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グーグル、検索語句から見る2015年旅行業界の需要とトレンドを発表

世界に広まる日本の「onsen(温泉)」と「Ryokan(旅館)」

2015年12月17日発表

グーグル株式会社 第一広告営業本部 旅行業界担当 インダストリーアナリスト 香川美菜氏

 グーグルは12月17日、2015年1月1日~11月30日の同社が保有するクエリ(検索語句)入力データベースを元にした旅行業界の需要と検索トレンドを発表した。記者会見では、訪日外国人(インバウンド)の動向と日本人の国内旅行の2つカテゴリに関して第一広告営業本部 旅行業界担当 インダストリーアナリスト 香川美菜氏による説明が行なわれた。具体的な内容は以下のとおり。

 インバウンドの動向として、世界における日本関連の検索は+17%。特に観光関連の検索の上昇率は高く+30%となっている。また、インバウンド関連のクエリの6割はアジアで発生。上位のクエリの変化はないが、2015年は銀座、埼玉、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン、嵐山(京都)が上位のランクに入った。また、宿泊関連のクエリと大阪など東京以外のクエリが増加している。

インバウンドのクエリ動向をまとめたもの

 日本に関するクエリを「ファッション」「食」「日用品(家電製品など)」「コンテンツ(漫画など)」「観光」と5つの分野に分けた場合、食の検索が最も多く、次いで観光、ファッション、コンテンツ、日用品と続く。2015年は「観光」の成長率が最も高い。これを地域別に分けると、それぞれの地域で関心のあるものは違ってくる。アジア以外は日本食への関心が高いが、アジアは観光とコンテンツの比率が高い。なお、欧州では「着物ジャケット」などが販売されており、着物に対する関心が高いため、ファッションの比率も高い。

日本に関するクエリを「ファッション」「食」「日用品」「コンテンツ」「観光」と5つの分野に分けて分析
2015年は「観光」の成長率が最も高い
地域別に見たカテゴリ別の検索動向

 観光に関連するクエリは、インバウンドの増加と連動して増加傾向にあるが、パック型の旅行など日本の情報を調べる必要がない場合もあるので、インバウンドの増加率よりもクエリの増加はやや低い。

 食の内訳を見ると、寿司、ラーメン、刺身、天ぷらといったポピュラーな日本食はもちろん、ヘルシーなおつまみとして北米などで人気のある「枝豆」も上位に位置している。

 全世界で地域別に旅行関連の検索量を見ると、欧州が42%と最も高い。次に北米、アジアと続く。しかし、日本のインバウンド関連に絞り込むと、アジアの割合が61.1%と1位に。次いで北米、欧州となる。これは、インバウンドの旅行者数の国籍割合に一致する。

食の内訳を見ると、寿司、ラーメン、刺身、天ぷらといったポピュラーな日本食はもちろん、ヘルシーなおつまみとして北米などで人気のある「枝豆」も上位に
全世界で地域別に旅行関連の検索量を見ると、欧州が42%と最も高い
インバウンド関連に絞り込むと、アジアの割合が61.1%と1位に
インバウンドの旅行者数の国籍割合

 日本の地名検索では、東京、広島に続き、銀座が成長率217%、埼玉が同368%と急上昇。銀座は買い物需要の増加によるもの、埼玉に関しては、東京のホテルが取りにくくなっているため、近隣の埼玉でホテルを探す人が増えているのではないかとのこと。

 観光名所やイベントに関して調査すると、2015年は富士山や東京ディズニーランド、東京タワーなどクエリ上位は2014年と変わらないが、12月18日に公開される映画「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の影響でユニバーサル・スタジオ・ジャパンが7位に上昇し高い成長率を出している。また、京都の嵐山が9位に入ってきており、京都の知名度向上により、その中のより詳細なエリアに対して関心が高まっている。

 急上昇しているクエリとしては、宿泊関連と東京以外のクエリが多くなっている。特に大阪関連が多く全体の3割を占める。

日本の地名検索では、東京、広島に続き、銀座が成長率217%、埼玉が同368%と急上昇
映画「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の影響でユニバーサル・スタジオ・ジャパンが7位に上昇し高い成長率を出している
宿泊関連と東京以外のクエリが多くなっている

 世界の旅行関連のクエリの年成長率は+11%となってるが、訪日旅行における宿泊関連の年成長率は+30%以上で伸びている。特にホテルのほかに「Ryokan(旅館)」やAirbnb関連のクエリも伸びている。Ryokan(旅館)はすでに翻訳されることなく、概念ごと語句としての普及が進みつつある。また、2015年はAirbnbに代表される民泊が急成長している年でもある。

世界の旅行関連のクエリの年成長率は+11%
訪日旅行における宿泊関連の年成長率は+30%以上で伸びている
Ryokan(旅館)はすでに翻訳されることなく、概念ごと語句としての普及が進みつつある
2015年はAirbnbに代表される民泊が急成長している年でもある

 すでに知名度が高く検索数が多い東京を上回る勢いで大阪を中心にほかの地名検索が増加。大阪の年成長率は+30.5%、東北は同+50%となっており、成長率は東京以上の地域が多い。大阪は、アジア地域から来る観光客の人気が高まっており、中国語などのクエリも多い。また、「onsen(温泉)」もRyokan(旅館)と同様に概念ごと語句としての普及が進みつつあり、野沢温泉や有馬温泉など地方の温泉の名所が検索されている。

東京を上回る勢いで大阪を中心にほかの地名検索が増加
大阪は、アジア地域から来る観光客の人気が高まっており、中国語などのクエリも多い
「onsen(温泉)」もRyokan(旅館)と同様に概念ごと語句としての普及が進みつつある

 2015年はインバウンドが大幅に増加しているものの、世界的に見ると日本の旅行客数は、観光大国のフランスや米国などと比べるとまだ少ない。そのため、これからさらに増加する余地はまだある。インバウンドを増加させるためには、いかに地方を回遊してもらうかが鍵になる。

2015年はインバウンドが大幅に増加しているものの、世界的に見ると日本の旅行客数は、観光大国のフランスや米国などと比べるとまだ少ない
インバウンドを増加させるためには、いかに地方を回遊してもらうかが鍵になる

 世界で日本に関するクエリとして多いのが、食とコンテンツ(漫画など)。特に岸本斉史氏の漫画「NARUTO -ナルト-」は東京よりもはるかに検索量が多い。また、さっぽろ雪まつりでは、スター・ウォーズの雪像が2015年に登場し、海外から話題を集めた。このように、世界的に知名度の高い題材を取り込んで、海外から地方に対して注目を集めるという手もある。

世界で日本に関するクエリとして多いのが、食とコンテンツ(漫画など)。特に漫画「NARUTO -ナルト-」は東京よりもはるかに検索量が多い
さっぽろ雪まつりでは、スター・ウォーズの雪像が2015年に登場し、海外から話題を集めた

 続いて国内旅行に関して、クエリの成長率は+11%となっており、検索に使用するデバイスは、スマートフォンなどのモバイル端末からが引き続き増加。2015年は、旅行のピークがシルバーウィークにもあり、この存在が旅行業界に大きな影響を与えている。日本人の海外旅行はアジアが人気となっているが、国内旅行と比較すると成長が鈍化。国内旅行はローカル化や宿泊施設への滞在の長期化傾向が見られる。

国内旅行のクエリから見る傾向
国内旅行のクエリ成長率は+11%
スマートフォンなどのモバイル端末からの検索が引き続き増加
2015年は、シルバーウィークの存在が旅行業界に大きな影響を与えている

 国内旅行の観光地としては、東京ディズニーリゾート、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン、沖縄、北海道、富士急ハイランドが人気となっている。海外旅行では、年成長率は限定的だが台湾、ハワイ、韓国、グアム、シンガポールが人気。その中で2014年に政変があったタイが人気を戻してきている。また、マカオや香港、ベトナムはプラス成長だが、欧州は苦戦している。

国内旅行の観光地としては、東京ディズニーリゾート、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどが人気
海外旅行では、年成長率は限定的だが台湾、ハワイ、韓国、グアム、シンガポールが人気
タイが人気を戻してきている。また、マカオや香港、ベトナムはプラス成長だが、欧州は苦戦している

 ブランド名別の検索では、じゃらんや楽天トラベルなどの予約サイトの検索数が多い。航空会社別ではANA、JAL、ジェットスター、スカイマークの順となっており、ジェットスターの躍進が目立つ。鉄道会社はJR西日本がトップに。とはいえ、成熟しているブランドが多いため、ブランド名での検索数は減少傾向。

 海外旅行のニーズは下がっている反面、国内旅行の充実を求める声が多くなっている。例えば、「温泉」に関連した検索量は+20%で成長している。また、クエリ量の比率からは微々たるものだが、2015年はインバウンドと同様にAirbnbや民泊といったクエリの伸び率が高くなっている。

ブランド名別のクエリの年別成長率
海外旅行のニーズは下がっている反面、国内旅行の充実を求める声が多くなっている
「温泉」に関連した検索量は+20%で成長
2015年はインバウンドと同様にAirbnbや民泊といったクエリの伸び率が高くなっている

(編集部:柴田 進)