井上孝司の「鉄道旅行のヒント」
「つぎ」「次発」「その次の発車」? 会社によって意外と違う用語
2026年10月7日 06:00
会社が異なれば車両が違ったり、同じ車両でも外部塗装が違ったりする。駅名標のデザインも会社ごとに違いがある。こういうのは分かりやすいが、同じ「日本の鉄道」でも、意外なところで違いが出る場面がある。旅客から見える部分の違いもあれば、見えない部分の違いもある。
ホームの呼び方からして会社ごとにバラバラ
例えば、駅ホームの呼び方。ローカル線の小駅みたいにホームが1つしかなければ話は簡単だが、複数のホームがあると、番号を付けて区別するのが一般的。
国鉄/JRグループでは「駅本屋側から順番にナンバリングする」のが原則だが、民鉄では下り列車基準で左側から順番にナンバリングする場面もよく見られる。まずそこから違いが生じるが、さらに番号の後ろに付ける言葉も、会社によって「○番線」「○番乗り場」「○番ホーム」「○号線」と用語はさまざま。ちなみに「○号線」は阪急電鉄が有名である。
そのホームに設置する発車標も、同時に複数の列車の情報を表示する場面で用語の違いが出てくる。よくあるのは「先発・次発・次々発」だが、「こんど・つぎ・そのつぎ・そのあと」としている会社もある。
発車標に「これから出発する列車」だけでなく、「到着する列車」の情報が出てくることもある。しかし、当駅が終着の列車が到着する場合、もちろん、その列車には乗れない。そこで「当駅止まり」と表示する会社があれば、「当駅止り」「当駅止め」「当駅止」と表示する会社もある。
駅構内に出入りする際には改札を通る。ラチ外に複数の出口がある場合には「○○口」が一般的だが、改札そのものの呼称も「○○改札」であったり「○○口」であったりする。
阪急電鉄が、放送の冒頭で「みなさん~」という呼びかけを入れるのは有名だが、こうした放送の文面にもまた、会社ごとの違いが現われることがあっておもしろい。
車両の方も会社ごとに違いが
ホームに上がって列車に乗る。これから到着する列車について案内放送がかかるときに、編成両数の情報が出てくることがある。ところがそこでも「○両編成」が一般的ながら、会社によっては「○両つなぎ」と案内することがある。
ときどき、首都圏の列車を指して「“短い10両編成”ってなんだ」とSNSでツッコミが入る様子を見かけるが、編成両数の長短は相対的な問題だから、会社や路線によって差異が生じるのはいたしかたない。ただ、そういう差異があるということ自体、知らない土地に行って知らない事情に触れる、旅の醍醐味のひとつであるともいえる。
1つの列車を複数の車両で構成している場合、号車は番号で区別する。ただし、以前に書いたことがあるように、必ず1号車から順番に並ぶとは限らず、まれに数字が飛ぶことはある。また、日本では数字が一般的だが、イギリスに行ったら数字ではなくアルファベットで表示していて面食らったものだ。
列車に関わる用語の違い
列車を運行する向きは「上り」「下り」といって区別するが、これは「起点駅から出るのが下り、起点駅に向かうのが上り」が原則。しかしときどき例外が発生する。
環状線だと、上り下りで案内するのは分かりにくいことおびただしいので、首都高速道路もそうだが「内回り」「外回り」と案内するのが一般的。しかしこれだと、「左側通行だから、こっち方向に向かうのが内回り……」と考えないといけない。名古屋の地下鉄名城線みたいに「右回り」「左回り」の方が分かりやすいと思う。
ちなみに、東京メトロは帝都高速度交通営団の時代からそうだが、下り線・上り線ではなくA線・B線といっている。都心を貫通する路線ばかりだから、確かに上り・下りという言い方はそぐわない面がある。
民鉄では、全駅に停車する列車は「各駅停車」が多数派のように見受けられる。しかし、以前に書いた南海電鉄の「普通」と「各駅停車」の違いみたいな事例もある。もっともこれは、今宮戎駅と萩野茶屋駅に停車するのが高野線の「各駅停車」だけなので、両駅を通過する南海本線の方は各駅停車と呼ぶと具合がわるいのだ(そもそもホームがないので、物理的に停車不可能)。
JR東日本の京浜東北線では、田端~田町間で日中だけ快速運転を行なっているが、ここでは「快速」「各駅停車」の使い分け。「快速」だろうが「各駅停車」だろうが、特別料金不要の「普通列車」であることに変わりはない。ところが、それでも「快速」「普通」と案内している事例もある。
優等列車が各駅停車を途中で追い抜く場合、追い抜きを行なう駅に双方とも停車するのであれば、相互の乗り換えが可能である。そこで優等列車側の車内放送では「各駅停車にお乗り換えができます」「各駅停車に連絡します」といった具合に、ここでもまた会社ごとの違いがあるのがおもしろい。
英訳にも違いがある
最近は日本語だけでなく英語の案内や放送がかかるのが日常的であるし、さらに中国語や韓国語まで加わることもある。こうした外国語の案内でも、用語の違いが出ることがある。
例えば優先席。「Priority Seat」とするのが一般的だが、「Courtesy Seat」としている会社もある。そもそも「優先席」だったり「優先座席」だったりと、日本語からして違いがある。似たような話で、「弱冷房車」「弱冷車」という相違もある。その昔、弱冷房車を「weak cool」と英訳していた会社があったが、さすがにこれは意味不明であり、あとで変更された。
車両とホームの間の隙間に関する注意喚起も、「Please watch your step」と放送する場面が多いが、英国風(?)に「Please mind the gap」と放送している会社、または車両もある。
これが列車種別の英訳になると、またややこしい。各駅停車(local)、快速(rapid)、急行(express)、特急(limited express)ぐらいで済めば話は簡単だったが、種別の多様化が進んだ結果として、各社とも訳語に苦労しているようだ。
旅客から見えないところの用語の違い
利用者にとっては関係ないが、業務としては重要な情報の一例として、「車両の天井に設置している灯具を数える順番が会社によって違う」なんていう事例がある。球切れになった蛍光灯を交換するときに関わってくる、業務上は重要な情報である。
また、運行管理の担当者が会社によって「指令」だったり「司令」だったり、レールや枕木を取り替える作業が「交換」だったり「更換」だったりといった違いもある。車両のシリーズ呼称も会社によって「○○系」だったり「○○形」だったりするので、記事を書くときには注意を要するところである。
違いを見つけるのも楽しみのひとつ
具体例を挙げ始めると際限がないが、同じ「日本の鉄道会社」でも、歴史的経緯や企業文化の違い、お家の事情の違いにより、さまざまなところで相違が出てくるものである。
いろいろな土地を訪れて、いろいろな鉄道会社を利用して、いろいろな車両・列車に乗ると、そんな相違を発見する場面が少なくない。それもまた、鉄道旅行を楽しむアイテムのひとつといえよう。
鉄道の話ではないが、空の上でも似たような話がある。例えば、離陸前と着陸後の業務放送。同じ日本航空の旅客機でも、ドアモードが「アームド/ディスアームド」だったり「オートマティック/マニュアル」だったりする。しかもこれ、エアラインが違うと言い回しが変わる。












































