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日本レストルーム工業会、トイレ操作パネルの標準ピクトグラムを策定
「便座開閉」「便器洗浄(大)」「おしり洗浄」など8種。2017年度以降の新製品から導入
2017年1月17日 19:26
- 2017年1月17日 発表
日本レストルーム工業会は、訪日外国人観光客の急増を受け、「誰でも安心して使えるトイレ環境」を目指し、トイレ操作パネルにおける主要8項目の標準ピクトグラムを策定した。この標準ピクトグラムは、日本レストルーム工業会に加盟する国内主要メーカー9社の2017年度以降の新製品より、国内販売、海外販売を問わず順次採用が予定されるとともに、ISOによる国際標準化も目指すとしている。
今回策定された標準ピクトグラムは、「便ふた開閉」「便座開閉」「便器洗浄(大)」「便器洗浄(小)」「おしり洗浄」「ビデ洗浄」「乾燥」「止」の8種類。日本レストルーム工業会に加盟する各社のデザイナーで構成されたワーキンググループによる検討を重ねると共に、日本や海外を対象としたWebアンケート調査を実施し、「直感的な分かりやすさ」と「各ピクトグラム間での統一感」なども考慮したうえで決定されたという。
日本レストルーム工業会会長で、TOTOの代表取締役 社長執行役員である喜多村円氏によると、温水洗浄便座は日本で1964年に発売以来、2015年度には国内の年間出荷台数が430万台を超えるまでに市場が成長しているという。ただ、操作パネルのピクトグラムはメーカーごとにバラバラとなっており、利用者側からすると分かりにくく、使いにくさにつながっている。また、訪日外国人観光客からも、ピクトグラムが分かりにくいという声が届いているという。
喜多村氏は、「日頃から愛用いただいている日本の方々はもちろん、海外から訪れた方にも、我が国が誇る温水洗浄便座を使って、その快適性を感じていただき、自国に戻られて自宅や職場などに広めていただきたいと考えていますが、操作の分かりにくさで温水洗浄便座を体感していただく機会を失っているとすれば、非常に残念です。
そうならないためにも、まずは温水洗浄便座を使いやすいものにしていきたいと考えています」と、今回のピクトグラム標準化を進めた経緯を説明。日本レストルーム工業会に所属する国内メーカー9社が集まり、2014年から2年半ほどの時間をかけて検討を進め、さまざまな課題を乗り越えて操作ピクトグラムの標準化を成し遂げたという。
そして、「日本で設置されているすべての温水洗浄便座のピクトグラムが統一されるには、10年や20年といった長い年月を要すると思いますが、温水洗浄便座の先進国である日本の各メーカーが標準化を図る意味は大きいと思っています。そして、この一歩が温水洗浄便座の海外でのますますの普及や、我が国の観光立国としてのおもてなしの取り組みにお役に立てるのではないかと考えています」と、今回のピクトグラム標準化の意義について述べた。
続いて、来賓として経済産業省の大臣官房 審議官である土田浩史氏が登壇し、次のように祝辞を述べた。
「日本で温水洗浄便座が発売されて50年余りが経ちましたが、その後各メーカーが消費者のニーズを的確に捉えた製品を開発して市場に投入した結果、一般家庭への普及率が8割を超えたといわれています。そういったなか、付加価値がモノそのものから、サービスやソリューションへ移っています。
製造業は、単にいい物を作るだけでなく、市場のニーズに応じたサービスやソリューションを提供できる、『物作り+』企業になることが求められてます。そして、我が国のレストルーム業界は、そのパイオニア的存在だと考えています。
そういったなか、日本は人口減少社会が到来しており、新規住宅着工件数などは減少すると見込まれ、便座の国内需要も頭打ちになるのではと懸念されており、そういったなかで海外需要をいかに取り込むかが重要になると思います。
温水洗浄便座を代表とする日本のトイレのよさは、まだまだ世界全体には浸透していません。知る人ぞ知るという存在ではありますが、そのよさを知っていただきたいと思います。そして、日本を訪れる訪日外国人観光客に、業界一丸となって我が国のトイレ文化を積極的に発信し、そのよさを体感してもらうことは、海外需要を取り込むうえで重要なことと考えています。
そういったなか、ピクトグラムを標準化したということは非常に意義のあることと考えています。ピクトグラムには、各メーカーそれぞれに思いやこだわりがあったと思いますが、それを乗り越えて統一化したことは素晴らしいことで、経緯を表したいと思います。
そして、経済産業省としても海外展開において温水洗浄便座の性能評価や試験方法の規格の国際標準化に向けた取り組みに支援してきましたが、今後その取り組みについてもスピード感をもって支援していきたいと思います。
来日された海外の方々に、日本のトイレのよさを知っていただくことで、日本発の文化として海外における温水洗浄便座の普及の起爆剤となり、快適なトイレ環境が世界に広がることを期待します」と話した。
また、国土交通省 観光庁の審議官である瓦林康人氏も来賓として登壇し、次のように挨拶した。
「我々は、昨年(2016年)3月に策定された、政府の『明日の日本を支える観光ビジョン』に基づいて、2020年に4000万人を目標として訪日外国人旅行者数を増やす取り組みを行なっています。
そのビジョンのなかには、人数の目標と合わせて、日本での外国人による消費額の目標も設定されています。そういったなか、『観光資源を磨き上げて極め、地方創生の礎にする』『観光産業の国際競争力を高める』『すべての旅行者にストレスなく観光を満喫していただく』という3つの分野で、政府一丸となって取り組んでいます。
この中で、『すべての旅行者にストレスなく観光を満喫していただく』という分野では、入国管理の人員増強をはじめ、さまざまな場面での流れをスムーズにする取り組みを行なっていますが、そういったなかでもトイレというのは大事な分野です。
実際に、地方に訪日外国人旅行者の流れを作る、また稼働率が相対的に低い旅館に泊まっていただく、といった観点で、平成27年(2015年)度の補正予算から、旅館のトイレの洋式化に対する補助金制度を創設して、現在までに全国で500を超える旅館で活用いただきました。
加えて、平成29年(2017年)度の補正予算案では、観光拠点のトイレで洋式化を進める支援を決めています。こういった部分は、訪日外国人旅行者をお迎えする大事なインフラで、今回の利用者目線でのピクトグラム標準化は意義深いものと考えます。今後も、関係部署、関係異業界と連携しながら、外国人をお迎えする体制を強化し、訪日外国人旅行者数4000万人に向けた取り組みをオールジャパンで進めていきたいと思っています」と述べた。
その後、ピクトグラム標準化のプロジェクトリーダーを務めた、TOTOの濵﨑正直氏から、詳細が説明された。
日本での2人以上の世帯における温水洗浄便座の普及率は、2015年度で81.2%に達しているのに対し、海外(アメリカ、イギリス、シンガポール)での温水洗浄便座の認知率こそ74.5%あるものの、使用率は3.6%しかなく、日常的に使われていないという。また、訪日外国人旅行者に、日本のトイレで困ったことを聞いたところ、高機能な温水洗浄便座の使い方が分からないというものが上位を占めたという。
そこで、こういった課題を解決すべく「日本のトイレおもてなしプロジェクト」を立ち上げ、日本のトイレの使い方を伝えるWebサイトを用意したり、トイレ操作の分かりやすさを改善するために、操作ピクトグラム標準化などに取り組んだという。
まず、日本のトイレの使い方を伝える取り組みとして、日本レストルーム工業会のWebサイトに「NIPPON UTSUKUSHI TOILET」というサイトを用意し、英語や中国語、韓国語などでトイレのある場所や使い方などを紹介している。
そして、トイレ操作の分かりやすさ改善の取り組みとして、今回のピクトグラム標準化を実現した。
温水洗浄便座は多機能化が進んで、さまざまなボタンで各種操作を行なうようになっているが、初めて使う人にとっては非常に分かりにくいものとなっている。また、操作ピクトグラムもメーカーごとにまちまちで、分かりにくいという声があったという。そこで、分かりやすく使っていただきたいという思いから、ピクトグラム標準化の取り組みを開始した。
ピクトグラムの標準化については、温水洗浄便座の機能として重要かつ基本となるものについて標準化するということで取り組んだという。その機能は「便ふた開閉」「便座開閉」「便器洗浄(大)」「便器洗浄(小)」「おしり洗浄」「ビデ洗浄」「乾燥」「止」の8種類。それらだけでも、各社独自にさまざまなピクトグラムを利用していたが、今回のプロジェクトでは各社のデザイナーが集まり、検討を重ねて標準化を実現。
その決定のポイントは、「直感的な分かりやすさ」と「ピクトグラムの視認性や美しさ、ピクトグラム間の調和」といった部分だったそうで、それに合わせて海外も含めたWebアンケートを行ない、分かりやすさについて検証しながら総合的に判断して決定したという。
特に難しかったのが、便器洗浄のピクトグラムだったそうだが、こちらはWebアンケートでの評価が高かったものを採用したとのこと。そして、この標準ピクトグラムは、日本レストルーム工業会に加盟する各メーカーの、2017年度以降の新製品で採用されることになるという。
さらに、今回決定したピクトグラムは日本だけでなく世界的にも浸透させていきたいという思いで、ISO規格にも登録申請を行なう準備を進めている。そして、世界各国のトイレメーカーがこのピクトグラムを使用することを期待しているとのことだ。