旅レポ
静岡市でとれたての生の桜えびを堪能、「一富士ニ鷹三茄子」をリアル体験してみた
(2015/12/3 00:00)
静岡市は、静岡の旬のものや観光名所を紹介するプレスツアーを11月27日に実施した。桜えびの秋漁は10月29日から解禁となっているので、ツアーではまず旬の海の幸を味わい、国宝の「久能山東照宮」で正式参拝体験や三保松原の散策により文化や風土を理解し、外国人観光客も多く訪れる人気スポットや静岡グルメを味わうなど、静岡の魅力を堪能してきた。その様子をレポートする。
静岡駅に着くと、ツアー工程表には記載がなかったがサプライズとして一行を静岡市長 田辺信宏氏が出迎えてくれた。田辺氏は「静岡市の特徴を聞いても即答をもらえることが少ないのは、静岡市の情報発信が上手くないから。ぜひ、静岡の魅力を多くの方にお伝えいただきたい」と、参加者への挨拶のなかで力強く語った。続けて「静岡にはよいところ、見どころがいっぱいある。静岡にしかないものもたくさんある。今日は1日、楽しんでいってください」と送り出してくれた。
今が旬の桜えび、秋漁真っ最中の味覚を「浜のかきあげや」で味わう
ツアーバスに乗り込み、最初に向かったのは由比港の「浜のかきあげや」。10月29日~12月24日は桜えびの秋漁が解禁となっており、訪れた11月27日は収穫のピークだった。筆者も知らなかったのだが、桜えびの漁期は年2回であり、春漁は3月中旬~6月初旬、秋漁は10月下旬~12月下旬で、それ以外の時期は世界的にも希少な生物である桜えび保護のために休漁となる。旬を味わうなら今がチャンスである。
駿河湾は富士川をはじめ複数の河川から清流が流れ込んでいるが、その淡水が混入する河口付近に桜えびは群れて生息している。桜えびは一年一代、雌は1月頃に4cmくらいに成長し、その夏に産卵し一生を終える貴重な生物であり、明治20年代後半から駿河湾での漁が盛んになった。殻から頭まで、栄養素をまるごと食べられる理想的な食品である桜えびにはカルシウムやマグネシウム、リン、鉄、銅、亜鉛などの日本人に不足しがちである重要な栄養分を豊富に含むほか、コレステロール値を下げるEPA・DHAやタウリンなども含まれており、現代人が必要としている栄養素を効率よく摂取できるのである。桜えびは駿河湾のほかに東京湾・相模灘にも生息しているが、漁業の営業許可を静岡県だけが認めていることから国内の桜えびの水揚げは100%駿河湾であり、かつ桜えび漁の許可証を持つ船は由比・蒲原・大井川地区の合計で120隻しかない。さらに、桜えびは2隻の船が1対となり操業する漁法によって捕獲するので、実質60組しか漁を行なっていない貴重なものなのである。
由比港に着き、さっそく獲れたての桜えびを贅沢に盛った「漁師の沖漬丼」をいただいた。本当に水揚げされた段階で艶やかな桜色をしているそうで、この丼に盛られている桜えびたちも美しい色合いで食欲をそそってくれた。カニ・エビなどの甲殻類の旨味は殻や頭に凝縮されているので出汁として取り出すしかないが、桜えびは旨味を煮出す必要がなく、丸ごと味わことができる。口に頬張ればプチとした食感とともに身が弾け、汐の香りと芳醇な甘さが広がる。正直言って、これは「たまらない」。獲れたての生の桜えびを特製のタレに漬け、刻み海苔とネギに合わせて盛られているだけのシンプルな丼ものではあるが、どんどん箸が進む。またテーブルにはポットに入れられた出汁が用意されているので、途中まで食したらぜひともお茶漬けにして二度目の美味しさも味わってほしい。
えび好きはもちろんだとは思うが、あまりえびが好きでない人でも甲殻類アレルギーではなければ一度食して、この駿河湾の恵みを味わってほしい。桜えび休漁期間中は金、土、日のみの営業とのことなので、生の桜えびをいただくには本当に今が2015年最後のチャンス。土日は県外から来訪する方も多く、昼食時には行列になることもあるようなので、少し早めの訪問がよいかも知れない。
さらに桜えびの多くの水揚げを有する由比港で「かきあげや」の名前を冠しているくらいの名物、桜えびの「かきあげ」をいただいた。こちらもサクっとした歯触りの中にプチっとした身の弾けと汐の香りや甘さが口の中に広がり、まったく別物の食感。これも訪れたら食さない手はないものだと感じた。他にも、由比港と言えば「しらす」。桜えびの釜揚げと、しらすの釜揚げをふんだんに使った「由比どんぶり」もお勧めである。
由比港内の直売所では「生桜えび」「釜揚げ桜えび」「素干し桜えび」「生しらす」「ゆでしらす」などが、漁協直売価格で購入可能。もちろん生桜えびの試食も可能なので、ぜひ足を運んでみて欲しい。また、由比港まで行けない人は漁協直売のネットショップもあるので、自宅から気軽にオーダーすることもできる。
そのほか、一般向けに桜えびを中心としたレシピの料理教室や、漁船に乗船し由比沖まで遊覧する体験教室なども不定期ながら開催されているので、由比港漁業協同組合のWebサイト(http://www.yuikou.jp/)を参照していただきたい。
水揚げされたばかりの桜えび、マグロ、蟹なども直売価格の「河岸の市」
次に向かったのは、清水魚市場「河岸の市」。ここの「いちば館」では、中卸人がプロの確かな目で選んだ新鮮な魚介類や海産物を、直接販売により安価で購入することが可能。また「まぐろ館」は新鮮な海の幸を堪能できる食事処が数店舗入っている。このため、静岡市民のみならず、関東地方や中京地区からも多くの観光客が訪れている。新鮮な旬の海産物が市場の直売価格なのだから、静岡に行ったら足を延ばしておくべきだろう。ただし日曜日や祝日の午後は、駐車場の入場待ちで渋滞が起こる日も多いので、できれば早めの時間帯に訪れたほうがいい。
国宝指定された社殿は、まさに芸術品。徳川家康公が眠る「久能山東照宮」の正式参拝体験
さて、ここからは「一富士ニ鷹三茄子をリアル体験」の始まり。向かったのは「久能山東照宮」。ツアーガイドは「これから久能山東照宮に行って、鷹を見ていただきます」としか言わなかったので、東照宮で鷹を飼っているのか、鷹匠が居てアトラクションでもあるのかと勝手に思っていたが、実は違っていた。
征夷大将軍に就き泰平の世を開いた徳川家康公は、晩年を静岡で過ごし、遺命として久能山に眠ることを家臣に託したことから、久能山東照宮は徳川家康公をお祀りする最初の神社となり「静岡の聖地」とも呼ばれている。建立当時の最高の技術と芸術の結晶である社殿は2010年12月に国宝指定されている。この境内の中に鷹の彫り物があるのだと言う。どこにあるかと思い、社殿の隅から隅まで目を凝らすが自分では見つけられなかった。実は社殿の門扉の裏側にあしらわれているものであり、特別な催事などで門扉を閉めないと拝めないもの。本ツアーでは、この鷹の彫り物も見ることができた。機会があれば、ぜひ実際に見て頂きたい美しさだった。
今回特別に、「正式参拝」を体験させていただいた。通常は社殿前の賽銭箱のところまでしか入れないが、正式参拝であるので社殿の上りご祈祷をしていただいた。家康公の功績から無事長久、開運厄除、学芸成就、病気平癒の神として崇められているので、さまざまなご加護をいただけることを期待できる。なお、拝観料は大人500円、小人200円。
今回はバスで日本平まで登り、ロープウェイで降りていくコースだったので訪れなかったが、日本平ロープウェイが開通するまでは東照宮への唯一の参拝路だったのは1159段の石段で、山下より909段上がった所にある「一ノ門」からの眺望は絶景。健脚な人はぜひ自身の目で雄大な駿河湾をご確認いただきたい。
天気の良い日は富士山が眺められる「三保松原」で美しい日本一の山を眺める
「一富士ニ鷹三茄子(いちふじ にたか さんなすび)」といわれても何のことだか分からない方も居るのではないだろうか?これは、初夢に見ると縁起がよいものを表わすことわざ。諸説あるが、江戸時代に富士講組織があった「駒込富士神社」の周辺に鷹匠屋敷があったことや名産物に駒込茄子があったために、縁起物として「駒込は一富士二鷹三茄子」と川柳に詠まれていたことから広まったのが有力説のようだが、徳川家康公の縁の地である駿河国での高いものを順に、富士山、愛鷹山、他国よりも早く産出する初物のなすの値段で一、二、三としたなど、その解釈は様々でなので、現代人にとっては「ともかく縁起のよいもの」と捉えるのが正しいかも知れない。
その「富士山」を拝むポイントとして名高いのが景勝地「三保松原」。ツアーの次の移動先は、史蹟名勝天然紀念物保存法(文化財保護法の前身のひとつ)により、天橋立とともに日本初の名勝に指定され、現在では富士山世界文化遺産を構成する三保松原越しに眺望を楽しむ場所だった。奈良時代に天女が舞い降りたという「羽衣伝説」が語られ、日本最古の歌集「万葉集」に三保松原を詠んだ和歌もあり、平安時代には「白砂青松」と富士山の眺望で全国にその名が知れ渡ったようだ。
海外からも観光客が多数来訪。大人も子供も楽しめる「ちびまる子ちゃんランド」
清水市と言えば、さくらももこのコミック・TVアニメ「ちびまる子ちゃん」を思い浮かべる方も多いのではないだろうか?1986年にコミック誌「りぼん」(集英社)での連載が開始され、1990年1月からTVアニメシリーズの放映が始まった。2015年はTV放送25周年を迎えたアニバーサリーイヤーであり、12月にはFNS系列での特別番組の放送も予定されている。そのちびまる子ちゃんの世界を、さくら家、学校、公園など、作中シーンの再現を楽しめるミュージアムが「ちびまる子ちゃんランド」である。
リアルタイムでアニメを見ている子供には物語を思い出しわくわくするような展示や、大人には昭和の頃を思い出し懐かしさを感じさせるような様々なコーナーが設けられている。ちびまる子ちゃんの世界を体験するゾーンは有料であるが、無料ゾーンでもオリジナルグッズが購入できたり、設置されている「ちびまる子ちゃんランドポスト」に、はがきや手紙を投函すればオリジナルの消印が押されて配達されるなど、楽しめる内容となっていた。TVアニメシリーズの放映開始が1990年。リアルタイムでアニメを見て育った少女たちのなかには、この後数年で母親になる方も多いだろうから、今後は母子二代で楽しめるスポットになるのは間違いないだろう。
1999年にオープンし2008年にリニューアルした「ちびまる子ちゃんランド」は、昨今のインバウンドの高まりを受けて訪日外国人が多く来館している。日本のTVアニメシリーズ放送開始の4年後から台湾での放映開始を皮切りに東アジア圏での放送がスタートし、台湾・中国・韓国・香港でも「日本の子供たちの日常感」が支持を得ていることから、2014年は1万6500人が来館、2015年は3万2000人を越える来館者数になるのではないかとのこと。エスパルスドリームプラザを運営するドリームプラザ 代表取締役社長 大井一郎氏は「中国からのお客様は成田や羽田を利用して来られるが、台湾のお客様は静岡空港の利用比率が高い」と語っていた。
また12月23日まで、ちびまる子ちゃんランドだけの特別な年賀消印を押して年賀状を出せるイベントが開催されているが、ランドで購入したハガキや持ち込んだ年賀状をカウンターのスタッフに直接手渡しすることが必要で、誤って「ちびまる子ちゃんランドポスト」に投函してしまうと、通常の郵便物扱いとなってしまうのでご留意いただきたい。
一富士ニ鷹三茄子グルメでいい夢を。「一富士ニ鷹三なすび弁当」と静岡茶を楽しむ
さて、鷹を見て富士山を見たので「一富士ニ鷹三茄子リアル体験」の最後を締めくくるのは「茄子」。プレスツアーの行程表には「一富士ニ鷹三茄子グルメ」と書かれていたのだが、その正体は静岡市内のケータリング会社「なすび」が販売している「一富士ニ鷹三なすび弁当」(1580円税別)だった。
なすび 専務取締役 藤田尚徳氏によると、なすびでは2013年から富士山を模したおむすび、鷹の羽をイメージした牛蒡のせごはん、家康公が愛した茄子田楽などを1つの弁当に詰め込むことで「縁起の良い」弁当としてこの一富士ニ鷹三なすび弁当を販売し、記念日や慶事の席などで広く利用されているとのこと。実際にいただいてみたが、とても品のよい味であり、かつさまざまな食材が詰められており、満足できるものだった。
「一富士ニ鷹三なすび弁当」は通常時は5個から注文可能となっているが、2016年1月4日~30日の間のみ1個から注文可能となるので、期間中に静岡を訪れる方は昼食にも利用可能。一度食してみてはいかがだろうか。
また、静岡と言えば「お茶」。足久保で作り出される「本山茶」が静岡茶発祥の地と言われており、徳川家康公も愛飲し、明治天皇にも献上された歴史も持っている「静岡茶のエリート」である。今回のツアーの締めくくりに用意されたのは、創業以来64年間「本山茶」を主体に加工・販売をしている小柳津清一商店の「駿府御用達 深蒸し煎茶 匠」のお茶淹れ体験だった。
小柳津清一商店は、何より“飲んで美味しいお茶”にこだわることから、ほぼすべての商品が「深蒸し煎茶」である。お茶淹れというと「鉄瓶で湯を立て畳の上で正座」を思い浮かべる方も居るのではないかと思うが、品質管理部長 石原健士氏が推奨するのは、冷まし湯で淹れる冷たいお茶だった。通常、お茶淹れは熱い湯をイメージしてしまうが、冷まし湯を使うことでお茶本来が有している成分を有効に摂取できる。このことから近年は好んで冷まし湯で淹れる飲み方が増えているとのこと。急須に茶葉を入れ冷まし湯を注ぎ5分待つ、それだけのことであるが、実際にいただいてみると本山茶だということもあるが、その甘さや香りが引き立てられており非常に満足のいくものだった。
また、小柳津清一商店はお茶を使った製菓にも力を入れており、実は楽天バームクーヘンランキングで2015年9月~11月26日まで1位を獲得し続けている「CHIYOの和」(ブランド名は雅正庵)の製造元。そのほかにも高級抹茶を使った生クリーム大福や濃厚な抹茶チョコが包まれたサブレなど、お茶を中心としながらも新しい味わい方を探求し続けているので、ぜひこちらもお試しいただきたい。