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西武鉄道、雲海を鑑賞を目指す「ヱビスビール 生ビール 飲み放題 夜行特急ツアー」に参加してみた

「エビスガール」も同乗

8月26日の深夜から早朝にかけて開催された「ヱビスビール 生ビール 飲み放題 夜行特急ツアー」。西武プリンスドームの「エビスガール」も同乗し、ビールを振る舞った

 西武鉄道は、8月26日の深夜から早朝にかけて「ヱビスビール 生ビール 飲み放題 夜行特急ツアー」を開催した。このツアーは、三峯神社(埼玉県秩父市三峰)にて明け方の雲海鑑賞を目指すもので、早朝に到着するために、池袋駅を0時29分に出発。西武秩父駅に2時40分着、そこから貸切バスで三峯神社には4時30分に到着するというもの。西武池袋線では、過去に登山客用の夜行列車の運行実績はあるものの、近年で夜行列車の運行実績はなく珍しい運行となった。そのツアーに参加したのでレポートする。

ヱビスビールを飲みながら“レッドアロークラシック”の夜行で秩父を目指す

 西武池袋駅発の最終列車は0時45分発の保谷駅行き。「ヱビスビール 生ビール 飲み放題 夜行特急ツアー」の列車はそれより少しだけ早い0時19分に入線してきた。使用された車両は、10000系“レッドアロークラシック”。前日の8月25日には同じ車両を使用して「ヱビスビール特急」が運行されており、その車両をそのまま利用した運用となった。ヘッドマークなどの掲出は特になく、列車種別は「臨時」と掲出された。

使用された車両は、10000系“レッドアロークラシック”
ヘッドマークなどの掲出は特になく、列車種別は「臨時」と掲出された

 ツアー参加者は、ホーム上のインフォメーション近くの受付でツアーの受付をし、思い思いに乗り込んだ。今回のツアーでは、1回につき300名近い募集を行なったが、1週間前後で完売になったという。また、飲み放題ということで、ビアホールのように中年男性が多いと思いきや、シニア層や20代~40代の女性、カップルの参加者が多かった。三峯神社はパワースポットとして女性に人気があることから、“飲み放題”よりも雲海の観賞を目的とした参加者が多かったようだ。なお、ツアー代金は夜行特急ツアーの乗車と雲海観賞のみで6500円。ほか橋立鍾乳洞の見学などオプショナルツアーがついて7900円~1万1000円で販売された。

ホーム上のインフォメーション近くの受付でツアーの受付。女性二人組など女性の参加が多かった
受付にあったポスター

 列車は定刻の0時29分に西武池袋駅を出発。すぐに西武プリンスドームでビールを販売する「エビスガール」やスタッフによるヱビスビールの提供が行なわれた。今回のツアーでは、ヱビスの生ビールが飲み放題となっており、4号車に設置されたビールサーバのカウンターから客席にビールが提供される方式となっている。

ヱビスビールはワゴンに乗せて各車両に「エビスガール」やスタッフが提供

 4号車の座席は横6列ほどが撤去され、専用のビール供給カウンターが設置されていた。カウンターには、6台のサーバと多数の樽生ビールの缶が設置されており、今回の運行で用意された生ビールは約250リットル。500杯以上の供給が可能とのこと。サーバの中には外装を10000系“レッドアロークラシック”と9000系をイメージしたものがあり、前後左右とラッピングが施されていた。なお、10000系は列車種別を「ヱビスビール特急」に、9000系の方はヱビスビールのイメージキャラにもなっている七福神の恵比寿様が運転席に居るという、遊び心のあるものとなっていた。

4号車の飯能方向の横6席を撤去して設置されたカウンター
カウンターに載った6台の四角い形のサーバからビールを注ぐ
多数の樽生ビールの缶が設置され約250リットル、約500杯が用意された
仮設のシンクも用意されていた
サーバの中には外装を10000系“レッドアロークラシック”と9000系をイメージしたものがあった。9000系の方はヱビスビールのイメージキャラにもなっている七福神の恵比寿様が運転席に
10000系は列車種別が「ヱビスビール特急」になっていた
後ろ側もしっかり作られていた。9000系は妻板部分をキチンと再現

 今回、列車に同乗した「エビスガール」は、近藤志穂さんと貫井奈美子さんの2人。西武プリンスドームでビールを販売する「エビスガール」としてはトップランクの販売実績を誇るベテランの2人で、試合中に平日は約200~250杯、休日は約250~300杯前後のビールを販売するという。西武プリンスドームで試合がある日はほぼ毎日出場して販売を行なっているとのこと。

「エビスガール」の貫井奈美子さん。トップクラスの販売を誇るベテラン
「エビスガール」の近藤志穂さん。西武プリンスドームに移籍する前は、神宮球場でもビールの販売をしていたという、こちらも販売はトップクラスのベテラン

 列車は、各地の駅で途中乗車する乗客を乗せながら運行され、練馬駅0時44分発、石神井公園駅0時50分発、ひばりヶ丘駅1時01分発、所沢駅1時12分発となったほか、小手指駅には1時21分頃に運転停車。夜間のため車両がほぼフルに入庫している小手指車両基地の脇を車内から見学できるようにゆっくりと走行した後、1時50分に飯能駅で列車の進行方向を逆転して西武秩父線へ入線。2時40分に、定刻通り西武秩父駅の3番線に到着した。

小手指車両基地の脇を車内から見学できるようにゆっくりと走行
2時40分に、定刻通り西武秩父駅の3番線に到着
2番線には4000系が翌日の運行に備えて2編成停泊していた

 8月25日に運行された「ヱビスビール特急」の車内は宴会のように盛り上がったようだが、深夜の運行でかつシニアや女性が多かったこともあり、参加者らは各々静かに楽しんでいた。また、「エビスガール」が回ってくると記念撮影なども行なっていた。算す者らにはビールのほかに、「新宿さぼてん」の「さぼてん名物ヒレかつサンド」もおつまみとして提供された。

「エビスガール」たちは、参加者からの記念撮影のリクエストにも笑顔で応じていた
車内には、各所にヱビスビールのポスターを掲示
三峯神社の雲海鑑賞を目指したものの……

 西武秩父駅からは6台の貸切バスに分乗し、三峯神社を目指す。西武秩父駅に着いたときには、小降りの雨が降っており、雲海が見られるか心配する声がちらほらと参加者から聞こえてきた。3時頃に西武秩父駅を出発し、4時30分頃に三峯神社の駐車場に到着。この頃には、雨が本格的に降っており周囲は霧が掛かったように霞んでいた。

西武秩父駅。あいにくの雨となった
6台の貸切バスに分乗し、三峯神社を目指す
4時30分頃に三峯神社の駐車場に到着。この頃には、雨が本格的に降っており周囲は霧が掛かったように霞んでいた

 三峯神社は三峯山の標高1100mにあり、日本武尊が碓氷峠に向かう最中に登り、山川が清く美しいことから、伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と伊弉册尊(いざなみのみこと)をしのんで祀ったことが始まり。前述の通り、早朝には周囲の山々が雲海から顔を出した風景が見られる景勝地となっている。三峯神社から雲海が見られるのは境内を少し登った「遙拝殿」と呼ばれる展望台。

 参加者らは駐車場から遙拝殿に向かったものの、周囲は霧に包まれて視界は真っ白の状態。残念ながら雲海を拝むことはできなった。参加者からは残念とため息がちらほらと聞こえてきた。日の出時刻の5時5分まで参加者らは霧が晴れるのを期待して待機したが霧が晴れることはなかった。とはいえ、こうして早朝に三峯神社まで来られたことを楽しく感じた参加者も多く「来られて良かった」という声も聞こえてきた。その後、参加者らは境内散策や集団参拝、朝食、報徳殿にて休憩などを採り、オプションツアーへと向かっていった。

参加者らは駐車場から遙拝殿に向かった
周囲は霧に包まれて視界は真っ白の状態。残念ながら雲海を拝むことはできなった
6時頃には少しだけ霧が晴れた
三峯神社の雲海が見られる遙拝殿
もし晴れていれば、このような絶景が見られた。提供:西武鉄道、撮影者 黒澤誠氏
西武鉄道株式会社 運輸部スマイル&スマイル室 浅野雅明氏

 今回の「ヱビスビール 生ビール 飲み放題 夜行特急ツアー」を企画した、西武鉄道 運輸部スマイル&スマイル室 浅野雅明氏は「今回の雲海見学を目指すツアーは、2014年に放送したCMで雲海のシーンを使ったことから、お客様のよりご要望を頂いて実現したものです。数十年ぶりの夜行列車の運行ですが、社内の関係各部署の協力により実現できました。今後、お客様を運ぶだけではない、移動手段プラスアルファの企画を色々と考えていきたいと思います」と語っていた。同氏は、次も同様のツアーを企画したいと、手応えと意気込みを見せていた。

(編集部:柴田 進)