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着陸間際の上空待機や空の混雑がなくなる? 次世代航空交通システム「MR TBO」ってなんだ

2023年6月12日 公開

MR TBOの試験飛行が行なわれた

 国土交通省 航空局交通管制企画課は6月12日、多国間をまたぐ次世代航空交通システム(MR TBO:Multi Regional Trajectory Based Operations)の試験飛行について説明した。また同日、その試験機が成田へ飛来している。

 MR TBOは日本のほか、米国、シンガポール、タイの航空局が共同で実施している取り組みで、飛行中の航空機相互の間隔を保ちながら、通過時刻と経路の最適化を動的に調整するもの。空域の混雑緩和や上空待機の解消、ひいては燃料使用量とCO2の削減、定時性の向上などを図る狙いがある。

 もう少し具体的に説明すると、飛行機の航路は通常、事前のフライトプランをもとに決定しているが、TBOでは天候や空域の混雑、火山の噴煙などの情報をリアルタイムに把握することで、各機体が緯度、経度、高度、速度を最適な値に更新できるようになる。

 これはカーナビに置き換えると分かりやすい。現在のカーナビは各車両がインターネットに接続して最新の混雑・規制情報を取得、効率のよいルートを動的に提案する仕組みをもっているが、この仕組みを空に持ち込んだのがTBOだ。

 ただ、空域は管制機関、空港会社、航空会社などがそれぞれ独自のシステムを使っていることからこれまで連携が難しかったところ、システムの共通化を行なって実現に向けた取り組みがついに始まったのが今回の試験飛行になる。

 また、飛行機は進路を変える、高度を変えるといったすべての行動に管制の許可が必要だが、TBOではそれをデータ上で処理するようになるため、パイロットの負担が減り、カーナビのように即座にルートの変更ができるようになるという。結果、管制処理能力が向上するため効率が改善され、着陸間際の空中待機などもなくなり、燃料使用量の低減やCO2排出削減にもつながる。

 今回飛来した試験機はボーイング 787-10型機「エコデモンストレーター・エクスプローラー」で、6月11日(現地時間)にシアトルを出発、成田へは日本時間12日10時54分に到着した。このあとシンガポール、タイへと試験飛行が続いていく。今回は試験飛行だが、MR TBOは2040年を目標に実環境への導入を進めたいとのこと。

成田に飛来して放水(ウォーターサルート)を受けるエコデモンストレーター・エクスプローラー
MR TBOの実現には大きな機体の変更は行なっておらず、コクピットでも小さなタブレットで完結するという
今回は日本近海で火山の噴煙が上がり、それを避けるシナリオを設定したとのこと
エコデモンストレーターの機内は特別な機材が搭載されているわけではなく、至って普通