JALふるさとアンバサダー/応援隊に聞く地域愛

JALの客室乗務員が語る、阿蘇くじゅう国立公園の魅力と草原保全活動

JALふるさとアンバサダーに地域の取り組みを聞いた。回答者は熊本県JALふるさとアンバサダーの坂内純子さん

 全国各地に拠点を持つJALは、地域活性化の取り組みを継続的に実施してきており(現在は「JALふるさとプロジェクト」)、2020年8月には社内公募で選ばれた客室乗務員が現地に移住して、それぞれの地域での取り組みを推進する「JALふるさとアンバサダー」を発足しているほか、同12月には乗務しながら地域活性化に携わる「JALふるさと応援隊」を任命している。故郷や縁のある地域に対して、客室乗務員として培ってきた知見を活かした商品開発や地域課題の解決などを展開する狙いがある。

 今回お話を聞いたのは、熊本県で阿蘇くじゅう国立公園の魅力を伝えるJALふるさとアンバサダーの坂内純子さん。

――取り組みについて教えてください。

 熊本に魅せられ移住して7年、JALふるさとアンバサダー熊本県の坂内です。みなさま世界で一番大きいカルデラはどこにあるかご存じでしょうか?

 阿蘇のカルデラを思い浮かべた方! ありがとうございます! しかしながら阿蘇のカルデラは世界最大級のサイズではあるものの、世界で一番大きな面積を誇るのはインドネシアのトバカルデラです。

 ではなぜ阿蘇のカルデラが世界的に有名なのかというと、1000年以上におよぶ野焼きによって維持されている広大な美しい草原が広がり、また現在ではカルデラ内に約5万人が生活を営み、長きにわたり築き上げてきた文化的景観が広がる、世界で類を見ない大変めずらしいカルデラだからです。

 阿蘇のカルデラを含む阿蘇くじゅう国立公園の魅力を「国立公園オフィシャルパートナー」でもある日本航空の坂内がお伝えいたします!

――この取り組みにはどのように関わっているのでしょうか。

 阿蘇の草原は「半自然草原」と呼ばれています。これは自然のままになりたっているのではなく、人と自然の関わりのなかで成立している草原ということです。

 年に一度早春に野焼きをすることにより、森林化を阻害し草原のままで維持することができます。

 古くからこの地域の人々は牛馬の放牧、茅葺き屋根の材料や牛馬のエサ、堆肥となる草の確保などで草原を最大限に利用してきましたが、ライフスタイルの変化、牛肉の輸入自由化などで阿蘇の草原面積はこの100年で約半分に減少してしまいました。

 日本航空は阿蘇市との連携協定を2023年3月に締結しましたが、その目的の一つがこの牧歌的な素晴らしい景色を1000年先も残すことです。

――今後の展開・展望について教えてください。

 草原を守る人々の活力となるものは草原の活用です。

 アクティビティのフィールドとして、阿蘇で伝統的に飼育されてきたあか牛の放牧地としてなど、阿蘇の草原の活用方法はさまざまです。

 今回はガイドツアーに参加しなければ入ることができない草原内でサイクルツアーを体験してきました。

 この日は阿蘇火山博物館から中岳火口へ上って草原内を下る全長約8kmのコースをe-bikeで走行。草原はちょうどススキのシーズン。身の丈と同じ高さのススキをかき分け、転ばないようe-bikeをコントロールしながら進む草原は爽快感とスリルの繰り返し、とても楽しい時間でした。次は家族や県外からの友人と一緒に参加しようと思います!

 ガイドの方から伺った阿蘇特有の生き物や植物に関する話、そして草原内にかつて鎌倉時代から室町時代にかけて37坊51庵もの寺院群が建ち並んでいた跡、古坊中遺跡についてのお話はとても興味深かったです。貴重で豊かな阿蘇の生態系や歴史も学べるこちらのツアー参加費には草原保全費が含まれていますのでツアーに参加することで草原の維持に貢献することができます。

――旅行者に向けてメッセージをお願いします。

 阿蘇の草原の保全に貢献する方法はほかにもあります。

 あか牛導入貸付金の出資者(あか牛オーナー)となり、あか牛の買い入れや放牧を支援する仕組みです。オーナー期間の5年間にわたりご自身のオーナー牛に名前をつけ、その背中に名前を書いたり、あか牛と触れあうことができます。また受け入れ農家さんとの交流会もあり、とても暖かな取り組みです。

 出資金は30万円で、会費や農家支援金を差し引いた26万円分のあか牛肉や阿蘇の特産品がオーナー期間中ご自宅へ届きます。

 草原保全への貢献は、みなさまが熊本、そして阿蘇を知り、思いを寄せていただくことが大きなはじめの一歩であると感じます。

 阿蘇の草原保全の根幹である野焼き。地形を熟知し、風を読み長年の経験をたよりに進められます。

 野焼きには延べ8000人の人手が必要だといわれていますが、後継者不足で野焼きも難しくなっています。

 日本航空は、阿蘇の草原を守るうえで欠かせない野焼きに関わっていく仲間の創出にも協力しています。

 私も来春、野焼きに参加させていただきます。

 ダイナミックに燃えてゆく草原も見応えがありますが、ぜひ見ていただきたいのは、真っ黒に燃えた草原が数週間後には輝くグリーンの若草で覆われている光景です。

 人々と自然がともに作り上げる阿蘇の草原の保全への貢献、活用をしにみなさまぜひ世界の宝、阿蘇の草原にいらしてください。