旅レポ

世界最大のIMAXシアター「IMAX Theatre Sydney」にスター・ウォーズを観に行く

ANA 羽田~シドニー便で行く、映画の旅

オーストラリアのシドニーにある世界最大のIMAXシアター「IMAX Theatre Sydney」

 映画館などの話題で「IMAX(アイマックス)」というキーワードを耳にしたことがあるだろうか。ここ数年、国内でもいくつかのシネマコンプレックスでIMAXシアターが登場し、人気を集めている。そんなIMAXシアターのなかで、世界最大のスクリーンを持つシアターがオーストラリアのシドニーにあるという。一度は世界最大のIMAXシアターを観てみたいと思うようになり、いよいよ今年1月、現在、国内でも上映中の「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」を観に行くことにした。

なぜ、IMAXシアターなのか?

 筆者は忙しい合間をぬって、週末によく映画館に出かける。ハリウッドの映画を中心に話題作や大作はひと通り観る方だが、個人的にお気に入りなのは2015年12月に最新作が公開された「007シリーズ」。これまでも007シリーズにまつわる旅をたくさん楽しんできたけど、その話はまた別の機会にするとして、今回は「IMAX」がテーマだ。

 ここ数年、国内でもいくつかのシネマコンプレックスに登場してきたIMAXシアター。「IMAX」とはカナダのIMAX Corporationが開発した映写システムと動画フィルム規格のことで、一般的な映画よりも大きなスクリーンを使い、迫力ある映像をクリアな画質で楽しめるのが特徴だ。映画館だけでなく、博物館や水族館といったアトラクションでもIMAXシアターが開設されていることがあるので、ご覧になったことがある人も多いだろう。

 大きなスクリーンで、迫力ある映像を楽しめることで知られるIMAXだが、元々は70mmのフィルムを水平方向に送る独自規格の動画フィルムの規格とそのフィルムを映写するシステムのことを指す。一般的に、映画は35mmのフィルムを縦方向に送る仕組みだが、IMAXではその4倍の面積を持つ70mmフィルムを横向きに送る。4倍の面積のフィルムで撮影した映画は、一般的な映画よりも高解像度の映像を撮影でき、上映時も高解像度の映像が楽しめるという特徴を持つ。

 ただし、IMAXのフィルムはサイズが大きく、カメラのサイズも大きくなるため、動き回るような撮影に不向きなうえ、撮影時にフィルムのローラー音が大きく、映画の撮影などには向かないと言われていたそうだ。もちろん、フィルムも機材も編集もコストが高くなるため、かなり予算のある映画でなければ、IMAXフィルムでは撮影できず、一部のみをIMAXフィルムで撮影する映画も少なくない。ちなみに、現在、国内で開設されているIMAXシアターは、IMAXフィルムではなく、IMAXフィルムや35mmフィルムからから起こしたデジタルデータを2つのプロジェクター(3D上映時)で上映する「IMAXデジタルシアター」というシステムを採用する。

 そんな特徴を持つIMAXシアター、IMAXフィルムに興味を持ったのは、クリストファー・ノーラン監督が手がけた「ダークナイト」の撮影で使われていると知ったときだ。筆者は映画やAudio&Visualの専門家ではないため、あまり画質のことは分からないが、冒頭の銀行強盗のシーンなどは、それまでの映画とは少し違った空気感というか、解像感があるという印象を持った。その後、クリストファー・ノーラン監督は続編の「ダークナイト・ライジング」、2014年公開の「インターステラー」でもIMAXフィルムによる撮影をしたが、そんな話題を語る映画のブログや記事(意外に映画サイトの記事は少ない)などを読んでいるとき、今回の旅の目的となったシドニーにある“世界最大のIMAXシアター”のことを知った。

 IMAXフィルムで撮影された映画について、もうひとつ興味を持ったのが画面の比率だ。一般的な映画は「シネスコ」(シネマスコープの略)と呼ばれる「2.35:1」という横長の映像が上映されるが、IMAXフィルムで撮影された映画は「1.43:1」という正方形に近いサイズになる。しかし、多くの映画館はシネスコの比率で上映するように作られているため、IMAXフィルムで撮影された映画を一般的な映画館で上映するときは、上下が切れた状態の映像しか上映できない。つまり、監督をはじめとした制作陣が意図した映像を観ることができないわけだ。映画によっては、迫力あるシーンのみをIMAXフィルムで撮影し、その他のシーンはシネスコサイズという構成になっているものがあるが、肝心の迫力を求めたシーンの上下が切れてしまうため、制作者が意図した迫力を味わえないことになる。

世界最大のIMAXシアター「IMAX Theatre Sydney」

 少し長くなってしまったが、ここまで説明してきたように、IMAXシアターで観る映画は、映画ファンにとって、非常に魅力的なものだ。ただし、国内のIMAXシアターよりも大きなスクリーン、縦横比がIMAXフィルムにあったシアターで映画を楽しむことができれば、今まで以上に迫力ある映像体験ができるのではないかということだ。IMAXシアターに関するブログなどをチェックしていると、その思いを果たすため、実際に海外のIMAXシアターにまで足を運び、映画を観たという人がいるという。それなら、自分自身もチャレンジしてみようということで、今回の旅を企画したわけだ。

シドニーにあるDarling Harbour。中央に見えるのがIMAX Theatre Sydney。週末の夜は湾内で花火が楽しめる

 そして、その目的地となるのは世界最大のIMAXシアター「IMAX Theatre Sydney」だ。場所としてはシドニー市内のDarling Harbour(ダーリングハーバー)というところにあり、国内のようなシネコンではなく、IMAX対応の巨大スクリーン1つのみで運営されている映画館だ。世界最大を謳うスクリーンサイズは、高さ29.42m、幅35.73mなので、7~8階建てのビルに匹敵する高さがある。国内のIMAXシアターはスクリーンサイズが公開されていないところが多いが、筆者が以前、よく利用していたIMAXシアターのひとつ「109シネマズ川崎」は高さ約8.5m、幅約18mとされているので、およそ6倍以上の大きさになる。つい最近まで、国内でもっとも大きいとされていた「成田HUMAXシネマズ」で高さ約14m、幅約24mなので、これと比較しても約3倍は大きい計算。ちなみに、筆者はまだ足を運んだことがないが、2015年11月、大阪府吹田市にオープンした「109シネマズ大阪エキスポシティ」は前述のIMAXフィルムと同じ「1.43:1」の比率で、高さ約18m、幅約26mのスクリーンで映像を楽しめる。いずれにせよ、国内で楽しんでいるときよりも数倍の迫力ある映像を期待できるわけだ。

 実際に観る作品については「IMAX Theatre Sydney」のWebページで確認することができ、1月下旬は昨年12月に公開されたばかりの「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」が上映されていることが分かった。同時に、約45分のIMAXフィルムによるドキュメンタリーが上映されているので、これもIMAXシアターの本領を知るために、鑑賞してみることにした。

シドニーと言えば、やはり、オペラハウス。見学もできるが、オペラも鑑賞できる
Darling Harbour内にあるシドニー水族館ではさまざまな海洋生物を見ることができる。トンネル水槽など、見どころもたくさん
Darling Harbourには湾内クルーズの船舶が数多く停泊している。1~2時間くらいで湾内を回れるので、手軽に楽しめる。

シドニー便は今がおトク

 シドニーに行くには当然のことながら、飛行機を利用する。現在、日本国内からシドニー行きの直行便があるのは、ANA(全日本空輸)、JAL(日本航空)、カンタス航空の3社で、飛行時間は往復とも約10時間弱といったところ。国内の発着空港はANAとカンタス航空が羽田、JALが成田となっている。ちなみに、乗り継ぎ1回を含む旅程にすると、シンガポール航空やタイ国際航空、キャセイパシフィックなど、日本でもおなじみのアジア圏の航空会社を利用できるが、飛行時間は片道で乗り継ぎ時間を含めて、15時間を超える。

 今回、筆者は2015年12月にシドニー線を就航したばかりのANAで、羽田~シドニー間のNH879便、シドニー~羽田間のNH880便を利用した。ANAでは羽田~シドニー就航を記念して、オセアニア行きの割安な航空券を販売していた(ビジネスクラスは2月29日まで、プレミアムエコノミーは3月26日まで販売中)。ちなみに、このANAの施策に対抗し、他の航空会社もオセアニア路線で割安な航空券の販売やキャンペーンを実施しており、シドニー便は今が旬とも言える状況になっている。

 さて、実際の移動の状況だが、まず往路のNH879便は羽田を22時10分に発ち、シドニーには同日9時35分(現地時間)到着というスケジュールになる。この時期、オーストラリアはサマータイムなので、時差は2時間。新路線だからか、今回搭乗した機材は最新のボーイング 787-9型機で、非常に快適に過ごすことができた。食事は到着前の朝食が提供されるスケジュールだったので、羽田で搭乗前に夕食を済ませておいた方がいいかもしれない。

 到着はほぼ予定どおりの時刻で、入国審査を経て、10時過ぎには空港の到着ロビーへ出ることができた。到着後に最初にやることと言えば、海外旅行で欠かせない現地の通信環境の確保。シドニー空港は到着ロビー内に現地の携帯電話会社のOptusとVodafoneの受付カウンターが設けられていて、そこでプリペイドSIMカードを入手することができた。この顛末は僚誌「ケータイ Watch」の「みんなのケータイ」で解説しているので、ご覧いただきたい。

シドニー空港は到着ロビーに携帯電話事業者のカウンターがあり、すぐにプリペイドSIMカードを購入できる

 市内への移動は「エアポートリンク」と呼ばれる電車、「シドニーエアポーター」などのシャトルバス、タクシー、ホテルのシャトルバスなどがある。今回は家族との旅行で、スーツケースもあるので、タクシーで移動することにした。料金は約45オーストラリアドル(約4140円/1オーストラリアドル=92円で換算)で、20分ほどで予約したホテルに到着した。

 ホテルについては、IMAX Theatre Sydneyの徒歩圏内で、自分自身が普段利用しているホテルグループのホテルに空きがあったので、そこを確保した。IMAX Theatre Sydneyまでは徒歩で約10分弱といったところ。IMAX Theatre Sydneyは前述のとおり、Darling Harbourというところにあり、周辺にはいくつものホテルが並び、湾内などを観光できる遊覧船や定期船なども多数、発着している。観光するときの拠点としてはCircular Quay(サーキュラーキー)が知られていて、シドニーの名所のひとつである「オペラハウス」も程近いところにある。Darling Harbourはそこから少し離れているが、こちらもシドニー水族館などの観光スポットが数多くある。どちらのエリアを利用するのかは、自分の観光のスケジュールと合わせて、検討するといいだろう。

高さ30mのIMAXスクリーンに圧倒される

 さて、ホテルにチェックイン後、いよいよお待ちかねのIMAX Theatre Sydneyでの映画鑑賞へ向かう。と言っても前述のように、IMAX Theatre Sydneyはシネコンスタイルではなく、1つのスクリーンでさまざまな作品を上映しているので、上映時刻に合わせ、ある程度の時間の調整が必要になる。

IMAX Theatre Sydneyの建物の外観
IMAX Theatre Sydneyの入口付近。現在上映中のタイトルがゲートに書かれている
ロビーはそれほど広くない
IMAX Theatre Sydneyの売店。オーストラリアらしく、ドリンク類のサイズは日本よりひと回り大きい。支払いにはNTTドコモのiDユーザーが使えるNFC決済サービス「PayPass」が利用できた
ポップコーンは2つサイズがあり、こちらは中程度のサイズ
チケットを持ち、シアターへの入口に並ぶ。ドキュメンタリーは自由席だが、入場者はそれほど多くない

 筆者が訪れた1月最終週のIMAX Theatre Sydneyでは、12月公開の「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」や「レヴェナント: 蘇えりし者(THE REVENANT)」が上映されていて、そのほかに日替りでいくつかのIMAXフィルムで制作されたドキュメンタリーが上映されるというスケジュールだった。いずれの作品も当然のことながら、英語での上映になるが、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」はすでに何回か映画館で観ていて、ひと通りのストーリーが分かっているうえ、ドキュメンタリーも基本的には映像が中心になるため、あまり英語が分からなくても何となく内容が理解できるものだ。

 ただ、ひとつ注意が必要なのが料金で、日本よりもグッと高く、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」などの通常の映画は大人が35オーストラリアドル(約3220円)、子供が25オーストラリアドル(約2300円)で、45分のドキュメンタリーは大人が23オーストラリアドル(約2116円)、子供が17オーストラリアドル(1564円)となっている。「FAMILY PASS」というチケットも用意されているが、大人と子供2人ずつで通常の映画が98オーストラリアドル(約9016円)、短編のドキュメンタリーが68オーストラリアドル(約6256円)になる。これに加え、IMAX Theatre SydneyではWebページでチケットを先に購入できるのだが、その手数料として、1枚あたり1.95オーストラリアドル(約179.4円)がかかるので、事前に予約して、大人2人で「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」を観ると、約7000円ほど、かかってしまう計算だ。ここのところ、為替レートが乱高下しているが、元々、シドニーは物価が高いと言われており、映画だけでなく、食事などもちょっと負担が大きいと考えておいた方がいいだろう。

 まず、最初に鑑賞したのは「HUMPBACK WHALES 3D」というIMAX 3Dのドキュメンタリー。IMAX Theatre Sydneyでは「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」などの映画は席が指定だが、こうしたドキュメンタリーは自由席なので、チケットを手に入口に並ぶ。

 係員がドアを開け、チケットのチェックを受け、シアターに足を踏み入れる。シアターにはスクリーンに向かって、最前列左端の出入り口から入るが、シアターに入ると、左手に湾曲した巨大なスクリーン、右手に拡がる異様に傾斜した観客席に驚かされる。

「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」を鑑賞。滞在中に3回も観ることができた
入口ではストーム・トルーバーとBB-8が迎えてくれる
シアターの右側の最後部から撮影。傾斜が強いのがよく分かる
シアターの入口を入ると、右手に座席が見える。急な傾斜が付けられているため、階段も手すりがないと登りにくい
通常の映画チケットの料金表。日本に比べると、グッと高い印象
短編のドキュメンタリーの料金表。通常の映画よりは安く設定されている
「HUBBLE 3D」も観ることができた。3Dが際立っていて、手を伸ばせば、出演者に届きそうな印象

 観客席は最前列のA列から最後列のK列まであり、左右は最前列がもっとも狭く37席で、もっとも広いG列からJ列は60席が並ぶ。ただ、最前列はかなりスクリーンを見上げることになってしまうため、実際にチケットは販売されていないようだ。左右の中央に位置して、高さ的にももっとも見やすそうなのがG列とH列の28~32番付近で、座席指定の映画もこの付近から埋まっていく。

 入口からもっとも見やすそうな中央付近へ移動するが、観客席の傾斜が急なため、階段も少し大股でしっかりと登らないといけない印象だ。そのうえ、シアター内は暗いため、階段につまづくと、下の段まで転げ落ちてしまいそうなくらいで、階段の途中にはいくつか手すりも付けられていた。スクリーンを見上げながら、どのあたりに座るのかを少し迷ったが、まずはG列の中央付近に座ってみることにした。

 席に着くと、眼前に巨大なスクリーンが拡がり、その迫力に圧倒される。各列で傾斜が付けられた観客席に実際に着席してみると、前の席に座った人の頭の位置よりも後ろの席に着席した筆者の膝の方が少し上に位置するくらいの段差が付けられていることが分かった。そのため、スクリーンにまっすぐ向かってみると、視界の下の方に前席の人の頭がわずかに見えるくらいで、ほぼ視界のすべてをIMAXスクリーンが覆うようになる。

 IMAX 3Dメガネをかけ、上映が始まると、目の前に拡がる映像の迫力に再び驚かされる。「HUMPBACK WHALES 3D」はザトウクジラの生態を追った海洋ドキュメンタリーで、海中でザトウクジラに近づいて泳いだりザトウクジラがジャンプするシーンなどを捉えている。海のシーンの美しさもさることながら、映像への没入感がかなり強く、まるでいっしょに海の中から見ているような錯覚に陥ってしまう。ただ、3Dの映像についてはやや好みが分かれるところで、旅の疲れも影響したのか、少し目がショボショボしてしまった。

いよいよ「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」を観る!

 そして、次にもっとも楽しみにしていた「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」を観ることにした。国内の映画館では「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」はIMAX 3Dで上映されているが、IMAX Theatre Sydneyでは公開時から通常のIMAX、つまり2DでのIMAXで上映されている。座席は日本を発つ前に、IMAX Theatre SydneyのWebページで予約しておいたG列30番に着席。おそらくほぼ中央に近い席になるはずだ。

 予約しておいた座席に着席し、予告編などが流れたあと、いよいよ本編の開始。まず、本編の冒頭、おなじみの「LUCASFILM」「STAR WARS」のロゴが眼前のスクリーンに表示され、その巨大さに思わず、のけぞりつつ、笑ってしまいそうになる。続いて、いつもの「A long time ago in galaxy far, far away....」があのテーマ音楽とともに流れ、本編がスタートする。「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」はすでに国内でも観ているが、とにかく目の前に拡がるシーンがとてつもなく大きい。

 ただ、ここで気をつけなければならないのが映画の縦横比や画角だ。少しネタバレになってしまうが、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」は本編の冒頭から数十分程度は1.43:1のIMAXフィルムサイズではなく、2.35:1のシネスコサイズで上映される。そのため、高さ29.42m、幅35.73mの巨大スクリーンの中央部分のみに映像が表示され、上下部分は何も表示されない状態で上映される。とはいえ、国内の標準的なIMAXデジタルシアターの約6倍の大きさで上映されているため、出演者の表情などもよく見て取れる。「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」で言うと、ストーム・トルーパーを脱したフィン(ジョン・ボイエガ)は何度となく、顔に玉のような汗をかくシーンが映し出されるが、何度かテイクしたシーンを組み合わせたためか、シーンによって、少し顔の汗の様子が違うことも分かってしまう。映像の迫力だけでなく、表情などもよく読み取れる印象だ。

 オープニングから十数分後、いよいよIMAX Theatre Sydneyで観る「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の本領を発揮するシーンが映し出される。これも少しネタバレになってしまうので、観ていない人には申し訳ないが、惑星ジャクーで出会ったレイ(デイジー・リドリー)とフィン、ロボットのBB-8がストーム・トルーパーに見つかり、ミレニアム・ファルコンを奪って、敵のTIEファイターと戦いながら、宇宙に離脱するまで、この約10分程度の時間は、映像が1.43:1の縦横比率でスクリーン全体に拡げて映し出される。ミレニアム・ファルコンとTIEファイターの空中戦のシーンは、本作の見どころのひとつだが、スクリーン全体に映像が映し出され、視野全体に拡がるため、集中して観ていると、まるで自分がそこに座りながら、連動して動いているような錯覚すら覚えてしまう。この迫力と没入感、一体感は、今までの映画で味わったことがない感覚だ。

 このシーンの後、本編は再びシネスコサイズに戻り、最後までストーリーが展開されたが、シネスコサイズとはいえ、やはり、どのシーンも大きく映し出されるため、圧倒的な迫力と一体感で「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」を堪能することができた。ちなみに、滞在中、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」は日を変えて、3回、鑑賞したが、何度観ても映像の迫力には圧倒されるばかりで、いつもこのサイズで映画を鑑賞できるシドニーの人々が羨ましく感じられた。ちなみに、3回の内、1回は中央から少し外れたG列20番付近でも鑑賞したが、スクリーンが巨大なため、オープニングの「A long time ago in galaxy far, far away....」が斜めに流れるように見えてしまった。違和感なく作品を楽しみたいのであれば、もう少し中央寄りのG列やH列の28~32番付近で観ることをお勧めしたい。

「HUMPBACK WHALES 3D」で驚き、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」でIMAX Theatre Sydneyの醍醐味を味わったあと、もうひとつ観ておきたかったドキュメンタリーとして、「HUBBLE 3D」を鑑賞した。「HUBBLE 3D」はブルーレイのタイトルとしても販売されているので、ご存知の人も多いだろうが、1990年に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡が20年に渡って撮影した映像に加え、宇宙飛行士によるハッブル宇宙望遠鏡の修理とその訓練の様子などが収められたドキュメンタリーだ。この作品はIMAX 3Dでの鑑賞の評価が非常に高く、世界最大のスクリーンを持つIMAX Theatre Sydneyなら、最大限に楽しめると言われていたため、どうしても観ておきたかったわけだ。

「HUMPBACK WHALES 3D」のときと同じように、IMAX 3Dメガネをかけ、作品を見始めたが、暗く広いシアター内と宇宙空間の映像は非常にマッチングがよく、「HUMPBACK WHALES 3D」や「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」よりも格段に映像への没入感が増し、どっぷりと宇宙空間にハマってしまうような印象を受ける。宇宙飛行士が修理作業の訓練のため、準備をするシーンも映し出されるが、「HUMPBACK WHALES 3D」と違い、室内で撮影していることもあり、手を伸ばせば、宇宙飛行士に手が届きそうなくらいの臨場感で楽しむことができた。一見の価値はあると言われていたが、実際に観てみて、その言葉に納得した印象だ。

もっとIMAXシアターで楽しみたい

 今回は世界最大のスクリーンを持つIMAX Theatre SydneyでのIMAX映像を体験するために、オーストラリアのシドニーを訪れた。約4日間の滞在中、IMAXシアターばかりを観たのではなく、シドニーのシンボルでもあるオペラハウスをはじめ、湾内のクルーズなども楽しむことができた。オペラハウスではオペラを鑑賞したが、オペラハウス内部を見学する日本語ツアーにも参加することができ、建築から現在に至るまでの話題をいくつもうかがうことができた。湾内クルーズはCircular QuayやDarling Harbourで数多くのコースが用意されており、クルーズしながら、シーフードランチやディナーを楽しめるコースも選ぶことが可能だ。その他にもシドニー水族館やWILDLIFEなどの施設もあり、観光の見どころには事欠かない印象だ。ただ、惜しむらくは全体的に物価が高く、ちょっとした食事でも日本に居るときよりも割高になってしまうのは少し残念だ。筆者の帰国後、為替レートが少し円高に振れたため、多少、負担は減りそうだが、米国や欧州に比べても滞在費が高くなりそうなのが悩みどころだ。

 IMAXシアターについては、筆者は滞在中に「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」を3回、「HUMPBACK WHALES 3D」と「HUBBLE 3D」を1回ずつで、都合5回、IMAXシアターでの映像を体験することができた。映画は一般的に「観る」「鑑賞する」という表現を使うが、IMAX Theatre Sydneyでの鑑賞はまさに「体験」という表現が相応しいと感じるほど、圧倒的な迫力と一体感、臨場感を堪能することができた。「大きなスクリーンで映画を観るために、わざわざシドニーまで行くの?」という意見もあるかもしれないが、大画面を好む映画ファンなら、一度は体験しておいて損はないシアターと言えるだろう。

 少し余談になるが、シドニー旅行から帰国後、ちょうど2月5日に映画「オデッセイ(原題:THE MARTIAN)」が公開されたばかりだったこともあり、早速、109シネマズ二子玉川のIMAXデジタルシアターで鑑賞してみた。ところが、世界最大のスクリーンを体験した直後ということもあり、109シネマズ二子玉川のスクリーンを小さく感じてしまった。テレビでもスマートフォンでもよく言われることだけど、あまり大画面に慣れてしまうと、ほかのシアターでは迫力の感じ方が弱まってしまうかもしれない(笑)。ちなみに、IMAX Theatre Sydneyに次ぐサイズのスクリーンを持つIMAXシアターがニューヨーク「Lincoln Square」、台北の「美麗華影城 IMAX(Miramar IMAX)」などがあるので、今度はまた時間を作って、それぞれのIMAXシアターを楽しんでみたいと考えている。

 そして、最後に帰国便だが、往路と同じく、ANAのNH880便を利用し、帰国した。21時30分にシドニーを発ち、翌日朝5時5分に羽田空港に到着という予定だったが、気流にうまく乗ったのか、4時半過ぎには到着し、5時には到着ロビーに出て、家路につくことができた。これまた余談だが、シドニー空港の免税店エリアは現在改装中ながらも非常に広く、商品のラインアップも非常に豊富だった。筆者は今回、購入を見送ったが、オーストラリアはワインも名産として知られているので、お土産に買ってみるのもよさそうだ。

法林岳之

僚誌「ケータイ Watch」などで、記事を執筆するフリーランスライター。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。取材や講演などで国内外に出かける一方、年に数回、プライベートでも海外旅行を楽しむ。映画のロケ地探訪など、テーマを持った旅が好み。