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国交省、「地方路線活性化プログラム」の中間報告を行なう懇談会を実施

「地方航空路線活性化プログラムに係る効果検証に関する懇談会」

2015年12月11日 実施

 国土交通省は12月11日、「地方航空路線活性化プログラムに係る効果検証に関する懇談会」を開催した。地方航空路線活性化プログラムは、一定の旅客需要があるものの、代替交通機関がなかったり、または不便な地域を発着する航空路線で、地域主体で維持に向けた取り組みを継続している航空路線について、国がモデル的な取り組みとして実証調査を行なうことで路線維持を図るもので、2014年5月21日~6月18日まで提案の公募が行なわれた。その結果、2014年9月19日に同プログラムの実証調査の対象となる航空路線として、「山形~小牧」「静岡~鹿児島」「釧路~丘珠」「天草~福岡」「但馬~伊丹」「羽田~紋別」「羽田~能登」「羽田~南紀白浜」の8路線が決定、実証調査が開始された。

 今回の懇談会は、この実証結果の取り組みの効果を中間的に検証し、取り組み内容の改善などに反映するために開催されたものであり、対象航空路線選定にも関わった委員と各航空路線において利用促進の取り組みを行なっている協議会の担当者、および国土交通省の担当者(航空事業課長、地方航空活性化推進室長)が出席した。

 懇談会は、まず各地方航空路線の利用促進協議会の担当者が取り組み目標と対象路線の課題、実績概要と目標達成状況を報告。次に国土交通省の担当者から、モデル性がある取り組みかどうかについてのコメント。そして委員による質疑応答、という流れで行なわれた。

国土交通省の航空事業課長と地方航空活性化推進室長、進行を務める事務局側

 最初に報告を行なったのが、山形~小牧線の利用拡大推進協議会で、プロジェクト名は「発着両側の分野別連携体制の構築による山形名古屋便の活性化」である。山形~小牧線は、フジドリームエアラインズ(FDA)が運航している路線で、2013年3月に3年半ぶりに運航を再開した。運休前のピーク時の需要は年間約2万3000人だが、3年後の2016年度に年間3万5000人を目標とする。

 そこで、観光とビジネスのそれぞれにターゲットを設定し、観光については「伊勢神宮は行ったことがあるが、出羽三山は行ったことがない人およびその逆」をターゲットに。ビジネスについては「県内、中京圏企業関係者(特に自動車産業関係者)をターゲットにPRイベントやキャラバン、旅行商品の販売支援などを行なったところ、2014年11月~2015年10月の利用者数は3万7437人と、目標の3万5000人を超える結果となった。当初の目標搭乗者数を達成したことから、今後は次のステップとして、昼1便ダイヤの2便化を目指すという。

 次に報告を行なったのが、静岡~鹿児島線の利用促進協議会で、プロジェクト名は「ふじのくにと薩摩をつなぐドリーム」である。静岡~鹿児島線もフジドリームエアラインズが運航しており、2014年度の搭乗者数目標は2013年度から2050人増の2万6309人、2015年度の搭乗者数目標はさらに1340人増の2万7649人に設定された。

 茶業や漁業など両県共通の産業に着目した交流の促進、「富士山と桜島」「温泉」などをキーワードとした周遊型観光客や教育旅行の取り組み、幅広い年齢層へのアプローチなどによって、2014年度の実績は2万7098人で、目標を上まわる結果となった。ただし、2015年夏ダイヤにおいては、口之永良部島噴火などの自然災害の影響もあり、目標には届かなかった。今後は、ビジネス利用促進に際して、個別の企業訪問だけでなく、経済団体や産業を絞り込んだ取り組みを行ない、周知拡大を図りたいとのことだ。

 続いて、釧路~丘珠線の促進期成会が報告を行なった。プロジェクト名は「道東と道央を結ぶ道内航空ネットワーク活性化プロジェクト」である。釧路~丘珠線は、北海道エアシステム(HAC)が運航する路線であり、道東と道央を短時間で結ぶ移動手段として、ビジネス客を中心に利用されているが、観光客や若年層の利用が少ない路線である。そこで、現状利用されているビジネス客の定着とともに、観光客や若年層のニーズの開拓を目標とし、利用率向上を図る。利用者数の目標は、2014年度が4万8600人、2015年度が4万9500人、2016年度が5万400人である。

 その結果、取り組み前(2013年度下期、2014年度上期)と取り組み後(2014年度下期、2015年度上期)を比べると利用実績が1135人増えており、取り組みの成果が見られた。今後は、各事業において航空機を利用していない層に対して告知ができる効果的な方法を模索したいとのことだ。

 天草~福岡線の促進協議会が「天草地域航空路線活性化実証実験」プロジェクトについて報告を行なった。天草~福岡線は、天草エアラインが運行する路線で、2013年度の年間旅客数は4万6000人である。2016年度の旅客数の目標は5万1000人であり、福岡や関西、関東、台湾、韓国などからのインバウンドと、主に利用経験の少ない地域住民をターゲットにプロモーションを行なった。

 その結果、2014年度の旅客実績は4万7267人となり、前年度より1525人増加した。SNSやメディアによる情報発信がイメージ向上に役立ったと分析している。2016年2月に新機材「ATR42-600」を導入予定であり、航空マニアや座席増による団体客の集客を目指すという。

大学の教員らから構成される委員(6名)

 さらに、但馬~伊丹線の推進協議会が「コウノトリ但馬空港利用促進大作戦 ターゲット70」プロジェクトについて報告した。但馬~伊路線は、日本エアコミューター(JAC)が運航する路線で、2013年度の搭乗者数は2万8726人であり、3年間の取り組みでターゲット70(年間平均座席利用率70%、旅客数3万2000人)を目指す。

 主に首都圏からの観光客や外国人観光客(東京からの乗り継ぎ利用者)をターゲットにし、新たな観光需要の創出のために「パフォーミング・アーツ・ツーリズム」のPRや地元銘菓などの配布といった、機内でのおもてなし強化などを行なった。その結果、2014年度の搭乗者数実績は2万9082人で、前年度比352人増加した。今後も、パフォーミング・アーツ・ツーリズム関係のPRや魅力的な旅行商品の造成に努力するほか、地域周遊促進レンタカーのサービス内容の充実などを行なう予定とのことだ。

 続いて、羽田~紋別線の利用促進協議会が「オホーツク紋別空港活性化プロジェクト」について報告した。羽田~紋別線は、ANA(全日本空輸)が運航する路線で、搭乗者数の目標は2014年度が6万人、2015年度が7万2000人、2016年度には7万2000人+αに設定された。

 ほかに類を見ない強みである「流氷」や、オホーツク海の強みである「食」を活かした取り組み、タイからの観光客誘致の取り組みにより、2014年度の旅客実績は6万9479人となり、目標を上まわった。2015年度も11月末現在で、前年度を2000人上まわる搭乗者数で推移している。今後は、観光オフシーズンの搭乗者数確保のために、観光協会と協議を進め、季節に左右されない着地型観光の推進や情報発信の強化を図りたいとのことだ。

 能登~羽田線の利用促進協議会が「能登-羽田路線持続化プログラム ~地方空港の課題に対応した新たな航空需要の創造~」プロジェクトについて報告を行なった。能登~羽田線は、ANAが運航する路線で、2016年度に2013年度比搭乗率3%の向上(年間の利用者は7350人増)を目標とする。

 社会活動体験ツアーや能登体験モデルツアー、レンタカーキャッシュバックキャンペーンなどの取り組みにより、2014年10月~2015年3月までの搭乗率は0.9%増、2015年4月~9月までの搭乗率は1.2%増加した。今後も、社会活動型観光プログラムや航空機接続型定期観光バスを組み入れた旅行商品などへの取り組みを続けていきたいとのことだ。

 最後に、羽田~南紀白浜線の利用促進実行委員会からの報告が行なわれた。プロジェクト名は「首都圏からの誘客プロジェクトin南紀白浜空港」である。羽田~南紀白浜線は、JAL(日本航空)が運航している路線で、搭乗者数の目標は2014年度が10万2000人、2015年度が10万4000人、2016年度が10万6000人である。

 世界遺産「熊野古道」などの観光資源を活かして、首都圏や欧米からの誘客に力を入れた。その結果、プロジェクト実施後の2015年1月から月別旅客数の増加が顕著に表れ始め、2015年1月~2015年10月までの旅客数は対前年比で、1万6859人増加した。今後も観光資源を活かした首都圏からの誘客の取り組みについて進めていくほか、欧米からの観光客誘致は、欧米に限定せずに首都圏に在住する外国人や関空を訪れている外国人をターゲットに取り組みを進めていくとのことだ。

 委員からの質疑応答やコメントはそれぞれの報告の後に行なわれ、「成功した取り組みだけでなく、あまり効果が出なかった取り組みについても、きちんと報告している点がよかった」「在住の外国人については、家族の関心がある媒体やコミュニティへの働きかけが有効」などのコメントが出た。委員も概ね報告を好意的に評価しているようであった。

(石井英男)