ニュース
グーグル、2015年夏の旅行業界の需要・検索トレンドを発表
九州が沖縄を抜く。近場の滞在「Staycation」の流行の兆しが
(2015/8/4 19:39)
- 2015年8月4日発表
グーグルは8月4日、旅行関係の報道陣向けに2015年夏の旅行業界の需要と検索トレンドを発表した。内容としては、「夏休み」と一緒にどのような観光地が検索されているのか、旅行のトレンドが検索キーワードにどのように現われているのか、さらに流行の兆しを見せている近場の滞在「Staycation」について解説された。
発表を行なった、グーグル 第一広告営業本部 旅行業界担当 インダストリーアナリスト 香川美菜氏は次のように述べた。
旅行のタイミングは毎年、年末年始とゴールデンウィーク、夏休みと3つのピークがありますが、今年は9月のシルバーウィークもピークになる可能性があります。夏休みの旅行先の定番は、国内であれば北海道と沖縄、海外であればハワイ、台湾、シンガポールなどが挙げられます。また、主要な旅行業者の取扱額の推移をみると、夏休みがピークになります。
検索量の推移やピークも国内旅行と海外旅行で異なります。国内旅行では、3月からゴールデンウィーク前の4月にかけてと、夏休みの7月から8月にかけて検索量が増えます。また、10月の秋のシーズンにも検索が増える傾向があります。一方、海外旅行は1月から緩やかにゴールデンウィークと夏休みに向けての検索が増えるのと、夏休みに向けて5月の後半から8月前後に旅行関連の検索が増えます。
旅行関連で「夏休み」に関する検索量が増えるのは3月頃から7月にかけてです。これは旅行の準備に関して検索する傾向があるからです。この時期の検索について注目してみたいと思います。
国内と海外では準備期間が違うので、国内の方がより直前に検索される傾向にあります。国内旅行の場合のピークは、6月~7月です。一方、海外旅行は5月のゴールデンウィークの時点でピークが来ます。海外旅行の方がより準備をしっかりして目的地を決めるというのが検索キーワードからも現われています。
実際に2015年の旅行関連で検索されたもののランキングを観光地ではなく、一般的なキーワードでみた場合は、ゴールデンウィークとは異なり、家族や子供連れで行く旅行が非常に多くなります。2015年は海外旅行が不振のため、その反動で国内旅行が好調です。また、「涼しい旅行」や「涼旅」という新しいキーワードも出てきています。
目的地別でみると、2015年の検索語順位の国内1位は北海道です。毎年、夏の旅行では北海道は人気があるので、順当な順位です。面白いのは、九州が沖縄を抜いて3位に浮上したところです。温泉や世界遺産などの様々なバリエーションがある観光地があるため、成長率も高くなっています。
海外は、ハワイやグアムといった常連が上位に来ているのは順当な結果ですが、韓国がMERS(中東呼吸器症候群)の影響から回復傾向にあるのがみられます。
海外旅行は、欧州など長距離は不振ですが、タイやシンガポールなど近場の行きやすいところが伸びてきています。それが旅行の検索語のランキングにも現われてきているようです。
2014年と2015年を比較した伸び率で見ると、1位は高野山金剛峰寺があり、2015年に高野山開創1200年を迎えた和歌山県です。次は2015年3月14日に北陸新幹線が開通した金沢や北陸の伸び率も高くなっています。また、キッズ向けのツアーや子連れツアーも延びています。フィンランドは、2015年の日本の夏が暑いのと、北欧の国の中でも日本からの直行便があるので、人気が高くなっています。特に6月~8月にかけては「ムーミンワールド」が開園しているのも要因のひとつです。
検索語は、ちゃんと世相を反映するのか?という点を疑問に思われるかも知れません。そこで、検索語と世相との相関関係を調べてみました。2014年から1年間で検索が急に増えたキーワードとして3つ例を挙げます。1つが「軍艦島」。これは2015年5月に世界遺産登録勧告が出たため、検索語としても急激に増えています。さらに「伊勢志摩」も2015年6月23日に伊勢志摩サミットの開催が決定すると、伊勢志摩のホテルや周辺施設に関する検索が増えています。ユニークなのが「仙台 ホテル」です。これは2015年5月に仙台でジャニーズのグループ「嵐」のコンサートが9月に開催されると決定したからです。さらにファンクラブへチケットの抽選結果が発表になったと同時に検索が増えています。このように、世の中で起こった事がすぐに検索語として現われてきています。従って、検索語は世相を反映するものだといえます。これは「Google Trends」というツールでもみられます。
次に多様化している旅行について、検索語に現われてきているのか、それは都道府県で違いがあるのかを調べてみました。分析で使った旅行カテゴリーは、「ひとり旅」や女子旅や男旅などの「デモグラ属性」「体験型」「家族旅行・子連れ旅行」「カップル・新婚旅行」の5つです。
カテゴリーごとにみた場合は「ひとり旅」が伸びています。これはひとりで旅に出るときには、情報収集をしてから出るという傾向があるからです。面白いのは「デモグラ属性」と「体験型」が伸びてきている点です。旅行業者がアクティビティツアーの取り組みを増やしているため、このような世相を表わしているのではないかと思います。ここでキーワードとなるのは3つ。自分だけの体験ができる「自由度」と、その地域ならではのものが体験でき、地域の人と交流できる「ローカル」、そしてWebから自由に検索して予約ができる「ネット」の3つです。
カテゴリーごとに、使われているデバイスの傾向も異なります。若年層が検索する傾向にあるキーワードは、モバイルデバイスの比率が高く、一方で体験ツアーやアグリツーリズムなどPCでじっくり見て決めるものはPCの比率が高くなっています。また、シニア層もPCが多くなっています。誰をターゲットにするかで、コンテンツのデバイス向けの最適化も変える必要があります。
これが都道府県別にどう違うかも見てみました。地域ごとのカテゴリー別シェアとその成長率をまとめてみました。関東地方だけボリュームが大きいので、北関東と東京都、神奈川県に分離しています。
東京以外はどの地域でも「体験型」と「デモグラ属性」である「属性きり」が成長しています。例えば、北海道の「属性きり」が増えているのは、「EXILE TRIBE 男旅」というテレビ番組の影響が大きいと思われます。神奈川は全国的に労働人口が多いので、「カップル・新婚」や「ひとり旅」といった成長率が高くなっています。
さらに、都道府県別で傾向の違いをみていくと、自分の居住地域内で旅行需要が完結する地域と、自分の居住地域以外へ旅行需要がある地域に別れます。自分の居住地域に観光資源が多い場合やその地域が広い場合は、域内で完結する傾向があります。この結果から、住んでいる地域の違いでも検索するキーワードのトレンドが異なるというのが分かってきました。なお、同じ地域に住んでいても、目的地によって検索するピークが変わってきます。近場であれば夏休みの約1カ月前、遠出をする場合は約3カ月前となります。
2015年は暦の並びが非常によいということもあり、シルバーウィークの注目度が高くなっています。例年は次の休みが待ち遠しくなる5月とシルバーウィーク直前の9月に検索量が増えますが、2015年はピークの大きさが大きいのと、夏にもう1度ピークがありそうだと予想します。実際に旅行業者の方からお話を伺うと、すでにシルバーウィーク期間の予約が埋まっている旅行商品もあるとのことです。2015年はシルバーウィークを楽しむために、早めに検索をしていた方が多いというのも分かりました。
「Staycation」という言葉をご存じでしょうか?英語の「Stay」と「Vacation」を合わせた造語です。2013年頃から使われるようになってきました。最初はアメリカで流行ったもので、例えば、ニューヨーク在住の人がニューヨークを出ずにリッチなホテルや自宅でステイを楽しむというバケーションの楽しみ方です。世界的にも検索語として増えています。国別の検索動向では、アメリカ以外にシンガポール、マレーシアといった東南アジアの英語を使う国で増えています。例えば「singapore staycation」で検索すると様々なプランが多数出てきます。日本では直接的な訳語がないため、まだ検索語として傾向が分かりませんが今後出てくる可能性があります。