【イベントレポート】

【関空旅博2017】世界遺産の建築物がコンパクトに集まる凝縮感が魅力、バルト三国「はじめてのラトビアとリトアニア」

ラトビア投資開発公社とリトアニア政府観光局がセミナー

2017年5月27日 開催

ラトビア投資開発公社とリトアニア政府観光局による旅行セミナー

 世界各国から航空会社や政府観光局などが集まり、“世界に一番近い旅の博覧会”をうたう「関空旅博2017」が、5月27日~28日に関西国際空港で開催された。各企業・政府観光局のブースや飲食ブース、ステージイベントが見物だが、隣接するホテル日航関西空港では、旅行者向けの本格的なセミナーも実施していた。

 ここでは、「はじめてのラトビアとリトアニア」と題して、ラトビア投資開発公社の志賀暁子氏とリトアニア政府観光局の能登重好氏が行なったセミナーの模様を紹介する。

首都リガは観光資源がコンパクトに集まり、地方へもバス移動できるラトビア

ラトビア投資開発公社の志賀暁子氏

 志賀氏はまず、ラトビアの地理的・国勢的な位置付けについて解説した。ラトビアは北ヨーロッパ、バルト海に面したバルト三国の中央に位置しており、日本からはフィンランド・ヘルシンキを経由して、約11時間でリガ国際空港に到着する。国土は北海道の約80%の広さ(6万4589km2)で、公用語はラトビア語だが、英語は問題なく通用するとのこと。2014年1月から通貨はユーロに変わっている。

 ラトビアは西のクルゼメ州、南のゼムガレ州、北のヴィゼメ州、東のラトガレ州からなり、それぞれに観光スポットがある。国土は平坦で、およそ45%が森林。4つの国立公園、42の自然公園、3000の湖、1万2000の川があり、この数字からも自然豊かな景色が広がるのを想像できる。日本と同じように四季もある。

 リガの旧市街を上空から見た写真に続いてスライドには地図が映し出され、約1200×700mの範囲に「聖ペテロ教会」「ブラックヘッド会館」「リガ大聖堂」「三人兄弟(建築博物館)」などの観光スポットが密集しており、「駆け足なら1日で回れてしまう規模感」だという。また、19世紀に建てられた800を超えるアールヌーボー建築がキレイな状態で残っていることでも知られ、見どころになっているそうだ。

 リガ周辺は名所がコンパクトに集まっているが、少し足を伸ばして地方へ向かう際も、いくつかはリガから出ているバスで日帰り可能な距離だ。例えば古城や城址のあるヴィゼメ州スィグルダならバスで1時間強、ツェースィスなら1時間30分程度。川や湖など自然の多いクルゼメ州やラトガレ州は2時間30分~3時間40分かかるので、その場合は滞在を考えたほうがよい。また、地方まで足を伸ばしたなら、マナーホテル(貴族の屋敷や邸宅を改装した宿泊施設)やファームステイ(農園などでの宿泊)が、ラトビアらしさを味わえてお勧めとのことだ。

ラトビアの国土面積は北海道の80%程度
ラトビアは4つの州で構成されており、首都リガは国土の中央付近にある
自然豊かなラトビア。日本と同様、四季もある
リガの旧市街は世界文化遺産に登録されている
旧市街は観光資源がコンパクトに集まっているため、見て回るのに苦労しない
旧市街にある聖ペテロ教会(右)。尖塔のように尖った部分は展望台になっている
「三人兄弟(建築博物館)」(右下)は左から、15世紀、16世紀、17世紀の建築
アールヌーボー建築が数多く残る
新市街にはヨーロッパ最大最古クラスの市場「リガ中央市場」があり、敷地が広く品数豊富なので、日程の最初に組み込むのがよいとのこと
ヴィゼメ州へはバスで1時間強~1時間30分程度。1時間に1~2本運行しており、日帰りも可能
スィグルダ、ツェースィスとも古城見学などを楽しむことができる
クルゼメ州クルディーガへはバスで2時間30分ほど
クルディーガのお勧めは幅110m、高さ2mという変わった「ヴェンタ滝」
ラトガレ州ダウガウビルスへはバスで3時間40分
旧市街付近まで流れ込むダウガワ川の上流は世界遺産だ
マナーホテルやファームステイはラトビアらしさを味わえる宿泊プラン
ラトビアのお土産としてお勧めのハンドクラフト
ラトビア訪問時の注意点

美しい教会建築が立ち並び、支配と侵略の歴史が残るリトアニア

リトアニア政府観光局の能登重好氏

 セミナー後半は能登氏がリトアニアについて説明した。日本人はバルト三国をどれも同じように考えがちだが、北のエストニアは北欧型、中央のラトビアはドイツ型、南のリトアニアはポーランド型に分類でき、それぞれ文化が近いという。

 リトアニアはヨーロッパでは最後にキリスト教が伝わった地域で、それ以前は日本と同様に自然信仰であったとのこと。また、かつてヨーロッパで最大級の版図を広げた過去があり、ドイツの半分、ポーランドのすべて、ロシアの一部、バルト三国のすべてがリトアニアの領土であった。その一方で、リトアニアは領土がなくなったこともあり、実に複雑な歴史を持っている。

リトアニアは隣接するポーランドの文化に影響を受けている
ビリニュスの旧市街を上空から見た様子

 ここでビリニュス旧市街の様子がスライドに映し出された。隙間なくびっしりと建物が並んでいるように見えるが、これはビリニュスの中心にメインストリートが1本あり、そこから蜘蛛の巣のように小道が延びて、その道沿いに建物が作られた結果だそうだ。逆にメインの通りが単純なので、迷わず観光できるのは利点といえる。なお、この旧市街はユネスコの世界遺産に指定されている。

 ビリニュスは狭い地域のなかに65の教会があり、なかでも「聖アンナ教会」はナポレオンが侵攻した際にフランスへ持って帰りたいと言わしめたほど壮麗で、このほかにも美しい教会建築が多く残っている。

 こうした美しい街並みを楽しむ手段として、ビリニュスは世界で唯一、気球で空中から観光できる街だと紹介された。一般的に、世界遺産のある地域は保護のためにさまざまな制限がかかっているが、ビリニュスは上空からの観光が解禁されている。なお、昼間は飛ばないので、乗るなら早朝ないし夕方になるとのこと。

 セミナー終盤では、リトアニアの臨時首都だったカウナスについても話がおよんだ。日本人にゆかりのあるところでは、第二次世界大戦中にカウナスに赴任していた杉原千畝が、多くのユダヤ人にビザを発給したことは、近年の映画化などでも知られるところだろう。

 ラトビアとリトアニアは、それぞれ日付は異なるものの1918年にロシアからの独立を宣言しており、2018年にはともに独立100周年を迎える。3万人の大合唱団によるステージなど、さまざまなイベントが企画されており、時期を合わせてぜひ訪れてほしいとして、セミナーが終了した。

教会が建ち並ぶ壮麗な街並みを気球で観光できる
リトアニアがもっとも領土を拡大していたころにヴィタウタス大公の居城となっていたトラカイ城。なかはリトアニアの歴史が分かる博物館になっている
リトアニアには2つの宗教があり、1つはキリスト教、もう1つはバスケットボールだといわれるほど、バスケットボールが盛んで、強豪国でもある。NBAにも多く選手を送り込んでいる
カウナスの北、シャウレイにある「聖なる十字架の丘」。ソ連時代に何度も撤去・取り壊されたが、その翌日には新しい十字架が1本立てられていたという逸話が残る。現在、約20万本の十字架が立つ
ラトビアとリトアニアは来年、1918年の独立宣言から100周年を迎える