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JR西日本、城崎温泉と竹田城跡を結ぶ「天空の城 竹田城跡号」の出発式を実施

竹田城跡にラッピングされ、木目調内装の窓向き座席で車窓の景色を楽しめる

2015年9月19日 実施

城崎温泉駅にて「天空の城 竹田城跡号」の出発合図をする西日本旅客鉄道株式会社 城崎温泉駅長 岩本昭信氏と城崎温泉観光大使 月島ほたるさん

 JR西日本(西日本旅客鉄道)は2015年9月19日から11月30日まで、観光列車「天空の城 竹田城跡号」を運行する。その初日となる9月19日に出発式が実施された。

「天空の城 竹田城跡号」は、歴史ある温泉地の「城崎温泉」駅と、雲海に浮かぶ山城遺跡として人気のある「竹田城跡」のある竹田駅を結ぶ(竹田駅の先の寺前駅で折り返す)観光列車。1日上り/下り各1本を、平日を含め毎日運行する。2014年はラッピング列車として運行していたが、今年は内装も一新し、窓向きの座席や観光館内を表示するモニターなどを備え、旅の気分を盛り上げる。出発式と車両の様子と、城崎温泉および竹田城跡をレポートする。

 出発式が行なわれた城崎温泉は、平安時代から1300年もの歴史がある兵庫県豊岡市に位置する温泉街。京都から特急「きのさき」を使うと、乗り換えなく到着する。街の中心を大谿川が流れ、7湯ある温泉をめぐる外湯めぐりを楽しめるのが特徴。温泉街にある多くの旅館では、この7湯を自由にめぐることのできるフリーパスを発行しており、多くの宿泊客が温泉街を浴衣と下駄で湯めぐりを楽しんでいる。城崎温泉を訪れた文人も多く、志賀直哉の短編「城の崎にて」では、山手線の電車と接触し重傷を負った志賀直哉が療養のために訪れるという内容で描かれているほか、泉鏡花や島崎藤村、司馬遼太郎、与謝野晶子などもゆかりがある。

城崎温泉駅前。駅前に出るとすぐに温泉街の雰囲気が感じられる
城崎温泉駅の改札。駅員も浴衣着用のスタッフもちらほら
城崎温泉駅駅舎のすぐ横に、すでに温泉施設がある。7湯ある外湯の1つ「さとの湯」
「さとの湯」入口周囲は温泉が流れ、足湯が楽しめる
駅前ロータリー内には、湯飲所が設けられている
泉質はナトリウム、カルシウム、塩化物高温泉。消化器系に効能があると書かれている
駅前から大谿川のある温泉街方面へ通じる風情のある「駅通り」
このようなマップが街中の要所にあるので、道に迷うことはない。温泉マークの箇所が7湯ある外湯
駅通りを真っ直ぐ進むとほどなく「地蔵湯」がある
温泉街の中心を大谿川が流れる。両脇の柳も風情を醸し出す
大谿川沿いに歩くと、子授けの湯「柳湯」がある
さらに進むと、街中央の大きな王橋のたもとに桃山様式の建築「一の湯」
すぐ近くには、後白河天皇の御姉安嘉門院が御入湯したとされる「御所の湯」
御所の湯から大谿川の対岸の少し奥まった場所に「まんだら湯」
少し離れた場所にある「鴻の湯」。コウノトリが傷を癒やしていて発見されたという言い伝えがある
鴻の湯には広い駐車場が隣接している。料金は30分毎に100円
裏通りの「木屋町通り」は、落ち着いた雰囲気。桜のシーズンは桜並木になる
浴衣に下駄が似合う通り
城崎文芸館にあった「志賀直哉文学碑」
城崎温泉へは、京都駅から特急「きのさき」に乗り換えて訪れると途中乗り換えがなく終点まで行けばよいのでラク。381系が使用されていた

「天空の城 竹田城跡号」出発式は城崎温泉駅の3番ホーム上で行なわれた。通常は1両で運行され、土日など繁忙期のみ2両になる。いずれにしても観光車両「天空の城 竹田城跡号」は1両のみだ。出発式当日は2両にて運行された。

城崎温泉駅前の城崎温泉観光大使 月島ほたるさん
構内では観光列車向けの駅弁も販売
行き先案内板には「臨時」と「竹田城跡号」の表示
3番ホーム出発式会場の看板
「天空の城 竹田城跡号」が入線
ホーム上で出発式が行なわれた

 出発式では、主催者として西日本旅客鉄道 執行役員 福知山支社長 前田洋明氏が「『天空の城 竹田城跡号』につきましては、昨年(2014年)の4月に、まずラッピング列車として竹田城跡をあしらって、和田山駅~寺前駅間の運行を開始させました。その後、2015年の3月に車両も改装し毎日運行することにしました。車両は木目調で暖かさを感じさせるデザインで、座席も車窓を楽しんでいただけるようになっています。おかげさまで昨年度に比べ約3倍の利用があります。秋の行楽シーズンに合わせ城崎温泉からの運行にしました。観光のみならず車窓もできるだけ楽しんでいただければと思います。地元と連携し、『天空の城 竹田城跡号』を今後も大きく育てていきたいと思います」と挨拶した。

 続けて来賓として、兵庫県但馬県民局 局長 岩根正氏が「私は『天空の城 竹田城跡号』が大好きなんで、朝からワクワクしていました。外から見ると竹田城がラッピングされています。中は木目調で、窓向きにゆったり座れる座席があります。2列席側もとても質のよいシートが選ばれています。但馬の観光要所を結ぶありがたい列車となります。心から感謝と敬意を表したいと思います。これからも多くの人に来て、楽しんでいただければと思います」と祝辞を述べた。

 さらに来賓として、豊岡市 副市長 齋藤哲也氏が、「豊岡市では観光に力を入れています。中でも外国人旅行者の誘致に力をいれています。豊岡でも今年上半期の外国人宿泊者数14282人となっています。昨年同期が6878人ですので2倍強と大きな伸びです。92.1%の方が城崎温泉での宿泊となっています。このようななかで『天空の城 竹田城跡号』が城崎温泉まで延伸をしたことにより、城崎温泉と竹田城跡を結ぶ観光ルートが国内観光ばかりではなく、インバウンドにおいても重要になっています。さらに発展していくことを期待します」と祝辞を述べた。

 その後、豊岡市マスコットキャラクター「玄武岩の玄(げん)さん」と兵庫県マスコットキャラクター「はばたん」が運転士と車掌に花束が贈られ、くす玉が開かれた。

式の冒頭に主催者として挨拶する西日本旅客鉄道 執行役員 福知山支社長 前田洋明氏
来賓として祝辞を述べる兵庫県但馬県民局 局長 岩根正氏
来賓として祝辞を述べる豊岡市 副市長 齋藤哲也氏
花束贈呈式の兵庫県マスコットキャラクター「はばたん」、福知山車掌区所属 尾崎貴紀車掌、豊岡車掌区所属 椿野絋平運転士、豊岡市マスコットキャラクター「玄武岩の玄さん」
「天空の城 竹田城跡号」の横で代表者によるくす玉開披
「城崎温泉湯けむり太鼓」による演舞
出発合図をする西日本旅客鉄道 城崎温泉駅長 岩本昭信氏と城崎温泉観光大使

「天空の城 竹田城跡号」は、今年から内装を一新させている。ベースになっているのはキハ40系。全体的に木目調で落ち着いた車内デザイン。左右に一般的な2列席と特別な窓向きの座席に分かれている。また観光風景ビデオなどが上映される大型のモニターが前後にあり楽しめる。大きめの洋式トイレも装備されている。

外観は全体がラッピングされている。横に大きく「天空の城 竹田城跡」の文字
竹田城跡の写真が大きくプリントされている
片側には竹田城跡の雲海の写真
車内は木目調で、完全に窓側を向いた座席がしつらえられているのが特徴
窓向きの座席は凝ったデザインをしている。いろいろな向きに座りやすい
車窓をリラックスして眺めやすい
窓際には波形デザインの机
中央部には、自由な座り方ができる背もたれのないベンチを用意
もう片側はすべて2列シート。こちらは机はない
通常広告などが貼られるスペースにモニターが設置され、観光案内ビデオが上映されている
トイレは洋式で広めのスペースを確保
当日は使われていなかったが、ワンマン運行用の設備も装備されていた
車内での城崎温泉観光大使 月島ほたるさん
車内に乗り込んだ「玄武岩の玄さん」
途中の八鹿駅~和田山駅で乗り込んだ、養父市イメージキャラクター「やっぷー」。養父(やぶ)市をアピール(写真提供:JR西日本)
和田山駅では紙芝居を使って地元をアピール
和田山駅では、養父市イメージキャラクター「やっぷー」と竹田城跡マスコット「たけじぃ」がお出迎え
竹田駅までは車内で甲冑武者が観光解説
竹田駅で多くの人が降りるが、「天空の城 竹田城跡号」はこの後、寺前駅まで運行する

 竹田城跡のある竹田駅に到着すると、虎臥陣太鼓の演舞と朝来(あさご)市マスコットキャラクター「ちゃすりん」による歓迎があった。「天空の城 竹田城跡号」は先の寺前駅まで運行される。

竹田駅の駅前。駅舎は比較的新しい
竹田駅のホーム側。周囲にはのどかな自然豊富な風景が広がる
竹田駅のホームから竹田城跡のある古城山が見える。手前には4つのお寺
朝来市マスコットキャラクター「ちゃすりん」がお出迎え
虎臥陣太鼓の演舞
竹田城跡が「恋人の聖地」として認定されたことを受けての「恋人の聖地モニュメント」が駅前にある。記念撮影用のカメラ台もある
駅の待合室には、少なめだがコインロッカーがある
駅の観光案内所にある竹田城を復元した模型
観光案内所にはグッズも販売されている

 竹田城跡は、標高353.7mの古城山(虎臥山)山頂にある山城遺跡で、現存する山城としては規模も大きく全国的にも珍しい。1443年に但馬守護大名の山名宗全によって築城されたと言われる。秋から冬にかけてのよく晴れた早朝に雲海に包まれた幻想的な景色が、天空の城や日本のマチュピチュなどと呼ばれ人気の観光地なっている。虎が臥せているように見えることから「虎臥城(とらふすじょう)」とも呼ばれる。

 竹田城跡の位置は、竹田駅のすぐ近くにある。駅前から周遊する「天空バス」が出ているが、もっとも近い停留所から入口料金所までは結局徒歩で登ることになるので、駅からもっとも近い駅裏登山道から登り、竹田城跡をめぐって、表米神社登山道から降りて駅に戻るという徒歩ルートが時間もかからずお勧め。駅裏登山道は竹田駅から線路の反対側の寺町通りから入るので、竹田駅近くの踏切から線路を渡る。

 竹田城跡までの道のりは片道約1km弱ほどだが山頂にあるため、ほぼ登山と考えて挑んだ方がよい。登山道は整備されているが、靴は登山靴ほどではなくても、トレッキング向けのしっかりした靴がお勧めだ。荷物は宿泊施設やコインロッカーなどに預けておきたい。飲料水(竹田城跡内に自販機はない)や不意な雨にレインウェアは必ず持参しよう。無理はせずに時間に余裕をもった予定を組んで欲しい。観覧料は大人500円、中学生以下は無料。

 竹田城跡の情報などが得られるアプリも提供されている。詳しくは下記記事も参考にして欲しい。

竹田駅横の虎臥城公園近くの踏切。奥に見えるのが竹田駅
なおこの踏切の前には、「たけだ城下町交流館」がある
中に「情報館 天空の城」というインフォメーションセンターがある。ほかにショップなども併設
オリジナルグッズのバリエーションが豊富
寺町通りから駅裏登山道への入口
入口には門がある。開門4時~閉門19時。最終登城時刻は16時30分
登山道は階段が整備されている
場所によっては、段差が急な部分もあり、かなりキツイ
観覧料を払い、さらに登ると城壁が現れる
「北千畳」という広い場所に出る
眼下には竹田駅と街が広がる
「南千畳」を見る。雲海の写真は向かいの山「立雲峡」(写真左)から撮影されることが多い。桜の名所でもある
竹田城跡にはボランティアガイドが常駐。予約のうえ有料でのガイドが基本だが、時間があるときは気さくに声をかけ解説してくれていた。写真は北千畳で出会ったガイドの1人 岸下定氏
1990年公開の映画「天と地と」の撮影では、竹田城跡の天守閣にセットが作られたそうだ。現在天守閣には立ち入りができない
城内で一番大きいと言われる石。5トンほどあるそうだ。竹田城の城壁の石は、山自体の石を使っている
城壁の石をよく見ると石を割るための矢穴がそのまま残っている石もある
映画「あなたへ」で高倉健さんが座ったとされているベンチが残されている
登山道があるせいか、城内にはAEDが2カ所設置されている
南千畳から天守閣を見る。多くの人が記念撮影するビューポイント
南千畳から表米神社登山道で降りていく
降りると水路のある寺町通りに戻る。ここを駅方面に進み虎臥城公園近く(踏切を渡った場所の近く)に手打ちそばの店「そば処 伊とう」(営業時間:11時~17時、水曜定休)がある。駅周辺に飲食店は少ないので貴重なお店
食べたのは「さっぱり梅ダシつけそば」(1080円)。蕎麦の上に乗っているのは鶏胸肉。薬味がたくさん付いている。コーヒーなどのドリンクメニューもある

 人気の観光スポット竹田城跡と、風情ある七湯めぐりの城崎温泉。「天空の城 竹田城跡号」の運行で両方が気軽に楽しめるようになった。この秋、あわせて楽しんでみてはいかがだろうか。

帰りに、竹田駅から和田山駅まで戻った列車も偶然にも「天空の城 竹田城跡号」だった。ちょうど1日観光するのに便利な運行時刻
観光列車「天空の城 竹田城跡号」運行情報

運転区間:
 城崎温泉 9時8分~寺前 11時28分
 寺前 14時5分~城崎温泉 16時27分
編成両数:気動車1両(土休日は2両)
運転日:9月19日~23日、10月1日~11月30日
乗降駅:城崎温泉、豊岡、江原、八鹿、和田山、竹田、青倉、新井、生野、長谷、寺前
種別:快速