旅レポ

中国返還20周年を控える香港のいま(その1)

2階建て観光トラムに乗ってみた。日本語の音声ガイド付きで香港島北部を1時間

 中国の特別行政区である香港。中国内の都市ながら、かつてのイギリス領時代の自由経済文化が根付いており、中国とはまた異なる歴史や文化を重ねてきた。2017年には中国返還20周年を控え、香港・中国間の高速鉄道の建設も進められており、香港も変わり続けている。今回、香港政府観光局が主催した香港プレスツアーに参加し、現在の香港の姿をたどってみた。

香港といえば夜景。あいにくの天気だったため、高層ビル群が雲のなかにすっぽりと隠れてしまっている

 香港は中国南東部に位置し、香港国際空港のある最大の島である大嶼(ランタオ)島、政治・経済の中心地である香港島といった大小260近い島々と、中国本土側の九龍半島からなる。主な観光エリアが九龍半島と香港島に分かれているが、東京都の約半分ほどとコンパクト。地下鉄が発達しているので、どちらのエリアに宿泊しても、移動はそれほど苦にならない。

 東京からは飛行機で4~5時間。時差はマイナス1時間となっている。今回はキャセイパシフィック航空での飛行だったが、LCCも頻繁に運航しており、比較的安価に訪れることができる。

香港国際空港内にある歓迎の看板

 今回の旅程では10時35分の飛行機で出発し、15時ごろには香港に到着。まずは九龍半島にあるホテルにチェックインするためにバスで移動した。日曜の午後だったため、道は比較的空いており、30~40分でホテルに到着。

 香港の地下鉄「MTR」の佐敦駅から4分ほどのところにあるブティックホテル「Hotel Stage 登臺」は、すっきりとしたデザインが特徴で、館内にはアーティストの作品がさりげなく展示されている。また、会議室を備えるなどビジネスにもレジャーにも活用できる新しいホテルだ。近くには「廟街(テンプルストリート)」、いわゆる「男人街」があり、夜遅くまで街はにぎわっている。

香港でブティックホテルというと、このような規模は大きくないがスタイリッシュなホテルを指す
広々として開放的なロビー。受付も落ち着いた雰囲気

 着いて早々、まずは香港島へ移動。MTR上環駅の近くにある、古い洋館「西港城(ウェスタンマーケット)」に案内される。この建物は1906年建築、エドワード様式のレンガ造りの建物で、香港に現存する最古のマーケットとして、「香港法定古蹟」に認定されているという。現在はショッピングモールとして活用されており、外観を見学するだけでも楽しい。ただ、今回の目的地はこのモールではなく、そのそばにあるトラム(路面電車)の駅だ。

 香港島は北部を東西にトラムが走っており、MTR、バスと並ぶ移動手段として現地でも親しまれている公共交通機関だが、ここで今年、2016年1月から新しいサービスが開始されているのだという。

香港最古のマーケットとして知られるウェスタンマーケット
現在はさまざまなショップが入居するモールとなっている
香港の足として親しまれている2階建てのトラム
TramOramic Tourで使われるトラム

 それが「TramOramic Tour」。香港のトラムは、1900年代初頭から利用されていて長い歴史があるが、そのなかで、1920年代に使われていた車両を再現して、観光トラムとして運行しているのがこのTramOramic Tourだ。

 このトラムは西港城駅から銅鑼湾(コーズウェイベイ)駅までを往復しており、運行は1日3往復。西港城からは10時30分、14時30分、18時30分、銅鑼湾からは11時40分、15時45分、19時55分に出発する。通常のトラムは各駅に停車するが、TramOramic Tourは終点までノンストップで走る。

 1920年代のトラムの再現ということで、車両自体は新しいが、デザインはレトロな雰囲気。2階の前方半分はオープンエアとなっているので、開けた視界で香港島の景色を楽しめる。

これは初期のトラムの写真。イギリス領時代のもの
これがモデルとなった1920年代の車両。このころにはすでに2階建てになっていたようだ
再現されたレトロな雰囲気の車両
運転席も再現
車内もレトロな雰囲気
2階席からだと、普段より高い視点で香港の街を楽しめる
正面右側にあるのがウェスタンマーケット。今年から始まった観光トラムのためか、トラムの写真を撮ろうとしている人たちもいた
香港らしいネオンの街並みを楽しめるのは、夜の便ならでは
左側に見えるのがトラムの駅。通常のトラムだと停車するが、このトラムは途中停車がない

 通常のトラムでも同様の体験は可能だが、一般利用のため停車も多く、現地の人の乗り降りも多い。そのため、あまり落ち着いて見物している気分にはなれない。その点このTramOramic Tourであれば、そういったわずらわしさがなく観光できる。しかも、車内には音声ガイドが備えられており、配布されるイヤフォンからは英語や中国語だけでなく、日本語を含む8カ国度で観光案内が流れ、トラムの歴史や沿線の情報をいろいろと教えてくれる。

トラム同士のすれ違いは、先頭に乗っているとなかなか迫力がある
近代的な外観のビルだが「このビルは風水的に~」といった音声ガイドもあって興味深い
新しさと古さの同居する香港の街並み
走行中各所に名所があり、音声ガイドを聞いているだけでも勉強になる

 今回は夜の便に乗車したため、香港らしい色とりどりのネオンなどの夜景を堪能できた。観光案内を聞けるため、翌日の観光の参考にもなる。日本からの到着が夕方になるのなら、まずはこのTramOramic Tourに乗り込んで街の概要をつかむというのはなかなかよいアイデアのように思う。

繁華街から閑静な地域まで、さまざまな香港の顔が見られる
TramOramic Tourに乗車するともらえる「ゴールデンチケット」。これで2日間、通常運行のトラムが乗り放題になる

 乗車は予約制で、チケットは大人が95香港ドル、子供(4~11歳)が65ドル。これで片道の乗車に加え、翌日から2日間、通常運行のトラムが乗り放題となる。香港らしい2階建てのトラムでゆったりと観光ができ、翌日以降のトラムでの移動にもそのまま使えるのは便利だ。なお、乗車の際にもチケットを購入できるが、先着順なので、トラムのWebサイトからあらかじめ予約をしておいた方がよいだろう。

 TramOramic Tourは片道約1時間。まだ始まって間もないツアーだが、特に初めて香港を訪れる人にはお勧めだし、さまざまに細かい観光案内があるので、慣れた人でも一度体験してみると面白そうだ。TramOramic Tourは香港島の北部を横断するだけなので、これでもまだまだ香港の一部だが、お手軽に効率よく香港の雰囲気を味わうことができた。

【香港の観光トラム「TramOramic Tour」】

小山安博