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JR東日本、夏休みツアーで小学生が本物のシミュレータやみどりの窓口を体験
水戸支社が「めざせ!! 未来の運転士!! JR東日本訓練体験ツアー」実施
(2015/8/24 14:01)
- 2015年8月22日~23日 実施
JR東日本(東日本旅客鉄道)水戸支社は8月22日、23日に、鉄道をテーマにしたキッズ向けのイベントツアー「めざせ!! 未来の運転士!! JR東日本訓練体験ツアー」を実施した。このツアーは2014年に引き続き2回目の開催となるもので、夏休みの自由研究などに活用してもらおうと企画されたもの。募集は小学4年生~6年生の児童と保護者の2名1組、20組40名限定だったが、22日が18組36名、23日は満員御礼と両日とも盛況となった。参加費用は親子で1万2000円。
8時30分に水戸駅に集合した参加者は、スタッフとともに徒歩で駅近くにある水戸総合訓練センターへ。同センターはJR東日本が“安全元年の年”とした平成元年に「鉄道輸送に関わる安全体制の強化を図るため、運転業務に従事する社員に対して、安全で安定輸送の確保を図るため、実設訓練を重点に実施し、正しい運転取扱と異常発生時に自信を持って行動し、対処できるよう体を使って覚えさせることを目的」として設立されたもの。シミュレータや訓練線、信号扱訓練室などを備えており、まさに「習うより慣れろ」を地で行く施設となっている。
開校式
訓練センターに到着した参加者はまず開校式に出席。登壇したJR東日本 水戸支社 水戸総合訓練センター 所長 仁平俊一氏は「当訓練センターではJR水戸支社で働く社員、電車の運転士、車掌、駅員、信号などが訓練、勉強を行なう学校です。ここで日々の仕事の勉強、異常時に適切な行動がとれるよう実際に体験をしながら訓練をしています」と施設を紹介。続いて「シミュレータで運転士や車掌の、信号炎管や手旗の合図といった体験、研修センターでは切符の発券体験も行ないます。いろいろJRで仕事をしている作業を皆さんに同じように体験していただきます」と、当日のカリキュラム説明を行なった。
次いでJR東日本 水戸支社 水戸駅長 佐藤浩美氏が登壇。「皆さんが憧れる運転士、車掌のほかにもたくさんの仕事がJRにはあります。電車を走らせるためには線路を作る人、維持する人、電気を送る人、設備を守る人、信号に関する人などがおり、また終電の合間に点検や工事をしながら日夜鉄道に対する安全を高めています」と鉄道員の仕事を紹介。さらに1日に1800件程度の工事が行なわれ、JR東日本の駅利用者は1700万人、運転士は信号の確認を120万回(水戸エリアで6万回)、車掌は600万(水戸エリアでは27万)ドアを開閉、踏切の開閉が70万回(水戸エリアでは3万回)行なわれると数字で説明。「毎日の点検を怠りなくすることで安全が守られている」と多くの仕事が持つ重要性を解説した。
開校式のラストは子供たちが自己紹介。それぞれ将来の夢は「JRに入ること」「運転士になること」「鉄道関係の会社に入ること」「東京駅の駅長になること」など希望を語った。
開校式が終わると参加者は5組ずつ4班に分かれてカリキュラムがスタートした。今回の内容は大きく分けて「シミュレータ体験」「ミニ電車体験&踏切安全教室」「みどりの窓口体験」「手信号体験」の4つ。各項目ごとに1時間30分ほどの時間が確保されており、ひとりひとりが余裕をもってたっぷりと訓練を受けることができるようになっていた。
シミュレータ体験
シミュレータ体験は実車の標準的な運転台と大型スクリーン、客室&ドア、車掌室が一体となった大掛かりなもの。加えてモーター音などの音響、加減速の振動などが再現されており実車感満点。外を見ずにいると本当に乗っているような錯覚を覚えるほどリアルなデキだ。
多くの子供達にとって初めての体験だったはずで、手こずるかと思いきや講師を務めた職員から「上手いね~」と感嘆が漏れるほど見事な運転を見せていた。一方の車掌業務はアナウンスだけでなく運転指令とのやり取り、駅停車時の確認項目など、思っていた以上に作業が多かったようで、少し手こずっていた様子だった。
ミニ電車体験&踏切安全教室
常磐線の本線横にある訓練線を使ってのカリキュラム。ミニ電車体験ではバッテリを搭載したミニ電車を使い、訓練線を2往復できる。速度は自転車で走る程度とそれほど速くないものの、本物の線路や信号といった鉄道施設に加え、真横を常磐線の営業列車が通過していくというシチュエーションは、シミュレータとはまた違った体験だ。
続いて訓練線に用意されている踏み切りと転轍機(線路の進路を切り替える機器)を使用。前者では非常ボタンやレーザーを使った障害物検知装置を、後者は電源がロストした際の手動切り替えを体験した。どちらも縁の下の力持ち的な存在だが、身近なものかつ普段触ることができない部分なだけに、興味深そうに操作を行なっていた。
みどりの窓口体験
昼食を挟んで行なわれたのがみどりの窓口体験だ。切符の基礎知識や時刻表の使い方などを簡単に学んだ後、実際に駅で使われているシステムを使用して切符の発券を体験した。
切符の用紙は訓練用を使用するものの、予約自体はセンターにオンラインで繋がった実在のデータを利用したホンモノ。端末の操作はタッチパネルで視覚的に使うことができるようにできているものの、発着駅を始め利用列車や座席の位置、複雑な経路の入力など、鉄道の知識がないとなかなか難しい。
だが、参加した子供達は最初こそ講師からサポート受けていたものの、すぐに自分だけで扱えるように。タッチパネルに慣れている世代と言うこともあるだろうが、子供達の吸収力の早さには驚きだ。最後に余った時間を利用して「鉄道クイズ」が行なわれたが、難しい問題もすらすら。ただ「品川駅のタイルの絵柄は?」という問題では、「ニューヨークヤンキースにもいた……」とのヒントにもちょっとピンとこなかった様子。ジェネレーションギャップを感じたものの、ちょっとホッとした瞬間でもあった。
手信号体験
最後は建物前の広場で手信号体験。最初は「携帯用信号炎管」(発煙筒のようなもの)を使った列車抑止の体験。最初は人前で大きな声を出すことに恥ずかしさがあったようだが、講師から「事故の際に慌ててしまわないためにも、大きな声を出して発声して確認することが大事」と教えられると、しっかりと大きな声で動作確認を行なっていた。
その後、手旗や信号灯、列車無線を使っての誘導を体験でも、「駅で見た」と話しつつ一所懸命に練習。こうした誘導は水戸駅でも毎日のように行なわれているとのことで、目的や意味を理解することで一層興味深く見ることができるようになるはずだ。
閉校式
すべてのカリキュラム後は閉校式を実施。開校式で挨拶を行なった二瓶氏が再び登壇し「皆さんが生き生きと体験する姿を見させていただいて、すごく感動いたしました。将来JRに入って私たちが行なっている仕事を受け継いでいただければと思います。ここでは毎日の仕事が安全に行なえるように勉強して、異常なことが起こった場合に適切な対処ができるよう研修を行ない、一人ひとりが究極の安全を目指して仕事をしております。ぜひともいろいろなことにチャレンジして、JR水戸支社の仕事についていただければと思います」と締めくくった。そして、最後に参加者全員に訓練体験修了証を渡して解散となった。
小学生にとってはかなり長い時間のカリキュラムとなったが、子供達は最後まで楽しそうな笑顔だった。これは十分な体験時間が用意されていたほか、職員の方々による飽きないようにする工夫、そしてなにより「好きなこと」に対する貪欲さがあってこそと思われる。2016年の開催は未定とのことだが、ぜひとも継続して実施してほしいと思われるイベントツアーだった。