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クイーンズランド州政府観光局、2020年に向けた観光戦略を説明

オーストラリアは2020年までに約2.5兆円の外貨獲得を目指す

2016年2月18日 実施

オーストラリア クイーンズランド州政府観光局 日本局長 西澤利明氏

 オーストラリア クイーンズランド州政府観光局は2月18日、都内で報道陣に対し2020年に向けた観光戦略に関する説明会を実施した。

 説明会では、クイーンズランド州政府観光局 日本局長 西澤利明氏が登壇し、日本とクイーンズランド州の現状と、観光施策や著名なスポットなどを紹介。また、ラグビーの五郎丸歩選手がブリスベンに本拠を置くスーパーラグビーのチーム「レッズ」で2016年よりプレーをすることから、レッズの紹介や現地の状況なども解説された。西澤氏の説明は以下のとおり。

 オーストラリアは1980年代、経済的に厳しい時期がありました。これに対して同政府は観光を産業の柱にし、外貨を獲得することで経済の復活を成し遂げようと施策を開始しました。特にクイーンズランド州はオーストラリアのなかでも日本からの距離が比較的近いため、税制の優遇などを行ない、当時バブル経済の好景気にあった日本より多数の観光客と多額の投資を得ることができました。なお、この時期にオーストラリアを訪れた日本人は年間で80万人にものぼり、まさに「街のどこを見ても日本人ばかりが目立つ」という状態でした。このため、ゴールドコーストやケアンズ周辺の観光地の整備は日本の資本が寄与するところが大きいといえます。近年では逆にオーストラリアの観光客が多数、北海道のニセコ町周辺のスキー場などを訪れており、年間で37万人と1980年代の3.7倍前後になっています。そのため、ニセコ町の周辺はオーストラリアの資本で観光地が整備されつつあるという現状もあります。このように、日本とオーストラリアは相互の観光交流により経済やインフラを発展させてきたという歴史があります。

 2015年1月15日には両国の自由貿易協定を軸にした「日本・オーストラリア経済連携協定(EPA)」が発効したことにより、経済的な交流の機運も高まっています。カンタス航空は、2015年8月1日に成田〜ブリスベン線を就航させました。当初は乗客数が確保できるか危惧があったとのことですが、2015年9月〜2016年1月まで同路線の搭乗率は90%近くとなっているようです。特にビジネスクラスはほぼ満席になることが多いとのことです。

 産業として観光を誘致する場合、何が大切かと言えば、いかにして“ここにしかないもの”“ここだけで体験できるもの”などのほかの観光地との差別化が必要です。そして、その魅力をいかにアピールできるかが重要です。

 オーストラリアと日本を重ねてみますと、北海道と同じ緯度にタスマニア州が位置します。クイーンズランド州は日本でいうならば、沖縄県ぐらいの場所ですね。そのため、クイーンズランド州は年間を通じて温暖です。オーストラリアは4月〜6月ぐらいにかけて冬の時期となりますが、クイーンズランド州は沖縄ぐらいの緯度にあるため、冬でも過ごしやすいのが特徴です。オーストラリアは、国土が広大のため、北海道のような気候もあれば、熱帯雨林もある多彩な気候が特徴です。

 オーストラリア連邦の国土は、日本の21倍の広さ、人口は2100万人。クイーンズランド州は、同じく日本の5倍の広さ、人口は州都のブリスベンで420万人です。クイーンズランド州への日本からの航空路線としては、ケアンズやブリスベン、ゴールドコースト、シドニー、メルボルンなどに直行便が就航しています。カンタス航空はブリスベン〜成田線に、ジェットスターはゴールドコースト〜成田線とケアンズ〜成田/関空(関西国際空港)線に就航しています。

日本とオーストラリアを同じ緯度で重ねた場合の地図
オーストラリアとクイーンズランド州のデータ
就航している航空路線
クイーンズランド州への日本からの渡航者

 クイーンズランド州への日本からの渡航者は、2012年では18万人でした。1990年代は45万人前後を記録しましたが、日本のバブル経済の崩壊とともに航空会社の路線閉鎖などにより、一気に航空路線と提供座席数が減少し、渡航者も減少傾向にありました。しかし、2015年はこれが久々に増加傾向に転じました。これは2015年8月のカンタス航空のブリスベン〜成田線の就航が寄与するところも大きいようです。

 クイーンズランド州政府観光局としては、訪日と訪豪の双方向の観光プロモーションが重要だという認識をしています。オーストラリア政府は、2020年までに約2.5兆円の外貨を獲得することを目標としています。クイーンズランド州としても、この目標を達成させるために、産・官・学の連携強化による観光需要の創出を目指しています。さらに、州全体の経済活性化や社会インフラの充実、雇用の促進などの効果も目的としています。

 予算達成のためにもっとも重要な要素は「パートナーシップ」です。日本は地方創生が重要な政府の施策になっていますが、クイーンズランド州でも、州内を、ケアンズ、ウィットサンデー、ブリスベン・ゴールドコーストの3つの区域に分けて、それぞれの地元の観光業界や13カ所ある各地の観光局と一緒になって観光プランを作っていくという企画をしています。

 観光戦略の施策としては、以下の4つをすべて一体にして実施しないと成功しないと考えています。
1.IT技術を活用した、各地の観光局や観光業界と情報共有できるネットワークの構築
2.各地の観光地の情報やそれに対する消費者の嗜好などの情報をデータベース化し、それを解析して観光マーケティングへの活用
3.ホテルや観光施設、交通網への投資の促進といったインフラの拡充
4.航空政策
特に重要なのは、クイーンズランド州まで観光客を運ぶ路線を整備する「航空政策」です。日本のクイーンズランド州政府観光局では、政府間交渉や広報活動やPR活動、旅行会社とのタイアップキャンペーン、航空会社との提携、企業のインセンティブの誘致、セミナー、研修旅行、マラソン大会などイベント支援などの活動を行っています。

オーストラリアの観光戦略
歳入目標
クイーンズランド州を3つの地域に分割し地域と密着した施策を実施
観光戦略に必要な要素
クイーンズランド州政府観光局が日本で実施している施策

 今まで実施したPR施策のなかで、特に成功したものを1つ紹介します。それは数年前に実施した「Best Job in the world(世界で一番いい仕事)」というキャンペーンです。これは実際に求人を行ない、選考に合格した応募者にハミルトン島の管理人を6カ月間してもらうことで、約1200万円(15万ドル)の報酬が支払われるというものです。しかも、待遇も好条件となっており、グレートバリアリーフを見下ろす高級住宅地に無料で住むことができるほか、仕事の内容はプールの清掃や魚の餌やり、郵便物の回収などで、週末は仕事をする必要がないというものです。このキャンペーンは、大きな反響を呼び、キャンペーンのサイトには約30万人からアクセスがあり、Webサイトがダウンするほどでした。しかも、実際に世界各国から3万人近い応募(日本からは150名前後)がありました。これにより、約1000万円の投資で50億近い効果を得ることができました。このキャンペーンは「カンヌ・ライオンズ国際広告フェスティバル」で2つのグランプリ賞、4つのGold Lions賞を受賞しました。観光関連では世界でもっとも成功したPRのひとつだといわれています。

「Best Job in the world(世界で一番いい仕事)」キャンペーンの告知
「カンヌ・ライオンズ国際広告フェスティバル」で2つのグランプリ賞、4つのGold Lions賞を受賞

 ブリスベンは、オーストラリアの景気が近年良かったため、投資が進み大きく発展しました。有名な観光資源としては、コアラやモートン島の野生のイルカなど、日本でも有名な動物に触れられることです。ゴールドコーストは、約40kmにもおよぶ砂浜がありますが、それを利用するホテルなどが多く開発されています。また市内に路面鉄道などのインフラを整備することができるのも海外からの観光客が増加しているからこそです。

ブリスベンの街の様子
コアラと触れあえる
モートン島では野生のイルカを見ることができる
ゴールドコーストも近年投資が進んでいる
中国資本などで作られる施設も増えてきている
海外からの観光客の増加は街のインフラ整備にも繋がる

 クイーンズランド州の観光スポットとしては様々なものがあります。例えば、ウィットサンデー諸島のハミルトン島には、ハート型のリーフがあり、ハネムーンのカップルなどに人気のスポットです。ホワイトヘブンという白い砂のビーチは「世界で一番美しいビーチ」ともいわれています。ウィットサンデー諸島ではヨットレースなども年に2回ほど行われています。世界遺産として、距離約2000kmにおよぶグレートバリアリーフや熱帯雨林があります。熱帯雨林とはいえ、鉄道やロープウェイなどの交通インフラもすべて整っています。また、先住民「アボリジニー」の独特の文化も観光資源としてプロモーションを考えております。

74の群島からなるウィットサンデー諸島
ハート型のリーフはハネムーンなどで人気
「世界で一番美しいビーチ」ともいわれるホワイトヘブンビーチ
ヨットレースなども年に2回開催
ケアンズには2つの世界遺産がある
レートバリアリーフ
熱帯雨林には、鉄道やロープウェイなどの交通インフラもすべて整っている
先住民「アボリジニー」の独特の文化も観光資源としてプロモーションを検討している

 日本で話題のラグビーの五郎丸歩選手がブリスベンをホームとしているスーパーラグビーのチーム「レッズ」に来てプレーを始めています。現地の人も「お手並み拝見」という感じで注目しています。すでに日本の大手の旅行会社などは、観戦チケットつきのツアーを売り始めているようです。五郎丸選手はレッズで8月の最終戦まで活躍するようですが、チームに貢献する功績が残せれば、チームとしても活躍して欲しいという意向があるそうです。ブリスベンには約6000人の日本人が住んでますが、この現地在住者によるファンクラブを設立しようという動きもあるそうです。五郎丸選手には日本とオーストラリアを繋ぐ架け橋のような存在になって欲しいと期待しています。もし、良いニュースがあれば私どもも発信していきたいと考えています。

ラグビーの五郎丸歩選手がブリスベンをホームとしているスーパーラグビーのチーム「レッズ」に来てプレーをしている

(編集部:柴田 進)