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世界遺産・五箇山の合掌造り集落に泊まって屋根の葺き替えを体験! Airbnbが募集する特別プランを見てきた

2023年6月30日 募集

Airbnbが世界遺産「五箇山 菅沼合掌造り集落」での宿泊体験を1組2名で募集する。約170年前に建造された合掌造りの家屋の一室が宿泊場所

 世界遺産に泊まる、そんなスペシャルな体験をAirbnbが6月21日に発表しました。

 その内容は、1995年に世界遺産に登録された富山県南砺市「五箇山 菅沼合掌造り集落」の2泊3日に1組2名を無料で招待するというもの。五箇山ならではの体験を含む、現地アクティビティ付きです。

 6月30日9時に募集を開始するこの取り組みについて、一足先に見てきました。

普段は泊まれない世界遺産内に民泊。地元の人、歴史・文化とつながる

 今回の宿泊体験は、富山県南砺市観光協会と五箇山 菅沼合掌造り集落の住民協力のもと実現しました。最大のポイントは、20年以上誰も体験できなかった同エリアに宿泊できること。対象者は地域と集落の伝統を学べるほか、世代を超えて文化が継承される様子を体験できます。

 プランでは、集落で「五箇山食べ処 吾郎平」を営む中島家にステイ。集落は本来、観光客が泊まれる施設がない人家のみで構成されるため、貴重な体験です。

世界遺産の1つ、五箇山 菅沼合掌造り集落は、全9戸からなる集落
五箇山 菅沼合掌造り集落で滞在先を提供する中島慎一さん
今回特別に用意された客室。静かで落ち着く空間でした
食事は囲炉裏を囲んで。イワナもその場で焼いてくれます
漆塗りの器「報恩講御前」でディナーを提供予定
約60度の傾斜がついた藁葺き屋根はほぼ正三角形。くるんと丸みを帯びているのも五箇山・菅沼集落の特徴
正面のすずめおとしと呼ばれる化粧が五箇山・菅沼集落の印
室内のチョンナバリも見どころ。雪の重みで曲がった木材を活用しています

 もう1つのポイントは、ちょっとしたデジタルデトックス状態に身を置けること。現地では「Disconnect to Connect」キットが渡されます。これには、たまにはスマホを置いて自然や自分とのつながりを取り戻してみては、というAirbnbからのメッセージが込められています。

「Disconnect to Connect」キット
本気でデジタルデトックスするならスマホをしまって

世界遺産の屋根に登って藁葺き体験。高さと緊張度がすごいんです!

 数あるアクティビティのハイライトの1つが茅葺き屋根の葺き替え作業で、実際に屋根に登ることができるんです。今回は、同じく世界遺産登録された「相倉合掌造り集落」で体験。本来は職人が行なう作業のため、住民以外の一般人は登る機会がない本当に特別な体験です。

同じく世界遺産「相倉合掌造り集落」で茅葺き屋根の葺き替え作業を体験
晴れの日に一気に茅の葺き替え作業を進めます。片側を約1か月で仕上げるそう
約70~80cmの茅厚がベース。とはいえ、雪によりどんどん落ちて薄くなってくるんだそう
職人の指導のもと、葺き替え作業の一部を担う貴重な機会
作業体験のため、茅葺き屋根へ。想像以上の高さに足がすくみます
作業の説明に耳を傾けます。今回は置かれた茅を叩いて潰し、硬くしたあと結びます
思い切り叩きますがなかなか固くなりません
みっしりと積むため茅の束は1平米22束、約2200束使って片側を仕上げていきます

 約20年の間隔で葺き替えを行ない、費用は総額約1700万円以上になることも。材料の大茅(ススキ)、小茅(カリヤス)は近くの茅場で育成しています。

 以前は「結」と呼ばれる制度により住民総出で作業を行なっていましたが、現在は地元の森林組合が作業を担っているんだそう。実際のプランでは五箇山 菅沼合掌造り集落で作業体験を行ないます。

世界遺産周辺の自然はサイクリングで。岩瀬家訪問で民謡と合掌造りをじっくり観察

 プランに付随するアクティビティには、サイクリングや和紙制作、この地域最古の民謡の1つに登場する伝統楽器である“ささら”の製作や、特別にライトアップされた集落内で地元の民謡体験もラインナップ。そのなかから今回は、ガイド付きサイクリングにも参加してみました。

e-bikeは「五箇山総合案内所」の「なんチャリステーション」でレンタルできます
アシスト付きなのでスイスイ~
ガイドさん付きなので安心です
約1時間、3kmのサイクリングへ出発!
日本の原風景を眺めながら、ぐんぐん進みます
庄川越しに眺める集落は隠れ絶景ポイント。全部川側に向いているのが分かりますよね

 サイクリングの途中では築350年の五箇山最大の合掌造りの岩瀬家にも寄り道。総けやき造りで加賀藩に火薬の材料である塩硝を上納する役宅でもあったので、3つの入り口があるのが特徴です。

 家人、来客、藩とそれぞれ玄関の趣が異なります。5階建てのうち4階まで見学でき、広さや高さ、さらに養蚕についての知識も増やせます。

五箇山最大の合掌造り「岩瀬家」は5階建て、葺き替えには約1万束必要だとか
藩用の玄関は漆塗りで欄間などの装飾も施されています
囲炉裏から遠くなるほど煤の黒が薄くなるのもおもしろい
4階まで見学OK。すのこ天井は、囲炉裏の煙と熱が上がり茅を長持ち、養蚕にも役立ちます
蚕棚などの置いてあり、当時の暮らしの様子が学べますよ
お茶をいただきながら岩瀬家にまつわるお話や解説を聞くことも
特別にささらを使った「こきりこ節」と舞も見学。歌われているのはこきりこの竹の長さのこと
五箇山民謡で鳴らす「ささら」は108のひのきの板をつないいだ打楽器。音で煩悩や厄を払います
こきりこ節で歌われている「こきりこ竹」。7寸5分がちょうどよく、独特な鳴らし方
カツラケツメイなど野草入りの「弘法茶」は売店で購入可。2~3分しっかり煮出します

富山の薬の包み紙。名産「五箇山和紙」作りを体験できる

 富山といえば薬売りのイメージがありますが、五箇山では手漉き和紙「五箇山和紙」を使ったお土産が人気。多くの品を取り扱う「五箇山 和紙の里」では、紙漉きに挑戦するアクティビティに参加できます。

「五箇山 和紙の里」は、蕎麦打ちに紙漉き体験などアクティビティが充実
工房を見学。ちょうど紙漉き作業中でした
すごい伸びのトロロアオイ。和紙を漉く際に繊維の広がりを均一にしてくれるんだそう

 今回は見学のみでしたが、加賀藩の手厚い保護により発展したことや「富山の薬売りの薬を包む紙」に使われた歴史を知ることができました。

 こちらでは原材料の楮(こうぞ)の栽培も手がけており、厚めの和紙は1日約100枚、薄い場合も200枚ほど生産ができるとのこと。日によって作業が違うので、間近で作業工程を見学できるのは「運がいい!」とスタッフさん。

漉かれた和紙。翌日に絞って乾燥させます
原材料の楮(こうぞ)。これが和紙になります
奥ではシルクスクリーンを使った絵付け作業中。ニュアンスカラーの現代の五箇山和紙
ガラス玉を使った干し場にも注目です
実は先ほどのDisconnect to Connectキットの箱は五箇山和紙製なんです

イワナのお寿司に骨酒。五箇山はまた来たくなる美食の宝庫!

 五箇山グルメの代表といえばやっぱりイワナ。その名物をお寿司で味わえるのが「道の駅上平ささら館」のお食事処「五箇山 旬菜工房 いわな」。こちらは時間があればぜひ訪れてほしい場所です。

 観光客はもちろん地元住民も通うほどの美味しさで、常連さんも多い繁盛店。ここで提供する「いわなのにぎり」はまさに絶品! 甘めの醤油にさっとつけて味わえば、イワナ本来の美味しさが口いっぱいに広がります。

お食事処「五箇山 旬菜工房 いわな」
名物「いわなのにぎり」をはじめ、赤かぶや五箇山豆腐など地元の美味しいが並びます
つやつやのいわなのにぎり、気づけば完食
イワナの塩焼きは身がふっくら、塩気もいい塩梅
熱々のお酒を焼いたイワナにかけて味わう骨酒は熱いうちにどうぞ!
濃い味の肴に合う地酒「三笑楽」はほんのり甘く口当たり柔らか

 もう1つ紹介したい五箇山グルメは、2大名物・五箇山豆腐とお蕎麦が一度に味わえる「五箇山豆腐・手打ちそば 拾遍舎」の「五箇山豆腐そば」。

 アツアツの大きめ揚げ出し豆腐がお蕎麦の上に乗っていて、食べればジュワッと豆腐の美味しさが広がります。蕎麦は朝挽き、おつゆは薄味でやさしい風味です。

「ここりこの里」に位置する「五箇山豆腐・手打ちそば 拾遍舎」。すぐ傍に庄川が流れます
「五箇山豆腐そば」は五箇山の名物2つが一度に味わえます。ざるそばもお勧め
ジュワッと美味しい揚げ出し豆腐。おネギをたっぷり乗せて

合掌造りに泊まりたいなら築350年の「ゲストハウスかずら」

 今回のプランは魅力的なアクティビティが満載ですが、キャンペーンとは別に自分好みにアレンジして旅を楽しんでみるのもお勧めです。五箇山や合掌造りに興味が湧いたら自分で宿を取って訪れてみては。

Airbnbを使えば合掌造りの宿泊施設が予約も。こちらは築350年の「ゲストハウス 合掌かずら」
ゲストルームは2段ベットに布団を追加し最大4名まで1室に泊まれます
トイレは温水洗浄便座、お風呂もピカピカでした
使い捨てのアイテムは提供しないのがモットー。歯ブラシなどは持参を(売店でも買えます)

 Airbnbで予約できる「ゲストハウス かずら」は、築350年の合掌造りで最大15名まで宿泊が可能なお宿。合掌造りの趣を活かしたリノベーションを施し、まるで我が家のような懐かしさあふれる空間が広がっています。

宿泊者たちが交流できるエリアには楽器がたくさん置いてありました
2Fは秘密基地のようなプレイグラウンド。家族のお祝いごとなどにも使われているそう
3Fはドミトリールーム。屋根裏がそのまま使われていて、合宿感が最高です
キッチン付きなので、自分で調理することもできます
内側から合掌造りを眺めながらな寝れるのは特別なこと!

 今回紹介した世界遺産での宿泊と茅葺屋根の葺き替え作業以外は、各施設で予約をすれば体験ができるものばかり。訪れてみたい気持ちが刺激されたら、夏休みのスケジュールに加えてみてはいかがでしょうか。