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富士急行 堀内社長、富士急ハイランドの施設リニューアルに伴い会見

原点回帰する怖いお化け屋敷や、癒やしの施設を併せ持つパークを建設

2015年7月23日 実施

 富士急行は7月23日、富士急ハイランドの新施設「絶望要塞2」や「絶凶・戦慄迷宮/血に飢えた病棟」「立体迷路 トーマス・サーカス」「甲斐宝刀信玄館」の報道陣向け公開を行なった。(詳しい新施設紹介に関しては7月24日の記事を参照いただきたい)

富士急行株式会社 代表取締役社長 堀内光一郎氏

 説明会に登壇した富士急行 代表取締役社長 堀内光一郎氏は、富士急ハイランドの新施設設置の背景について説明した。

「世界遺産として富士山が登録されてから早2年が過ぎました。さすがにブームは落ち着いた感じになっています。その後はインバウンドのお客様が大変多く訪れており、国内外からの多くのお客様により大変活況を呈しております。その中で今年(2015年)も富士急行グループは夏のシーズンに向けて多くの施設をオープンさせていただきました。ファミリー向けの施設として、2015年は『きかんしゃトーマス』の原作ができてから70周年という節目の年を迎えました。富士急ハイランドの『トーマスランド』に『立体迷路 トーマス・サーカス』を7月25日にオープンします。そして、きかんしゃトーマスの列車に乗れるアトラクション『わくわくライド』を17年ぶりにリニューアルしました。また、富士山の相模湖にある『さがみ湖リゾート プレジャーフォレスト』に2014年の夏期より開設している『じゃぶじゃぶパラダイス』を。富士山の麓にある遊園地『ぐりんぱ』に『ふわふわカーニバル』を新規に開設しました。これらの施設は親連れや3世代の皆様に夏休みの思い出をお持ち帰りいただけると考えております。」

富士山が世界遺産として登録されてから2年に
富士急ハイランドの新施設について
トーマスランドに「立体迷路 トーマス・サーカス」を7月25日にオープン
さがみ湖リゾート プレジャーフォレストに2014年の夏期より開設している「じゃぶじゃぶパラダイス」
遊園地「ぐりんぱ」には「ふわふわカーニバル」をオープン
富士急ハイランドのレストラン「甲斐宝刀信玄館」

「インバウンドに関して申し上げますと、いま河口湖を訪れる観光客の半数はインバウンドとなっています。そういった皆様に素晴らしい食事を提供するレストランとして、富士急ハイランドの『甲斐宝刀信玄館』をオープンしたほか、10月10日に忍野にある『忍びの里』がオープンします。いまインバウンドの方に忍野にある観光スポット『忍野八海』が大変人気があります。忍野には忍者は居ませんでしたが、『忍』の字を冠しているので、『忍びの里』をテーマに5万平米の敷地にレストランをオープンします。この忍野は、かねてより富士山の絶景が見られる土地です。忍野では、良質な水を活用した豆腐やソバが人気があります。こうした、地産地消のものを提供していく予定です。『忍野八海』を訪れた外国の方に日本の原風景をお楽しみいただき、よい思い出をお持ち帰りいただきたいと思います。必ずや新たな日本の観光スポットとして定着するものと確信しております。」

7月25日にオープンの「絶望要塞2」のロゴ

「絶望要塞はオープンして3年が経過しました。発表したの3年前の13日の金曜日でした。絶望要塞は脱出がテーマのアトラクションでした。コンセプトとしては“不条理”“徒労”“虚脱感”“絶望”といったものをしっかり、お客様にお伝えしていこうというものでした。」

「2012年9月14日に7万2132人目の方、3人組の女性のファミリーが初めて脱出を成し遂げられました。私は正直、7万人目で初の脱出となったのはずいぶん早いという印象を持ちました。とはいえ、後で聞いたところ、14回目の挑戦だったそうです。それから2013年3月14日に24万6867人目で8人組のグループの方が2組目の脱出に成功しています。男性4人、女性4人のグループの方だそうです。このグループの方々は脱出をするために度々お越しになったそうです。リーダーの方は300回目だったとのこと。このグループの方々は、アトラクションの中でお互いに顔見知りになり、同好の士として3月14日に前泊をして挑戦をされたところ、見事に達成されたそうです。」

「その後は15万人か20万人ごとに脱出に成功される方が居ると思っていましたが、その後は2015年6月に閉鎖するまで、脱出に成功される方は居ませんでした。結果的にトータルで113万4932名の方が挑戦されて、脱出に成功したのは2組、12名の方だけでした。私どもはこのアトラクションを作ったときに10万人に1人が成功すればよいのではないかと思っていました。113万人で12万ですから、ほぼ10万人に1人、0.001%の成功率という結果となりました。」

「私どもはこの『絶望要塞』を作るときはもっと気軽に作っていましたが、結果的に3年間で数々の逸話が生まれています。例えば、2014年2月14日に関東地方に大雪が降りました。富士急ハイランドがあるこの場所は、143cmもの積雪となりました。全ての交通機関がストップし、陸の孤島状態になりました。2月14日の朝に8名の方が絶望要塞に並び、この日は445人の方がいらっしゃいました。14時の閉園まで楽しまれたそうです。閉園後にどうするのか?と伺ったところ『そんな事より絶望要塞をクリアーする方が先だ』とのことでした。このように『絶望要塞』に命がけで来る方がいらっしゃいました。また、一番多く訪れた方の回数は1500回でした。他にも数百回規模でいらっしゃっている人有名なチャレンジャーの方が数百人いらっしゃいます。」

「“絶望要塞は中毒性が高い”“絶望要塞に人生を賭けている”と仰る方が多くなってきて、いい加減な形でスペックを変えたり、場合によって閉鎖したり、新しい施設作りをするというのができにくくなってきました。しかし、その半面で、絶望要塞は自己矛盾を抱えた施設です。それは、“さぁ、脱出してください。できなければ1日でも2日でも出しませんよ”というのが本当の『絶望要塞』だと思いましたが、これをやると危険もありますし、商売として全く成り立たないものになってしまいます。そこで、チャレンジしてクリアーした方は脱出となり、失敗した方は強制退去という方法を採りました。結果的に“絶対に出さないよ”と言っておきながら、85%の方が第1ステージで強制退去になっています。これを見ると、脱出できないというよりも“ほとんどの方が長い時間この施設に居られずに脱出させられてしまう”という自己矛盾を抱えてしまいました。私どもはこの自己否定、自己矛盾をしっかり見直しをしようということで、“脱出”から“潜入”にしました。」

「そして、中の脱出のためのミッションはベタなものが多かったので、とにかく運や体力、手数が必要でした。しかし、今回のミッションでは、合理性、科学性、テクノロジーという方向に変えて、運・不運よりはチャレンジすること、頭を使うこと、努力すること、こういったことで潜入が可能になるように全面刷新しました。これまで以上に難しい施設になったと思います。」

ALSOKから最新型の自律走行形警備ロボット「Reborg-X」を派遣しガードしている

「潜入をすることを拒むという観点では“セキュリティ”が重要です。この新しい絶望要塞を作るにあたっては、セキュリティの日本の第1人者であるALSOK様にお願いするのが一番いいと考えました。ALSOKのトップの方にお願いに行ったところ、快く全面協力を得ることができました。これまでのような、富士急グループが作り上げてきた絶望要塞のミッションやセキュリティ対策に加えて、ALSOK様より今回は技術協力と最強の協力者を派遣頂きました。それが、『Reborg-X(リボーグ・エックス)』という最新型の自律走行形警備ロボットです。この1体1500万円のリボーグ・エックスを今回は2体、ALSOK様より派遣していただきました。私どもが色々な形で潜入を阻んでいますが、それに加えてリボーグ・エックスが2体で皆さんの侵入を阻みます。このリボーグ・エックスにより、絶対に侵入させることはないと考えています。」

絶望要塞をクリアーするとプレゼントされる迷路の鍵

「ただ、私どもの立場から言うと、1人でも多くの方にぜひ侵入をして、ミッションを果たし、無事に脱出していただきたいと思います。そして、成功されたときにお渡しするのが、この迷路の鍵です。絶望要塞をクリアーした2組のうち8人の方にお渡ししています。これをぜひゲットしていただきたいと思います。」

同じく7月25日にオープンするホラーハウス「絶凶・戦慄迷宮」

「もう1つ私どもの目玉の施設として『絶凶・戦慄迷宮』があります。昨年、中国で戦慄迷宮を語った施設ができまして、社会問題化しました。それぐらい戦慄迷宮は国内でのご支持はもちろん、中国で話題になっている施設です。実は私は昨日、戦慄迷宮のできあがりをチェックしに行きましたが、入口のところで中国人の団体に、“せっかく中国から来たのに、なぜ営業していないのか?”とお叱りを受けました。」

「1999年にオープンしてから今年で17シーズン目、7代目になります。今回の目玉は“暗闇通路”と“監禁部屋”です。私も体験してみましたが、“監禁部屋”はほとんど嫌がらせに近いですね。それから、最近は様々なハラスメントがありますが、これはまさに“ホラーハラスメント”みたいなものです。今回、この改装にあたっては、私は口を出していませんが、これを企画した連中は、相当性格がわるいのではないかと思います。ぜひお試しください。」

「今回は、音響や映像に最先端のテクノロジーを使っています。これまでにない恐怖感をご体験いただけるのではないかと思います。ただ、私の17年間の経験からすると、初代の頃の戦慄迷宮の方が一番怖かった気がします。というのは、最初の戦慄迷宮は廃屋のホテルを使って、ハイランドの園内で作りましたが、本当にお化けが出ました。スタッフが怖がって、除霊をしたりお坊さんを呼んできてお祓いをしたりと、このような事が度々あるようなお化けを呼び込む施設でした。それから比べると、今の施設は洗練されています。」

「来年以降は“原点回帰”ということで検討したいと思います。廃墟を活用した背筋が怖気出すようなお化け屋敷を提供したいと思います。今回の戦慄迷宮は、インバウンド向けに専用の“プチ戦慄迷宮”を作りました。これは外国から来たのに、待ち時間が長くて戦慄迷宮を体験できなかったという声があったので、外国人のツアーの方専用の“お試し体験版”になります。これを体験して頂いて、本物の戦慄迷宮がいかに怖いかを母国に帰って語っていただければと思います。」

ヘッドフォンで聴くサウンドホラー「血に飢えた病棟」

「もう1つ、戦慄迷宮の薬局があったところに、サウンドホラー『血に飢えた病棟』を開設しました。これは、かつて富士急ハイランドに『処刑の館』というホラーの施設がありました。1994年から2010年まで16年にわたってお客様を怖がらせた施設です。これを再現しました。私は戦慄迷宮はかなり慣れてきているところもありますが、この『血に飢えた病棟』の気色のわるさは大変なものです。パッと見るとシャギーな施設ですが、非常に気色がわるい体験ができますので、ぜひ馬鹿にしないでご体験ください。」

癒やしの施設「リサとガスパール タウン」

「『リサとガスパール タウン』は、おかげさまで2周年を迎えることができました。今年はリサとガスパールが日本語版に訳されて15周年という節目の年となります。8月5日から銀座の松屋で『リサとガスパール展』が開催されており、リサとガスパールは注目されております。私ども2年目となる『リサとガスパール タウン』を進化させようということで、大幅に手を入れました。『リサとガスパール タウン』ができてから2年間、多くのお客様に『富士急ハイランドらしくない』『イメージが変わった』『こんなに綺麗だったのか』という声をいただきました。私は嬉しいような嬉しくないような気持ちになるのですが、確かに今まで申し上げた“血塗られた”とか“ホラーや絶叫”と対局の世界にあると思っています。」

「今回のリニューアルで噴水やフランス庭園、お花畑などを作りましたし、『レ レーヴ サロン・ド・テ』というティーサロンもオープンします。オープンは8月の上旬を予定しています。イルミネーションや公園、噴水といった“富士急ハイランドらしくない”というか、私はむしろこれからはこういうものを併せ持った富士山という世界文化遺産に相応しいテーマパークにしていきたいと思います。ぜひ、“絶叫”“絶望”“戦慄”で荒んだ心を『リサとガスパール タウン』で癒やしていただければと思います。私どもは1人でも多くのお客様に“夢”“喜び”“安らぎ”“快適”“感動”をお届けしたいと思います。そのためには富士急行グループでなければ体験できない施設づくりを心がけていこうと思います。」

ティーサロン「レ レーヴ サロン・ド・テ」が8月上旬にオープンする
「レ レーヴ サロン・ド・テ」はパリの劇場のような豪華な内装と、どの席からでも富士山を正面に眺められるイートインスペースが特徴。

 取材中にある広報スタッフに伺ったところ、改装前の戦慄迷宮に関するアンケートで一番怖かったのは「男の子が脅かしてくるシーンだった」との声が多数寄せられたという。ただ、同社によると戦慄迷宮のキャストで男の子は在籍していないとのこと。

(編集部:柴田 進)