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品川車両基地跡地に建設中の新街区は「高輪ゲートウェイシティ」。KDDIは本社を移転して街を共創

2023年5月16日 発表

2025年3月に開業する「TAKANAWA GATEWAY CITY」

 JR東日本は5月16日、高輪ゲートウェイ駅に隣接する品川車両基地跡地で進めているまちづくりプロジェクトの正式名称を「TAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)」に決定したことを発表した。合わせて、2025年3月に開業する複合棟I NorthにKDDIの本社が移転し、JR東日本とKDDIで街を共創していくことについての共同記者会見を開いた。

 TAKANAWA GATEWAY CITYは、2020年3月14日に開業した高輪ゲートウェイ駅(山手線、京浜東北線)に隣接する、高層ビル4棟と低層建屋1棟を擁する複合商業施設群。1~4街区に分けられ、1街区はエクスパッツ(外国人ビジネスワーカー)にも対応した高層高級賃貸住宅の住宅棟、2街区は公園やライブホールなどを備えた文化創造棟、3街区は泉岳寺駅に隣接する複合棟II、4街区はシンボルとなるツインタワーの複合棟I(North、South)が建設される。開業は4街区が2025年3月、そのほかの街区は2025年度中にオープンする予定。

TAKANAWA GATEWAY CITYの完成予想図。区域面積は9.5haで、総事業費は5800億円(画像提供:JR東日本)
上空からのイメージ。泉岳寺駅から京浜急行エアポート快速で羽田空港第3ターミナルまで14分の好立地(画像提供:JR東日本)

世界と日本をつなぐ玄関口として名称を「TAKANAWA GATEWAY CITY」に決定

 JR東日本からは代表取締役社長の深澤祐二氏が登壇、「JR東日本が挑戦するのは100年先の心豊かな生活、心豊かな暮らし作りです。この町は世界、そして未来へのゲートウェイです。地域、日本、未来の地球をよりよく元気にするためのまちづくりを、ここ高輪から取り組みたいと考えております」とプロジェクトのコンセプトを説明し、続いて正式決定したロゴと名称の詳細を発表した。

 名称は「TAKANAWA GATEWAY CITY」で、世界を意識してアルファベット表記を採用。駅の名称も盛り込むことで、駅と街とが一体であることを表現したいと説明した。ロゴは江戸の玄関口であった高輪が、今度は世界とつなぐ玄関口となるよう、“高”の文字をゲートに見立てたデザインを採用した。

東日本旅客鉄道株式会社 代表取締役社長 深澤祐二氏
高輪の“高”を取り入れたロゴ

 100年先を見据えた取り組みとして、2つのビジョンを掲げてプロジェクトを進める。1つは街全体でCO2排出量の実質ゼロを実現するとともに、廃棄物を資源として再利用するサーキュラーエコノミーを取り入れた環境先導のサステナブルなまちづくり。2つ目はKDDIを共創パートナーとして、100年先の心豊かな暮らしのための実験場を構築する。

 環境先導のまちづくりとしてエネルギー面においては、太陽光や風力、バイオマスなどを活用した創エネ、高性能外装や排熱を活用した省エネ、それらを効率よく利用するための最新のエネルギーマネジメントを実装する。クリーンエネルギーとして期待されている水素を使ったモビリティやデバイスなども積極的に活用していく考えで、その一つとして外部からの荷物を一時保管場所に集約し、配達は燃料電池を用いたFCトラックを導入するとしている。飲食店などから出される食品残渣は東日本エリアでは初となるビルイン型バイオガス設備において熱エネルギーに変換され、入居予定の「JWマリオット・ホテル東京」の給湯設備に活用される予定だ。そのほか、回収した衣類を最新技術でリサイクルして、再販売するシステムも構築する。

創エネ、省エネを活用し、リサイクルも推進する(画像提供:JR東日本)

 街区は緑が豊かな点も特徴として上げている。南北1km以上の敷地内には2.7ha以上の在来種を中心とした樹木を定植し、住宅棟に隣接するビオトープには港区在来の野鳥や昆虫の定着を促進するための木々や水辺を用意するとしている。高層フロアにも植生豊かな場所を用意する予定で、複合棟I(North)の28~29階に約2000坪のボタニカル空間を構築し、高層建築物では世界で類を見ない光景が広がるのも自慢であると説明した。

ビオトープ(画像提供:JR東日本)
ボタニカル・ルーフトップ(画像提供:JR東日本)

 2つ目のビジョンである実験場としての取り組みについても言及した。世界規模の課題解決のため、地域住民、テナント企業やスタートアップ企業、大学やクリエイターがコラボレーションできるよう、ビジネス創造施設を整備する。コワーキングスペースやイベントスペースに加え、インキュベーション施設やラボを用意し、産官学が連携して課題解決に向けた取り組みが行なえるよう先導する。また、街区の設備が持つデータを収集して分析するデータ基盤である「都市OS」を構築し、そこから得られたビッグデータを活用して新しいサービスの創出につなげていく。

実験場として実証実験を行ない、イノベーション施設も整備される(画像提供:JR東日本)
都市OSの概念図(画像提供:JR東日本)

本社を移転するKDDIはTAKANAWA GATEWAY CITYの一員として社会課題の解決に取り組む

 KDDIからは代表取締役社長 CEOの髙橋誠氏が説明を担当。JR東日本の100年先を見据えたプロジェクトへの参加を表明しているが、KDDIとしては「自らがこの素晴らしいまちの一員になりたいと思いました。サステナブルなまち作りへ取り組んでいきたい、貢献していきたいという思いですね」と話し、2025年3月に本社を移転することを発表した。

 本社機能を担う1万2000人ほどがTAKANAWA GATEWAY CITYに移転するとし、サステナブルで先進的な環境でデータを取り、新しい労働環境を構築して企業の強化を図りたいとしている。同社は昨年に中期経営戦略として「『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。」を掲げた「KDDI VISION 2030」を発表しており、デジタルツインを活用した社会に向けて壮大な実験場となるTAKANAWA GATEWAY CITYに期待を寄せていると話した。

 商業人口、訪問人口、居住人口などを合わせると10万人規模となり、そこから得られるデータを解析し、人流の最適化による混雑の緩和、高精度な予測を活用したフードロスの削減、緊急予測への活用など、社会課題の解決に向けて積極的に取り組んでいくとしている。また、いろいろなアイデアを持つスタートアップ企業とのコラボレーションから生まれたプロジェクトをすぐに試してアップデートすることで、イノベーションを次々に起こしていきたいと説明した。

KDDI株式会社 代表取締役社長 CEO 髙橋誠氏
KDDIは5つのトライアングル ループを念頭にJR東日本とTAKANAWA GATEWAY CITYを共創する(画像提供:KDDI)