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成田空港、千葉港頭石油ターミナルにおいて「第27回海上防災訓練」実施

海上保安庁、警察、消防らが連携、船艇7隻参加の大規模放水訓練

2016年10月26日 実施

成田国際空港が実施した「第27回海上防災訓練」の訓練場所となった3号桟橋。タンカーの代わりに千葉県から派遣された防災・給水船の「若葉」が横付けされている

 NAA(成田国際空港株式会社)は10月26日、千葉港頭石油ターミナル(千葉市美浜区)において「第27回海上防災訓練」を行なった。この訓練は、タンカーの揚油作業中に桟橋上の配管接続部から航空燃料が漏洩するという事故を想定し、NAA自衛消防隊をはじめ、海上保安庁 千葉海上保安部、千葉市消防局、千葉県警察、千葉市新港地区共同防災隊などと連携して消火活動を行なうもの。参加人員は約100名で、消防車が5台、船艇が7隻参加する大規模な訓練となった。

 訓練開催場所の千葉港頭石油ターミナルは、成田空港で使用される航空燃料の備蓄基地。1万1000kLのタンクが4基、9000kLのタンクが3基、4000kLのタンクが6基あり、空港で使用される5日分を貯蔵できる。製油所で精製されてタンカーで運ばれてきた航空燃料は、ここでいったん荷揚げされてタンクに貯蔵、その後パイプラインで成田空港まで運ばれる。膨大な可燃物を扱っているのでセキュリティレベルも非常に高いエリアだ。

 訓練の内容は、その千葉港頭石油ターミナル内にある、3号桟橋でタンカーから揚油作業中に震度6以上の地震が発生したことを受けて対応に当たるというもの。配管接続部から航空燃料が周辺に漏洩したので対策本部を設置、直ちに消防車および関連船舶が出動。合わせて、オイルフェンスや吸着シートによる漏洩燃料の拡散防止と回収、負傷者の救護、発生した火災を鎮火するための放水作業となる。

 14時に「訓練! 訓練! 」のアナウンスとともに開始され、地震の影響で海上に航空燃料が漏洩。それを受けて、揚油作業責任者によるガス検知、制御室に報告がなされる。吸着マットによる初期対応も行なわれる。制御室ではシフトマネージャーが保安技術者に連絡、また関係各所にも通報指示が出され、自衛消防隊が出動する。現場指揮本部が設置され、高所放水車を含む共同防災隊も到着。海上では防災船、作業船によってオイルフェンスの設置が開始される。

桟橋上、海上において燃料漏洩の確認作業を行なっているところ
現場指揮本部が設置され、先に駆け付けた千葉港頭石油ターミナルの自衛消防隊が火災に備える
高所放水車や化学消防車も到着
火災に備えてアームを伸ばす高所放水車

 14時25分には巡視船、消防船、警備艇も到着。オイルフェンスの設置も完了する。海上に浮遊している漏洩燃料を拡散させるために海上放水準備がされ、警備艇が近くを航行する船舶に対して燃料漏洩事故が起きたため近づかないように呼びかける。

 準備が整い次第、浮流油を拡散させるための放水を開始。この作業は、気化しやすい燃料が海面を覆っていると非常に危険なので、放水によって海水と混合させて引火の危険性を下げるとのことだ。

通報を受けて関係各所から船舶が到着。千葉市消防局の消防艇「まつかぜ」
千葉県警察本部 地域部水上警察隊の警備艇「いぬぼう」
海上保安庁 千葉海上保安部の巡視艇「そでかぜ」
黄色のオイルフェンスが周囲に設置される
桟橋の周辺には白色の吸着マットが広げられる
浮流油を拡散させるための放水が開始される

 14時47分には火災の発生を確認。消火作業に入るため、「総員退避!」の掛け声のもと、桟橋周辺で作業していたスタッフが一斉に避難を開始。その間、消防車などは放水準備を始める。

 15時に「一斉放水開始!」の号令のもと、海から陸から桟橋に向けて放水が開始される。そのあとは、火災の鎮火を確認して、撤収作業を開始。人員、機材を確認して、15時20分に訓練が終了した。

火災を知らせる赤旗が立てられたところ
消火するために放水を始めるので、桟橋で作業していたスタッフが一斉に退避
海から陸から、さまざまな角度から放水された

 閉会式では千葉市美浜消防署 署長の手塚康幸氏、海上保安庁 千葉海上保安部 部長の藤井伸弘氏が講評を述べた。

 手塚氏は「非常に収穫のある訓練だったと思います。今後も訓練を重ね、さらなる防災体制の強化につながるようお願いします」と述べ、藤井氏は上下や横の連携もスムーズだったと評し、「残念ながら地震活動期に入ったと言われる日本ですが、訓練を通じて得たものをもとに安全を第一にお願いします」とコメント。終わりに同社給油事業部担当部長の島信氏が、訓練に参加した関係各所、スタッフに向けてお礼の言葉を送って締めくくった。

閉会式の様子
千葉市美浜消防署 署長 手塚康幸氏
海上保安庁 千葉海上保安部 部長 藤井伸弘氏
NAA給油事業部担当部長 島信氏