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サントリー登美の丘ワイナリー、甲州ワインの個性が生み出される現場

2024年8月28日 取材

サントリー登美の丘ワイナリーの眺望台より

 サントリーは8月28日、山梨県甲斐市の「サントリー登美の丘ワイナリー」の取材会を開催し、同ワイナリーでの取り組みを紹介した。

 同ワイナリーの歴史は古く、1909年に登美農園として開拓が始まり、その後、1936年にサントリーに受け継がれ、同社を代表するワイナリーとなっている。総面積は約150haで、栽培面積は約25ha。富士山や甲府盆地を望む丘の上に約50区画の自園畑を保有しており、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロ、シャルドネといったメジャーな品種に加え、甲州やビジュノワールといった山梨ならではの品種など、さまざまなブドウが育てられている。

 常務執行役員 ワイン本部長の吉雄敬子氏は、日本ワインの市場の動向として、直近10年で国内のワイナリーの軒数が急増し、2024年時点で500軒に達していると推定されることを紹介。国内のコンクールへの出品数も年々増えているほか、国際コンクールでも受賞数が増えており、つくり手の熱意や日本ワインの勢いが表れているとする。

常務執行役員 ワイン本部長の吉雄敬子氏
ワイン生産部 登美の丘ワイナリー 栽培技師長の大山弘平氏

 同社としては、日本固有品種の甲州に力を入れており、同ワイナリーではさまざまな手法を用いて品質の追求が行なわれている。ワイン生産部 登美の丘ワイナリー 栽培技師長の大山弘平氏によれば、同じ品種でも畑の特徴に応じて異なる育て方が採用されており、こうした工夫の積み重ねにより、補糖せずにワインとしてのアルコール度数や酸味、風味の凝縮感を表現できる糖度21度のブドウを収穫できるようになっているという。

 近年は温暖化の悪影響を受けないように山梨大学との共同研究として「副梢栽培」でシャルドネを育てたり、マルスランやアルバリーニョといった新たな品種にも挑戦。大気中のCO2増加を抑制することを狙い、土壌のCO2貯蔵量を増加させるため、炭化剪定枝の土壌投入を行なうなど、サステナビリティを意識した取り組みも行なわれている。

 さらに同ワイナリーで培ったノウハウは、山梨県内や長野県内の自社管理の畑にも広まり、その土地の特徴を活かし、さまざまな顔を持つバリエーション豊かな甲州が育てられ、それぞれのブドウが持つ良さを引き出した個性豊かなワインが生み出されている。

 同社では、9月から約7億円を投じて40台の小容量タンクを備える新・醸造棟の建設を開始。2025年9月から稼働させ、ブドウの個性を活かした原酒のつくり分けを行なうことで、これまで以上に高品質なワインづくりを目指していくとしている。

樽熟庫
瓶熟庫

 28日には豊作や作業の安全な進行を祈念する「収穫始め式」も執り行なわれた。台風10号の影響もあってか、当日の天気はあいにくの雨ということで、予定されていた収穫の様子は見ることができなかったが、色づいたブドウが実っている畑もあり、順次収穫が進められる。

雨天のため「収穫始め式」は屋内で行なわれた。ワイナリーだけに御神酒がワインになっている

 同ワイナリーでは、畑や熟成庫を見学し、試飲が行なえる各種見学ツアー(有料・要予約)も実施している。甲府駅南口から無料のシャトルバスも運行しているので、これから収穫が始まるブドウ畑と周囲の自然を楽しみにお出かけしてみてはいかがだろうか。

 なお、8月31日には「登美の丘ワイナリーまつり2024~地域ふれあいの日~」が開催される予定だが、台風の影響で中止になる可能性もある。事前に同ワイナリーのWebサイトで最新の情報をご確認いただきたい。