら観光客も多いが、地元の常連さんも多く通うなど客層も広い。

民謡酒場は沖縄ではお馴染みの飲み屋スタイル。那覇では少なくなってきたように感じる
「歌姫」で歌う我如古より子さん。ほかの唄者さんが歌うときには太鼓も担当する

 こちらのお店でもお客さんのリクエストに応えてくれる。観光客からはBEGIN(ビギン)の曲がよくリクエストされるようだ。CMでおなじみになったあの曲とかも。と思えば、地元のお客さんからは古くから歌い継がれている民謡のリクエストが。いったいレパートリーはどのくらいあるのだろう……?

 お客さんがステージに飛び入りするのも民謡酒場ならではの光景だ。出演者の三線と太鼓をバックに歌ったり、ときには自ら三線を弾きながら歌うお客さんも。囃子を入れたり指笛を鳴らしたり、ノリのよい曲が始まれば、みんなでカチャーシーを踊って盛り上がる。

 それぞれが自由に音楽とお酒を楽しんでいる。民謡初心者でも溶け込めること間違いなしだ。

「歌姫」で食べられる夜食メニュー。焼きそば700円、唐揚げ餃子500円。22時までは「姫-Hime-」のメニューもオーダーできる

 気分が盛り上がれば、初めて出会ったほかのお客さんとも距離が縮まり会話が盛り上がる。ついついお酒もすすみ時間を忘れてしまう。これこそ沖縄の夜の過ごし方の神髄じゃないだろうか(笑)。

 沖縄に来たらぜひ生で本物の音楽を。

 なぜ沖縄で音楽が愛され、ともに生きているのかが分かるはずだ。

Okinawa Entertainment Restaurant 姫-Hime-

所在地:沖縄県那覇市牧志1-2-31 ハイサイおきなわビル 地下1階
TEL&FAX:098-894-3443
営業時間:18時~23時(ラストオーダー:食事22時、ドリンク22時30分)
ステージ:第1回 19時15分~、第2回 20時15分~、第3回 21時15分~
定休日:水曜日
ライブチャージ:1500円

民謡ステージ歌姫

所在地:沖縄県那覇市牧志1-2-31 ハイサイおきなわビル 地下1階
TEL:098-863-2425
営業時間:20時~26時
定休日:無休
ライブチャージ:1000円(お通し代500円別途)

Webサイト:姫-Hime-、民謡ステージ歌姫

大城和歌子

横浜生まれのウチナーンチュ二世。東京での出版社勤務を経て1998年11月に沖縄移住、フリーのライターとなり「和歌之介」のペンネームで活動。主に音楽系記事を得意とし、沖縄インディーズの隆盛を間近で体感した。自らも音楽活動をゆる~く展開。現在、那覇市内でレコードバー「リンドウ」を営んでいる。