【イベントレポート】

【パリ航空ショー2017】ボーイング、今後20年間の新造旅客機需要を約4万1000機、677兆1000億円と予測

2017年最新市場予測(2017 Current Market Outlook)発表会より

2017年6月19日~25日(現地時間) 開催

2017年最新市場予測(2017 CMO:Current Market Outlook)を発表する、ボーイング 民間航空機部門 マーケティング担当副社長 ランディ・ティンゼス氏

 米ボーイングは6月20日(現地時間)、フランス・パリ郊外のル・ブルジェ空港で行なわれている航空産業の商談/展示会「パリ航空ショー2017」において記者会見を開催し、同社が例年公開している今後20年間の航空需要を予測する2017年最新市場予測(2017 CMO:Current Market Outlook)を発表した。

 旅客機の製品寿命は10年以上と長く、一度設計・製造すると数十年は販売を続ける息の長い製品となる。このため数十年後の需要を予測し、それに見合った製品を供給していくことは、航空機メーカーにとって死活的に重要なことになる。そのため、各航空機メーカーとも需要予測には力を入れており、ボーイングはCMOとして、競合となるエアバスはGMF(Global Market Forecast)として需要予測をリリースしており、業界の動向予測についても両社は競争している状態だ。

 今回発表されたボーイングのCMOでは、今後20年間の新造民間航空機需要を約4万1000機、金額にして約6兆1000億ドル(約677兆1000億円、1ドル=約111円換算)と予測しており、引き続き強い需要がある見通しだとボーイングは説明している。

2017年も引き続き航空需要は増加傾向、安定した成長が期待できる

 ボーイングのCMOを説明したのは、ボーイング 民間航空機部門 マーケティング担当副社長 ランディ・ティンゼス氏。マーケットの現状、そして2017年のCMO、製品戦略の3つに分けて説明を行なった。

2017年最新市場予測(2017 CMO:Current Market Outlook)
発表内容の概要

 マーケットの現状に関しては、旅客需要や航空会社の利益は年々増え続けており、航空会社に供給された飛行機の数も2016年は2015年(762機)に比べて若干減って748機となったものの、依然として700機超という高いレベルに安定していると説明。2017年の市場予測について、旅客需要は6~7%成長、貨物需要は5~6%の成長、航空会社の利益も310億円と引き続き高いレベルになると予想した。

市場は成長していると語る
2010年以降の航空会社引き渡し機数
2017年のグローバル市場の予測

 そうした現状をふまえたうえで、今後の20年の予測となるCMOについてティンゼス氏は説明した。

市場における課題
CMOとは?
1997年のCMOとGMFの予測とその結果
1997年のCMOとGMFの予測内訳とその結果

 ティンゼス氏は20年前となる1997年のCMOとGMFについて触れ、「両社ともに総機数は下回っている。大きく差がついたのはその内訳で、ロングワイドボディ(ボーイング 777など)、スモールワイドボディ(ボーイング 787など)、単通路機(ボーイング 737など)の割合に関しては、CMOの方が結果に近い予測になっている。我々はLCCが成長すると予測し、競合は大型機の需要が来ると予想していたが、結論から言えばLCCが成長するという予測が正しかった」と述べ、ボーイングの方が比較的正確な予測を行ない、その結果として市場のニーズに近い製品展開を行なうことができるとアピールした。

今後20年の需要は4万1000機超、6兆1000億米ドルの売り上げになるとボーイングは予想

 その上で2017年のCMOについて触れ、「今後20年は世界各国でGDPが2.8%増加し、航空会社の乗客は4.0%増え、航空貨物取扱量は4.2%増え、旅客運輸は4.7%成長すると予測される。特に中国の国内線が大きく成長すると予測されており、それに合わせてアジア市場が大きく成長するだろう」と説明した。

2017年のCMOでは2036年までの予測
市場は成長傾向にある
20年の経済発展の予測
特に中国が大きく伸びると予測

 ティンゼス氏によれば、今後20年間で4万1030機の旅客機需要が望めるとし、その金額は6兆1000億ドル(約677兆1000億円)の売上があるという。その内訳に関してだが、最も多い2万9530機が単通路機(90~230席)で、その次が小型ワイドボディ機(200~300席)で5050機、それに続いて中型/大型ワイドボディ機(300席以上)が3160機となっている。

 ティンゼス氏は、航空会社が所有する飛行機数は現在の倍の4万6950機になり、そのうち既存の飛行機の置き換えが1万7500機、新しく導入される成長分が2万3470機、現行機材の活用が5920機になると予想した。

CMOで予測する機数と金額
航空会社が所有する飛行機数は20年で倍になる
CMOで予測する機数と金額
機種(座席数)機数金額(10億ドル)
リージョナル機(90席以下)2,370110
単通路機(90~230席)29,5303,180
小型ワイドボディ機(200~300席)5,0501,340
中型/大型ワイドボディ機(300席以上)3,1601,160
ワイドボディ貨物専用機920260
41,0306,100

 その内訳だが、日本を含むアジアが1万6050機と一番大きく、それに次いで北米、ヨーロッパになるとした。アジアが一番大きな市場となるのは、中国の国内線など中国市場が大きく成長するためだという。

 貨物機に関してはラージサイズとミディアムサイズのワイドボディ機の需要がほとんどで、スタンダードサイズに関しては需要がないだろうと予測する。今後は、航空会社向けのさまざまなサービス領域が大きく成長すると考えており、今後20年間で8兆5000億ドル(約943兆5000億円)の売上が見込めるとしている。

内訳
貨物機
サービスが大きく成長する
地域別機数
地域機数
アジア16,050
北米8,640
ヨーロッパ7,530
中東3,350
南米3,010
C.I.S1,230
アフリカ1,220
41,030

 最後に、ティンゼス氏は同社の製品展開について触れ、ボーイング 777X、787、737 MAXなどの高効率機が今後も市場の中心になっていくという。ボーイング 747のような超大型機に関しては「経済性の問題で主流にはならないだろう。今後は777Xや787-10のようなワイドボディで長胴の機種が主流になっていくだろうと考えている」と述べ、今後もボーイング 747のような超巨大機を、ボーイング 787や今後登場する777Xが置き換えるトレンドは続くと述べた。

市場の需要に基づくラインアップを用意する
2000年の予測資料