ニュース

バスは数分に1本、クルマはすれ違えない……世田谷の“鬼セマ道路”ついに新道へ! 小田急バスはどうする?

補助54号線 榎交差点~都立祖師谷公園北側が開通

2023年4月23日に開通する「補助54号」区間(世田谷区資料より)

バスもクルマも一苦労! “鬼セマ道路”を避けるバイパスがまもなく開通

 東京都世田谷区で工事が進む「都市計画道路補助線街路第54号線」のうち、榎交差点~都立祖師谷公園北側までの区間が、4月23日14時に開通します。

 今回開通する区間は約430m、徒歩なら5分で抜けるほどのわずかな距離です。しかしこの開通は、クルマでの移動、路線バスの運行、徒歩で通行する地元の人々、いろいろな方々に大きなメリットをおよぼしそうです。

 本区間の開通のメリットは、50m南側に並行する都道118号線をスルーできることにあります。

 この地区の東西移動のルートは「甲州街道」「世田谷通り」「玉川通り」などに限られます。この区間は甲州街道から環七通りを斜めにショートカットするルート上にあり、クルマの往来は終日途絶えることがありません。

 しかしこの都道は、世田谷区・調布市境周辺では道路幅5mほどの区間が続きます。特に今回の新道と並行する区間は緩い勾配とカーブが連続しており、クルマ同士の接触も多発。沿道の電柱には、バンパーやミラーの高さに無数のキズがあり、運転の困難さを物語っています。

榎~駒大グランド前バス停を走行するバス。すれ違えるだけでもすごい

さらにこの都道は、小田急バスの路線「歳20」「成06」などのルートでもあります。

 停留所で言えば「榎」~「駒澤大学グランド前」間にあたるこの区間は、京王線・千歳烏山駅や小田急本線・千歳船橋駅、成城学園前駅からのバスが、朝には1時間20本近くも“激セマ道路”に進入していきます。

 小田急バスによると、この区間では「バスの離合(行き違い)がないようなダイヤを設定し、無線を介して営業所と連絡をとりつつ運行していた」そうです。それでも「この区間で100%離合がない」という状況は難しく、路線バス運行のネックとなっていました。

 なおこの区間は、路線バス車両以外の大型車(車幅2m以上)は進入禁止。それでもバスとの対向があると考えると、極力ハンドルを握りたくないものです。

 住宅街が広がるこのエリアでは路線バスの利用が多く、コロナ禍の2021年度でも利用者は1日1~2万人程度をキープしています(世田谷区資料による)。特に「榎」バス停では乗車待ちの列が平日日中でも見られるほどの盛況。これだけ利用があると、ワンサイズ小さい小型バス車両への置き換えも難しそうです。

新しく開通する「補助54号線」と現道の「都道118号線」の比較(東京都建設局資料より)
補助54号の新道区間。勾配がある

 なお現状の都道は、ほとんどの場所で歩道が整備されていません。「どうしてもこの区間を歩くときは、電柱の陰から電柱の陰へ、伝いながら進んでいる」「むしろ、電柱がないと歩けないよ!」とは、近くのコンビニに買い物に来ていた地元の方のお話。

 新しい道路は幅15mまで広がり、両側に幅3mの歩道付き。歩道はすでに大半の区間で通れるようになっており、車道の開通前から地元の方や、千歳小・千歳中・芦花高校の学生などで賑わいを見せていました。

新道には「バス停」の文字が! 小田急バス、新道にルート変更

アスファルトに記された「バス停」プリント。まもなく「駒大グランド前」バス停として稼働する
榎~駒大グランド前間のバス停移設の告知(画像:小田急バス)

 新しく開通する「補助54号線」道路のアスファルトにはすでに「バス停」の文字が刻まれています。

 この区間の道路が開通する4月23日14時をもって、榎~駒大グランド前間のバスのルートは変更に。狭く曲がりくねった都道から、まもなく小田急バスが姿を消します。

 交差点南のセブンイレブン前を含む数か所に分散されていた「榎」バス停は、すべて新道上に移設。「駒大グランド前」バス停は千歳烏山駅・千歳船橋駅方面のみ新道に移設し、成城学園前駅方面のバス停はこれまでどおりの場所です。

 なお、榎バス停は現在の位置から少し離れていることもあり、小田急バスでは「旧バス停で待つ人がいないよう、可能な限り新バス停への案内を行なう」そうです。

その先の事業化区間も土地取得済み! 今後はどうなる?

補助54号線 上祖師谷2期工事と調布市内の予定ルート(東京都第二建設局Webサイトより)
駒澤大学グランドの南側に確保されている道路延伸用地。現在は資材置き場として活用されている様子

「補助54号線」にあたる計画はもともと戦前からあり、都市計画としての決定も1946(昭和21)年のこと。このルートの道路整備は数十年越しの悲願だったと言えるでしょう。2016(平成28)年に都が策定した「東京都における都市計画道路の整備方針」では「優先整備路線」(おおむね10年間で優先して整備が必要な路線)として位置づけられており、今後、ほかの「補助54号線」区間はちゃんとした道路幅で整備されるのでしょうか。

 世田谷区内の区間のうち、開通区間の終点となる駒澤大学グランド南側から、神明神社の裏手を通って成城通りにいたる約410mの区間は事業化済み。土地の取得も2021年度の時点で98.2%まで進んでおり、今回の開通区間と同様に15m幅の道路が整備される予定です。

 取得済の土地は資材置き場として活用されているものの、工事の形跡はまだ見られません。ただしこの先は仙川を渡る橋梁の工事も必要となり、開通の見通しもまだ立っていません。

 そして成城通りから調布市・松原通り(都道114号線)までの約500mの区間は、現道の拡張に向けて測量が進んでいます(2023年4月現在)。そこから事業化、工事が進んだとしても開通は数年先になりそうです。

補助54号線の2021年現在の完成図。黒は開通済み。黄色・白は未開通(世田谷区道路網に筆者加筆)

 なお「補助54号線」の本来の計画は、世田谷区内から環七・環八を越え、約9kmにもおよぶものです。しかし世田谷区内だけでも桜上水・代田などで整備の見通しが立っておらず、2006(平成18)年に事業化を果たした小田急本線・下北沢駅の北側区間(下北沢1期)は、反対運動などもあって先に進んでいません。本来の終点である山手通り(渋谷区富ヶ谷近辺)までつながるのは、まだまだ先のようです。