ニュース
羽田空港から浅草まで船で移動、浅草観光や指紋認証での買い物を体験するモニターツアー
「浅草おもてなしプロジェクト」の一環として実施
2017年2月13日 16:13
- 2017年2月10日、11日実施
浅草の六区ブロードウェイ商店街振興組合と、奥山おまいりまち商店街振興組合は、訪日外国人旅行者対応の環境整備を目的とする「浅草おもてなしプロジェクト」を実施すると発表。そのプロジェクトの一環として、羽田空港から浅草まで船で移動し、浅草観光や指紋認証決済サービスを利用した浅草での購買などを体験するモニターツアーを実施した。
「浅草おもてなしプロジェクト モニターツアー」と題された今回のツアーでは、羽田空港国際線ターミナル近くの羽田空港船着場から隅田川の浅草船着場まで船で移動。この船での浅草への移動は、羽田空港から浅草まで電車やタクシーを利用して移動する場合の乗り換えや料金の不安を解消し、訪日外国人旅行者が手軽に浅草を訪れられる新しい導線として考えているという。
ルートは、羽田空港船着場から東京モノレールが横に走る京浜運河を進み、レインボーブリッジをくぐって隅田川に入り、浅草まで移動するというもの。羽田空港から直接東京湾に出ず京浜運河を通るルートを選択したのは、運河は天候の変化による影響が少なく安定して運航できるからとのこと。
羽田空港船着場を出発後しばらくは、船上でミュージシャンによる生演奏などのおもてなしを実施。これは、京浜運河付近は他の場所に比べるとやや景観が寂しいこともあって、乗客を飽きさせないための工夫とのことで、実際に運航を開始した場合にも、同様の船上エンタテイメントの実施を考えているという。
京浜運河を抜けると、お台場方面の景観とレインボーブリッジが目に飛び込んでくる。特に、海面から見上げるレインボーブリッジは非常に雄大で、外国人旅行者はもちろん、日本人にも見逃せないポイントだ。続いて、隅田川を浅草までさかのぼるが、途中にかかる橋や街並みはもちろん、春にかけては咲きほこる桜も楽しめる。水上から眺める東京の街並みは、いつもとは違う楽しさや発見に満ちており、こちらも外国人旅行者に人気となりそうだ。
続いて、指紋認証決済サービスを利用するための指紋登録が船上で行なわれた。今回のモニターツアーでは、経済産業省の「IoT推進のための新ビジネス創出基盤整備事業(IoT 活用おもてなし実証事業)」として日本各地で試験運用が実施されている、Liquidが開発した指紋認証決済サービス「Touch & Pay」を活用し、浅草六区を中心とした商店街などで指紋認証による物品の購買体験が実施されたが、船上での指紋登録はそれを利用するためのものだ。
船上に登録用のタブレットPCと指紋認証センサー、パスポート読み取り機が用意され、参加者の指紋とパスポート情報を登録。登録する指紋は、右手の親指と人差し指の2本分(左手でも構わない)。その後、決済用の現金をチャージすれば、各参加者の指紋情報にパスポート情報と決済用現金のチャージ情報が紐付けられ、Touch & Pay設置店で指紋認証による品物の購入が可能となる。なお、今回のツアーでは日本円のみチャージ可能となっていたが、将来はドルやユーロなど主要外貨のチャージにも対応し、両替不要で決済が行なえるようにしたいという。
浅草到着後、人力車に乗って浅草寺や浅草神社周辺を観光しながら、奥山おまいりまち商店街、六区ブロードウェイ商店街などを散策。そして、浅草神社境内の露天や、奥山おまいりまち商店街のたこ焼き屋「浅草たこ丸」と紳士洋品店「シラクラ」、六区ブロードウェイ商店街の移動型キッチンカー「パンダバスキッチンカー」と、全国各地の特産品などを扱う地域振興総合拠点「まるごとにっぽん」でのTouch & Payによる購買を体験した。
買いたい商品を選んでレジに行き、レジに設置されている指紋認証センサーで登録した親指と人差し指の指紋双方を認証。これにより、個人認証と決済が同時に行なわれ、商品の購入が完了する。指紋認証は指1本で2秒ほど。2本の指を認証するため、一般的な非接触決済サービスを利用するよりも時間はかかるが、訪日外国人旅行者にとっては、手軽に決済が行なえるため、非常に有用なサービスと感じた。
ところで、今回Touch & Payの指紋登録時にパスポート情報も登録した。通常、Touch & Payでの決済だけであればパスポート情報は不要だが、これには理由がある。それは、Touch & Payで購入した商品などの免税手続きを体験するためだ。
2015年4月の制度改正で創設された「手続委託型輸出物品販売場制度」によって、商店街の複数の店舗で購入した商品の免税手続きを一括カウンターでまとめて行なえるようになったが、今回はTouch & Payに免税処理機能を追加したシステムを用意することで、Touch & Payで購入した商品の免税処理を指紋認証だけで簡単に行なえるというデモも実施されたため、パスポート情報の登録も行なわれたというわけだ。そして今回のツアーでは、まるごとにっぽん内のカウンターで免税処理を体験した。
一般的な免税処理では、購入店舗それぞれでパスポートを提示しつつ免税処理を行う必要がある。各店舗での手続きが非常に煩雑なだけでなく、各店舗で5000円以上の買い物をしなければ免税対応とならない。それに対し手続委託型輸出物品販売場制度を利用すれば、該当商店街の店舗で購入したすべての商品をまとめて免税処理が行なえるようになる。
各店舗は免税処理不要で販売処理が行なえるため手間が省け、利用者にとっては全店舗の買い物すべての合計が5000円を超えると免税が受けられるため、免税を受けられる範囲が広がることになる。奥山おまいりまち商店街と六区ブロードウェイ商店街は、手続委託型輸出物品販売場制度による一括免税カウンターの設置を検討しており、今回の免税処理体験もその一環というわけだ。
まるごとにっぽん内のカウンターに設置された指紋認証センサーに、登録した指をかざして認証を行なうと、タブレット画面に指紋に紐付けられている登録者のパスポート情報とともに、Touch & Payで購入した商品と支払った金額の一覧が表示される。
そして、全購買商品から免税の受けられる商品を選択するだけで、簡単に免税処理が行なわれる。また、Touch & Payで購入したものでなくても、タブレットのカメラでレシート情報を撮影し読み取ることで、免税処理が受けられるようになっている。あらかじめ指紋とパスポート情報を紐付けているため、パスポートの提示不要で免税処理が行なえ、非常に便利と感じた。
そのほか、記者の取材日には紹介がなかったが、モニターツアーでは、浅草商店街で外貨紙幣での買い物が可能になる「外貨引き受けサービス」のデモを実施した。マネーパートナーズが外貨を引き受けることによって、ドルやユーロなど外貨紙幣での支払いをコストをかけることなく実現できるとしている。
さらに、浅草地区にワイヤレスゲートとフォン・ジャパンとともに無料の公衆無線LANサービス「FON」を導入したり、FON接続時に専用の浅草観光案内ページを表示したりする取り組みなどについてもツアーで紹介された。そして、今回の実地検証や、国家戦略特区事業認定を目指した各種社会実験を通して、2020年を見据えた訪日外国人旅行者に対応した環境整備を実施するとともに、国内外観光客の憩い、休憩の場となる空間や賑わいを創出し、浅草の興業街としての復活を目指していくという。
なお、今回のツアーで体験できた、指紋認証決済サービスのTouch & Payは、2017年春以降に浅草の店舗に導入していく計画とのことだ。