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シンガポール政府観光局とJTB、日本人旅行者向けツアー商品の共同開発などで協力覚書締結

2017年2月7日 発表

シンガポール政府観光局とJTBが、旅行商品の開発やマーケティングなどでの協力覚書(MOU)を締結

 シンガポール政府観光局(STB)とJTBは2月7日、協力覚書(MOU)を締結し、共同でシンガポールへの渡航を促進するキャンペーンを実施していくことを発表。都内で調印式を実施した。MOUの効力は2017年4月1日~2018年3月31日の1年間。

 このMOUは、観光、ビジネス渡航先としてのシンガポールの魅力を日本国内により深く伝えるため、両者共同での商品開発、マーケティング、キャンペーン、PR、販売に関する連携を目的としたもの。締結内容の抜粋として、下記のものが提示されている。

商品の共同開発:日本人旅行者の多種多様なニーズに応じ、幅広いセグメントの利用者を対象とした、高品質のシンガポール旅行商品を開発。
共同マーケティング・プロモーション:旅行先としてのシンガポールに対する旅行者の認識を変え、認知度を上げるよう、マーケティングならびにプロモーションの計画で連携、また、シンガポール独特または本場の内容を含む観光素材の資産において創造。
連携の強化:シンガポール旅行商品について、JTBの販売ネットワークを強化。

 シンガポール政府観光局は2016年、日本・シンガポール外交樹立50周年を機に、JNTO(日本政府観光局)と今回のような協力覚書を締結したが、日本の民間企業との提携は初めてのことだという。

株式会社ジェイティービー 代表取締役社長 髙橋広行氏

 調印式で挨拶したJTB代表取締役社長の髙橋広行氏は、「過去より、さまざまな場面で協力関係を構築してきた。2015年のシンガポール建国50周年、2016年の日本・シンガポール外交関係樹立50周年、双方の協力関係のもとで記念商品を販売し、市場認知を進め、販売実績を上げることで、双方の協力関係をより強固なものにしてきた」とし、この実績が今回の協力覚書につながったとした。

 また、シンガポールを強化デスティネーションとしたキャンペーンを展開することを紹介し、「キャンペーンをつうじて、JTBグループはシンガポールで新たな感動を提供していく。シンガポール旅行の需要を喚起するために、JTBのイメージキャラクターである女優の武井咲さんを起用したCM展開など、プロモーションをより強化していく。本日のMOU締結により、両者で協力して、シンガポールの魅力を開発し、海外旅行マーケットや、我々旅行会社が持つ従来のシンガポールのイメージを一新することで、これまでシンガポール旅行を検討していなかったお客さまを動かし、、新たな旅行需要を生み出していきたい」との意気込みを述べた。

シンガポール政府観光局 長官 ライオネル・ヨウ氏

 この協力覚書調印式に合わせて来日したシンガポール政府観光局 長官 ライオネル・ヨウ氏は、「日本とシンガポールは多岐にわたり2国間の協力関係を享受している。我々の人と人との堅い絆は、両国間をつなぐツーリズムと、その協力関係に支えられている。シンガポール訪問者数で日本は6番目という重要な市場。2016年1月から11月までで日本からの訪問者数は72万人を維持し、安定した推移を見せている。現地消費額では、2016年上半期で、前年比16%成長している。今回のパートナーシップで、我々のクオリティツーリズムが日本でより一層成長するだろう」と、両国関係の一層の飛躍に期待。

 さらに、「デジタル化がもたらしたリサーチや旅行体験での変化は顕著に見られる。それでもなお旅行会社はデスティネーションの販売促進や予約業務において重要な役割を果たしている。同時にお客さまも行き先選びから予約まで、旅行会社に大きな信頼を寄せている。JTBは質の高い旅行商品サービスを提供する信頼されたブランド。シンガポールは一都市国家として、多様な文化と娯楽を取り揃えた刺激的な魅力あるデスティネーション。このMOUをつうじて、日本の皆さまに新しい旅行体験を提供し、満足いただけるプロモーションをお届けできればと願っている」との希望も述べた。

協力覚書を交わす株式会社ジェイティービー 代表取締役社長 髙橋広行氏(左)と、シンガポール政府観光局 長官 ライオネル・ヨウ氏(右)

4つの旅を提案、「キラキラ!わくわく!シンガポール」キャンペーン

株式会社JTBワールドバケーションズ 代表取締役社長 生田亨氏

 JTBの海外パッケージツアー「ルックJTB」を企画・実施するJTBワールドバケーションズは、この協力覚書に基づく具体的な施策として、シンガポールを強化デスティネーションとして、2017年度に「グローバルデスティネーション・キャンペーン」を実施。

 このグローバルデスティネーション・キャンペーンは、国、自治体、観光局、ホテル、航空会社など官民の枠組みを越えて連携することでデスティネーションの新たな魅力を掘り起こし、JTBグループ各社が持つ専門分野を結集させて幅広い交流文化事業を目指すというもの。さらに、このキャンペーンをつうじて、観光素材の新たな開発、あるいは、新しいインフラ整備、交通機関整備、消費者への情報提供の仕組みなどを構築することで、キャンペーン終了後も持続可能な仕組み、未来にも栄える観光地を作ることを目指している。

 こうしたグローバルデスティネーション・キャンペーンを、東南アジアの国を対象に展開するのは初めてのことだという。キャンペーンについて説明した、JTBワールドバケーションズ 代表取締役社長の生田亨氏は、シンガポールを選定した理由として、「個人、団体ともに人気のデスティネーション」「安心・安全のキーワードを持ったデスティネーション」「過去2年間の協力による実績」などを挙げたうえで、「全国6都市から1日約22便前後のフライトがあり、日々の供給座席も6000席という素晴らしい輸送能力を持っている。我々の目標は、2016年度の個人レジャー部門で約7万人。2017年度は個人団体で9万人、約128%を目指してキャンペーンを展開したい」と目標を語った。

グローバルデスティネーション・キャンペーンの概要
シンガポールの選定理由
さまざまなメディアをつうじてシンガポールをプロモーション
「ルックJTB シンガポール航空で行く キラキラ!わくわく!シンガポール」

 このキャンペーンのもと、JTBワールドバケーションズでは、シンガポール政府観光局、シンガポール航空と共同で、「ルックJTB シンガポール航空で行く キラキラ!わくわく!シンガポール」を発売。

 シンガポールを初めて訪れる人向けの“王道観光”となる「初めて旅」のほか、カラフルな街並みが人気のカトン地区での雑貨屋巡りなどを行なう「女子旅」、パンパシフィックホテルでの飲茶や、人力車「トライショー」に乗って街並みを楽しめる「大人旅」、最先端技術を駆使した博物館「FUTURE WORLD」などを巡る「家族旅」の4つのプランを提供。

 また、2階建てオープントップバスを夜の時間帯に貸し切り、ルックJTB独自のルートで運行する夜景ツアーを設定。夜のガーデンズ・バイ・ザ・ベイ、マーライオン公園で途中下車し、地上からの夜景も楽しむ。滞在中に1度、無料で乗車できる(日本での事前予約が必要)。

 さらに、ユニバーサル・スタジオ・シンガポールとも協力し、開園20分前に優先入園できるプランも設定。法人向け、教育旅行向けにも付加価値のある商品を提案していく。

 このキャンペーンの展開にあたり、JTB代表取締役社長の髙橋氏は、「昨今の旅行業界は異業種や、OTAの台頭とともに、Web化、FIT化といった環境変化が著しく進むなかで、我々は改めて社会から期待されるリアルエージェントならではの価値を見つめ直し、磨いていかなければならない。そういう意味でも、今回のMOU締結をきっかけに、お客さまとの距離が近いリアルエージェントの感性でデスティネーションの深掘りを行ない、旅に出る動機となる、新たな付加価値を開発、商品化することで、旅行意欲を刺激し、OTAにはできない当社ならではの旅の感動をお客さまに提供したいと考えている」と、市場変化のなかでのリアルエージェントとしての強みを活かす方針。

 併せて、「同時に本年は日本においては、直接需要に結びつくような大きなイベントがない年でもある。我々は待ちの姿勢ではなく、JTBグループの募集型企画旅行、FIT、法人、MICE、MICE、教育旅行などの専門分野と、世界中に持つネットワークを強みとして、総力を挙げてキャンペーンを展開し、海外旅行復活のきっかけにしていく」との意欲を示した。

ほぼ毎週のイベントで「52の週末」を楽しめるシンガポール

シンガポール政府観光局 日本支局長 柴田亮平氏

 続いてシンガポール観光の紹介を行なった、シンガポール政府観光局 日本支局長 柴田亮平氏は、先述のライオネル・ヨウ氏の発言にもあった日本からの渡航者数や消費額に触れ、「渡航者は2015年度並みに戻った。観光収入が伸びているが、実は観光目的の渡航者(の消費額に)限ると50%増えている。現地における日本人の楽しみ方の幅が広がったのではないか」との見方を示した。

 2016年は日本とシンガポールの外交関係樹立50周年を記念した「SJ50」キャンペーンとして、異業種コラボなどを含むさまざまなプロモーションを展開。

 JTBとの販売促進においては、シンガポール政府観光局が地方のJTB販売店舗へ行って、現場の声を聞く機会を設けたり、研修旅行を実施したりするなど、協力してきたという。

2016年第3四半期までのシンガポール訪問客数
「SJ50」キャンペーンを展開した2016年の取り組みなど

 2017年は、チームラボによる国立博物館での常設展示の開始や、市庁舎と最高裁判所だった建物を改装したナショナル・ギャラリー・シンガポールのオープンなど、新しい観光地も登場。

 また、2017年は、年間をつうじてほぼ途切れることなくイベントがあり、「52の週末」と呼んでプロモーション。「いつでも気軽にシンガポールに来て楽しめる」とアピールした。

 このほか、シンガポール動物などがある「マンダイ」エリアの再開発が進められており、2020年にはバードパークがジュノン地区から移転。2021年以降には熱帯雨林パークやエコホテルも開業し、総面積17万m2の、自然、エコをテーマにした、日本人が好む観光素材になる見込み。

 また、チャンギ国際空港に2019年初め頃のオープンを目指して建設されている「ジュエル」は、35万m2のドームで、ョッピングモールや長時間滞在ができる施設ができる予定。「空港そのものがデスティネーションとなり得るような大型施設」と紹介があった。

新しい観光素材
新しく開業または開業を控えるホテル
2017年の主なイベント
「マンダイ」地区の再開発と、完成イメージ
チャンギ国際空港に建設される「ジュエル」のイメージ
インがポールの芸術家の作品を展示するイベント「シンガポール・インサイドアウト(SG:IO)」。2017年度は日本でも開催する意向

駐日シンガポール大使や假屋崎省吾氏も来場したパーティ

駐日シンガポール大使のチン・シアットユーン氏

 この調印式のあとに行なわれたパーティでは、駐日シンガポール大使のチン・シアットユーン氏も来場した。

 シアットユーン大使は、「両国は幅広い分野で連携し、強固な関係を築いてきた。このようなつながりを育むために、両国を旅行先にと宣伝する以上によい方法はない」と、今回の取り組みを歓迎。「シンガポール人にとって日本がもっとも訪れる旅先となったのは言うまでもない。人口が少ないにもかかわらず、シンガポールの来日観光客数は2016年に9位となり、シンガポールからの観光客数は2015年の30万9000人から、36万1800人へと17.2%増加した。これはシンガポールの総人口の約10%で、つまり2016年にはシンガポール人の10人に1人が日本を訪れたことになる」とのデータなどを紹介して、シンガポールと日本の友好関係を示した。

 さらに、ASEANが50周年を迎えたことにも触れ、「ASEANが50周年を迎えた年に、(JTBの強化デスティネーションに)シンガポールが選ばれたのは絶好のタイミング。この素晴らしい節目を祝うにあたり、ASEANの観光機関は『Visit ASEAN@50: Golden Celebration』のテーマのもとで、ASEANを一つの統一された観光先として宣伝することを目的とした観光計画を共同で打ち出した。シンガポールの世界有数のコネクションを踏まえ、日本から訪問する人々にシンガポールを訪れるだけでなく、シンガポールを東南アジアを探求、発見するための入り口として利用することをお勧めする」と紹介した。

 また、2016年の「SJ50」に関するJNTOの取り組みのなかで、チャンギ国際空港に設置された大型フラワーアレンジメントを手がけた華道家の假屋崎省吾氏も来場。シンガポールへの友情を示すとともに、春らしい花を用いた生け花を短時間で作り上げ、隣席した人たちを楽しませた。

シンガポール政府観光局、JTBグループ関係者による鏡開きと乾杯
シンガポール政府観光局 日本支局のマスコットキャラクター「ドリたん」も登場
チャンギ国際空港の2カ所に展示された大型フラワーアレンジメントを手がけた假屋崎省吾氏。パーティでは5分ほどで、美しい生け花を完成させた