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ニュージーランド マオリ開発担当大臣が来日、日本の高校生が“ハカ”でおもてなし
2016年6月26日 00:00
- 2016年6月23日 実施
ニュージーランドでマオリ党の共同代表を務め、マオリ開発担当大臣でもあるテ・ウルロア・フラヴェル氏が来日し、東京都文京区にある郁文館グローバル高校の生徒らの“ハカ”による熱烈歓迎を受けた。
ハカとはニュージーランドの先住民マオリに伝わる伝統的な踊りで、もともとは戦いの際に敵を威嚇するという意味を持つもの。ラグビーのニュージーランド代表オールブラックスの選手が試合前に行なう儀式としても有名だ。中腰になり舌を出しながら自分の手足を激しく叩く大迫力のパフォーマンスだが、客人をもてなす際の歓迎の意味や敬意を表するという友好的な意味でも披露される。
今回そのハカを披露した郁文館グローバル高等学校は、2006年にできた学校で、2年生のときに学年全員が1年間海外に留学するという、まさに“グローバル ハイスクール”。現在も約100名がニュージーランドに留学しているという。そんな縁もあってニュージーランドに特別な親近感と感謝の念を持つ生徒らだが、今回はハカの本家であるマオリご一行の前でパフォーマンスするということで、かなり緊張していたようだった。
バスで到着したフラヴェル氏とマオリビジネス代表団を、まずは男子生徒がハカで歓迎。入場の際などに行なうウェルカムの意味を表わす踊りだ。その後フラヴェル氏は生徒一人一人と握手し、マオリ特有の鼻と鼻をくっつけ合う挨拶をかわしたあと、学校内に案内された。校長先生による歓迎のスピーチのあと、フラヴェル氏は、「先ほどの男子生徒たちの踊りは素晴らしかった。彼らにチャレンジを受けたので、そのチャレンジを私たちもお返ししなくてはいけない」と満足気な様子だった。
さらに「マオリは大昔、アジアを通りながら大海原を越えてニュージーランドにやってきた。だから日本ともつながりがあるのです。これはニュージーランドとこの学校とのつながりを象徴するシンボルです。これを時々見て今回の私たちの訪問を思い出してください」と、ワカと呼ばれるマオリのカヌーの置き物を学校へプレゼントした。
いよいよ“ハカ”パフォーマンス披露
マオリ視察団が講堂に移動すると、待ち構えていたのは全身黒で統一した約200名の生徒たち。女子生徒によるマオリ語での美しい歌声と踊りに続いて披露された、男子生徒による迫力あるハカ・パフォーマンスは圧巻で、講堂中に響く低音の叫び声は感動で身震いするほどだった。
フラヴェル氏は、「歓迎どうもありがとう。はるばるニュージーランドから来ましたが、このはるか遠い異国の若者たちが、こうして私たちの宝物であり、文化のアイコンとも言える“ハカ”を見せてくれて感激です。先ほど校長先生が、皆さんがちょっとナーバスになっていると心配していました。ハカをやるというのは誰もが緊張状態になるものなのです。それにしても君たちのハカは素晴らしかった。背筋がぞくぞくするような感動を覚えました。マオリ担当大臣として自国の文化を見直すことができるよい機会になりました」とスピーチ。
「Kia ora!(マオリ語でこんにちは、ありがとうの意)」と言うと、生徒たちからはあふれんばかりの拍手が上がった。
その後はフラヴェル氏一行によるハカの“お返し”があり、独特なリズムを刻みながらの伝統的なマオリの踊りを生徒たちは真剣に見入っていた。
ニュージーランドのマオリ文化について
19世紀にヨーロッパからの入植者が入ってくるはるか昔にニュージーランドへカヌーでやってきたマオリ。“白く長い雲のたなびく地”という意味の「Aotearoa(アオテアロア)」は「ニュージーランド」のマオリ語だ。現在人口の15%をマオリ系が占めるニュージーランドは、公用語がマオリ語と英語。国歌もマオリ語バージョンと英語バージョンがある。木や植物、鳥の名前などニュージーランドではマオリ語のものが数多くあり、特に地名は「Kaiteriteri(カイテリテリ)」や「Matamata(マタマタ)」など、ユニークな読みがたくさんある。マオリ語は常に母音で終わり、ローマ字読みでOKなので、日本人にとって発音しやすい言語だ。
今回フラヴェル氏が「私たちの仲間の多くはロトルア出身です」と紹介した“ロトルア”は、北島の中央部に位置する街。ロトルアはマオリ人口が多いことから、ニュージーランドでもマオリ文化が色濃く残る街の一つとなっている。街の中心地にある「Te Puia」は、ニュージーランドのマオリ文化を生で体験できる施設で、ハカはもちろん「ハンギ」と呼ばれる土窯で野菜や肉を蒸し焼きするマオリ伝統の料理も堪能できる。ニュージーランドでも人気の観光地の一つなので、旅行で訪れることがあったらぜひ立ち寄って、マオリ文化を肌で感じてみてはいかがだろうか。