【イベントレポート】
【ツーリズムEXPO 2017】環境省が8カ所の国立公園をアピールするセミナーを開催
2017年9月27日 16:23
- 2017年9月21日~9月24日 開催
環境省では、政府が2016年3月30日にとりまとめた「明日の日本を支える観光ビジョン」に基づき、日本の国立公園を世界水準の「ナショナルパーク」としてのブランド化を図ることを目標に掲げている。そのなかで「国立公園満喫プロジェクト」を発足させ、まずは8カ所の国立公園において2020年までに訪日外国人に訪れてもらえるような取り組みを集中的に実施している。
今回のセミナーでは、その8カ所の国立公園である「阿寒摩周国立公園」「十和田八幡平国立公園」「日光国立公園」「伊勢志摩国立公園」「大山隠岐国立公園」「阿蘇くじゅう国立公園」「霧島錦江湾国立公園」「慶良間諸島国立公園」の担当者が、管轄する国立公園の魅力や取り組みを紹介した。
北海道の雄大な自然が魅力の「阿寒摩周国立公園」
阿寒摩周国立公園は、もともと「阿寒国立公園」という名称だったが、2017年8月に現在の名称に変更された。場所は北海道東部で、近くには知床国立公園、釧路湿原国立公園などがあり、雄大な自然に囲まれている。カルデラ地形を基盤として形成されているので、火山と森と湖が織りなす自然が最大の魅力とのことだ。
新たな取り組みとしては、原生的な自然のなかで上質な時間が過ごせるように、屈斜路湖近くの川湯温泉街の再整備、阿寒湖畔にあるエコミュージアムセンター内の暖炉スペースやカフェサービスのリニューアル、それ以外の施設においても老朽化したトイレをはじめとする施設の改修などを予定している。
原生的な自然の新たな活用方法も考えているとのことで、阿寒湖のマリモ観察ツアー、現在は閉鎖中の硫黄山の登山ルート再開、オンネートキャンプ場にてグランピングの導入などを検討しているとの話だ。また、アイヌ文化を体験してもらえるように「まちなかアイヌアートミュージアム」の取り組みを推進している点についてもPRしていた。
コケが生み出した美しい渓谷・奥入瀬渓流の「十和田八幡平国立公園」
十和田八幡平国立公園は東北地方の南北に連なる奥羽山脈にあり、青森県と秋田県にまたがる「十和田八甲田地域」と、秋田県と岩手県にまたがる「八幡平地域」の2つのエリアから構成されている。今回はそのなかの十和田八甲田地域にある「奥入瀬渓流」が紹介された。奥入瀬渓流は十和田湖から太平洋に向かって流れる奥入瀬川の上流部分の約14kmほどの渓谷で、1万5000年前に外輪山が決壊することでできたと言われている。もともとは岩場だらけの谷だったそうだが、岩にコケが生育することで植物の生育を促し、現在のような植生に恵まれた非常に自然が豊かな渓谷になったとのことだ。ダイナミックな地形の成り立ちに繊細なコケによって育まれた自然は芸術品のようであり、渓谷が天然の自然博物館みたいなことから「奥入瀬フィールドミュージアム」と呼んでいると話した。
奥入瀬渓流の優れた特徴としては「Q・T・A」に優れている点としている。Qはクオリティで、豊かな自然を指し、Tはトレイルのことであり、整備された遊歩道があるので重装備でなくても訪れることが可能。Aはアクセスで、東京からでも飛行機で1時間、新幹線で3時間で近隣の空港や駅に着き、そこから1時間~1時間30分ほどで到着できる点をアピールしていた。
首都圏からのアクセス良好な観光地「日光国立公園」
世界文化遺産に登録された日光東照宮をはじめとする「日光の社寺」が有名であるが、華厳の滝、中禅寺湖、戦場ヶ原、鬼怒川、塩原渓谷など、自然豊かな景勝地としても人気がある。鬼怒川や奥日光、那須の温泉も有名。首都圏からのアクセスも抜群であり、東京から新幹線と在来線なら約100分、東武鉄道の特急なら乗り換えなしで約110分で訪れることができる。
2020年には華厳の滝近くの中禅寺湖畔に「ザ・リッツ・カールトン日光」がオープンする予定であり、世界から多くの富裕層が訪れることが期待されている。環境省としては湯元温泉がさらににぎわうよう、湯ノ湖畔園地や日光湯元ビジターセンターの再整備を予定している。
次に那須塩原エリアには2011年5月に開園した「那須平成の森」があることを紹介。ここはもともと那須御用邸の土地だったが、「豊かな自然を維持しつつ、国民が自然に触れあえる場として活用してはどうか」という天皇陛下のご意向を受けてオープンしたそうだ。園内には誰もが安全に散策できる整備された「ふれあいの森」、自然をできるだけそのまま残した「学びの森」があり、学びの森はガイド随伴でのみ入園できる。園内には数多くの動物が生息しており、豊かな自然を感じられるとの話だ。
神々が宿る地「伊勢志摩国立公園」
2016年にG7 伊勢志摩サミット(第42回先進国首脳会議)が開催された賢島を含む、三重県志摩半島一帯からなるリアス式海岸が美しい国立公園。それと、伊勢神宮がある場所としても有名で、その伊勢神宮を守る目的で国立公園に指定されたエピソードを持つそうだ。第二次世界大戦後、国家神道廃止により神宮を保護する法律がなくなり、境内で飼われていた鯉や神鶏(チャボ)は無断で捕獲され、果ては20年に一度行なわれる遷宮用の御用材まで伐採されてしまうといったありさまに、高倉大宮司と古川左京少宮司が揃って厚生省に出向いて陳情した。担当だった厚生省の石神技官はこの2人の陳情を受け、GHQの国立公園主管のポパム大尉と美術記念課長であるポリス少佐を説き伏せて現地を視察し、わずか1カ月で国立公園に指定されたそうだ。
もともと神宮には、自然を守ってその恵みの大切さを継承するという役割があるそうだ。具体的には敷地内で遷宮用の木を育成し、それを用いたあともリサイクルを重ねて大事に使っていこうというもの。内宮の正殿に使われている棟持ち柱は遷宮で解体されたあとは内宮や外宮の鳥居として使われ、さらに20年後は関の追分や桑名の渡の鳥居として活用されるので合計で60年使われるそうだ。さらに阪神淡路大震災によって被害を受けた生田神社と長田神社に寄贈されたので、現在は80年間使われているそうだ。
神話で語り継がれる名山・大山の「大山隠岐国立公園」
大山隠岐国立公園は、鳥取県、島根県、岡山県と広い地域にまたがる国立公園で、日本海に浮かぶ隠岐諸島も含まれる。具体的には4つのエリアに分かれており、大山から蒜山、毛無山、船上山を含む山岳地帯および三徳山一帯、島根半島の海岸部分、三瓶山一帯、隠岐諸島となっている。そのなかでも大山はこの地域のシンボルとして、古くからは信仰の対象として出雲大社ともども大昔から愛されてきた山だ。東西南北すべての方向からそれぞれ違う景色が見れるのも大きな特徴であり、写真愛好家も多く訪れるそうだ。
隠岐諸島は「世界ジオパーク」にも認定されており、ダイナミックな自然景観と多種多様な生態系が存在する貴重な島々。最近では外国からの観光客も増えてきているそうだ。ほか、4000年前の火山活動で地下に埋積された三瓶小豆原埋没林がある三瓶山や、日本で一番危険な場所にある国宝として有名な投入堂がある三徳山など、たくさんの見どころがある国立公園として紹介された。
広大なカルデラ地形を擁する「阿蘇くじゅう国立公園」
阿蘇くじゅう国立公園は、熊本県と大分県にまたがる敷地を持ち、34ある国立公園で7番目の広さがある。特徴については、熊本県営業部長であるくまモンが登場してクイズ形式で解説。ここでは問題と選択肢を紹介する。答えは記事の一番下に記載してあるので考えてみてほしい。
第1問
阿蘇くじゅう国立公園内で、今も活発な活動を続けている活火山はいくつあるでしょう?
A:1つ
B:2つ
第2問
阿蘇のカルデラには、世界でもめずらしく、多くの人が住んでいます。どれぐらいの人が住んでいるでしょう?
A:5000人
B:50000人
第3問
阿蘇の草原は日本で何番目に広いでしょう?
A:日本で1番目
B:日本で2番目
第4問
阿蘇くじゅうの草原を維持するために大切な行事は何でしょう?
A:野焼き
B:火文字焼き
第5問
阿蘇とくじゅうをつなぎ、草原の景色の中を気持ちよく走ることができる道路の名前はどちらでしょう?
A:やまなみハイウェイ
B:阿蘇くじゅうハイウェイ
第6問
温泉の中でも法律で定義されている温泉(療養泉)は全部で10種類あるのですが、阿蘇くじゅう地域には、そのうち何種類の温泉があるでしょう?
A:8種類
B:4種類
第7問
阿蘇くじゅう地域にある、自然を利用して作られる料理は何でしょう?
A:温泉の蒸気を利用した蒸し料理
B:阿蘇の溶岩プレートを使った焼肉
グルメも観光地も一杯の「霧島錦江湾国立公園」
鹿児島県の公式キャラクターのぐりぶーと、KTS鹿児島テレビで放送されている特撮ヒーロー、薩摩剣士隼人が応援に駆けつけた。
霧島錦江湾国立公園は、鹿児島県と宮崎県にまたがる霧島地域、桜島と錦江湾奥の地域、薩摩半島と大隅半島の先端部である指宿・佐多地域とに分かれている。霧島エリアは緑豊かな山でトレッキングなどが人気だが、そのなかでも都城市と高原町にまたがっている御池はとても透明度が高くて有名。さらにブラックバスが生息しているのでルアーフィッシングも楽しめるのだが、透明度が高いだけに難易度は高く、ここで釣果を上げる人は釣り人の憧れとなっているそうだ。
次は桜島・錦江湾奥エリアの紹介。桜島はここ2週間ほど噴火活動が盛んで大変だが、そのふもとでは甘くて皮ごと食べられるシャインマスカットや世界一大きな桜島大根など、いろいろな作物の収穫体験が楽しめる。
指宿は有名な砂風呂に美しい円錐形をした開聞岳、九州で一番大きな湖である池田湖がある。水深が深くて神秘的な池田湖は、ネッシーならぬ“イッシー”が存在するというエピソードが今でも語られているそうだ。その指宿からフェリーで渡れる大隅半島の南には本州最南端である佐多岬がある。現在は歩道を整備している途中なので岬の先端までは行けないが、完成した際には車イスで移動することもできるとしている。近辺には刺身を豪快に丼に盛り付けた時海丼やウツボの料理も堪能できるそうだ。
ケラマブルーはここでし見れない「慶良間諸島国立公園」
慶良間諸島国立公園は2014年、3月5日に31番目の国立公園として指定された。3月5日に指定されたのはサンゴの日にちなんでとのことだ。慶良間諸島は那覇の西に位置し、渡嘉敷村なら高速船で約35分、座間味村なら約50分で渡ることができる。島の海岸線から沖合に7kmほどが国立公園の敷地で、ほとんどが海で構成されているのが特徴だ。透明度の高い海に浮かぶ美しい島々にサンゴ礁、冬にはザトウクジラが出産と子育てに訪れるそうだ。
慶良間諸島には美しいビーチがいくつかある。ミシュラングリーンガイドジャポンで二つ星に認定された座間味島南部に広がる古座間味ビーチ、夏には海水浴客でにぎわう渡嘉敷島の阿波連ビーチ、ダイビングスポットとしても有名な阿嘉島のニシバマビーチが中でも有名な場所だ。
もともとダイビングスポットとして人気のあった慶良間諸島だが、最近ではシーカヤックやSUP(スタンドアップパドルボート)を楽しむ人が増え、比較的穏やかな海域を利用してヨットレースなども行なわれている。
国立公園内には日本で見られる造礁サンゴの6割が生息する貴重なエリアとなっており、そのサンゴを守るために天敵であるオニヒトデを地元の人たちが定期的に駆除するなど、保全活動にも積極的に取り組んでいることを紹介した。また、新しく指定された国立公園のため施設もまだまだであることから、現在は阿嘉島にビジターセンターを建設中である旨も話された。
くまモンと阿蘇くじゅう国立公園クイズの答え
第1問
正解:B
阿蘇山の中岳とくじゅう連山の硫黄山
第2問
正解:B
カルデラの中には1市1町1村の5万人が暮らす
第3問
正解:A
野草の草原として日本一。広さは約15000ha
第4問
正解:A
毎年2~4月にかけて行なわれ、千年以上続いている
第5問
正解:A
やまなみハイウェイ
第6問
正解:A
単純温泉、塩化物泉、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉、含鉄泉、酸性泉、二酸化炭素泉、硫黄泉の8種類
第7問
正解:AとBの両方
温泉蒸し料理「地獄蒸し」、あか牛や豊後牛を焼く溶岩プレート焼きがある