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天草エアライン、Dash 8退役記念のプレミアムフライトを2月7日運航

客室乗務員が機内でお寿司を食べる!?

2016年2月7日 実施

お客様から頂戴したお寿司を食べるCA(客室乗務員)。これも天草エアラインならではの光景

 天草エアラインは、2月19日にボンバルディア Dash 8-103型機「みぞか号」がラストフライトを迎えるにあたり、2月7日に退役記念のチャーターフライト「DASH8-103 SAYONARA PREMIUM FLIGHT“MIZOKA”」を、阿蘇くまもと空港発着の遊覧フライトとして運航した。

 ボンバルディアDash 8-103型機は、天草空港が開港した2000年3月の初就航から昨年(2015年)12月までの総飛行時間は約2万7628時間、飛行距離も1243万260kmに及び地球を約310周まわった計算となる。

 16年間飛び続けた「みぞか号(天草弁で、かわいいを意味する)」のチャーター便は、1名あたり3万9000円という料金にも関わらず、発売開始からわずか数分で32席分の座席が完売するという人気ぶりであった。この日は、プラチナチケットを手に入れた天草エアラインのファンが15時の出発を前に13時半に阿蘇くまもと空港の天草エアラインチェックインカウンター前に集まり、搭乗手続きが始まった。搭乗客には、この日のためにデザインされたオリジナル搭乗券が渡された。

熊本空港、天草エアラインチェックインカウンター
プレミアムフライト限定のオリジナル搭乗券

 出発前の搭乗ゲート前には、熊本県の人気キャラクターくまモンがサンタクロースに扮した「モンタクロース」が登場。現在の親子イルカのデザインに決まった際のコンテスト審査員であるパラダイス山元さんと共にプレミアムフライトを盛り上げた。パラダイス山元さんは、1日1万円で天草エアラインの全10フライト乗りっぱなし運賃「パラダイス運賃」の発案者、2013年から毎年9月に開催されている「世界サンタクロース会議in天草」の発起人で日本唯一の公認サンタクロース(グリーンランド国際サンタクロース協会)、そして天草宝島親善大使でもある。

出発案内ボードにはAMX3001便と表示。目的地は出発地と同じ熊本空港
サンタクロース姿の「モンタクロース(くまモン)」と公認サンタクロースのパラダイス山元さんが出発前に搭乗ゲート前を盛り上げる

 搭乗開始に先立ち行なわれた出発セレモニーでは、天草エアライン代表取締役社長 吉村孝司氏から「天草エアラインと大きな航空会社との主な違いは、低い高度で飛行することです。天気のよい日は天草の島々、天草五橋、普賢岳、しまなみ街道など綺麗な景色が楽しめます。(天草エアラインには)ただ乗るだけでなく、観て楽しむ魅力があります。1時間の短いフライトですが、景色を楽しんでいただきたい」と挨拶。

 続いてパラダイス山元さんからは「天草の教会群(崎津教会)の世界遺産登録が先送りになったニュースが出たが、天草エアラインは世界遺産を越えたPRをしており、新みぞか号も新しい天草の魅力を発信する手段になると思っています。今の飛行機(現みぞか号)の塗り替え(親子イルカデザイン)があったからこそ、天草エアラインのファンが増えました。世界遺産に匹敵する資産が天草エアラインと天草エアラインのCA(客室乗務員)だと思います」と挨拶した。

天草エアライン株式会社 代表取締役社長 吉村孝司氏
パラダイス山元さん
親子イルカ「みぞか号」をデザインした横田青史さんに吉村社長より花束を贈呈
搭乗開始。モンタクロースがお見送り

 搭乗開始となり、飛行機をバックに搭乗者全員による記念撮影をしてから、いよいよ機内へ。通常は2名のパイロットと1名のCAで運航されるが、今回は特別フライトということで、2名のパイロットと3名のCAの合計5名の乗務員で運航された。

 事前の告知では、当便の機内サービスは「天草エアラインが厳選したCAがご対応します」と掲載されていたが、この日は客室部長の太田昌美CAに加えて、山口亜紀CA、村上茉莉子CAの3名が乗務。太田CAと村上CAは天草出身、山口CAも熊本県内の出身と、地元出身のCAで運航された。

参加者全員で機体をバックに記念撮影

 乗務する3名のCAがそれぞれ挨拶をしてから飛行機が動き出した。天草エアラインのCAは全部で5名。CA全員のプロフィールが機内のシートポケットのファイル内で紹介されていることもあり、顔なじみのCAが登場したという機内の雰囲気だった。乗客との距離感が近い航空会社としても最近注目されており、写真撮影する人の姿が多く見られた。

CA 3名による挨拶でプレミアムフライトがスタート

 CAの挨拶、安全のデモンストレーションが終わり、天草エアラインのプレミアムフライトAMX3001便は阿蘇くまもと空港を15時10分に離陸。飛行ルートは熊本空港を離陸後、長崎県の上空から天草エアラインの本拠地である天草上空、そして鹿児島県の上空を廻って熊本空港へ戻る1時間のコース。あいにくの曇り空で天草の景色は堪能できなかったが、それ以上に機内ではプレミアムフライトに相応しいサービスが提供された。

乗務員からのメッセージ付きプレミアムフライトの飛行ルート
CAとグランドスタッフによる手作りの座席番号の刺繍が入ったシートカバー。降りる際に乗客が持ち帰ることができた
機内からの景色。あいにくの曇り空だったが所々で景色を堪能できた

 シートベルトサイン消灯後、天草の名店「奴寿司」のお寿司が振る舞われた。「奴寿司」は、日本中からわざわざ訪れる人も多いお寿司屋であり、天草の旬の新鮮な食材を使用したネタが機内で提供された。機内で新鮮で絶品のお寿司を満喫しているなか、客室部長の太田CAからアナウンスが流れた。

「天草エアラインのCAは仕事中にお寿司を食べるということを知ってますよね。今、お寿司をお配りしましたけど、何が言いたいか分かりますよね。今日私たちご飯を食べてませんのでよろしくお願いします」。

 実は3年前の2013年3月に現在の機体デザインに塗り替えられた際に実施された特別フライトでもお寿司が提供され、その時に「お嫌いなお寿司のネタがあったら私たちにください」というアナウンスをして話題となったことが、今回のアナウンスにつながっているのだ。このエピソードは天草エアラインのファンの間では有名な話で、YouTubeにもアップされている。すると、CAにお寿司をおすそ分けする乗客が現れ、機内で乗客から頂戴したお寿司をその場で食べるという、ほかの航空会社ではまず見られない光景があちこちで見られ、3名のCA全員がお寿司にありつけたのであった。このユルさが天草エアラインらしさでもある。

機内サービスの光景
地元・天草の名店「奴寿司」のお寿司弁当が機内食として提供される
お客様からのおすそ分けいただいたお寿司を食べる村上CA
同じくお寿司を食べる太田CA
機内でお寿司を楽しむ乗客

 お寿司のあとは、デザートと飲み物が提供された。デザートは、天草の人気洋菓子店「維新之蔵」のプレミアムチーズケーキ。この日のために通常では販売されていないイルカの形のチーズケーキが機内で振る舞われた。そしてドリンクも天草の温州ミカンを絞った山下果樹園のオレンジジュースが提供されるなど、まさにプレミアムフライトに相応しい天草の厳選された食材を盛り込んだ食事が提供されたのだった。

天草の人気洋菓子店「維新之蔵」のプレミアムチーズケーキと山下果樹園のオレンジジュース
パラダイス山元サンタクロースもプレミアムフライトを堪能

 そうこうしているうちにプレミアムフライトは着陸態勢に入り、離陸から1時間後の16時10分に熊本空港に着陸した。着陸の際には機内は拍手と歓声に包まれた。

 到着後は吉村社長より参加者へ記念グッズが手渡された。地元・天草の福祉法人の人たちの手づくり「エコかご」の中に詰め込まれたグッズとして、Dash 8「みぞか号」の1/100モデルプレーン、天草エアラインオリジナルのジャングルハット、ラゲッジタグ、天草の名酒である「天草古酒 クリスマスラベル」、オリジナルTシャツ、そして搭乗証明書がプレゼントされるなど、天草エアラインファンにとっては至福の時間となった。

約1時間のフライトで熊本空港に着陸。着陸後に谷本真一機長とCA 3名で記念撮影
到着後、吉村社長よりモデルプレーンなど天草エアラインオリジナルグッズがプレゼントされた

 今回のプレミアムフライトで使用されたDash 8-103型機「みぞか号」は2月19日の福岡発~天草行きの108便(福岡19時00分発~天草19時35分着)でラストフライトを迎える。翌日の2月20日の天草発~福岡行きの101便(天草8時00分発~福岡8時35分着)からは新型機のATR 42-600型機での運航を開始する。天草エアラインは、わずか1機の飛行機のみで運航しており、新型機導入準備に伴い2015年8月から運休していた天草~熊本~伊丹(大阪)線の運航も同日より再開する。2月20日以降、天草~福岡線を1日3往復、天草~熊本~伊丹線を1日1往復体制で運航する予定となっている。

プレミアムフライトを終えたボンバルディア Dash 8-103型機「みぞか号」

(鳥海高太朗)